蝶ヶ岳、常念岳 |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆5月5日 ◆5月6日 |
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山日記 僕でも行ける残雪コースは何処か?と考えた。数年前の夏に行った蝶ヶ岳から燕岳までのコースが思い出された。ゴールデンウイークは意外と晴れが長続きしない。蝶ヶ岳から燕岳まで二日間で行こうとすると宿泊は常念小屋となるが到着するのが遅くなりそうだ。小屋に電話してみると「予約は要りません。何時に到着されても夕食は出します」という返事で安心した。 |
蝶ヶ岳山頂 意外とテントが多い 寒くはないのだろうか? |
徳沢園から登り始めると10分もしないうちに残雪が多くなりアイゼンを装着した。登っていると雪が有ったり無かったりと歩きにくい。トレースはしっかり残っているところを見るとかなりの人が登っているに違いない。 長塀山を過ぎ妖精池を過ぎるといきなり雪を被った穂高岳の頂が目に勢いよく飛び込んできた。群青の空に穂高の頂を被う雪が白く輝いている。 |
蝶ヶ岳の頂に立つと穂高岳から槍ヶ岳までの壮大な絶景が目の前に広がり迫ってきた。荘厳な美しさに思わず歓声をあげた。雪の合間に見える黒い岩肌が鋭敏さをもって山の崇高さを一層際立たせているのだ。「うーむ!こんなに見えてはたして良いのだろうか?」と思えるほど丸見えで思わず笑ってしまうのだ。 |
蝶ヶ岳山頂からは大パノラマが広がっている。まさしく槍ケ岳を見る展望台だ |
晴れているのに山頂を渡る風はまだ冷たい、靴底からも雪の冷たさがビシビシと伝わってくる。コンビニ弁当のご飯も寒さで硬くなっているのでアゴが疲れる。ブルブルと震えながら弁当を食べた。 寒いので昼食を食べ終わると直ぐに常念岳に向けて出発した。 |
常念岳から見た蝶ヶ岳 |
蝶ヶ岳では雪の下から地面が露出している箇所も多かったが行く先の常念岳を見てみると真っ白に雪に覆われている。雪山の経験が無い僕は少し心配になった。ところがそんな心配も歩いていたらどこかへ消えてしまった。雪は良く締まって歩き易し、天気は快晴、左手にはパノラマ風景が広がっている。これ以上望むものがあるとすれば水着の美人が冷えたビアジョッキーを持って来て「お疲れ様ぁー」と微笑んでくれたら何も言うこと無いのだが。。。 |
常念岳から見た大天井岳 |
山は一面雪に覆われていて夏に来た時の面影無く、夏とは違う表情を僕に見せてくれる。遠く見える松本市街は春の柔らかな太陽に乱反射して輝いている。こことは別の世界のようだ。 常念岳からは槍ヶ岳が一層近く迫って見える。いくら雪に覆われようと槍の矛先は北アルプスの象徴としての威厳を感じさせるように鋭く天を指している。 東天井岳のトラバース道は雪の白い筋となって大天井岳まで続いている。振り返り見る蝶ヶ岳は樹林が多く優しそうな表情で鎮座していた。 周りに人影は無く360度の展望を独り占め状態で「全国山登りファン1千万人の皆さんごめんなさい」皆さんの分までこの景色を堪能しておきます。 |
常念岳から小屋に向って降りる 足はガクガクに疲れていた |
ここまで浮かれ気分で歩いたから疲れたという気はしなかったが、常念岳から降る時に足の疲労感を感じた。 常念小屋に着き、食事までの時間をロビーで本を読んでいると続々と燕岳からの登山者が到着した。中には僕よりかなり年寄りの爺さん婆さんのパーティーもあった。僕と同室となった二人も昨日は燕山荘に宿泊したそうだ。二人とも単独行でそのうちの一人は昨日の燕山荘で半強制的にホルンの演奏を聴かされたことを怒っていた。 燕岳までの道の様子を尋ねると大天井岳の登りが急だが後は大変な箇所は無いと言う事だった。その日は6畳に3人と悠々寝ることが出来た。 |
東大天井岳付近で雷鳥が足元まで寄ってきた |
翌日は曇り空。今日は時間に余裕が無いので朝食を食べると直ぐに小屋を飛び出した。 ガスの中、今日は誰にも会わないと思っていたら東大天井岳で珍客に会うことが出来た。羽の色の変わりかけた雷鳥だった。人を臆することも無く数羽が直ぐ近くまで寄ってきた。 天気は良くないがサクサクと雪の上を歩くのは気持ち良い。足跡の少ない雪原があるとやたら走り回って足跡を付けたりして楽しんだ。雪に半分埋もれた大天荘を過ぎて大天井岳に到着。昨日とは一変してガスのかかった槍ヶ岳は冬の厳しさを連想させて少し怖いくらいだ。しかしこの後に恐怖が待っていたのだ。 |
大天井岳山頂 この後に恐怖が待っているとも知らないで余裕しゃくしゃくでいるバカ |
頂上で写真撮影して燕岳の方向に道を探した。そこには雪の急斜面が僕を待っていた。「おいおい!勘弁してくれ!」「昨日同室になった人が言っていたのはここだな。しかし大したことはないとは詐欺だ!!!」 雪が無い夏の登山道はたしかジグザグに降りたはずであるがそれが今は直登になっていた。雪の斜面を登る場合、雪崩れを防止する為にジグザグ登りはしないとは聞いていたがここまで急だとやはりおっかない。八ヶ岳で滑落した記憶が脳裏をかすめた。一歩でも滑ったらこの勾配だ止まらずに一気に数百メートルを滑落してしまうだろう。 しかし爺さん婆さんパーティーもここを通ったはずである。僕に行けないことは無い、一歩一歩確実に行こう。 |
燕山荘から見た燕岳 時間がないので行くのはあきらめた |
ザックのショルダーベルトを締めなおして急斜面に突入した。僕はもともと岩登りなどの危ないのは大の苦手である。こうなるともう「何も見えない何も聞こえない」の日光東照宮の猿状態になってしまう。息をするのも忘れるくらい緊張したが道が段々平坦になってくるとやっと一息つくことが出来た。でも、もし人にこの急登のことを訊かれたら言ってやろう「たいしたことなかったよ!」 ここの降りで時間がかかってしまった。燕山荘に到着してみると燕岳までの往復する時間は無かった。休憩して早々に下山開始することにした。 |
合戦尾根は登ってくる人が多い。ほとんどの人は燕山荘で一泊してそのまま下山するようだ。第2ベンチまでは雪があり、ここまでシリセードを楽しんだ。おまけにそのせいで時間も短縮出来たようだ。 中房温泉から僕を含めて6人を乗せたマイクロバスは穂高駅に向った。 登山靴に溶けた雪がしみ込んで来て靴の中はぐっしょりと濡れている。靴下が絞れるほどだった。これじゃ凍傷になりそうだ。これ位の防水が普通だと思ってバスの中で周りの人に尋ねるとどうも浸水しているのは僕の靴だけのようだ。登山靴クリームの塗布の仕方を勉強しよう。凍傷で足の指が無くなる前に。 |
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