滝子山、湯ノ沢峠、大菩薩嶺 (小金沢連嶺)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:ケーブルカー)

◆ 2018年11月1日
笹子駅 (7:15) --- 道証地蔵 (8:25) --- 滝子山 (10:40/10:55) --- 大谷ヶ丸 (12:05/12:10)
--- ハマイバ丸 (13:20/13/30) --- 大蔵高丸 (14:00/14/10) --- 湯ノ沢峠 (14:40/15:00)
--- 白谷丸 (15:40)
山日記 (ジリジリの朝 編)

一泊で紅葉を楽しめる山を考えた。
上高地の霞沢岳へ行こうと思ったけれど夏に北アルプスへ行った時に夜行バスで全然眠れなかったことが思い出されて行くのが億劫になった。
それに今回は確認したい装備が色々とあったので自宅からも近く気楽に歩ける小金沢連嶺に行くことにした。

笹子駅で降りて滝子山を目指す。
甲州街道を歩き、吉久保から住宅地へと入って行く。すれ違う住民の人がきちんと挨拶をしてくれるのが気持ち良い。
中央自動車道を越えると目の前に滝子山がデーンと見えた。山全体が黄色の濃淡で覆われているので一気にテンションが上がる。

昨年来た時に沢の紅葉が印象的だったので今回は寂ショウ尾根ではなくスミ沢沿いの登山道を登って行くことにした。
歩き始めは紅葉した木々は見られなかったけれど曲り沢峠への分岐を過ぎた辺りから黄色く紅葉した木々が目立つようになった。

登山道は山の斜面を横切る様になっていて崩れやすく滑りやすい箇所もあった。途中で山側の道と沢沿いの道(難路)に分かれるけれど沢の紅葉を見たいので沢沿いの道を登って行った(ただ紅葉した木々は山側の道の方が多いように見えた)。
アチコチで水しぶきの音がする。見下ろすと紅葉が沢を包み込むように覆っている。
途中でナメ沢が連続している場所があったので登山道から沢まで5mほど降りてみた。落ち葉の中を流れる水を見ていると心が落ち着く。ただまだ時間が早いので沢に陽の光は差し込まずに日陰になっているので紅葉も鮮やかには見えないのは残念だ。


アッチコッチに小さな滝がいっぱい!沢と紅葉が見たくて沢沿いの難路を選択して良かった。


ナメ沢が連続している場所があった。非常に残念なのは時間が早くて日陰になっていたこと。

写真を撮ろうとザックからカメラを取り出す。
何と一回シャッターを押しただけで「バッテリーを交換してください」と標示された。
ネットで購入した無名メーカーのバッテリーは数回使用しただけで充電できなくなってしまった。それで新たにROWA-JAPAN社のバッテリーを購入した。こちらはまだ普通に充電出来るけれど気温が低くなると途端に使えなくなった。
やっぱりバッテリーは価格が高いけれど純正品が一番だ。

カメラを温めるためにズボンのポケットに入れて歩くことにした。
邪魔で歩きにくいしその重さでズボンが下がってしまうけれど仕方が無い。

唐松の林を抜けると道は防火帯の中を歩くようになった。
一気に視界が開けて振り返ると南アルプスや八ヶ岳を遠くに望むことが出来た。
大谷ヶ丸への分岐にザックを置き、カメラだけを持って滝子山へ向かった。


防火帯に出て振り返るとカラ松林が青空に美しい。


ブナの紅葉の中を登って行く。黄色の透過光がいくつもの影を作っている。


上の写真の場所を上から撮影。今回歩いたコースで一番紅葉が集中していた。


防火帯から見た大谷ヶ丸は山肌一面が唐松に覆われているように見えた。

滝子山山頂には誰も居なかった。富士山好展望の人気の山なのでこんなことは本当に珍しい。
そして目の前には富士山がドーンと待ち構えていた。ここまでの登山道は沢沿いなので富士山はおろか周りの山も一切見えない。そのためか滝子山山頂に立った時に富士山が目の前に見えると宝くじにでも当たったように嬉しい(当たったことないけど)。
鬱積した気持ちが一気に開放されたようで今日はもうこれで十分満足したような、これで一日終わってしまったような気分になった。
山頂からの眺望は良く、富士山、御坂山塊、小金沢連嶺、南アルプス、八ヶ岳を一望することが出来た。

この夏に北アルプスに登った時に三脚を倒してしまいカメラのレンズ部分が壊れてしまった。
今日もそのカメラの調子が悪く電源をON/OFFする度にレンズエラーで強制終了してしまう。
レンズが出る際にどこかに負荷があるらしく寒さでバッテリーが弱くなるとレンズエラーを起こしやすくなる。
カメラの電源をONする度にフリーズしてしまうので一枚の写真を撮るのにものすごく時間が掛かった。そのせいで予定より30分も遅れてしまっている。せっかくのこの眺望なのにあまりノンビリも出来ないのだ。


滝子山に着きました。晴れているか心配だったけれど富士山が見えて良かった。ただこれで十分満足。


山頂から富士山は開けていて御坂山塊が一望できる。


山頂を取り囲む木々が年々育って小金沢連嶺の眺望はあまりよくありません。

滝子山から大谷ヶ丸へ向かう道は踏み跡が少なく分かりにくかった。数年前の春に来た時にはそんなことは無かったのできっと落ち葉が道を隠してしまっているのだろう。
道が大谷ヶ丸へ向かって一本調子に上っているだけなら単に上を目指して登って行けば良いのだけれど途中には広い窪地になっている箇所もあるので方向を判断するのが難しかった。

周りの景色で自分の居る位置を確認しながら登っていると数人のハイカーが降って来た。
皆さん迷い無く歩いている様子なのでもしかしたら僕が単に心配性なだけなのでは?と思い振り返るとやっぱりそこに道は無いのだった。


道が不明瞭だったので大谷ヶ丸に着いた時はホッと安心しました。


大谷ヶ丸山頂は木々に囲まれてガッカリしますが良く見ると一か所だけ南アルプスが見える箇所があります。

大谷ヶ丸から先は道は明瞭で赤テープもいっぱいあるので迷うことは無かった。ただ逆に滝子山から大谷ヶ丸の間だけ道が不明瞭で赤テープも全く無いのか不思議に思う。

ハマイバ丸へ向かう途中からは草原が多くなりちょっとした山の散歩道の様な感じだ。
今から20年以上も前、初めてここを訪れた時は雨の中を安物のレインウェアで歩いた。雨と汗でぐっしょりと濡れて不快だったけどなんだかそれも懐かしい思い出だ。
空は抜ける様な青い、やっぱり山登りは晴れに限るなぁー!


大谷ヶ丸を過ぎると草原が多くなる。草紅葉の向こう側にハマイバ丸。


大谷ヶ丸の方を振り返ると今歩いて来た草原はこんな感じで散歩道の様だ。

今回の山行は確認したい装備がいくつかあった。
前回の北アルプスで登山靴のソールが加水分解して剥がれてしまったのでモンベルのツオロミーブーツを新たに購入した。
今回が馴らし山行だったけど甲低の僕の足にも履き心地は良かった。購入時にいろんな靴を履き比べたけれど革靴は靴ひもをきつく締めることが出来ずに甲との間に隙間が出来てしまうのでナイロン製のツオロミーブーツを買った。
ツオロミーブーツは今まで履いていた靴よりも100g以上軽いのも良かった。

ストックは紛失してしまったのでDABADA製を購入。今まで使っていたLEKI製に比べて50gほど軽いので扱いが楽だ。石突きがねじ込み式なので外れにくそうだ。
耐久性についてはもうしばらく使わないと分からないけど特に華奢な感じはしない。
それに何といっても値段がLEKIの半分以下だったのが嬉しい。
良くない点はアンチショックのON/OFF切り替えが出来ない上にスプリングが硬すぎて衝撃を吸収しているような感じがしないことだ。


ハマイバ丸(破魔射場丸)山頂も秋の装い。初めてこの山に登った時はずぶ濡れになった思い出。


ハマイバ丸山頂は富士山側が開けている。手前の三角の山は大谷ヶ丸。

ハマイバ丸から湯ノ沢峠までの草原歩きが今日一番の楽しみだった。富士山を眺めながらの山散歩は気持が良く、これがいつまでも終わらなきゃ良いのになと思う。
草原の中の白樺の白さが青空にくっきりと映え、高原を散歩している気分になった。

ここには春にしか来たことが無いので「湯ノ沢峠のお花畑」でも花を見た事は無く、今日も草紅葉の草原が目の前に広がっていた。
光を浴びて黄金色に輝く道を歩いて行く。切り取った時間の中を歩いて行く。

お花畑を取り囲むように設置されている鹿避けの柵は来る度に広がっているような感じで以前来た時に見た翁草の群生地にも入ることは出来なくなっていた。

大蔵高丸は富士山の眺望が良い山だけどここに来る時間はいつも午後なので決まって富士山は逆光の中で白く霞んで見える。

ここまで来ると湯ノ沢峠はもうすぐそこなので少しゆっくりしたいけどジッとしていると風が冷たくて寒いし、それに忍び寄る夕暮れの雰囲気が先へと急がせてしまう。
早くテントを張って中に入りたい気分だ。


大蔵高丸からの富士山は逆光になっているのでレンズカバーが取れたカメラだとこのようにもろに光が入ってしまう。


大蔵高丸のすぐ先はすすきの原になっていた。雲も良い感じです。

湯ノ沢峠に降る途中でザックのポケットに入れておいた三脚のカバーが無くなっていることに気が付いた。大蔵高丸に置き忘れたか途中でザックのポケットから落ちたのだろう。捜しに引き返そうと思ったけれどここで時間のロスは痛いし体力の消耗もきつい、仕方なく諦めることにした。

湯ノ沢峠避難小屋から2分降った場所に水場があり箸ほどの太さの水がパイプから出ていた。この水場は水量は細いけれど涸れたのを見たことが無い。

せっかく避難小屋があるのだからここに泊れば良いのに・・・僕は避難小屋が苦手なのだ。
夜、灯りの届かない部屋の隅っこに何かが潜んでいるような気がする。
寝ている時に扉や窓がガタガタと音を立てるのは風のせいだろうか?
床がミシミシと音を立てるのはただの気温変化のせいだろうか?
つまり臆病者、小心者というわけなのだ。

水場で2.5Lの水を入れたプラティパスをザックに入れると白谷丸へ向かった。
白谷丸への登りは急だけどこれが今日最後の登りだと思うと気が楽だった。


大蔵高丸から湯ノ沢峠へ向かう道も草原になっている。正面のピークの向こうに白谷丸がある。


湯ノ沢峠のお花畑は中に入らないようにロープで囲まれている。いよいよラストスパートで登って行く。

視界が開けて目の前に草原が広がった。今夜の宿泊地、白谷丸へ着いた。
草原の中を小高い山頂を目指して歩いていると絵にかいたような立派な角を持った牡鹿が草原の中で悠然と草を食べている姿に遭遇した。その距離わずか10mの近さ。
写真だ!慌ててポケットからカメラを取り出して電源ON!・・・途端にレンズエラーで強制終了。
もぉーふざけんな!このカメラ捨てよう!とこの時激しく思った。

白谷丸は草原になっている開放的な場所だ。ただ草原の上にテントを張ると寝心地は良いだろうが植生にインパクトを与えてしまうので花崗岩の砂礫上にテントを張ることにした。
(ことわっておくけど僕は山に来ると便秘になってしまうのでウン○はしない)。

テントを設営し終わるとご褒美ビールの時間だ。
少し寒かったけれどやっぱりビールは旨かった。
今朝、ザックのパッキングをしている時に雨蓋のバックルを踏んで割ってしまった。それで急遽、ザックをグレゴリー70Lからモンベル60Lに替えたのだがその時に帽子とウォークマンを入れ忘れてしまった。
そんなゴタゴタもあり予定していた始発の電車には間に合わないかも?と焦ったけれど考えたら一つ電車を遅らせれば済むことないのでやっぱり近場の山は楽だなと思った。
今日は朝からザックのトラブルや途中でのカメラの故障もあったけれどこうしてビールが旨いと全てOKに思えた。


白谷丸の山頂でテントの「ポツンと一軒家」。なるべく自然に優しいように配慮したつもりなんです。

天気予報では午後3時から曇りとなっていたがその予報通り3時を過ぎると空に雲が広がり富士山も見えなくなった。
いつもだったらお酒を飲みながらテントの外で景色を眺めたいところだけど曇っていて肌寒いのでテントの中で文庫本「ある閉ざされた雪の山荘で」(東野圭吾)を読むことにした。

それから確認したい装備がもう一つあった。
冬山用シュラフとして使っていたモンベル・ダウンハガー#1を断捨離してしまったので今回は夏用のダウンハガー#3と以前使っていたイスカの化繊シュラフの二つを持って来た。
2枚重ねて使用することで秋の寒さに耐えられるかを確かめるのだ。

イスカの化繊シュラフはモンベルの耐寒レベルだと#5位なので2枚重ねても#1ほどの暖かさは無かった。
それに冬用のシュラフは頭からすっぽりと被って使用することが前提なので頭周りもしっかり防寒されているけれど比べて夏用はどうしても頭部が貧弱なのは仕方がない。

夜8時、テントの外を見ると周り一面白くガスってしまって何も見えなかった。
ビール1本、ワイン1本で丁度良いほろ酔い気分だ。こんな時はウォークマンで好きな曲を聴きながら眠りたかったけど忘れてしまったのでポケットラジオを聴きながらシュラフに潜り込んだ。

ウトウトした途端にテントの直ぐ近くで「キューン!」と鹿が鳴いた。
心臓が止まるかと思った。
僕は鹿に訊きたい ・・・ 何しに来てんだよォ!

夜中に暑くて目が覚めた。着ていたダウンジャケットを脱いだ。
2枚重ねのシュラフで寒さは感じない。
春、秋のキャンプはこれで行けそうだ、ブフフッ!

ドキドキの朝 編へ 続く
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