大菩薩嶺

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆1月3日
高尾(6:15) +++ 塩山(7:24/7:28) === 裂石(7:55/8:05) --- 仙石茶屋(8:30) --- 上日川峠(9:50/10:00) --- 雷岩(11:00/11:05) --- 大菩薩嶺(11:10/11:35) --- 大菩薩峠(12:10/12:25) --- 上日川峠(13:00/13:10) --- 雲峰寺(14:15/14:20) --- 裂石(14:25/14:52) === 塩山(15:15)

山行記

大菩薩嶺を訪れるのは何度目だろう?
初夏のたおやかな万緑の笹原も良いけど、冬に山頂から望む富士山や南アルプスの遠望もまた捨てがたい。
元旦に山登りしたばかりなのに澄んだ空の青さに誘われてまた出かけてしまった。

塩山駅から登山口である裂石行きへのバスに乗る。乗客は登山者ばかりの8人だったがそれでも今日は人が多いなー!と思った。何度かこのバスで裂石へ向かったことがあるけど大体いつも乗客は2,3人だったから。
裂石から上日川峠までは林道が通っているので大体のパーティーはタクシーで上日川峠まで行ってしまう。

バスは市街地を抜けると次第に高度を上げて行った。
バスの前方に座っている女性が振り向いてしきりに手を合わせている。何だろう?と思って振り返るとそこには富士山の姿があった。一昨日、見たばっかりなのに富士山との出合いにはいつもドキッとさせられる。
たぶんこの女性は今年初めての富士山とのご対面だったんだろう。バスの中で手を合わせて拝んでいる姿、ちょっと可笑しくてニヤリとする、だけど良いなー!と思ってまたニヤリとする。
何だか始まりとしてはすごく良い感じだぞーッ!

バスが裂石に着いた。前方の料金表示盤を見ると100円から変わっていなかった。壊れてんだなー?と思っていたらなんと運賃100円だった。
正月早々、すごく徳をした気分になったので、もーそれだけで楽しくなる。こんなにバスが安いんじゃータクシーで来る人も少ない訳だ。(後で分かるのだけど今の季節は丸山峠への分岐点から上日川峠までは冬季通行止めになっていた。それもタクシー客が減ってバスの乗客が増えた理由だろうなー)

裂石から舗装道路を歩く。
5分ほど歩いていると前を歩く人たちが一斉に振り向き写真を撮り始めた。何だろう?と思って振り向くと赤石、荒川など南アルプスの山々が白くなった頭を覗かせていた。「ひやーっ!いいぞーっ!」
もっと、もっと良く見たいという思いに駆られて歩く足が早くなった。写真を撮っている人達を一気に追い越し、もっとよく見える南アルプスの姿を目指して黙々と歩いていった。

仙石茶屋から林道を離れ山道らしくなった。もう既に何人もの人が登ったらしく10センチほど積もった雪はしっかりと踏み固められている。
展望の無い道を登って行くと第一展望台でやっと展望が開けた。何だか映画館のスクリーンを見ているような感じで、周りは薄暗いのに目の前の映像はめいっぱい明るい。大晦日に降った雪が市街地を銀色に埋めてしまっていて、日差しをギラギラと反射させている。そしてその奥には青くすました表情の南アルプスの山々だ。
この展望にはさすがに我慢できなくなってカメラを取り出してしまう。

第一展望台からはまたも展望の無い登山道を登って行く。
音楽でも聴きながらのんびり歩こうとザックからラジオを取り出した。山の中なので電波の状態が悪く、NHKしか入らなかった。プログラムは箱根駅伝中継をやっていた。
それにしても正月早々、走っている本人はもちろんだけど、沿道で声援を送るギャラリーも余ほど好きなんだろーな!・・・とここまで考えて苦笑してしまった。元旦に山登りしたら周りの人達から「正月から山に登るなんて!!!」て呆れ顔されたのを思い出したからだ。
それにしても僕はマラソンとか駅伝とか好きでよくテレビ中継は見るほうなんだけど・・・ラジオで聞く駅伝中継はとてもツマンナイ!

上日川峠の駐車場は南アルプスがよく見る場所だ。ここで展望を楽しみながらサンドイッチを食べようとしたんだけど、駐車しているバスの排気ガスが臭くて我慢できなかった。暖房の効いたバスの中ではハイカーの帰りを待つ運転手が気持ち良さそうに昼寝をしている。他にも数台の車が停まっていた。林道は通行止めになっていたけど反対方向からは入ることが出来るんだろう。

上日川峠からは林道沿いの登山道を登って行く。さすがにこの辺りまで登ってくると積雪は20センチほどあった。だけどこの道もしっかりと踏まれているのでツボ足といってもそんなに辛くはなかった。
ただ僕以外の登山者は並行する林道を歩いている人がほとんどで、あっちの道は平坦で楽そう、こっちの道は登ったり降ったりの繰り返し。
良いんだ!良いんだ!やっぱり森の中を歩くんだ!と思いたいのだけど、なんだか損をしているような気分だ。

福ちゃん荘から唐松尾根を登って行く。
登山道に雪は積もっているがしっかりと踏まれているので歩きやすい。
登っている途中から振り返ると富士山が見えた。上空は旅客機の空路になっているのか?飛行機雲が数本、青空の中に白い線を描いている。
ザックからカメラを取り出して撮影する。山頂まで登ったらもっと富士山は見えると思うけれど、写真は良いな!と思った時に撮らないと後になって「チキショー!あの時、撮っておけば良かった・・・」なんてウダウダ悔やむことも少なくないからなー。

雷岩からの麗しき富士山です。大菩薩は富士山がリアルに見える限界ではないでしょうか?
雷岩に立つ。
風が強く、慌ててダウンジャケットを着て、ワッチキャップを被り、ネックウォーマーを着けて完全武装する。樹林帯を歩いているときは風を全く感じない程だったが、ここは甲府市街を駆け抜けた風の通り道になっているのか?強風だった。

大菩薩嶺山頂は木々に覆われて展望はありません。だけど風が無くてホッと一息!
風をシャットアウトしてゆっくりと景色を眺める。この頂からの富士山も素晴らしいかった。普通だったらここで富士山を賛美、絶賛するのだけれど、それよりももっと素晴らしい景色が今日は待っていたのだ。富士山から視線を45度、西へパンするとそこには雪で銀色に輝く甲府の市街地と南アルプスの山々の姿。第一展望台でも見た光景だけど、さらに高度が上がってその分より広く、より遠くまで見える。
この素晴らしい景色は後でじっくりと責めることにして大菩薩嶺へ向かう。
樹林帯の中を5分ほど歩くと大菩薩嶺へ着いた。展望は全くないが木々が風を遮っているのでここで昼食にする。昼食はサンドイッチにミルクティと簡単だ。レタスがシャキシャキして美味い。
今の季節はオニギリは寒さで硬くなってしまうし、かといってストーブを持って来てラーメンを作るのもめんどーだ!
なーんて思っていたら後からやって来た6人のパーティーがストーブを取り出してラーメンを作り始めた。その湯気を見たら、やっぱラーメンは良いなー!と思わずにはいられない。
だけどやっぱり、次もサンドイッチにするんだろーな!と思いながら雷岩へ行き返した。
雷岩から大菩薩峠までは展望の良い稜線の道だ、いよいよ、その道にくりだしてゆく!
風が強いが完全武装のドンと来い!状態なので全然寒さは感じない。
ところで他人の装備についてたまに首をかしげてしまうことがある。冬の山ではたいていの人はワッチキャップを被っている。がネックウォーマーを着けている人は少ない。低山でも無風だったらともかく少しでも風があるとかなり顔が冷たい。そんな時、ネックウォーマーをヒョイと鼻までツマミ上げると頬がたちまちホカホカ暖かくなる。ネックウォーマーは決して高いものではなく、ユニクロで500円位で売っているし、一つあると重宝なんだけど何で皆さん持ってないの?と思ってしまう。
たまに頬が寒さで紫色になりながら歩いている人を見かけるが・・・寒くないわけはないし・・・我慢してんだろうなー?

ところで、今、前から歩いてきた男性、ネックウォーマーはしてないし、帽子も野球帽なので、もー耳も、顔も冷たくて痛そーだ!
この後も2,3人とすれ違うが、なぜか?やっぱり顔面ムキ出しの厚顔(って言っても別にあつかましいわけじゃない)登山者ばかりなのでその度に顔色がやたら気になってしょーがなかった。

風は強いがそんなんじゃー景色の良さは変わらない。
大菩薩峠までの道は展望が良いので、10歩歩いては景観を楽しみ、20歩歩いては写真を撮ることを繰り返す。写真もいっぱい増えたけど心のネガもまたまた増えました。

大菩薩峠に向かっていると、西の方から段々と雲が張り出してきた。
最初は「少し雲があった方がアクセントになって良い」なんて考えていたけどこう堂々と張り出してくると青空がやっぱり恋しくなる。
雪を薄っすらと覆った三頭山、雲取山など奥多摩の山々が見えるけれど雲のせいで何か寒々としている。富士山のだけはスポットライトみたいに日差しが射していて逆にさっきよりリアルに見える。


休憩所があります。泊まってみたいなー!と思うけど・・・なぜか扉はありません!
峠までやって来た。
介山荘の売店の前には10数人の登山者が居た。これから山頂まで行くのかなと様子を見ていると、皆さん、風が強いし、雪も多いのでここから引き返すみたいだった。なんとも勿体無い。
一人の女性が歩いて行ったと思ったら50メートルほど歩いてから戻ってきて「これー、アイゼンが無いと無理だよー!」って仲間に報告している。
えっ?と思った。雪は20センチほど積もっているけどしっかり踏まれているし、それにアイスバーン状態の箇所なんてどこにもないし、大丈夫ですよ!と教えてあげようと思ったけど・・・
でもここで僕が助言してそのせいで何か事故があったら大変だし・・・そー、何より安全に越した事はないので余計なことは言わないでおいた。

大菩薩峠の標柱で記念撮影します。昼食中のオジサンがしっかり写っています。
オジサン、この空気、よんでよー!
峠の標柱の前で記念写真を撮ろうと思った。入れ替わり立ち代り標柱の横に人が並んでいるので少し待っていた。
そうしたら・・・標柱の直ぐ横でオジサンが弁当を食べているわけなんだけれど、はっきり言って皆さん、このおじさんがジャマみたいで横目でチラチラ睨んでいた。「1たす1は・・・」なんて笑顔でピースサインしてるそばで、全然見知らぬオジサンが黙々と弁当を食べている。
別にそこで弁当食べちゃいけないってことはないんだけど標柱の周りは記念撮影の良い場所なんだし、オジサンももう少しこの迷惑そうな雰囲気、つかんでよー。
時間があったら石丸峠まで行こうとも考えていたが、頭上には段々と厚い雲に覆われて来て、もう何だかそんな気分にはなれなかった。
ただこれで降りるのもなんとなくもの寂しく、もう少しこの景色を見たかったので雷岩の方へ少し戻り、小さなピークの風の中に立った。

まったく・・・山はこれで終わりということがない!
山はうつろいやすい季節の中で色々な表情に変わってゆく。太陽の日差しが明るく大地を照らし、雲がいくつもの影を落しながら流れ、そして風が木々の葉を揺らしている。
そんなゆるやかな時の流れの中に漂っているこの景色もまぎれもなく素晴らしき冬の一コマだった。

菩薩様!
どーか、これからも、ハートにグッと来るようなごきげんな景色をちょくちょく出現させてください!

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