富士山 五合目 (御庭)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2022年10月21日
富士山駅 (9:30) === 御庭駐車場 (10:25/10:30) --- 奥庭展望台 (10:50/11:00)
--- 御庭駐車場 (11:20/11:25) --- 御庭 (11:50) --- 合流点 (12:00)
--- 休憩所 (12:10/12:30) --- 五合目駐車場 (14:00/14:30) === 富士山駅 (15:33)
山日記

瞼をノックするみたいに木々をすり抜けた光が明暗を繰り返した。
イヤホンから流れる「Sparkle」を聞きながら次々と車窓に流れる紅葉を眺めた。

それにしてもここでDAPが防音の役割をすることになるとは思ってなかった。
バスの後方にはハイテンションの山登りパーティーがいてやたら大声なのには参った。
マスクをしているから大声でもコロナ禍感染へ心配はないのかもしれないけど。

曲が「Magic Ways」に変わった。

今朝、富士山駅のバスターミナルに行ってみると五合目行のバス停には10人ほどしか並んでいなかったので座れるな!と安心していたらチケット売り場で僕の後ろに並んでいた二人がやってきて前に並んでいるパーティーに平然と合流した。

これって横入り(割り込み)だよな!と思ったけれどまあ二人増えたって座れそうだからまぁ良いや!と思った。

ところが次の特急電車で来た6人がまた前のパーティーに横入りしてしまい、僕は20番目位になってしまった。
バスターミナルに駐車しているバスを見るとどれも小型バスなのでこれでは座れないのでは?と心配になった。

僕は乗り物酔いが酷く、特にバスが苦手なので立ったままエチケット袋にゲロする自分の姿を想像すると恐怖すら感じた。
登山パーティーにとって横入り行為は当たり前なのだろうか?イラっとしたけどやって来たバスが大型だったので「まぁ良いかぁ!」と気持ちが和らいだ。

曲が「風の回廊」に変わった。

御庭の駐車場には大型バスを含め数十台の車両が駐車していて御庭ってこんなに人気の場所?観光地?と思わずにはいられない。
同じバス停で降りることになったあのパーティーの人達が一斉にマスクは外したので少し距離を置いて歩くことにした。

シラビソの森をドンドン降っていく。
この先に奥庭と呼ばれる散策地こんなに下なの?これじゃ4合目まで降ってしまうのでは?と思うほど無慈悲に降って行く。

森が開けた先には奥庭荘があり、そこには野鳥の定点撮影をしているらしいカメラマンの姿があった。

奥庭荘の前を通り過ぎると一気に視界が開け黄金色のカラ松が目に飛び込んできた。
振り返ると鳥居越しの富士山がでかい!
五合目からだと富士山もただの丘にしか見えないのではと思っていたけど青空に縁取りされた山頂はきっぱりと富士山であった。

これまで富士山には3回登っているけど5合目では先急ぐ事に気を取られてしまい、こうして富士山をキッチリと見上げたことがあっただろうか?と思う。


奥庭まで降りてくるとまずは神社に参拝。ここから始まる富士山と紅葉。


かなり慌ててしまった。いきなりのこの光景は捕まえていないと消えてしまうかも思えたから。

バスで後部座席に座っていた女性が「今年の紅葉はダメだね!」と嘆いていたけど目に映るカラ松の黄金はどこも素晴らしく「ベストではないかもしれんけどこれで十分だよ!」ため息交じりに思ってしまう。

散策路のアチコチでカメラを構えた人が富士山を狙っている。
中には助手を携えたプロらしき人もいて、良い写真を撮りたくてその人の立ち位置に真似してカメラを構えてみたけど、どこを切り取ろうとしたのか分からなくて悩むばかりだった。


今年のカラ松の紅葉はいまいちだね!と言っていたけどこれがいまいちの紅葉なのだろうか?


奥庭の散策路は整備された石畳が続く。富士山に少し降雪があったみたいだと気が付く。

展望台に来てみる南アルプス、御坂山地が一望出来た。
意外だったのは南アルプス、御坂山地が思っていたより近くに見えたこと、それにそれらの山を見下ろしていることだ。
富士山は五合目とはいえ標高2300mもあるので当たり前だけなんだけど富士山駅でバスに乗りわずか1時間でこんなに上まで来ていたことにどこか不思議な感じがした。

駐車場にあれだけの数の観光バスだ、混雑するのは覚悟していた。
自分の前後に絶えず誰かが歩いている状態が続いたけど奥庭は日本庭園みたいで歩道もよく整備され登り降りも無かったので気楽にこの紅葉と富士山を眺めることが出来た。


標高2300mの奥庭展望台から南アルプスや御坂山地を見下ろす。


五合目からの富士山もしっかり富士山ではないか!と思った奥庭の休憩所からの富士山。


宿泊も出来る奥庭荘には色んな名物があるらしいけど今回はスルー。

御庭駐車場へ引き返すとそこからは御庭へ向かって登っていく。
御庭へと登る道は二つあったけれどどちらが良いか分からないので駐車場に近い向かって右の道を登ることにした。

登りだしてすぐにシラビソの森に突入。
景色が見えないのは残念だけど緑の安堵感もまた捨てがたい。

ひんやりとした緩い傾斜の道を100mほど登っていくと視界が開けて富士山との再会だ。
振り返ると御坂山地が一望出来た。
ここは奥庭展望台よりわずか数十メートル高いだけなのに明らかに見え方が違っていて御坂山地が一層下に見えた。

それにしても奥庭のあの喧噪は何だったのだろう思うほど周りを歩いている人の姿は全く無い。この道って人気が無い道?向かって左の道を登った方が良かったのだろうか?


駐車場から御庭へと登っていくといきなり苔の道に突入するけどそれもまた嬉し。


御庭へ向かって登ってい行くと更に南アルプスの眺望が良くなった。

富士山の五合目ってこんなに自然豊かだったのだ。
ネットで五合目のカラ松の紅葉が素晴らしいとは知っていたけどこれほど樹木が群生しているとは思わなかった。
カラ松の紅葉を見に来なけりゃ、こうして五合目を散策する機会は無かったと思う。

帰りのバス時間まで余裕があるので時間が許す限り大沢崩れまで御中道を歩こうと思っていたけど分岐に来てみると大沢崩れを表す標識だけが無いかった。
大沢崩れへの道は閉鎖されていなかったけれど通行止めみたいなので行かないことにした。


ヤマハナゴケの群落があっちこっちに自生している。水気の無い火山灰でも大丈夫?


緩やかに登っているし、雄大な富士山も目の前に臨み疲れることは無かった。

御庭駐車場から登るもう一つの道との合流点へ来ると急に人が増えた。
やっぱり左の道を登った方が良かったのか?と思ったけどもう一度登り返すのはもちろん面倒だ。

高尾山と同じ!登山靴を履いていると違和感を覚える感じがここでもする。
中には手ぶらな人もいるのでバリバリに登山ウェアに全身包まれていると観光客とのギャップを感じてしまう。
短パンにスポーツタイツの流行りの格好のハイカーには残念なコースだろう。

大沢崩れへ行けなくなったことは残念だけど更に時間に余裕が出来たことが嬉しかった。
ここから五合目駐車場まで景色を楽しみながらのんびり歩けるのだ。右に富士山、左に周りの山々を見下ろし、雄大な自然に挟まれた御中道は紅葉の時期だけではなく天気が良い午後にぶらりと散策に来るのもありだと思う。


毛無山から竜ヶ岳が手に取るように見える。御坂山地全体が見えるのは富士山だけ。


本栖湖の向こうに蛾ヶ岳、その奥に甲斐駒ヶ岳と白峰三山。


御庭ってこんな所だったの!どこもカラ松の紅葉で満ち溢れていた。

休憩所から先は目まぐるしく景色が変わった。
叫んでも誰にも聞こえないような赤茶けた砂の台地かと思えば眩い色を織りなすカラ松やダケカンバの樹林帯が現れ、そうかと思えば緑に苔むした回廊のような木陰を歩いたりと変化に富んだ道だった。
何よりその万華鏡みたいな風景が平坦な道の上で次々と繰り広げられるのだ。
ここでは山頂に到達した時のような達成感は要らないのだと思う。


風もない穏やかな日だったので休憩所でのんびりと昼食。あまりに天気が良くて木陰が嬉しい。


見下ろすと一面の紅葉、その向こうに河口湖、三つ峠山、黒岳。


休憩所から五合目駐車場まで富士山をグルリと巻くように歩いて行く。


絶えずこうして御坂山地、南アルプスの眺望が広がる。


鬼ヶ岳の奥には甲府市街地、茅ヶ岳と八ヶ岳。


カラ松のその行く先には紅葉が密集している森が広がっていた。

最近の富士山ブームのためか「富士山に一度も登らぬバカ、二度登るバカ」も今では死語になっている。
僕自身も今回含めて四度目の富士登山となった。

富士山は八ヶ岳や日本アルプスと比べると川崎からアクセスも良いのだけれどハゲ山の独立峰なので変化に乏しく、そう何度も訪れる山では無いと思っていたけれど、こうして季節を変えて訪れてみるとこんな景色をまだ隠し持っていたんだと嬉しい驚きだった。
視線を少し外せばまた違う景色が見えるのだ。

木々の間に山中湖が見えた。もうすぐこの散策も終わりなのだと思った。


明るい雑木林に入ってみるとそこにはトラ縞の木の影。


おーっ、三つ峠山を見下ろしているよ!ダケカンバの森もすぐに終わり視界が開けると河口湖と三つ峠山。


ダケカンバもしっかり紅葉していて足元にはフカフカの落ち葉の絨毯。


見上げると赤色と黄色の紅葉が交錯して葉を透した日差しを色鮮やかに染めていた。


再びカラ松の森の中に入って行く。この辺りは高い木と低いカラ松の混合地帯。


樹林帯を抜けるといつもそこには富士山の姿。防砂提があっちこっちにあった。


富士山でも湿った地面があるのだろうか?目に優しい緑の苔の森。


五合目駐車場が近づくとカラ松が高くなり紅葉を見上げるように歩いて行く。


山中湖が見えるとゴールも近い。丹沢の山々もやっと見えた。


これって大事な結論、山は来てみなきゃその良さは分からないものだ。これって一番感じた結論。


遊園地みたいな五合目のレストハウスが今日のゴールです。

五合目には予想を超える観光客の数で特に外国人観光客の姿が多かった。
小御岳神社の奥にある展望台へ行ってみると多くの外人さんがのんびりと富士山を眺めている。

10月になると多摩川の土手にはカメラを構えた人の姿を見かけるようになる。
太陽が富士山の山頂へ沈むダイヤモンド富士を狙っているのだ。

この時間にも多摩川の土手から富士山を見ている人が居るのだろうか?

五合目の空は秋の澄んだ青空なのに都心に目を向けて見ても白く霞んで何も見えなかった。


周りには多くの観光客が見上げる先には小御岳神社の奥にある展望台からの富士山。

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