尺岳、福智山、焼立山、牛斬山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)
◆ 2023年5月24日
直方駅 (8:55) === 竜王狭 (9:26) --- 尺岳 (10:20/10:30)
--- 尺岳平 (10:40/10:50) --- 豊前越 (11:30/11:35) --- 福智山 (12:20/12:35)
--- 赤牟田ノ辻 (13:35/13:45) --- 牛斬山 (15:00/15:10) --- 採銅所駅 (15:55)
山日記
ガイドブックによると福智山から牛斬山までの縦走は夏になると防火帯の下草がウルサイので梅雨前に登れ!とある。
これは今登るしかあんめい!

電車は篠栗駅を過ぎると一気に山里の様相を深め新緑に埋もれてしまったかのようなまばらな人家の中を突っ走ってゆく。
だけど電車はスーツ姿のサラリーマンで満員と・・・これっておかしいだろっ!
関東で例えるなら奥多摩線がスーツ姿のサラリーマンで満員って感じなのだ。

結局、博多から飯塚までの1時間半ずっと立ちっぱなしで山に登る前に疲れてしまった。

福智山へのアクセスルートは多数あるけど福岡市からだと竜王狭からの登頂が一番良かった。
直方からコミニティバスは竜王狭へ僕一人を乗せ(貸し切り状態なので罪悪感を感じつつ)疾走してゆく。

「尺岳に登るの?だったら50m先を左に行くと沢沿いの道で分かり易いよ!」バスの運転手さんからアドバイスしてもらった。
地図を見ると竜王狭から尺岳への道は3つあり、途中まで車道を歩く四方超コース、赤松尾根から竜王狭分岐へのコース、それから竜王狭から山瀬超へのコースだ。
ガイドブックによると竜王峡は美しい渓谷と書かれていたけど今回は尺岳登山を優先して四方超コースを歩こうと思っていたけど地図を見ると確かに四方超コースは沢沿いの道なのだけど登山口は竜王狭バス停から少し戻るように表記されえている。
教えられた左折する道は四方超コースなのだろうか?そして直進して登って行く道は赤松尾根コースなのだろうか?このまま左折しても良いのだろうか?ものすごく不安だった。

教えられた通り歩いて行くとすぐに沢沿いの道になった。
だけど車道ではなく踏跡も細くじめっとした暗い山道で尺岳を示す道標はどこにも無い。

途中に分かれ道があり、沢を離れ山を登って行く道の入り口には赤テープが巻かれているのでこっちなのだろうか?と迷ったけど「沢沿いの道で分かり易い」というアドバイスを信じて沢沿いの道へと進んだ。

不安な気持ちは結果を求めてどうしても足を速めてしまう。
道は沢を離れ急斜面を登って行くとやっとそこに四方越の標示を見つけた。
バス停からここまで道を間違えているのではないかと常に不安だったのでようやく安堵することが出来た。

遠くから小さな子供たちの歓声が聞こえた気がした。でも良く聞くとそれはチェーンソーの音にも聞こえる。きっとどこかで伐採でもやっているのだろうか。

四方越から歩いて行くと先行するハイカーの姿を見つけて安心した。
福智山は人気の山なのに誰の姿も見えないのはやっぱり不安だった。

急な斜面を登って行くと広く平らな場所に出たのでここが山頂だと思ったらそこは尺岳平で山頂はもう少し先だった。
テーブルがベンチがあって一休みしたいと所なのだけど先に山頂を踏んでおくことにした。

何でこんな山頂に小さな子供たちが?
尺岳山頂には20人ほどの幼稚園児と思しき幼い子供たちがヒヨコみたいに並んでいた。
さっき聞いたチェーンソーの機械音は本当に子供の声だったんのだ。それにしてもこんな険しい山に何故幼い子たちが居るのだろう?子供たちのその表情を見ると虐待ではなさそうだし、どこかに楽に登れる道があるのだろうか?

海が見える山頂はそれだけで心地良いのに「こんにちは」の挨拶の20倍返しに心の隙間が広がった気がする。

広くない山頂を子供たちに占領されてしまっては居場所がないなぁー!失笑していたら立ち替わるように笑い声は下の森の中に消えて行った。

子供たちが居なくなった山頂は青空の織り成す森閑に包まれた。
その頂でポツンと一人佇み臨む北九州の山々は初めて見る山ばかり、遠くの関門海峡の街並みは蜃気楼みたいに揺らいで見える。
もう福岡に来て4ヶ月経つのにまだ異国に来た感じがする。

山頂に設置された方位盤を見ると先日登った三郡山も書かれているけど遠く霞んで見えず、いつかは登ってみたいと思った平尾台は普通の緑の山にしか見えなかった。


子供たちが降りてしまうと急に静かになった尺岳山頂。


尺岳山頂からの金剛山。

「もう、降りてきたの?」下で追い越したハイカーが登って来た。
眺望の良い山頂での昼食は最高だけれど誰か登って来ると少し窮屈だと思えたので尺岳平まで降りることにした。
尺岳平のベンチはノンビリしたくなるようなひとりサイズの木陰で木々の向こうの眩しいほどの新緑は元気過ぎだ。

陽の光が枝を揺らすことってあるのだろうか?風も無いのに緑の木陰が揺れる。
そんなことを思いながら尺岳平から福智山を目指して歩いて行く。

尺岳平から急に登山道の標示が増えた。この半分でも良いから分かりにくい竜王狭登山道にも設置してほしいと切に思った。
登山道はキッパリとした森のど真ん中で散り積もった落ち葉がガサガサと心地よい音を足跡のように残してゆく。

木漏れ日が積み重なった落ち葉にくっきりとした陰影を作る登山道はピークをキッチリと巻いているので登り降りがあまり無く、それに木陰なので涼しく歩き易かった。
ただ眺望が全く無い森の中の道はどこまでも続く旅の途中のようで退屈になってしまう。


山頂より尺岳平の方がベンチもありノンビリ休憩出来そうです。休憩所もあります。


尺岳から福智山までこんな平坦な森の道が続いている。

s
落ち葉でフカフカだけど分かり易い道です。

豊前越のベンチで休憩していると鱒淵ダムから登って来た男性が倒れこむように座り込んだ。鱒淵ダムからの登山道は急斜面で鎖場もあったらしく「疲れた」が止まらない。ガイドブックによると七重の滝は竜王狭と並び美しい渓谷となっていたので鱒淵ダムから登りたかったけれどアクセスが悪く諦めたコースだった。その男性の「疲れた」はうらやましい響きだ。

一旦降った豊前越で休憩した後は再び福智山へと登って行く。
ここからは地図の等高線が狭くなっているので急登を覚悟していたけれど息が上がることは無かった。

今回はタヌキ水で給水するつもりだったので水を500mlしか持ってきていなかった。
タヌキ水は冬場は枯れることがあるらしいので心配していたけどしっかりと水は出ていた(心配だったらちゃんと水を持ってこい!)。
荒宿荘を過ぎると道は急になりジグザグとした登りになったけどそれもすぐに終わり、いきなり視界が開けたと思ったら草原の中の道に変わった。
振り返ると北方面の眺望が良く、先ほど登った尺岳はここから見ると山塊の端っこの小さなピークにしか見えない。


福智山へ近づくにつれ花が多くなりました。鈴なりに咲くヤマボウシ。


外観は古そうな荒宿荘だけど中は綺麗です。


タヌキ水で水の補給が出来て良かった。

見上げる先には初夏には珍しいウロコ雲が広がっていてその下に山頂らしい大岩が見えた。

尺岳を出てここまで眺望の利く場所は全く無かったのでトンネルからいきなり空の中に押し出されたような山頂だ。
360度の眺望にグルリと囲まれて一体どこを見たら良いのだと嬉しい感動に包まれ、遥遠くに見える玄界灘は頑張った自分へのギフトの様だった。

周りの山々を眺めているとひときわ目立つ山があった。平尾台のマテリアル東谷だ。
石灰石の採石所で階段状の山肌が何とも痛々しい。

見降ろすと遠賀川を囲むように直方市の街並みが広がっている。
こうして身近に街並みを眺められるのも低山の魅力の一つだろう。

山頂には10人以上のハイカーの姿があってのんびりと長居している人ばかりだ。
山頂から降る人、山頂へ登る人の多くは上野狭からアクセスしているようできっとそこがメインルートなのだろう。


小さく可憐なキンロバイ。


山頂直下、開けた空はウロコ雲でいっぱい。


標高900mに立ちました。久しぶりに高い山に登った気がします。


振り返り望む尺岳は山塊の端っこにある地味なピークの様。

山頂から南を見ると焼立山へ続く一本の道がくっきりと山の斜面に確認出来た。
山頂にはあっちこっちに向かう道が入り乱れているので念のため休憩中の二人の女性に道を尋ねることにした。
「えーっ、今から行くんですか?」「男の足だったら行けるよぉ、日も長いし!」
どうやら道は合っているらしいが牛斬山までそんなに遠いのだろうか?もしかしたらコースタイムを間違えているかも?何か勘違いをしているのでは?と急に不安になった。地図を出して確認してみるとやっぱり17時には採銅所駅に着けそうだ。ハンバーガーが二つ、水も残り500mlある・・・行くぞぉ、牛斬山!


遠賀川を囲むように直方市の街並みが広がっている。


八丁の辻は草原になっており牧歌的な景色。


山頂付近は色んな登山道が入り組んでいたので念のため近くの人に確認しました。


福智山を降りて牛斬山を目指します。

福智山山頂を歩き出した途端に周りに人が居なくなり、登山道の標示が無くなった。おまけにしっかりと踏み跡があるけど急に道が細くなり福智山から牛斬山まで縦走する人っていないのでは?やっぱり不安だ。

途中に「かぐめ分れ」「メグのコル」と分岐を示す標示があったけど地図にはその分岐が標記されておらず、おまけに西の空ではウロコ雲に変わり黒灰色の雲が増えてきた「まさか天気が崩れて雨になんてならないだろうな!」不安とモヤモヤが暗雲のように募っていく。

地図には赤牟田ノ辻への登りは「念仏坂という胸突八丁の急斜面」と書かれていたけれど登ってみると確かに急斜面だったけど距離が短いので息が上がことは無かった。

赤牟田ノ辻は福智山の眺望が良い山頂だった。
「辻」とは「道が十字形に交わる所、人が往来する道筋」という意味らしいがこの山頂は一本道でハイカーが誰もいない場所だった。


福智山から牛斬山まで沢山の花が咲き誇っています。


目の前に現れた赤牟田の辻は見るからに急峻で気持ちが沈みます。


赤牟田の辻から見ると福智山は山頂付近だけが草原、岩肌になっていました。

この日の気温は25℃で標高が低くなるにつれ急に暑さを覚えた。
赤牟田ノ辻から牛斬山まで距離は長いけど基本降りなので気分的にすごく楽だった。

ガイドブックによると「赤牟田ノ辻から牛斬山は防火帯の登山道が続き、夏になると足元の草がウルサクなるので梅雨前に登っておきたい」とある。たしかに細い登山道を覆うように草が生えているが背丈が低いのでまだ藪という感じではなかったがただアザミの葉が感電しているみたいにチクチクするのが嫌になる。


赤牟田の辻から牛斬山まで長い防火帯が続く。


赤牟田の辻から降りて来た。ほぼ真っすぐな道で滑りそうだった。


防火帯の道は夏は藪がウルサイらしいが道もしっかりと踏まれていた。


道に咲くアザミは見た目は綺麗だけどその刺は凶器の様。

赤牟田ノ辻から牛斬山までほとんど登り降りの無いなだらかな道を降って来た。
防火帯の山と言えば雲取山→奥多摩を思い出すけれど比べてみると随分楽なコースだった。

牛斬山山頂は草原になっていて眺望も良く爽快な山頂だった。
採銅所駅を見下ろすとそこにも採石所みたいな白い台地が見え、その向こうの障子ヶ岳と向かい合う。

金田一耕助に出てきそうな山名の牛斬山とは対照的に「春の香りがする山」香春岳とは良い山名だ。
その香春岳まで行くつもりだったけれど地図を見ると山頂近くまで林道がある事がつまらなく思えてしまい、それにガイドブックでは山頂から香春岳が見えるとあったけれど木々に遮られて見えないことにガッカリした事もあり色々考えた末、香春岳へは行かないで採銅所駅へ降りることにした。

山頂から5mほど下ると国見岩という見晴らしが良い大きな岩があったけどその先にはぷっつりと道が見当たらない。
仕方なく登って来た道を引き返した分岐から降ることにしたけれど地図では「草原の急斜面」となっているのに登山道は植林地の中を下っており、林道を突っ切ると竹林の迂回路になった。道を間違ったのでは?と心配になったけれど方向的には確かに駅の方に向かっている。
住宅地の先に線路が見えてやっと安心出来た。


牛斬山の山頂は日差したっぷりで爽快です。


思えば遠くへ来たもんだ!山頂から遠く玄界灘を臨む。

日田彦山線をはさんで向き合う障子ヶ岳。

採銅所駅はレトロな感じの駅で夕方の商店街でふと空を見上げるとそこに置き去りにされた無言の青空を見つけたような懐かしさがあった。
無人駅でICカードが使えなかったので現金を持って無かったら帰れなかった、あぶねぇー!

福智山はさすがに人気の主峰である。
周りに高い山が無く、草原状の広い山頂からの眺望はまるで空から眺めている様だった。

尺岳から福智山までは長く単調な道も福智山から牛斬山までは防火帯の尾根道もすべての道が青空に下の福智山を目指しているように思えた。

●山麓をゆくへ   ●ホームへ
inserted by FC2 system