朝日岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、 ***:タクシー)

◆8月10,11日
渋谷(22:30) === 鶴田(6:40/7:30) *** 登山口(9:00/9:15) --- 大鳥池(12:00/12:20) --- 水場(14:10)(テント泊)

◆8月12日
水場(6:00) --- 以東岳(7:30/7:40) --- 狐穴小屋(9:40/9:50) --- 寒江山(10:40/11:30) --- 竜門山(13:00/13:10) --- 金玉水(16:00/16:10) --- 水場(17:00)(テント泊)

◆8月13日
水場(6:20) --- 大朝日岳(7:30/7:50) --- 小朝日岳(9:15/9:30) --- 島原山(10:40/11:30) --- 朝日鉱泉(13:40:/14:30)=== 左沢(15:30/16:10 ) +++ 山形(16:57/17:03) +++ 東京(19:56)

山日記

渋谷から鶴岡行きの夜行バスに乗る。座席間の間隔が広くゆったりして、トイレもバスの真ん中にあって快適なバスだ。ただトイレが真ん中にある分トランクが小さく,荷物はあまり積めない。乗車の際、乗務員に「荷物が大きすぎる。」といわれた。なるほど帰省客の中で一番でかい。が今言われても困るってもんだ。

鶴岡駅前のバス乗り場でコンビニで買ったカップラーメンを食べながらバスを待っているとタクシーの乗務員に「相乗りで行きませんか。料金はバスと変わらないよ。」と声をかけられた。それでバス待ちの4人で相乗りして登山口までタクシーで行くことにした。
登山口からは川沿いの平坦な道となる。歩いていると段々と雲が出てきて今にも泣き出しそうな空である。なんだか今年はよく雨にたたられる。「せめて今回くらい晴れてほしい!」という願いもかなわず、この後小雨になったりやんだりを繰り返した。


寒江山あたりから雲が取れ出した
平坦な道からいよいよ登りになった。途中数箇所に小さな沢があり、天然ワサビが群生している。小さな緑の葉の間を通り抜けてきた水が流れ落ちる際に曇り空のかすかな光にもキラキラ輝いている。重さに耐えられなくなった雫はポタリポタリと無数の光となり葉の先からこぼれ落ちている。
手で水をすくって口に含んでみると冷たくほのかな甘味が夏の暑さを和らげてくれる。それにしても僕の頭には日本の夏by美空ひばりってことしか頭に浮かんでこない。庶民的というか貧困な想像力というか、なんとかならんかのかー!
沢がある度に何回も水を飲んだのでお腹がパンパンに膨れてしまった。「もうこれ以上飲めない、飲んだら死ぬ」と思ったら大鳥池に到着。死なずにすんだ。
大鳥小屋の小屋番さんに以東岳までの登山道の状態を尋ねたら、「ウツボ峰コースの方が花が多い。」「直登コースの水場は水が出ていない。」とのことなのでウツボ峰コースを行くことにした。
道はぶなの林の中を登って行く。残念なのは登山道脇のぶなの木に登山記念と思われるいくつか名前が彫ってあり何とも痛ましい。
樹林帯を抜けると展望が良くなるが天気が悪いので景色は冴えない。「空模様は相変わらず悪い、回復するかな?」と思っていると雨が降り出し、水場に来たときに本降りになってしまった。今回の行程は時間に余裕があるので少し早いがここで幕営をすることにした。
いつものように酒−夕食−酒の順に一人宴会は進む。これは天気が悪かろうが関係なく遂行される。
明日は晴れるだろうか?テントを叩く雨の音を聞いていたら心配になった。目が覚めたときには晴れていることを祈って眠りについた。
朝起きたら雨だった。とりあえず朝食を食べて空の様子をみていたが一向に回復しそうにない。

以東岳から竜門山の間はすごく花が多いのだが花の名前は知らないのが悲しい
そうしたら急にキリキリと腹痛がしてきた。「昨日、変なものでも食べたのだろうか?」回想してみても思い当たることは無い。そうしているうちに肛門に猛烈な圧力を感じた。
「やべーっ!」雨が降っているが合羽を着る暇も無くテントの外に飛び出した。テントを張ったのは水場の上なので、ここでキジ撃ちするわけにもいかない。登山道をひた走り40mほど離れた地点でもう限界だ!熊笹の中に飛び込んで安らぎの時を迎えたのだった。
。。。がしかしこの時、うんこが柔らかかったせいで熊笹の返りうんこを浴びてしまい、お尻から太ももにかけてクソまみれになってしまった。「きたねーッ!やばい、まいったなー」うんこは数分前には自分の体の中に有ったものだ。それが体の外に出ただけだ。汚いわけない!」といくら理由をつけて正当化しようとしてもやっぱり汚いものは汚い。
僕はずぶ濡れになりながら何を自己問答してるのか!早く何とかしなくては。。。「えーぃ仕方ない、水場は近いことだし洗おう!」しかしパンツを上げるわけにいかず「えーい面倒だ。脱いでしまえ!」とズボンとパンツを脱いで水場へ走った。これはきっと夢だ!雨に濡れながら下半身丸出しの格好で何で僕が朝日岳の稜線を走らなければいけないのだろう?ガニマタ状態で走っているのでアーッ!水場が遠い!!!
早朝で周りに人がいなくて本当に良かった。下半身丸出しの男がずぶ濡れになって走っている姿をた誰か見たらびっくりするに違いない。それにしても上は服を着ているのに下だけ裸なのは妙におかしい。クーッ!かっこ悪すぎる。
水場のなるべく下まで降りて行って洗った。雪解け水はとても冷たくお尻も足も鳥肌が立っている。オチンチンは今まで見たことも無いくらい小さくなっている。はたして元の大きさに戻るか心配になった。
テントに戻って一息ついた。。。なんかすごく疲れた。

雨は何時の間にか少し小降りになったので合羽を着て出発。以東岳まではなだらかな登りだ。
以東岳頂上に着いてもガスっていて何も見えなかった。地図には「晴れていれば朝日岳主脈を展望出来る」とあるが残念だ。しかたない少し休憩して寒江山へ向かうことにした。
山頂を少し降りたゴーロにさしかかった時、屁が出そうになった。「よし。ここで元気よく屁を出してこのいやな気分を吹き飛ばそう!大朝日岳、俺が行くのを待ってろよ!」
下半身に力を入れふんばった。。。しかし屁ではなかった。


竜門小屋を振り返る
やばい身の方だ!。そう思った瞬間、肛門に緊急停止の力が入る。しかしもう遅かった、あーっ!うんこをもらしてしまった。。。!
人は死を向かえる瞬間に自分の人生が映像となり脳裏にフラッシュバックするというが僕は脱糞の瞬間、この後のことが一瞬に思い浮かんだ。「ああ!うんこが付いたパンツで今日一日歩かなければいけないのか!」「うんこパンツでシュラフにもぐり込むのか。そうなるとかなり臭いだろなー!」「うんこパンツで帰りの新幹線に乗るのか?密着3時間の旅」「ああ!うんこパンツ。うんこパンツ!!!」
いい歳して情けない。何をやっているんだ。頭の中は後悔と悲壮感でいっぱいでパニック状態だ。「うんこは小粒でピリリと臭い?」「これじゃ、温故知新でなくウンコ恥心だ!」
うーん!いかんいかん僕はこの非常時に何を考えているのだ!余計なことを考えずに早くこの状況をなんとかしなくてはいけないのだ!
岩陰に隠れておそるおそるズボンとパンツを下げてみた。はっきりいって見たくないが反面少し見てみたい気もする。せっかくだからパンツに描かれたロールシャッハ絵図で精神分析したい気持ちもする。
あれっ!。。。「神様って本当にいるんだな!」と本当にこの時は思った。なんとうんこの量が少なかったせいでうんこがお尻の谷間でブロックされパンツまで届いていなかった。パンツはめでたく、その純潔を守ることが出来たのだった。起死回生の逆転ホームランだ!先ほどの暗く憂鬱な気分は一転して幸福感に満ちていった。何て僕はラッキーな男だ!
(注:考えたらここまでうんこの事だけで山のことは書いていない。話を山に戻そう。)

竜門山から大朝日岳へと気持ちの良い稜線は続く
こうなると不思議なもので雨の中のお花畑もすばらしく美しく輝いて見える。実際、以東岳から竜門山の間はすごく花が多いのだ。ルンルン気分で歩いて寒江山に着いたら急に雲が取れて太陽がのぞき始めた。これだ、これなんだよ!僕が望んでいたのは。正義の剣を持つ太陽神シャマシュよ!ありがとう!
朝日岳のすばらしい山々が一望に見える。登山道の起伏もなでらかで歩き易いし言うことなし。
竜門小屋の小屋番さんと話したら「ここ一週間ずっと天気が悪く、こんなに晴れたのは久しぶりだ」とのことだ。まったく僕は運がついている。小屋の前には流水に冷えたビールが僕を誘惑しようと手招きしているが誘惑を振り払い大朝日岳に向かう。
大朝日岳は端正な三角形でまさに朝日岳の主峰に相応しい山容をしていた。僕は山に行く前になるべく山の写真などを見ないようにしている。やはり初対面で出会う時の山の印象は大切にしたいし、大朝日岳のように思いもよらない山容だとそれだけで単純に嬉しい。
金玉水でのどを潤しテントの設営をしようとしたら、なんと幕営禁止の立て札がある。インターネットで山行記を見るとほとんどの人の幕営地はここ金玉水であった。見ると確かに幕営跡が多数ある。なぜダメなんだ?
しかし考えてみてもダメなものはダメだろう。どこか別の幕営地を探さなくてはならない。そういえば西朝日岳を降りた所に砂地があったのを思い出した。仕方ない、そこまで引き返そう!

西朝日岳を降りた所から見た三角形の大朝日岳
気持ちは金玉水で今日の行動は終わりだと思っていたのでこの一時間の戻り歩きにはホトホト疲れた。
テントを設営し、濡れたままザックにつっこんであった合羽を取り出した。かわいそうなほどクシャクシャである。砂地の上に広げて乾かしてやろう。その他の物もザックから取り出し広げてみた。みんな僕と今日一日を共有した有志である。無機物であるこいつらに愛着を感じるひとときだ。
日もだんだん傾き、西朝日岳も色の褪めたシルエットへと変わっていく。アルコールもいい感じにに回ってきたので夕食を食べて寝ることにする。
翌朝は朝からガスで強風だった。大朝日岳に登ったがやはり何も見えないので仕方なく小朝日岳に向かう。銀名水の直ぐ上辺りは登山道の荒廃が大きい。早く対策しないと丹沢のバカ尾根と同じように自然破壊が進んでしまうだろう。
小朝日岳、島原山とガスの中ひたすら歩く。登山道を歩いていて腹が立ったのは、登山道脇のキノコが無残に荒らされていることだ。先行者がどうやら暇つぶしにストックで歩きながら突き刺しているようだ。確かにいかにも毒キノコですよと主張している様なキノコもあるが突くのはいかん!
朝日鉱泉手前の吊橋は傾いていた。「この橋危険ですので通行禁止・朝日町」とあり、その下に「十分注意して通行して下さい・朝日鉱泉」と書いてある。少しハラハラした感じが良いねえ!

朝日鉱泉から左沢行きのマイクロバスに乗ったのは4,5人だった。バス待ち中にアブに刺された足首がヒリヒリと痛い。

左沢駅は夏の盛りである。みんみん蝉が狂い鳴いている。「ミーン、ミンミン、ミー」。良く聴くと最後の「ミー」だけその前の「ミーン、ミンミン」に比べて音程が低くなる(音程が低いというより倍音が変化している)。低くなる「ミー」の前の「ミンミン」は何回繰り返すのだろう?数えてみると平均8回、最多回数21回であった。僕の田舎の九州にはみんみん蝉はおらんけん、珍しくて数えてみただけたい!納得して(何を?)電車に乗り込んだ。

参考

左沢駅から古寺鉱泉まで乗合タクシーが出ている。

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