大菩薩嶺 (小金沢連嶺)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆5月4日
立川 (5:55) +++ 高尾 (6:12/6:15) +++ 笹子 (7:07/7:15) ---(途中で車に拾われる)---登山口 (7:50/7:55) --- 滝子山 (10:00/10:30) --- 大谷ヶ丸 (11:20/11:30) --- ハマイバ丸 (12:30/12:45) --- 大蔵高丸 (13:45/14:00) --- 湯ノ沢峠 (14:15/14:35) --- 白谷丸 (15:10) (テント)
◆5月5日
白谷丸 (6:10) --- 黒岳 (6:30/6:35) --- 牛奥ノ雁ガ腹摺山 (7:40/7:50) --- 小金沢山(8:25/8:35) --- 石丸峠 (9:35/9:40) --- 大菩薩峠 (10:10) --- 休憩所 (10:20/11:00) --- 大菩薩嶺 (11:45/11:50) --- 丸川峠 (12:50/13:10) --- 裂石 (14:30/14:52) === 塩山 (15:20/15:51) +++ 立川(17:30)
山日記 (5月4日)

ゴールデンウイーク後半も晴れの予報だ。
そんじゃーいよいよ北アルプスだな!と準備を始めたら、鳳凰山から帰って来たばかりだからか?どうゆうわけか低い山をぶらーりと歩いている自分の姿が頭の中でパッシングする。
んじゃー、鈴鹿だ!と思ったけれどさすがにゴールデンウイーク!夜行バスの予約もいっぱい。
だったら予約のいらないどこか近場の山へ?と考えて滝子山から大菩薩嶺まではどうじゃろか?
大菩薩嶺へはカラ松の新緑が綺麗な5月末に行く計画だったけど予定をバタンと前倒しだ。
以前、大菩薩嶺から滝子山まで歩いているので今回は逆に滝子山から大菩薩嶺まで歩くことにした。湯ノ沢避難小屋に泊まるのであればこっちの方が一日目の行程が短くて楽だし。

沢沿いの道を登って行く。
天気予報では山梨の最高気温は28℃だったけれど、まだ午前中だし、それに沢沿いということもあって暑くは無く爽やかに感じる。
滝子山へは初狩駅から登るルートもあるけれど、笹子駅からのこのルートの方が早く登れし、こうやって登ってみるとこっちの方が涼しくて正解だったな!と思う。
沢には滝が多い。名前が付いている滝もあるけど、多くは滝とまでは呼べないような小さな滝だ。滝子山の名前の由来は案外、このへんにあるのかもしれない。
沢はたしかに良い感じなのだけれど新緑には早かったな、しまったな!来るのはやっぱり5月末が良かったかな?その頃だったら新緑と滝が良い中になっているだろうな!と少し悔しい気分だ。

登るに従って沢の幅も小さくなってゆく。途中の沢で登山口まで相乗りさせてもらった男性と休憩していると、その男性が水辺へ寄って行き「ちょっと、これ砂金じゃない?やったぜっ、だとしたら俺は大金持ちだ!」と歓声をあげた。僕も以前に来た時に沢の砂地にキラキラ光るものがいっぱいあるな!って見てたけれど雲母か何かでまさか砂金だとは思わなかった。
「これ、金だ、金だよね!」と男性は大ハシャギ。「これが砂金だったらとっくに誰かが採取に来て、とっくに大金持ちになってるんやないですかね?」と言うと「それもそうだよな!」と男性は高笑いしてた。
ただキラキラの正体は正直に言って分かりません!もしかしたら・・・・

滝子山山頂からの富士山 その前には三ッ峠山
何かの小屋(もしかしたら金の採掘小屋?)を過ぎるとカラ松林になった。芽吹いたばっかりという感じでやっぱり新緑には少し早かった。ここを過ぎると一転して気持ちの良い草原に変わり、振り返ると大谷ヶ丸が大きい。

鎮西ヶ池は池というほど大きくは無く、苔からじんわりと水が溢れている程度だった。昔はもっと水を湛えていたのだろうか?山の保水力が無くなったため?それとも都市の乾燥化の影響?そんなことを思うとひっそりと佇む小さな鳥居がうら寂しそうに目に映る。
そんなに広くは無い滝子山山頂のは既に4人の男性がいて歓声をあげていた。冬はともかく春にここまでハッキリと富士山が見える日は珍しい!と嬉しそうだ。視線を南へ向けるとバーンと富士山が目に飛び込んできた。山頂の雪は8合目まで辺りまで融けていて春の装いを見せている。より富士山の近くにある三ッ峠山や杓子山に今居る人もきっと歓喜の声をあげているに違いない。
西には南アルプスが見える。ほんの3日前に真近で見たばかりなのに、もうどこか遠い山に見える。
北に視線を移すとそこには今から登る山々の姿が確認できた。遠くも無く、近くも無く、まーのんびり行きますか!

登山口から登り出すと花が沢山咲いています


滝子山山頂 南アルプスも見えます


やっぱり春なんですね!山頂の岩にアゲハ蝶
滝子山から鎮西ヶ池そして分岐点まで少し戻り、大谷ヶ丸への道を辿る。この道は地図では「藪が多い」となっているがしっかりと踏まれていて藪なんてなかった。登り降りも余り無い道で今日みたいにのんびり歩く時にはもってこいの道だ。
のんびり歩くと森がいつもと違って見える。葉が風に揺れるたびに陽をキラキラと反射させたり、カラ松の枝が青空に幾何学的な模様を作ったり、ぶなの新葉には薄っすらと細かい毛があるのを発見したり、つまりそんな小さな発見が何となくだけれど良いなって思えてくる。
イカルス星人でもケムール人でもありません。大谷ヶ丸はとにかく虫が多くオチオチ休む事も出来ません。ネットを被って防ぎます

大谷ヶ丸山頂は木々のに囲まれて展望は無いけれど西側の一ヶ所だけは開けていて北岳が見える。
この山頂はとにかく虫がうるさいほど多かった。虫がウルサイと落ち着いて景色を眺めることが出来ないので過剰防衛かな?と思いつつ防虫スプレーを噴射し、更に防虫ネットをかぶった。
山によって虫が多かったり、いなかったりとあの差は何だろう?雲取山は多いのに、丹沢にはほとんどいなかったり。この山は虫が多く、しっかり対策して来て助かったと思った。
隣で食事をしている男性の頭の周りを数十匹の虫がグワングワンと乱舞している。こりゃタマンナイだろうなー!防虫ネット越しに思った。

大谷ヶ丸から米背負峠へ降るとあれほどウルサかった虫がぐんと少なくなった。立ち止まっているとやっぱりウルサイけれど歩いている人に集ろうって、そこまで根性のある虫も少ないみたいだ。
このルートはあまり人気が無く歩く人もいないのでは?と思っていたがパラパラと数人のハイカーを見かける。
マウンテンバイクの二人組みも居た。彼らは頭から爪先までマウンテンバイクファッション?でビシッと決まっていたので、けっ、カッコワリー!防虫ネットを慌てて頭から取ってしまった。

滝子山から大菩薩嶺まで歩くのは今回で3度目だ。一度目は十数年前で、この時の記憶はほとんど無い。メモと写真が数枚残っているので、歩いたという事実を確認できるだけ。二度目は2000年の10月、この時は曇り空であまり良い印象は残していない。
で、これで三度目になるけど、今日ハマイバ丸までの草原を歩いていたら、「こんな所だったのか!知らなかった!」とまさに目からウロコ状態になってしまった。金色の草原の中には一本の道、空が青くて、風が吹いて、本当に歌いだしたくなるような開放的な場所だ。
前方のハマイバ丸を見ると笹原だろうか?緑が目に鮮やかだ。まったくやってくれますね!


大谷ヶ丸からハマイバ丸へ向う
写真ではこの場所の良さが伝わらなくて残念!


風がすり抜けて行く
白樺の木の上を雲が流れていく

ハマイバ丸のザレ場は展望が良く休憩している人が多い

ハマイバ丸山頂の下のザレ場に来るとピタッと虫が居なくなった。チャンス!イライラすることも無く落ち着いて食事が出来る!とばかりにオニギリをザックから取り出した。
すぐ近くでは6人のパーティーが食事中だ。僕がセルフタイマーで写真を撮ろうとシャッターを押しドカドカ走って行って振り向くと、その人達の楽しそうな会話がフッと途切れ、こちらを凝視している視線とばったり。こうゆう時ってけっこう恥ずかしい!

ハマイバ丸山頂からの展望は無し。山名を書いた標柱を見ると「破魔射場丸」と書かれてある。破魔を射る場所ってどういう意味だ?何だかオドロオドロしい感じがする。

山頂を過ぎると、またまた草原になって、またまた嬉しくなってしまう。今日の宿営地である湯ノ沢峠へも近いので一層ぶーらり、ぶらりと歩いて行く。振り返ると富士山が見えていて、ぶーらり歩きと富士山との関係も、ますます相乗してただならぬ仲に進展していく。



左上:ハマイバ丸山頂 ここは展望はありません

右上:ハマイバ丸から大蔵高丸までは草原になってます。振り返ると富士山も見えてます。
登り降りもなく平坦で散策にはもってこいの場所ですね

左下:亀の化石?ではありません。ハマイバ丸から白谷丸までにはこういった亀甲状にひび割れた岩が点在しています

右下:新緑には早かったけれど、あっちこっちに春があります
こんなぶらり歩きにはやっぱり春が一番!

歩いていると一羽の小鳥が緑のトンボをくわえて飛んで来た。行き先を目で追っていると登山道の直ぐ脇にある木に開いた穴の中に入っていった。シャッターチャンスだとばかりに穴の前でカメラを構えるが一向に出てこない。しばらく待っていたが人の気配を感じるのか?出てこなかった。
諦めて歩き出すとまた別の鳥が虫をくわえて穴の中に入っていった。
「シジュウカラ(四十雀)ですね!」後ろを歩いていた夫婦らしい男女に声を掛けられた。この夫婦は地元の人らしく時間を見つけてはちょくちょく、ここへ散策に来るということだった。それにしてもあんな小さな鳥を一目、それもほんの一瞬見ただけで種類が分かってしまうなんてただ者じゃないぞ!って注視していたら登山道脇の木や草花をそれは丹念に観察しては顔を見合わせてうなずき合っていた。
かなり自然に詳しそうだ。それに本当ににこやかで仲の良さそうな夫婦だった。
「これから夏にかけて、もっと花が増えるからまた来たら良いよ!特に6月始めは良いよ!」ただでさえ、この道は良いな!と思っていただけにこの言葉にはかなり心が揺り動かされた。

絶滅危惧種のオキナグサは目立たない地味な花でした。一面に揺れているので花を踏まないように気をつけて写真を撮ります。チャンと撮れていて安心しました!

「そうだ、今が見頃の花があるから見せてあげるよ!」おとうさんの手招きに導かれてついて行った。ただ僕は花に関して詳しくはなく、小さな花を見ただけで感動するような男ではないのでちょっと戸惑った。
「ここだ、ここだ!」おとうさんに連れて行かれた場所に花らしいものは見当たらない。しゃがんで、しゃがんで!と言うので座ってみると、そこには赤い花が、それも地面一面に咲いていた。すぼめた花びらの外側は土色をしているのでパッと見た目は分からなかったが、こうして視線を低くすると花びら内側の赤が地面の上で鮮やかに踊りだした。「この花は珍しい花で、ここと八ヶ岳でみられるだけ。実は私達も今回はこの花を見に来たんですよ!

実は、僕は花が多く咲いているとやたら感動してしまう男だ。霧ヶ峰のニッコウキスゲ、八ヶ岳のコマクサなどを見た時もウヒャーッと歓喜してしまったけれど、今回のウヒャーッの連発も負けてはいない。
この花はオキナグサ(翁草)と言う花で以前はあっちこっちの山で見られたらしいけれど乱獲の影響で今では絶滅危惧種になってしまったらしい。
この夫婦とは大蔵高丸山頂でお別れした。沢山の話を聞かせてもらったり、珍しい花を見せてもらったり、楽しい一時だった。


大蔵高丸で今日の山行は終わりです。ただただのんびり。湯ノ沢峠から往復する人も多い


大蔵高丸からの湯ノ沢峠
草原が見えて、あそこまで下って行けば今日が終わるって!


大蔵高丸は展望が良く富士山も見えます。写真ではこんなもんだけど実際はもっと!

大蔵高丸で富士山を眺めながらゆっくりと休憩すると湯ノ沢峠へ降りて行く。
今日、宿泊予定の避難小屋に行ってみると小屋に男性二人の姿が見えた。「やった!今日は人が少ない」前回来た時は人が多くて小屋に泊まることが出来なかったので今回こそは!と思って来たんだけど今日は大丈夫そうだ。
小屋は8畳+3畳といった大きさで、整頓されきれいに使われていた。布団も置いてある。
がしかし喜んで小屋の中を見ると、床の上にザックがズラリと並んでいた。

湯ノ沢峠の草原をゆく 夏には沢山の花が咲くそうです。植物保護の為ロープが張られています

この男性二人は、それぞれ単独行で大菩薩嶺から縦走して来たらしい。ここに泊まる予定で来たらしいけれど既に置いてあるザックの数が8つでこの二人と僕を加えると11人になる。更に後ろから(大菩薩の方から)2人が来ているらしいから今夜ここに泊まるのは13人の予想だ。
それくらいの人数だったら余裕で泊まれそうな感じがするが、二人はこの小屋の定員は8人だから13人でもかなり窮屈だと言った。だから泊まるのは諦めて下山しようかとも思うが、ただバスは終わっているのでここから甲斐大和駅まで歩かなくてはいけない。それだと歩くのも大変だし、かといって窮屈な小屋は嫌だし、とかなり迷っている様子だった。

小屋の下、1分の所にある水場でポリタンを満たして戻って見ると、二つのザックがヒョコヒョコと並んで林道を歩いて行くのが見えた。今から数時間歩くのも大変だな!とその後姿を見送った。
いかんいかん!ここは他人の心配より、まずは自分の寝場所を確保だ。

縦走路から少し離れたところにある白谷丸 
写真をよーく見るとど真ん中にブルーのテントが見える。つまりこんな大胆な場所に張ってしまったのだ!

小屋の上にある湯ノ沢峠まで戻って見ると既にテントが2つ設営してあってここも満員状態。
さてどうしようか?と考えてここから一時間ほど先にある白谷丸まで行く事にした。そこは前回来た時に目を付けておいた場所で、ザレ場になっているのでテントを張っても自然への影響が少なそうに思えた。

湯ノ沢峠から黒岳の方へ一時間ほど登って行くと登山道の横にポッカリと草原が現れ、その草原の真ん中が小高いザレ場になっている。
草原の中の小道を降りて行ってザックを降ろす。ここは草原なのでグルリと展望が良く、特に目の前の富士山の姿にはため息が出る。そして何より開放的で気持ちが良い場所。

富士山を眺めながらグビグビとウイスキーをのどに流し込む。その途端に体の中で跳ね回っていた緊張が一斉に大人しくなる。歩き終えた後のこの一杯はタマンナイ!
今回は楽な行程なのでお酒とツマミは売るほど持って来ている。
ウイスキーを飲みながらケルンを積んだりして一時間過ごした。
4時になったのでもう誰も来ないだろー!とフラフラになりながら山頂のド真中にテントを設営した。テントの中で文庫本を読んでいたけれど、どうにも外の景色が気になってしまい、登山道に戻って少し先まで歩いたり、戻ったり、ぶらぶらした。


白谷丸へ着くとさっそくウイスキーのボトルを取り出しグビグビとやるわけだ!


白谷丸の真ん中にテントを張ったのは少しでも自然に影響が無いように!

霞んでしまった空に夕日が沈んでゆく
何だか夢見たいな光景でした!

5時になると、パスタを食べ、ワインを飲みながら、残照に消えようとしている山々を眺めた。夕焼けを期待していたけど段々とガスってきて、灰色の空の中に富士山の姿を消してしまった。

暗くなって空を見上げると星は見えなかったけど甲府市街の夜景がボンヤリと輝いていた。
数時間のショウが終わり、テントに入ってラジオを点ける。
もう少しウイスキーを飲もうと思ったけれど寝転がってみると砂地の床はテンピュールみたいで寝心地が良く、その隙を僕に与えなかった。
数時間の至福の時はこうして終演していった。

二日目へ続く
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