大菩薩嶺トレッキング

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2019年11月6日
甲斐大和駅 (8:10) === 上日川峠 (9:10) --- 展望台 (9:40/10:05)
--- 上日川峠 (10:35/10:45) --- 大菩薩峠 (11:30/11:35) --- 石丸峠 (11:50)
--- 天狗棚山 (12:00/12:10) --- 狼平 (12:20/12:30) --- 石丸峠 (12:50)
--- 小屋平 (13:20) --- 大菩薩湖 (13:50/14:11) === 甲斐大和駅 (15:00)
山日記

昨年、大菩薩嶺に登った時に気になったことがあった。
1.上日川峠から甲斐大和駅へ向かうバスからの紅葉。
2.上日川峠の展望台。
3.どこからも大菩薩嶺が見えない。
今回の山行はこれら3点を確認することが目的なので山登りは二の次になってしまうのは仕方ない。

甲斐大和駅から上日川峠へ向かうバスは平日にかかわらず満員で増発便が出るほどだった。
先日の台風19号の影響で途中の車道の路肩が崩壊している箇所がありバスを降りて歩かなければいけなかった。

困ったのはバスの運行が今日は平日ダイヤで便数が少ないことだ。
最初の計画ではまず大菩薩湖で降りて上日川ダムを散策し、次のバスで上日川峠へ行こうと思っていたけれど次のバスが無いことが分かったのでまずは上日川峠まで行くことにした。

上日川峠にはすでに多くの車が停まっていた。
到着遅れのバスを降りた人は次々と大菩薩嶺への道へと進んで行く。
展望台へと向かったのは僕一人だけだった。

事前にネットで展望台のことを調べてみたけれど、ちょこっと富士山が見えるくらいの情報、画像しか出て来なくて、こうして一人、展望台に向かっていると「もしかしたら展望台へ行くのは失敗だったのでは?さっさと大菩薩嶺へ登ったほうが正解だったのでは?」と思える。

突然、目の前に木道が、木道というより立派な廊下だな、これは。
木道は燃えるような紅葉の中をズンズンと突き進んでいる。
紅葉を透かした光が足元をオレンジ色に照らし視界全体がキラキラとした優しい光に包まれている感じがして、何だか良い感じの場所。


上日川峠から展望台へ突入する。朝の陽だまりは秋の香りに包まれていた。


展望台までの木道は自然観察路にもなっているのでアッチコッチに自然が満載している。

木道を囲む木々はブナやナラなどの広葉樹が多く、それらの木々が一斉に黄色に紅葉しているので間違って森に迷い込んでしまった感じがする。
もしかしたらここは紅葉の穴場?何で誰もいないの?
山を巻くように付けられた木道は平坦で歩き易く、靴が木床を鳴らす音が心地良かった。

紅葉に閉ざされた空間は自然観測路というより、物思いに散策する「哲学の道」みたいだ。

林相がカラ松に変わり、紅葉したカラ松の間から大菩薩湖が少しだけ見えた。
林の中に湖まで降りれそうな道が薄っすらとあるので行ってみようかなとも思ったけれど、もし湖まで行けなくて引き返すことになると時間ロスになってしまうので止めた。

カラ松林の中にぽっかりと青空が広がっていた。展望台は青空の小さな山頂だった。
ネットで見たように富士山の姿がそこにあった。ただネットで見た画像よりも富士山はハッキリ見えた。
秋になって周りの木々の葉が落ちてしまったからかもしれない。


色付いた散策路はまるで水彩画、影さえも染まってしまう。秋を追いかけるように進んでいく。


展望台からシッカリ見えていた富士山。カラ松の紅葉との組み合わせが絶品なのである。

カラ松とその向こうに見える山も一面紅葉していて、その紅葉に支えられようように佇むそんな富士山の姿は初めて見る構図だった。
振り向くと木々の間にちょっとだけ大菩薩嶺が見えた。もしかしたらと期待していたけれどこの展望台からも大菩薩嶺に姿をきっちり捉えることは出来なかった。

展望台は周りの木々に遮られて風はなく小春日和の暖かな日差しの中、ベンチで遅い朝食を食べた。
風に舞う落ち葉のサラサラと乾いた音だけがしていた。


夏の日差しが過ぎると影も薄くなっていくはずなのに廻る季節の彩りだけが」切り抜かれたようにシッカリ残っている。

上日川峠へ戻って今日の予定を考える。
当初の予定では雷岩から石丸峠まで歩くつもりだったけれどそれは時間的に厳しそうに思えた。それでショートカットして大菩薩峠から石丸峠までを歩く事にした。
雷岩から大菩薩峠までの眺望は捨てがたいけれど上日川峠から大菩薩峠までの道も石丸峠から上日川峠への道も歩いた事が無いのでこの機会に歩く事も良いだろう。

福ちゃん荘を通り過ぎても道は車道のままだったので一向に山登りをしている気分がしない。
ザックからウォークマンを取り出して80年頃の山下達郎の曲を聴きながら歩いた。

木々の間に見えるカラ松尾根の紅葉が素晴らしい。去年の秋、カラ松尾根を歩いた時も確かに紅葉していたけれど葉は既に落ちてしまっていたので紅葉の中を歩いている感じは希薄だった。
今日、カラ松尾根を歩いていたら紅葉に包まれていたのか?と歯痒くなってしまうけれどそれはまたの機会に期待するしかない。

大菩薩嶺で不思議に思うこと、それは山全体の姿を見ることが難しいこと。
雷岩から大菩薩峠までは笹原と岩の尾根になっているので眺望が良いのに、逆に麓からこの尾根を眺める事は出来ないのだ。
大菩薩峠までの途中でどこか尾根が見える場所があるのでは?と期待していたけれどやっぱりどこからも見えなかった(富士山は良く見えるのに)。

大菩薩峠は山頂では無いけれど標柱があるのでとりあえず大菩薩嶺に登ったことにしよう。
「山の神様、今日はここまでで許してください」大菩薩嶺の上に広がる空が今日は遠いのだ。


こんなに晴れている大菩薩峠は初めてだ。この写真では分からないけれど順番待ちの人が周りに立っていた。


介山荘は初めて大菩薩嶺に登った時に泊まった宿なので來る度にその時の記憶が蘇る。

峠から熊沢山への道は急だけど短いので疲れることもなくすぐに石丸峠を見下ろすピークへ出た。
石丸峠からこのまま降ってしまってはあまりに勿体ないので狼平まで行ってみる。

天狗棚山は地図に表記もない目立たない山だけど大菩薩湖の眺望が良い山頂。
大菩薩湖はしっかりと紅葉した木々に包まれているのが分かる。去年よりも紅葉しているように見えるのでこれは期待できるのではと胸が膨らむ。
石丸峠からここまで来る人は少ないみたいだ。モグモグタイムをしている間にやって来た人が数人いたけれど皆さん小金沢山へ向かって行く人ばかりだった。

誰もいない狼平は笹の葉をゆらす風の通り道。
笹原の向こうに熊沢山を臨むこの場所に来るたびに「ここでのんびりしたい」と思わせる場所だ。テント張ったらマズいかな?テントを張りたい場所だけど大菩薩嶺はアッチコッチに「テント禁止」の立札があるので堂々と違反する気持ちは起きない。(賽の河原にある避難小屋も宿泊禁止なのは厳し過ぎるじゃないの?)


石丸峠は大菩薩嶺で一番の旅愁漂う場所だと思う。ここで一息入れる旅人も多かったに違いない。


天狗棚山で一休み。今降って来たばかりの熊沢山の笹原を臨みながらモグモグタイム。


天狗棚山から見る大菩薩湖は紅葉のど真ん中。後で行きます、昨年よりも紅葉しているようなので期待大。


狼平のポツンと一本木。ただ通り過ぎるだけでは勿体ない場所なのでテント・・・はダメだろうな。

石丸峠で考えた。
14:00のバスで大菩薩湖へ行き、散策して15:45のバスで帰る、と考えたけどはたして1時間45分の間、上日川ダムでやることってあるだろうか?
木屋平から上日川ダムまで歩いて30分くらいだと思う。
だったらとりあえず歩いてみっか!紅葉の道も歩きたいしね。

石丸峠から降るのは初めてだ。カラ松林の間から大菩薩湖が見え隠れする。
一旦、林道に出て再び登山道を下っていく。何てこった!大菩薩湖が段々と遠くなって行くではないか。
さっき通った林道から大菩薩湖まで行けそうな感じはしたけれどここまで来て一か八かの行動は出来ない。


石丸峠から大菩薩湖に向かいます。はたしてそこには何が待っているのか。


石丸峠から降って行くと大菩薩湖が近くなって来た。初めて歩く道はこんな道だったのだと思う。


石丸峠から降って行くと紅葉の大菩薩湖がすぐそこに。雷岩から見た時、あんなに遠かったのに。

小屋平(石丸峠入口)から車道を歩いて大菩薩湖へ向かった。
いよいよ紅葉の大菩薩嶺を確かめるチャンスが来たのだ。
車道から見上げる小金沢山の紅葉は波のように幾重にも重なって青空に溶け込んでいた。
紅葉した葉一枚一枚がキッチリと光を受け止め錦の色彩として反射している。

何台もの車が走り去っていく。
早送りの紅葉鑑賞も良いけど一人ぐらい一時停止で鑑賞しても良いだろう。

大菩薩湖は意外と遠い。石丸峠からはすぐそこに見えたのに。
小屋平から大菩薩湖まで確かに降ってはいるものの途中には登り降りする箇所も多く、その度に背中にじんわりと汗がにじんだ。
思わずウォークマンで「Eye Of The Tiger」(ロッキー3のテーマ曲」を流してみたけれど力が蘇るというよりこんな選曲をしている自分に笑ってしまった。

途中で一台の車が停まって「乗りませんか?」と声をかけてくれる方がいたけれど、そこはもう湖まであと300mほどの場所だったので遠慮させてもらった。
親切な人に感謝の気持ちでいっぱいだったけれど、内心「もっと早く乗っけてくれたらなぁ」と思ってしまう。


大菩薩湖が見えてきた!木屋平からの車道は紅葉のトンネルだった。時折、彩色が手のひらの上で舞った。

木木の間に大菩薩湖が見えた。
大菩薩の稜線のどこからも大菩薩湖が見えていた。逆に湖からは大菩薩が見えるはずなのだ。
山の神様、どうか上日川ダムから大菩薩嶺が見えますように!

許可なしで入れるのだろうか?と心配していた上日川ダムは一般公開されていて柵も無くすんなりと突入することが出来た。

目の前に湖面越しの大菩薩嶺の姿が広がった。
ここから見る大菩薩嶺は湖に浮かんでいる壮大な島ように見える。
山を包み込むようなカラ松が素晴らしく太陽の光を浴びて黄金色に輝いている。
大菩薩嶺を見る!やっと念願成就する事が出来た。

ダムって広いから?それとも湖だから?意外に癒しの空間だったのだ。
陽の光がサンサンと降り注ぐ下で水辺に揺れる大菩薩を眺めていると・・・
・・・それは、体も心もユルユル、リラクゼーション効果大なのだ。

上日川ダムは紅葉の穴場?大菩薩嶺の絶景ポイントなのに誰もいない。
ダムからの大菩薩嶺の姿やダム周辺の紅葉を見たいと思うのはきっと僕だけなのだろう。
価値観は人によって違うからそれもしょうがない。
小屋平から30分歩くのは大変だけど、この景色、今度は新緑の時期に見てやろうと思う。

もう少しゆっくりしたかったけれどバスの時間がないので慌ただしく上日川ダムを後にする。
振り返ってみるとやたら空が広いなぁー、ちっくしょぉー!


木屋平から登って降って30分、ようやく上日川ダムに着いた。


期待していた通り上日川ダムからは紅葉した大菩薩嶺が一望出来た。


カラ松林の奥に雷岩、神部岩。カラ松林のピークは今朝訪れた展望台なのかもしれない。


左の妙見ノ頭、親不知ノ頭を下って大菩薩峠。そして熊沢山を右に下って石丸峠。


上日川ダムからの富士山。逆光と高圧鉄塔が邪魔をしなければ紅葉と富士山の構図が素晴らしかったのに。


誰もいない上日川ダムから眺める小金沢連山もシッカリ紅葉している。稜線を歩くよりここからの方が分かる。

バスに乗った瞬間、乗客全員の視線が僕に注がれる。
補助席を倒してどっかと座り込んだ。
右隣のオジサンは既に熟睡していて(上日川峠からわずか10分しかたっていないのに)僕の肩に頬寄せしてくるので困った。
それでもオジサンの頭越しに見える紅葉は素晴らしい。

紅葉した光のイメージが柔らかい点となって眠っている乗客の顔を照らしている。
もう一つ後のバスにしたら雷岩から石丸峠まで歩く事が出来たのでは?とちょっと後悔する.。

錦秋の淡い波間のような道をたくさんの光に包まれながら歩いた一日だった。
大菩薩嶺に立つことは無かったけれどこんな山登りがたまにあっても良いだろう。

フロントガラスの横を次々と紅葉が駆けていく。
次は新緑の頃に再訪だな!と思った。

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