旭岳(大雪山)、トムラウシ山
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆8月4日
層雲峡 (6:50) *** 黒岳7合目 (7:15/7:25) --- 黒岳 (8:55/9:15) --- 北鎮岳 (11:05/11:10) --- 間宮岳 (11:55) --- 旭岳 (12:45/12:50) --- 間宮岳 (13:40/13:50) --- 北海岳 (14:30) --- 白雲岳 (15:55/16:05) --- 白雲岳避難小屋 (16:20) テント泊)

◆8月5日
白雲岳避難小屋 (4:50) --- 忠別岳 (8:20/8:40) --- 五色岳 (10:25/10:45) --- 化雲岳(12:05/12:45) --- トムラウシ山 (16:00/16:10) --- 南沼キャンプ指定地 (16:25) (テント泊)

山日記 (旭岳 編)

次はいよいよ大雪山だ!
稚内北防波堤ドームで幕営した翌朝、稚内から宗谷本線で旭川へ向かった。
稚内から旭川まで鈍行で5時間の旅、車窓の外に流れる牧場、牛、草ロール、向日葵畑、景色はどこもちゃんと”北海道”をしている。電車の中で読もうと思っていた文庫本は結局一度もザックから出すことは無く、ずっと風景を眺めながら旭川へ到着した。
最初の予定では稚内→旭川→上川→層雲峡ユースホステルと一気に大雪山の登山口まで行くつもりだったけれど週間天気を見ると明日から一週間はどうも天気が悪い。
それで予定を変更し天気が回復するまで旭川で待機することにした。

旭川のホテルへ入るとまずは五日ぶりの風呂それから洗濯・・・だけど泊まったホテルにはコインランドリーが無かった。それで教えてもらった近くのホテルまで行ったわけなのだけれど”登山用服セット”も”移動用服セット”も両方洗ってしまうので着て行く服が無い。仕方ないのでレインウェアを着て行った(ウェアの下はもちろんスッポンポン)。これは結構恥ずかしかった。
ホテルに戻るとレインウェアから洗ったばかりの”移動用服セット”へ着替えてホテル近くの居酒屋へ行き、お刺身とカニそれにビール3本飲んでホテルに帰った。久しぶりのベットは心地良かった。

翌日、天気は曇り。午前中はホテルでテレビを見ながらボケーッと過ごし、昼食に旭川ラーメンを食べた後はホテル付近を散歩、そして夕食はジンギスカンにビールを飲んでホテルへ帰った。

翌朝、朝から曇り空。テレビの天気予報を見ると当分の間、天気の悪い日が続きそうだ。
今日もホテル泊まりだ!と思ったら急にこんなぐうたらな生活で良いのだろうか?山登りはある程度ストイックであるべきだ!という気持ちが湧き起こった。それにこうして何日も滞在してることにもイライラする。
まだ天気は回復しそうに無いけれどとりあえず山の近くまで行こう!
急いでデジカメのバッテリーを充電すると(充電器は持って来た)ホテルをチェックアウト。本屋で文庫分を数冊、スーパーで食料を買い込むと層雲峡へ向かった。

国設層雲峡野営場は街の中心から少し離れた場所にあった。テントは30張り以上張れそうなほど広い野営場だけれど張ってあったテントの数はたった2つだけだった。管理棟はあるが管理人はいないのでテント場代が只なのはありがたかった(管理人は毎朝、炊事場とトイレを掃除すると帰ってしまう)。
雨の日が続き、この野営場に三日間も滞在することになった。昼間はテントの中で文庫本を読んで過ごし、食事は旭川で買った食糧は山登り用なので手をつけずに(ガスも無駄には出来ないし)歩いて7分ほどのセイコーマートへ弁当を買いに行った。
困ったのはテントの雨漏りだ。最近、雨の中にテントを張ることが無かったのでフライシートの防水には無頓着だった。フライシートのシーム(継ぎ目)からポタポタと水が垂れてテント内を濡らした。昼間はまだ雨漏り箇所に受け皿を置けば何とかなるけれど困ったのは夜寝る時だ。受け皿が邪魔でシュラフを広げられない。どうしようか悩んだあげく試しに日焼け止めクリームをシーム剤代わりにフライシートの縫い目にすり込んでみた。そうしたらピタリと雨漏りしなくなった。
やっぱり日焼け止めクリームは「汗や水に強い」に限る!


8月4日の朝、ようやく雨が上がった。天気予報でも晴れの予報だ。いよいよ大雪山へ登る日がやって来た!
ぐっしょりと濡れたテントをザックに押仕込むと野営場を出発。セイコーマートの休憩所で弁当を食べてロープウェイ駅へ(駅ではガス缶(EPIとプリムス)が売っていたがその他の登山用品はほとんど無い)。

ロープウェイで五合目へ、そこからリフトへ乗り継いで7合目へ到着した。ロープウェイへ乗った時にはガスって何にも見えなかったけれどリフトに乗っている途中で急にガスが取れた。7合目に着いた時には綺麗に晴れ上がり、展望台から眺める山々の姿に「やっぱり山は良いなぁー!と思った。

久しぶりに担いだザックが重い。ザックってこんなに重かったっけ?今までこのザックを背負って山登りしていたことが自分でも信じられないほどだった。登山道はジグザグなので勾配はそれほどでもないけれど階段が多く「階段は強制的に歩幅を決められるので歩きにくい」と初めて思った。7合目までロープウェイとリフトで上がれるから楽々登山だな!と思っていたがそれは大間違いだった。

青息吐息+流汗淋漓の熾烈強烈四字熟語状態で黒岳へ到着。
山頂に立って一気に疲れが吹っ飛んだ!
大雪山はアイヌ語でヌタクカムウシュペ(川の曲がりくねったところの上に立つ山)だが別名カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ばれている。本当にここから見る大雪山は”神々の遊ぶ庭”の名がふさわしいほど綺麗だ。ただ旭岳だけが雲に覆われているのが気になる。


ここからの展望はまさしく”神々が遊ぶ庭”の黒岳山頂。
7合目からデカザックの過酷な登り、良い景色との出会いはそれまでの疲れを一瞬で忘れさせてくれる。
僕のそばに居た10人ほどのパーティーが集合写真を撮ろうと言い出した。皆さんが手にしていたデジカメがガイドさんと思われる人の手に次々と渡されていく、その数8台。ガイドさんも大変だよな、記念写真撮るたびにこんなに何台もシャッター押さなくてはいけないなんて!そう思っていたらパーティーの一人が「ガイドさんも一緒に入って!」それじゃーこの沢山のカメラ、誰がシャッター押すんだろ?パーティーの視線が僕に・・・。

黒岳から黒岳石室へ降って行く。
”こんな景色が見たかった”コトリと心が鳴った!素晴らしい景色にただただニッコリしてしまう。
黒岳石室から雲ノ平を歩いているとハイ松の中からピィッと何かの泣き声がやたらと聞こえてくる。あーっこれがナキウサギなのだなと思った。それにしてもあっちこっちで声が聞こえるのにその姿はハイ松に隠れてしまって全く見えない。北海道で一度くらいその姿を見れるだろうか?

北鎮岳山頂からの御鉢平。風が強くて夏だというのに寒かった。
御鉢平の真ん中にある”有毒温泉”はどれ?名前がスゴイので気なってしょうがない!
御鉢平展望台は白く火口を思わせる御鉢平が一望出来る場所。この辺りから大雪山の風景が緑の山から荒涼とした火山の姿へ変わっていく。

北鎮岳への分岐まで登ると西からの風が強烈だった。風の強さはそれほど気にならないけれど寒くてたまらないので北海道2番目の標高だという北鎮岳は写真を撮るとすぐに降りてしまった。山頂で若い女性がウインドブレイカーを風にバタバタとさせながらも懸命にラーメンを食べている姿に「なにもこんなに風が強い場所で必死に食べなくても・・・」と可笑しくなってしまった。

旭岳を降りながら撮った写真!右が後旭岳、左が熊ノ岳から間宮岳
やっぱ女性にシャッターを頼むと無理なのかな?と思いながら撮った一枚。
旭岳を見ると山頂には雲がかかっている。旭岳は大雪山の最高峰なので多少天気が悪くても登っておかなければいけない。間宮岳にザックを置いて旭岳までピストンすることにした。
間宮岳から緩やかに降って行くと裏旭キャンプ指定地辺りから急勾配へなった。地面も火山礫特有の褐色のザレ地で登りづらい。

それまでの雲が切れて旭岳が少しだけ姿を見せた。西側からひっきりなしに雲が湧いて雲が多くなっていった。


間宮岳山頂は高くもなくただの分岐点だった。ここから北海岳まではなだらかな尾根歩きが続く。

そんな頑張って登った旭岳山頂はガスの中、真っ白で何にも見えない。せめて姿見ノ池くらいは見ておきたかった、ニセ金庫岩も気になる。
とりあえず山頂の標柱での記念撮影だ。風が強くて三脚が立てられないので近くで食事中のお母さんにシャッターをお願いした。
山頂で記念撮影すると展望も無く、他にやることも無いのですぐに降りることにした。降りる途中でさっき撮ってもらった写真を液晶画面で確認すると・・・撮れてない!!!
なんだよぉ!多分シャッターを半押ししただけなんだろう!シャッター音がしないから撮れてないって分りそうなものだけれど・・・
もう一度山頂まで登る元気は無かった。せっかく登った旭岳山頂での写真が一枚も無いのは寂しい!重い足取りで間宮岳へ戻って行った。

北海岳から見た白雲岳。山は意外と見る方向によってその形を変える。白雲岳もここからだと岩が積重した山。


赤岳は実際はもっと赤い色をした個性的な山。時間が無くて行くのを断念したのは本当に悔しい。

間宮岳から北海岳までなだらかな尾根道で歩き易かった。もうこの時には雲が多くなり景色もあまり見えず、風も強く寒いのでどんどん先へ急いだ。

北海平はそれまでの砂礫の地面から草原に変わって歩いていて気持ちが良い道だ。
途中で話をした女性から白雲岳、赤岳、緑岳は景観が良いという話を聞いていたので白雲岳と赤岳へピストンするつもりだったけれど時間が無かったので行くのは白雲岳だけにした。

白雲岳までは大きな岩とハイ松の道、そして山頂の下には火口跡だと思われる草原になっていた。山頂からの展望が良く、特に旭岳の眺望に優れていた。登ったのは夕方で旭岳が逆光になっていたのは残念だ。

白雲岳山頂の下は火口跡と思われる草原が広がっている。午前中に登っていたら旭岳の眺望が絶品だと思う。


白雲岳避難小屋とキャンプ指定地。意外とガラガラだった。水場も近く水量も多かった。

白雲岳キャンプ場、ここは7月下の三連休には避難小屋もテント場も満員になるほどらしいけれどこの日はテント12張り、小屋には15人と空いていた。
自分の性格がせっかちだな!と思うのはこんな時である。テント場代は只なのだけれど協力金として300円払うようになっている(決まりではないが)。テント場代を払ってからテントの設営をすれば良いものをこの時はザックの中で濡れて丸まっているテントや湿ってしまったシュラフやマットを早くザックから出して乾かしたかったのでお金を払うのを後回しにした。
テントを張ってしまうと今度は”水の煮沸”業務に追われてしまい結局払い忘れてしまった(翌朝、テント場を出てから協力金を払っていないことに気が付き、何だかテント場代を誤魔化してしまったようで心苦しい)。

ところで水の煮沸の話である。
北海道の幕営で面倒なのが水の煮沸だ。エキノコックス病はキタキツネの糞に混じったエキノコックスという寄生虫の卵が水や食物などからヒトに感染する事による感染症で致死的な肝機能障害を引き起こすとされている。そのため水場の水は一度煮沸しなければいけない。
ここ白雲岳キャンプ場も数年前に水からエキノコックスが見つかって以来煮沸して使用しなければいけなくなったらしい。
本当に水を煮沸しているのだろうか?山屋だったらそんなのかまわずにガンガン飲んでいそうだけれど・・・だけど周りの人に話を聞いてみると皆さんしっかり煮沸していたのだった。それもただ水を沸騰させるだけではなくできれば1、2分はボコボコと沸かした方が良いらしい。隣の山岳部の学生達は煮沸した水の中に消毒剤まで入れていた。
僕も飲用に水2リットルを煮沸したけれど、しかしこんなことやってたらガスなんていくら有っても足りないなと思う。
(余談だけれどテント隣の人がエノキコックスと言うので笑ってしまった)

夕方、小屋の管理人が各テントに声をかけて周っていた。
「ゴミや食器をテントの外に出さないで下さい、キツネが持って行ってしまいますよ。出来たら靴もテントの中に入れて下さい、キツネが持って行きますよ!」チャップリンじゃあるましい僕のこんな汚い靴は食べないだろうっ!と靴はテントの外に出したままにした。
それにしても北海道の山はトラブル旺盛で面白いな!と思った。

避難小屋には何も売っていないので久しぶりのアルコール抜きの夕食になった。
初めての水の煮沸で疲れたのか?風が少し強かったけれどぐっすりと眠れた。

トムラウシ山 編 へ続く
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