阿蘇山 (砂千里ヶ浜 編)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:飛行機/フェリー)

◆5月22日
緒方 (8:20) +++ 阿蘇 (9:57/11:45) === 阿蘇山西駅 (12:20/12:40) --- 砂千里ヶ浜入口 (12:55) --- 中岳 (14:25/14:35) --- 月見小屋 (15:00/15:20) --- 高岳 (15:45/15:55) --- 月見小屋 (16:20)

山日記

尾平9:00発のバスに乗れば良かったけど頑張って土岩まで歩いて7:00の始発バスに乗った。
阿蘇に2時間早く着くことが阿蘇山攻略の重要なポイントなのだ。

阿蘇山は山頂付近までバスが運行しているので何もデカザックを背負って縦走することは無い。
今夜泊まる阿蘇BASE BACKPACKERS はチェックインは午後4時以降なのだけれど荷物は朝8時から預かってくれる。
阿蘇山はホテルにデカザックを預けサブザックで日帰り登山しようと計画した。

阿蘇駅で電車を降りると直ぐに阿蘇登山バスの時刻を確認する。
次のバス発車時刻は10:15分だ。何と発車まで残り10分。この時間内でホテルに荷物を預け、サブザックの準備をして、コンビニで買い物をするのは到底無理だ。

次のバスは・・・何と1時間半後の11:45分だ。しかしこれに乗ったのでは阿蘇山を全部周り切れない。
僕の阿蘇山のイメージは阿蘇山=火山+牧場なので阿蘇山で一番標高が高い高岳に登っただけではダメなのだ。
最低でも草千里は踏まなければ阿蘇山登山に満足出来ないのだ。

ではどうしよう?登山計画の変更だ。

1) ホテルにデカザックを預け、サブザックで今日は高岳、中岳に登り、明日は草千里に登る。
2) 今日は坊中キャンプ場にテントを張り、明日はサブザックで高岳、中岳、草千里に登る。
3) 今日デカザックで高岳、中岳に登り、避難小屋に泊まる。明日は草千里を登る。

1) ホテルに2泊するのはもったいない。
2) わざわざ尾平から平岩まで歩いて阿蘇に2時間早く来た意味が無い。

明日の夜は九重登山準備のため、どうしてもホテルに泊まらなければいけないこともあり、3) の案で行動することにした。


朝5時にSoyjoyを1個食べてから何も食べていない。バスの発車まで時間もあることだし何か旨いものでも食べようと思った。
ただ問題は延岡を出てから三日間も風呂に入って無いことだ。これで洒落たレストランに入るのは気が引ける。
とりあえずコンビニ弁当で良いや!と今夜の買出しも兼ねてコンビニへ向かった。

九州山旅を始めて気がついたことがある
「とりあえず飯でもたべるか!」の「とりあえず飯」は非常に旨いってことだ。
ホテルでの滞在時間が短かったり、交通機関の乗換時間が無かったりでとりあえずコンビニ弁当で済ますことが多い、
だけどこの「とりあえず飯」を食べる時は大概お腹が空いた状態にあるので何をたべても非常に旨い。
阿蘇駅の待合室でのり弁当を食べた。とりあえず弁当はうまいのぉー!

コンビニで買い物、ホテルの予約、九州横断バスの予約をきっちりと済ませ、阿蘇登山バスに乗った。
走り出して30分もすると窓の外の景色は牧場に変わった。牛がのんびりと草を喰む風景は阿蘇の高原そのものだ。

バスの中では観光案内のテープが流れ始めた。「阿蘇五岳と言われます右から杵島岳、烏帽子岳、中岳、高岳、根子岳・・・」根子岳の言葉を聞いた隣の外人が「ニャーニャー!」といきなり猫のまねを始めた。
やっぱり外人にもオヤジギャグを言う人もいるのだな。僕もうかうかしてられてられない。

終点の阿蘇山西駅にバスが到着した。
「火山ガス発生のため、ロープウェイは運休、代行バスも運休、公園道路は封鎖されています」アナウンスがあった。
それを早く言え!バスに乗る前に言え!僕の頭も噴火しそうになった。

最近,、火山活動が活発になっているらしい。
昨日はロープウェイ運休で代行バスが運行していたらしい(ロープウェイがダメでバスはOKとはどんな理由だろう?ロープウェイは高い所を通るから?万が一の時、客がすぐ降りられないから?)。
今日はバスも運休になったらしい。周りの観光客も予定が狂ってしまってバタバタしている。

道路は閉鎖され、ゲート前には柵が並んでいる。
せっかく来たのにこれじゃ山に登れない。
状況を聞こうとロープウェイ駅の切符売場へ行ったら詳しいことは道路入口にある火山観測所で聞いてくれとのことだった。

観測所の扉を開けると中には作業服を着た男性がが3人。
「公園道路はいつ規制解除になりますか?」
「登山者の通行はOKです。」
「・・・・・・」
全く意味が分からない。観光客はダメで登山者はOKの理由が分からない。
登山者は火山ガスに強い?悪環境でも生きる術を身に付けている?とでも言うのだろか。
理由は分からないけれど登山者は通っても良いということなのでゲート前でザワザワしている観光客を尻目に道路を一人歩き出した。

全く変な感じだ。
長い道路には車が一台も走って無いし他に人影も見えない。ロープウェイも火口駅でじっと止まったままだ。
何だか「アイ・アム・レジェンド」のワンシーンみたいだ。だけど不安とか一切無くてむしろ独り占めしたようで愉快な気分だ。

阿蘇山公園道路を通る車は一台も無かった、忘れ去られたような不安・・・なんて感じないさ!
砂千里ヶ浜は古い火口跡らしいけれど黒くて広い砂漠のようだ。
渡り廊下みたいな木道を歩いて行く。ここにテントを張ったら気持ち良さそうだ。

砂千里ヶ浜を渡り終えた所で今日始めて登山者の姿を見た。(登山バスの中にも一人もいなかった)
ここで一気に観光モードから登山モードへ変わる。

砂千里ヶ浜もやっぱり一人です。
一人では見えない景色がある。一人じゃないと見えない光景がある。・・・お前はニーチェか?
目の前いは一目見ただけで急斜面だと分かる坂道が現れた
赤茶けた岩がゴロゴロしている道を登って行く。立ち止まっては振り返る度に砂千里ヶ浜が遠くになっていく。

急な坂も20分ほど登った所で稜線上に出た。小さな穴が無数に開いた黒い岩や複雑にひび割れた赤茶けた岩が乱積する様は火山そのものだ。

登山道から思ったより火口は近い。偉大なる地球の呼吸、立ち止まっては大地の温もりを確認してみる。そんな現場がここにあった。
稜線から下を覗き見ると、そこは白と茶色と黒の岩石と砂の世界。生命の入り込む余地が全く無い荒涼とした大地が広がっている。
火口から絶え間なく上がり続ける噴煙はまさしく地球の鼓動そのもの、空虚さの中にも生命の源を感じさせる。

中岳から黒岳へ向かっているとこの辺りは火口の風下になっているらしくもろに噴煙の直撃を受ける。
目はショボショボ、喉はヒリヒリ、ツンとする臭いに深く呼吸することが出来ない。
辺り一面危険なガスが充満しているけれど大丈夫なのだろうか?
道路が通行止めになるような噴煙が全部こっちに流れて来ているけど大丈夫なのだろうか?

月見小屋って言うほどかわいい小屋では無いね。
扉の鍵は壊れていたので力ずくで閉めなきゃいけなかった。


小屋の近くの水場は井戸みたい。水量はたっぷりしていたけれど、
そのまま飲めるかは不明。

高岳分岐を右に進み避難小屋へと向かった。
登山道は高岳の火口跡の中を進んでいる。バスケットボール大の丸い草の塊がいくつもあって草の墓標みたいだ。

避難小屋は斜面を少し登った上側にあった。
堅牢そうな小屋の中は10畳位の広さ、下にはセメントを砕いた石が敷き詰められている。
地面の石は湿って黒く変色しており、その上に直接マットを敷いて寝る気にはとてもなれないのでテントを張った。

小屋から40m位離れた場所に井戸があった。
中の水は澄んではいるけれど湧水か溜水かは分からないので飲むのには勇気がいる感じだ。

天狗の舞台はとりあえず置いといて。この辺りは健気な高山植物が自然を謳歌してる。大切なものがここにはある。
コイワカガミが群生した坂道を登って行くと根子岳が見えた。
見るからに急な斜面の手ごわそうな山だ。降って行く道の前にも崩落のため通行注意の案内板が立っている。

天狗の舞台と呼ばれる平たい巨岩石の横を通って高岳へ登っていく。
山頂からは阿蘇山の北側外輪山の眺めが良い。まるで阿蘇山とその周りの平野をぐるりと取り囲む高い城壁だ。

コイワカガミだと思うけれど花弁が白い?
間違っていたら不幸のメール送ってください。


根子岳は見るからに険しそう。おーし、今度来訪した時は登って見たい!
なんて約束は出来ません。でもそれじゃいつまでも置き去りかな!

バスの観光案内では火山があまりに大量の火山灰を噴火してしまったので地面が一気に地盤沈下し阿蘇の平野を造ったと言っていたけれど、こうやって山頂から眺めると阿蘇の平野は神の手で伸ばされたように真っ平である。

高岳岳はなだらかな山頂でのんびりと稜線を漫歩するのが嬉しい山だ。

高岳からの鷲ヶ峰。下から見たらどんな風に見えるんだろう?


そぞろ歩きなのは高岳。ただのピークハントでは悲しすぎる稜線。

コンビニでもらったウエットティッシュが気持ち良い。
小屋に戻るとベンチでご褒美のサラミとビール。
その後は九州に来てから20個目のラーメンで簡単な夕食(弁当にしなかったことを後悔)。

寝るのにはまだ早かったので小屋の周りを散策した。
「小屋に人がいる!」火口跡は集音効果があるみたいで高岳にいる人の声が聞こえてきた。
それにしても夕方6時になってもまだ歩いている人がいるのだ。
歩いている人の中で誰か小屋に来ないかな・・・・・小屋に来るのはヒバリ、ウグイス、カラスだけだった。

小屋の名前は月見小屋だ。
夜8時、小屋の外で空を見上げる。曇っていて月も星も見えない。
テントに入ってシュラフにもぐりこんだ。
小屋は噴火にも絶えられる位に頑丈な造り、逆に通気が悪いので中がじめっとしている。
換気のために入口の扉を開けたまま寝ることにした。

どうか何も来ませんように!

どうか何も出ませんように!

月見小屋の中にテントを張った。
空は曇ってしまって月は見えなかった。小さく流れるラジオに耳を傾ける静かな夜。
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