不老山、湯船山、明神山 |
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆6月1日 |
山日記 サンショウバラを見に行こうと思った。 ヤマケイの記事で見てしまった。丹沢って言うとシロヤシオしか知らなかった僕。花の知識が乏しい男とは言え、あさはかだろっ、これじゃー地元丹沢の事をあまりにも知らな過ぎるっ。 これは、これはだっ、行くしかあるめぇー! 電車はJR松田駅のホームへ滑り込んで行く。 車窓の外を眺めると小田急松田駅前のバス停にはハイカーの長蛇の列が出来ていた。西丹沢の檜洞丸では今がシロヤシオが見ごろだしな!以前見た映像が脳裏に浮かんだ。 目の前に座っていた登山姿の女性と話を交わすと、どうやらこの女性も檜洞丸へシロヤシオを見に行くらしかった。山での大混雑を避けるためにタクシーに乗って西丹沢行き一番バスの先回りをするらしい。 「タクシーは松田駅からより山北駅から乗った方が少し安いんですよね」そう言うとその女性は山北駅で降りてしまった。 したたかな作戦だなー、それにちゃっかりしてるし! 駿河小山駅で電車を降りたのは3人のパーティーと単独の男性、それに僕の5人だけだった。 僕はこの時、作戦を立てた。この駅で降りた登山者の向かう先は不老山だろう・・・あの3人はたぶんタクシーで林道の終点まで行くのだ・・・ここはちゃっかり相乗りさせてもらおう・・・ 僕が乗り越し精算をしている間に他の人は改札をさっさと通り抜けてしまい、精算を終えて駅の外に出てみると3人がタクシーに乗り込む姿が見えた。それに単独の男性もちゃっかり乗っているではないか!・・・皆さん、したたかなんだねぇー! あんたは乗らないの!タクシーの運ちゃんの視線を避けて一人歩き出す。 なに、駅から不老山まで歩くのは最初の計画に戻っただけだ・・・と思うのだけれど、どこか損をしてしまった感は拭えない。他の人はタクシーで行ってしまいこうやって歩いているのは僕一人だけなのだ。 富士見橋・・・その名前の示すように富士山がしっかり見えている。この橋を渡って右に曲がる。以前はこの橋を渡ったところに不老山への登山口があったけれど今は廃道になってしまったらしい。古い地図を持っている人は注意しなければいけない・・・僕もその一人だった。ネットで不老山の登山レポを見ていたら、どうも自分の持っている昭文社の地図には出てこない地名が、金時公園とか頻繁に出てくる。本屋で最新の地図を立ち読みし(買えよっ!)、登山道を確認したつもりだったけれど実際に歩いてみるとどうも記憶が曖昧で不安になってきた。 |
歩き出しはこんな富士山が見えていたけれど・・・ |
散歩中の人を見つけて道を尋ねると「”Mobil”の看板の先で道が二つに分かれてますからそこを左に入って、後はまっすぐです」と教えられたのでその通り歩いて行く。 確か最新の地図では山の中腹まで林道になっていたはずだけれど、あまりに緩やかな勾配な道なので山に登っている感じが全くしない。 展望も利かず自分の位置を確認することが出来ない。もしかしたら別の林道を歩いているのでは?やっぱり最新の地図を買っておくべきだった! |
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遭難する人って最初でつまずいている場合が多い・・などと考えていたらいきなり道の両脇が開けて展望の良い場所に出た。西の方角を見るとそこのは富士山が、雲に隠れて頭だけしか見えていないけれど確かに富士山が見えている。昨日、雨が降ったため空気が澄んでいてこの季節にしては珍しいほどくっきりと富士山を中空に浮かび上がらせていた。 |
不老山から明神峠まではこんな芸術的は標示板に導かれて歩きことになる。 描いた方はどなたですか?登山道も整備されているみたいで頭が下がります。 |
山頂の標柱は手作り度100%で綺麗なイラストと案内文が書かれている。書いた方の山への愛着そして信密度が伺えるかなり良い感じの標柱だった。 この案内板によるとサンショウバラの開花時期は山頂では6月4日〜11日頃、”樹下の二人”では6月1日〜7日頃となっているけれど周りを見ても花は全く見つけられない。あーっ、ちょっと来るのが早すぎたのかな? 南峰山頂から北峰山頂へは歩いて3分の近さだ。こっちの山頂にはベンチが2つあってノンビリしたくなるような所なのだけれど周りをぐるりと木々に囲まれていて展望は良くない。写真だけ撮影するとすぐに南峰へ戻ることにした。 |
不老山山頂(北峰)の展望は良くなかった。 ベンチがあって休憩するには最適なんだけれど。 |
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南峰から世附峠へ降って行く。 富士山は隠れているし花も一つも見つけられない・・・まだ雨に降られなかっただけ良いけれど・・・オレ・・・いったい何しに来たんだか。 世附峠へ降りて行くと数人のハイカーか姿があった。 中には中型カメラを抱えている人も居て、これはもしかしてどこかで開花しているのでは?と期待していると「この上で咲いてましたよ!」と落ち込んでいる僕に福音のような言葉のプレゼントだ。 草原状の登山道を登って行くと前方にイジケタ様な姿の木が一本見えてきた。あれが”樹下の二人”と呼ばれる場所かぁー!と一気に登って行く。 |
あの木、何の木、気になる木! ”樹下の二人(別名:蘇峰台) このちょっとハズカシイ名の由来は昭和11年8月に富徳蘇峰氏とその夫人が籠に乗りここを訪ねたことによる。 (業務連絡:Tさん、まずいっす、富徳蘇峰っていったい誰だよ?分ったらこそっとメールくれ!) |
”樹下の二人”のすぐ西側の斜面にはこのサンショウバラが群生していて「何でここにだけこんなに群生しているのだろう?」と思いながらウヒャウヒャとアッチコッチ見て回った(後で調べてみるとサンショウバラは日当たりが悪い場所では生育しないらしく、それで大木が生育しにくい火山灰地層の箱根周辺の山にだけひっそりと植生しているらしい)。 想像してたよりサンショウバラの花はずっと大きく直径7,8センチはあった。花びらが重なっていないのでバラって感じよりもシャクナゲという感じだ。つぼみの時は濃い桃色をしているけれど大きく開いてくると段々その桃色が薄くなっていく様もシャクナゲに似ていた(後で調べてみるとれっきとした日本原産のバラだった)。 |
サンショウバラ(山椒薔薇)。葉が山椒に似ていて、花が薔薇に似て、茎にトゲがあるからこの名前になったそうですが、花って薔薇っぽいかな?素朴な疑問です。 |
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僕の隣で写真を撮っていた男性が「ちょっと来るのが遅かったかなー!」などと言う。ちょっと来るのが早かったかなー!と思っていた僕は思わず話を聞いてしまった。サンショウバラは一日花(一つの花は一日、長くて二日で萎んでしまう)なので樹木に1,2割くらいツボミが残っている頃が一番の花の見頃らしい。そう言えば確かにツボミは少ない。 それに昨日の雨で花も痛んでしまって美人な花が少ない!としきりに残念がっていた。だけど僕にしてみたらもうこれでも十分満足できる花の数だったのだ。それにサンショウバラの花は短命らしいからそんな優等生みたいな花で無くても良いのだ、多少落ちこぼれでも良いのだ! |
世附峠から峰坂峠までは南側の展望が良かったー。箱根の山々や駿河湾が一望出来るそんな場所です。 |
峰坂峠へ向かうと世附峠からこの辺りまで南側の眺望が良く、箱根山を左に見ながら気持ち良い尾根歩きとなった。前からハイカーが歩いて来ると決まって「花・・・咲いてました?!」と質問せれるのが面白かった。きっと皆さんの目的は同じなんだろうな! |
峰坂峠からは山ツツジが咲き誇っています。 素朴な疑問:シロヤシオとはきちんと住み分けしているのでしょうか? |
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峰坂峠を過ぎると登山道の両脇は木々に遮られて展望は悪い。ただ周りを取り囲む木々の緑が素晴らしい。 登山ガイドを見ると”不老山から明神峠までは静かな山歩きが堪能出来る”となっていたけれど、この時期にどうやらそれは無理みたいだ。20人ほどのパーティー数組とすれ違うことになった。明神峠から不老山まで歩くらしいのだけれど話の中に”サンショウバラ観賞ツアー”という言葉が聞こえたのがちょっと気になる。 いかんよ、サンショウバラはこんな大勢で見る花とは違うよ!山の斜面でひっそりと花咲いていたサンショウバラは何を思って咲いているのだろう? 白クラノ頭、湯船山、明神山と歩いて行く。 どの山頂も展望は良くなったけれど新緑に包まれて気持ち良い尾根歩きだ。高低差があまり無く、吐息もユルイままなのも嬉しかった。道や標識もしっかり整備されている。(”自然はより自然のままで”と思う人には多少煙ったい標識かもしれんね!) |
雲の裏の太陽は見えなくなってきました。それでも明神峠までは林相が素晴らしく綺麗です。 ブナやカエデの大木がしまい込まれてしまった緑を誘います。 |
明神峠からは車道と平行して登山道が着けられていた。時々、クラシックカーの集団やハーレーのこれまた集団が横を走り抜けて行ってウルサク感じることもあるけれど、どっこいこっちには気持ちの良い新緑の登山道がまだまだ続いていたのだ。 車道を横切り三国山の登山口へ到着。 三国山への登りは今日一番の勾配ではないだろうか、大粒の汗をかきながら登って行く。右手の方に鉄砲木ノ頭が段々と見えてきた。地面にはバイケイソウがニョキニョキ生えてと地面を隠す様になった。 |
三国山山頂。段々と空も白くなって湿っぽさが忍び込んで来た。意外と人が多いのでビックリ。 |
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三国山山頂から空を見上げるとそこにはもう青空は無くてただ白い空があるだけだった。 こんな天気に、こんな時間になってもまだまだ山頂はハイカーで賑わっていた。こんな時って単独の僕は居場所に困ってしまう。水を一口飲むのにさえどうも落ち着かない、自分の所在を確かめられずにいるって感じだ。 写真を撮ると山頂をすぐに出発した。 すっかり陽は翳ってしまって新緑の乱舞も落ち着きを取り戻していた。足元は黒い玄武岩の地面に変わって歩くたびにガリガリと音を立てた。 籠坂峠までもう少しだ。 細い空からたまに陽が森に差し込むとキャンドルに火が点ったみたいに緑が輝いた。 ここまで歩いても体はあまり疲労を感じないのはその透明感のせいかもしれない。 今日の山は眺望には恵まれなかったけれどふと立ち止まってしまうことの多い山だった。 自分だけの風景を探して歩く、こんな山登りは後を引きそうだ。 緑の小径を歩いてゆく・・・それも楽しいけれどやっかいだなと思った。 |
つぼみをあげよう、薄紅色の可愛い。 果てない夢がちゃんと終わりますように、百年続きますように。 (あーっ、良い歌ですね!) |
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