経ヶ岳、仏果山、高取山、宮ヶ瀬ダム

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2017年11月25日
本厚木駅 (6:50) === 半僧坊前 (7:17) --- 経ヶ岳 (8:55/9:10) --- 半原越 (9:30) --- 土山峠分岐 (9:50) --- 革籠石山 (10:05/10:10) --- 仏果山 (10:45/11:15) --- 高取山 (11:45/11:55) --- 宮ヶ瀬ダム (12:45/13:10) --- 愛川大橋 (13:45/14:21) === 本厚木駅 (15:00)
山日記

仏果山はたまにヤマレコに出てくるので名前だけは以前から知っていた。
丹沢の北東の位置にあるこの山は標高747mと低いのでわざわざ登りに行こうという気は起きなかった。

ところがヤマレコの山行記録を見ていると11月/中頃、紅葉の山としてアップされるので気になってしまった。
低山ゆえに他の山に比べて紅葉する時期が遅い。南関東では紅葉を楽しめる最後の山なのではと思い行ってみることにした。


バスが住宅地の中を走って行くといきなり左側にポコっとした小さな山が現れた。
何でこんな住宅地のそばにあるのだという感じで山は鎮座している。
地図を見ると華厳山、高取山とある。
ヤマレコを見ると仏果山の紅葉レポは11月15〜20日間が多いので来るのが一週間遅いと思たけれど車窓からみる山はまだ秋色を残している。紅葉にギリギリ間に合ったかもしれない。

半僧坊前でバスを降りる。
バスには山登り姿の人が数人乗っていたけれどここでバスを降りたのは僕一人だけだった。

道を少し戻った所から山に入って行って行く。
まず驚いたのは道のアチコチにヤマビル注意の案内板があることだ。
中にはヤマビルファイター(忌避スプレー)が置いてある箇所もあってどんだけヤマビルがいる山なのかと不安になってしまう。
ただヤマビルの生息期間は4月〜10月と言われているので大丈夫だとは思うけれど。

道は広く、以前は林道だったと思われるがそこに土砂が流入して来て道が荒れてしまったようだ。
周りを木々に囲まれて太陽の光は全く届かない。地面もジメッとしていていかにもヤマビルが居そうで嫌な感じだ。

林道は堰堤まで続き、その先からは山道らしくなった。
ベンチのある良く整備された道を登って行くと木々の間に市街地が白く輝いて見えた。
手をかざすと遠くに筑波山が見えた。ヒョロリと突っ立ているのはスカイツリーだ。
遠くから坂道の登るバスのエンジン音がかすかに聞こえる。こんな里山の雰囲気も良いなと思う。

カサカサと落ち葉を踏んで登って行くと木々の間に革籠石山がチラチラと見える。
山肌が赤や黄色に彩られていて遅いと思っていた紅葉はまだ残っていた。


経ヶ岳へ登る途中から振り返ると筑波山やスカイツリーが見えた。標高はわずか300mほどだと思う。

華厳山への分岐のすぐ先が経ヶ岳の山頂だった。
山頂にはテーブルとベンチがあって西側が開け丹沢の山々が一望出来た。

今朝、登り始めた時には経ヶ岳は街に近い山という印象が強かったがこうして丹沢を目の前にするといきなり山奥へ入った感じがした。
何度も足を運んだ丹沢だけれど向かって左に大山、右に丹沢山という構図は初めてなので新鮮だった。
富士山は丹沢の山の向こう側に隠れているので見えない。

東京の今朝の最低気温は5℃。バスを降りた時は足下から寒さが這い上がってくるような寒さだったけれど山頂では日が射して小春日和になった。
人気がある山なのに山頂には僕一人だったのでベンチでのんびりと休憩することが出来た。
何だろう、このじんわりと嬉しい感じは?


経ヶ岳には誰も居なかった。


山頂にはベンチがあり、西側だけが開けている。


経ヶ岳山頂からは丹沢が一望出来た。左のピークが大山、右奥のピークが丹沢山。

経ヶ岳から降ってすぐの場所にどでかい岩の経岩があった。
案内板によると弘法大師がこの岩の穴に経文を収めたからこの岩を経岩と言い、それが経ヶ岳の名前の由来になったとのこと。
また武田軍に敗れた北条軍の落武者が経岩から下を見るとトウモロコシ畑が槍を携えた軍勢に見え諦めて相果てたということが書かれていた。
ナゼ弘法大師はこの岩の中に経文を入れたのだろう?それに北条軍の話は確かに悲しい話なんだけど経岩とはあまり関係が無いのでは?と思った。

経ヶ岳から半原越までは平坦な道が続き、日差したっぷりの明るい広葉樹の中を歩きは爽快だった。
標高が低いこともあって山登りというよりも森の散策という趣だった。
これが登り降りが少ない低山の魅力の一つなのだと思う。


経ヶ岳から半原越へ道は明る平坦な散歩道。

半原越で一旦車道に出て再び登山道を登って行く。
ここで今日初めて数人のハイカーに出会った。
中には登山服ではなく普段着の人もいたので挨拶しようかしまいか悩んでしまう。

土山峠分岐から革籠石山へ登る途中で初めてチラリと宮ヶ瀬湖が見えた。
ネットで見たあのターコイズブルーがそこにあった。
暗い山道から見たのでその景色は突然飛び込んだ映画館のスクリーンみたいに鮮やかだ。
やばい!CGでもSFXでも無い天然色乳白色群青色の湖面は宝石みたいに鮮やかなのだ。

革籠石山頂は木々に囲まれて眺望は無かったけれど木々の間から少しだけ宮ヶ瀬湖が見えた。
この先の光景が見たい!期待感一杯になって山頂の記念写真を撮ると直ぐに先へと向かった。


土山峠分岐から革籠石山へ登る木の階段。宮ケ瀬湖が少し見え始めた。それは綺麗なターコイズブルー。

革籠石山から15分、細い稜線上で宮ヶ瀬湖が少し見える場所があった。
ここまでに開けた場所が無かったのでこのスリットの眺望さえも貴重だと思い藪の中に入ったり、稜線から少し降りてみたりと、もっと景色が見える場所を必死に捜して数十枚の写真を撮った。
まーこんなもんだろ!と満足して歩くこと1分、その先に見晴らしの良い露岩があったのには愕然とした。
「果報は寝て待て」と言うがまさしくあの苦労は何だったのか。

すごい!とにかく凄い景色が広がっていた。
丹沢の山々が視野一杯に広がり、その下にはつづれ織りの衣をまとったような紅葉の中に宮ヶ瀬湖がターコイズブルーの水を湛えている。
素晴しい秋の一日がここにあった。
紅葉には遅すぎたと思っていたけれど山も湖畔もまるで光りが降り積もったような黄色に輝いていた。

湖面の色は空の青が移り込んだ(反射した)色だと言われているがなぜ宮ヶ瀬湖の水がターコイズブルーに見えるのか不思議だ。
そう言えば曇りの日に仏果山に登ったヤマレコの記録を見ると湖面の色は黒っぽいのでやっぱり空の色を映しているのかな?とも思うけど例えば相模湖だって富士五湖だって白駒池だってこんな色には見えないからね。

どうでもいいことだけど、ふと宮ヶ瀬湖にターコイズブルーというのがどうもしっくりこないと思った。
これは宮ヶ瀬ブルーか?ぶふっ、これだと宮ヶ瀬ブルースみたいで演歌みたいになってしまうので庶民的にこれはミントアイス色だなと一人思った。

仏果山は低い山にしては意外とやせ尾根の箇所が多く変化に富んだ登山道は歩くのが楽しかった。それに他の山に比べて家族連れのハイカーが多いのも特徴だ。


革籠石山から15分ほど歩くとやっと宮ケ瀬湖が一望できる露岩があった。何でもっと早くこなかったのだろう?。

仏果山山頂には10mほどの高さの展望台があった。
山頂は木々に囲まれて眺望は無いので展望台に上らないと景色は見えないのだ。

秋の空の軽さと小春日和の暖かさが折り重なって目の前に広がる空間を一層、色鮮やかに彩った。
展望台からの丹沢と宮ヶ瀬湖は迷彩色のジオラマの様、宮ヶ瀬湖の塗り絵のような湖面に架かるいくつものアーチ橋はおもちゃのように見える。

都心の市街地はどんよりとした薄茶色の靄に包み込まれて「東京砂漠」みたいだ。
ザワザワした街を山の上から静観している感じだ。
低山ゆえの魅力満載の景色だった。

山頂のテーブルには30人ほどのハイカーがいた。
ガスストーブで山ごはんを作っている人達もいて和やかな雰囲気だった。
展望台の上からハナクソを落として一味追加と考えたけど・・・もちろんそんなことはしません。

展望台下のベンチで休んでいたら2mほど横に「どかっ!」と大きな音をさせ1Lのペットボトルが落ちて来た。
その音に驚いて展望台を見上げるとしきりに謝っている男性の姿があった。
わずか1Lのペットボトルでも落下による衝撃は意外と凄い破壊力だ。小さな子供にでも当たっていたら大怪我になっていただろう。
展望台に登る時は空身が一番だ、自分も気を付けようと思った。


仏果山山頂の展望台。ここ(展望台下のベンチ)で休んでいたらペットボトルが落ちて来てビックリ!


仏果山山頂の展望台からの眺望。真ん中のピークが丹沢山。


紅葉の木々に埋め尽くされた宮ケ瀬湖。


どこを撮っても素晴らしいので展望台の上にずっと居たいけれど狭いので迷惑だろうなと退散。


湖の畔に集落が見える。湖の底に沈まなかったなと思う。

仏果山から高取山まではほとんど高低差が無く、紅葉を楽しみながらのんびり歩いた。
見上げると黄色や赤色に紅葉した葉の重なりが光りの濃淡を幾重にも作っている。
秋の色は鮮やかだけどその色は透けるようだ。

アブラチャンの群生地があって黄色の葉陰の向こうに見える宮ヶ瀬湖の湖面とのコントラストが印象的だ。


高取山へ向かう途中で仏果山を振り返る。開けた場所は無いけれど一面の紅葉が迎えてくれた。

高取山山頂にも展望台があって展望台作りすぎだろっ!とつっこみたくなるけれどこの山頂も展望台からしか宮ヶ瀬湖は眺めることが出来ないのだ。
山頂の東側は小さな草原になっていてこっちからは雄大な都心の街並みが寝転がって大の字状態で見れるのだ。

今朝から無風だったけれどここに来て少し風が出て来た。
年配のお父さん5人が風を避けられる場所を捜して展望台の周りを東奔西走する姿があり、草原では高校生らしい男子がはしゃぎ周り、なんとも賑やかな山頂だな。


高取山も展望台からしか眺望は無い。向かって右側はちょっと草原になっていて市街地が見える。


高取山展望台からも丹沢と宮ケ瀬湖の眺めが良い。逆光なのが勿体ない。


あそこにもここにも!湖にはいくつもの橋がある。


山に来てこんなに麓の画像ばかりで良いのだろうか?良いのである!

高取山からダムに向かって降って行くと紅葉した木々の間に見える宮ケ瀬湖が随分近くなった。
紅葉の黄色、赤色と湖面のミントアイス色の極彩色がサイケ調のデザイン画を思わせた。

サイケ色に向かってさぁー行け!


高取山からダムに向かって降りて行く。紅葉の向こう側にミントアイス色の湖面が広がっている。

高取山から30分ほど降って行くと宮ヶ瀬湖を見下ろすことが出来る迫る開けた場所に出た。
送電線が頭の上を通っているので送電作業のために開かれた場所なのかもしれない。

宮ヶ瀬湖の波の音が聞こえそうだ。
さっきの高取山の喧騒が嘘のように他に誰も居ないのでベンチでのんびりと湖を眺めながら休憩することが出来た。
山の光と影の輪郭が印象的なこの場所、今回のコースで一番輝いていたのだ。


突然視界が開けた。仏果山は人が多かったので何だかノンビリした。


こんなのいいなぁー!と思う景色がここにもあった。随分、宮ケ瀬湖に近づいて来たのに。

送電線広場から15分ほど降って行くと宮ヶ瀬ダムを見下ろす展望台みたいな場所に出た。
いよいよ今回の山歩きも終わりなのだと思う。
まだまだ歩き足りない、見足りない気がして寂しくなる。


すぐそこに宮ケ瀬ダムが見えるのだ。あーあっ、今回の山旅も終わりが近いのだと寂しく思う。


宮ケ瀬ダムは街の近くにあるのに意外と大きい。ここから急坂を一気にダムまで降って行く。

展望台から急な道を一気に降りるとダムの上に出た。
ダムの堤体の上から湖面を見てもやっぱり水の色はミントアイス色だった。

広場ではアルプス音楽隊みたいな人達がクラシックからジャズ、民謡まで演奏していた。
僕は音楽が好きなのでベンチに座って聴きたかったけれど・・・他に誰一人いないのだ。

客の居ない洋服店みたいに入りずらい雰囲気なので前を素通りすることにした。
音楽隊の横に立っているガイドらしい女性が僕をじーっと見ている。
僕は目を合わせないようにして心の中でゴメンナサイ!と叫びながら早足で通り過ぎた。


ダムから見ても宮ケ瀬湖の水はミントアイス色。草津白根山の湯釜みたいに硫黄成分とか溶けているのでは?


ダムの上から中津渓谷を覗き見る。もう少し遅い時間だったら陰が無くて色鮮やかだったろう。

展望所があったので上がってみた。
確かにここからの眺めは良かったんだけど写真を撮ると窓ガラスに反射した室内ばかりが写ってしまってガッカリだ。

ダムには他にも資料館や展示館もあるけれど面倒なので寄らなかった。
エレベーターでダムの下へ降りた。(ダムの下に降りるには他にインクライン(300円)、車道を歩く方法がある)

中津渓谷の紅葉の中を歩いて行くとダムからわずか15分でバス停に着いた。
宮ヶ瀬ダムって本当に街の近くにあるダムだなと思う。


エレベーターでダムの下に降りる。中津川の色もやっぱりミントアイス色。これって本当に空を映しているから?

今回歩いたコースは低山という事もあり拷問のような登り降りする箇所はなかった。
山自体はそれほど個性的ではないけれど眺望は素晴しい。
丹沢と都心を近くに見ることが出来た。特に宮ヶ瀬湖の眺めが何と行っても素晴しい。
歩く度にその表情が変えていくミントアイス色の湖は一見の価値ありなのだ。

のんびりと山歩きを楽しむことが出来る里山コースだった。
こんな良い山だったのか。もっと早く来れば良かったと思う。
山の景色に麓の景色が余白としてしっかり入り込んでいる。
紅葉に一週間遅いと思っていたけれど山頂から麓まで紅葉を楽しむことが出来たのでもしかしたら丁度良い時期に来たのかもしれない。

今度は新緑の時期にぜひ再訪してみたいと・・・だけどヤマビルは怖いしな、悩むところだ。

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