月山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆10月21日
東京(6:32) +++ 山形(9:11/10:02) === 西川バスストップ(10:40/11:00) === 姥沢(11:43/12:10) --- 牛首下の分岐(13:10/13:20) --- 姥ヶ岳(13:50/14:00) --- 月山 (15:10)(テント泊)

◆10月22日
月山(6:30) --- 念仏ヶ原小屋(9:35/10:20) --- 赤沢川(11:45/11:55) --- 登山口(13:10/13:15) --- 肘折温泉(13:55/14:00) === 新庄(15:00/15:32) +++ 東京(19:13)

山日記

山形から高速バスに乗り、西川BSでシャトルバスに乗り換えて姥沢に向かう。月山湖では周りの山の紅葉が湖面に反射して奇麗だ。そこからバスは林道に入り紅葉に色づく樹林の中を進んでいく。月山の頂上だけ雲が集結していてその黒い影を黄色や赤に色づく山麗に落としていた。
姥沢から姥ヶ岳までリフトが運行しているので姥沢は大勢の観光客や軽装備の登山者がいた。でかザックの僕はどこか場違いのような気がする。
姥沢小屋に立ち寄ってみた。外から見ると古びた感じだったが玄関を入ってみると新しく、オレンジ色に輝く明かりが温もりを感じさせる小屋だった。受付の青年に水場のことを尋ねると「登山道の途中に水は流れているが飲まないほうが良いでしょう」と言う返事だったのでしかたなくここで3リットルの水をポリタンに入れた。ザックを担いでみるとさすがに重い。一瞬「良いからリフトで行っちゃおー」と悪魔の誘いが心をよぎる。「天気もガスっていて展望も望めそうに無い。慌てて登ることはない。ゆっくり行こう」と自分に言い聞かせ小屋の脇から登山道を登り始めた。


牛首付近からの月山山頂 雲が取れ出した
登山道は草原の斜面を登っていく。展望も良く晴れていれば右斜め前方に月山山頂が見えるのだろう。
歩いていると茂みの中に男性が倒れていたのでぎょっとして立ち止まった。殺人事件か行き倒れか?良く見るとズボンは登山用ニッカポッカではなく工事現場用である。さらに良く見ると眠っているだけのようだ。前方を見ると木道の設置作業の最中である。なんだ!ただ昼休みに作業の人が休憩していただけだった。
少しだけ船越栄一郎の気分になって「月山殺人事件/美女の白い肌が陸奥の温泉に妖しく揺れる」とタイトルが頭の中を過ぎる。しかし片平なぎさと船越栄一郎が現れるのは小京都と決まっているが多少の違いはまあ良しとしよう。

月山山頂 神社が立ち並ぶ
草原の中の木道歩きは疲れを感じさせないほど爽快だ。振り返ると太陽の光に反射した木道が白い光の筋となって僕の足跡をたどるように草原の中を続いている。
姥ヶ岳に着いても月山山頂は雲の中だった。山頂の下、牛首下辺りは草紅葉の薄茶色と熊笹の緑がホルスタイン柄に広がって中々良い感じだ。
牛首付近を歩いていたら雲が徐々に取れ始め山頂が覗いた。何だか頂上は平らででっかそうだ。目の前に突然現われた頂上に気合いを入れられて一気に登る。
途中でラブラドールレトリバー降りてきた。こいつは僕の100万倍の嗅覚がある。山に来ると色々な匂いが嗅ぐことができて面白くてしょうがないだろうと思う。
カジ小屋を過ぎると平らな場所に出た。ここが頂上だと思ったら少し先に建造物のある小高いところがある。どうやらそこが頂上らしい。行ってみると山頂いっぱいに神社が建てられて地面は見えない状態だった。地面を踏んでいないのでいまいち登頂の実感がわいて来ない。雲は山頂をぐるりと囲んでいるので展望は無かった。
平らな場所に戻ってテントを設営する場所を物色した。ここは石がごろごろと転がっている。おまけにぬかるんでいるので歩くたびに靴底に関東ローム層を形成していった。周りに草地はあるが自然保護のため入ることは出来ない。仕方なく石が少ないところを選んでテントを張った。

カジ小屋と山頂の間にテントを張る
さっきまで数人いた登山者も僕以外は全員降りてしまった。薄曇のために夕日は僕の手前で遮断され薄暗く、湿気を帯びた風がしつこくまとわりついてくる。窓や戸を完全に閉ざされた山小屋は冷気の沼にどっぷりと沈んでかすかに残る人の暖かさまでも黙殺している。こんな雰囲気の山頂に一人残されると何となく人恋しくなる。
今回は歩行時間が短いので多少荷物が重くても大丈夫だと、いつもより酒とつまみを多く持って来た。月山のてっぺんで月を見ながら酒を飲むことを楽しみにしていた。だけど夕食を食べながらワインを飲んでいるとすごく眠たくなってしまいウイスキーに移った頃には瞼が重くてもう開けられなかった。

山頂からの降り 広大な山頂の広大な草原
夜中、あまりの風の音の大きさに眼を覚ました。夕方は余り強くなかった風が今はテントを大きく揺らしていた。寝ぼけた頭の片隅で「風が強いなぁ」と思っていたら何時の間にか眠ってしまった。
次に起きた時には風の音に混じって目覚まし時計のアラーム音が鳴っていた。
朝飯を作りながらつけたラジオからLED.ZEPの”Since I've been loving you"が流れてきた。まさか月山の頂上でこの曲を聞くとは思わなかった。
放送は山形のローカル局だがまったく渋すぎる選曲だ。
朝、テントを出てみると薄曇の天気だ。昨日はぬかるんでいた地面はガチガチに凍っていた。風は強く、じっとしていると体温をどんどん奪ってしまうのでテントを撤収すると早々に念仏ヶ原に向い下山する。朝のひんやりとした空気の中、気持ちの良い草原が下方へ続いている。
ゆるやかな降り道がやがて急勾配になり、どんどん降って行くと立谷沢に出た。そこから少し登り返すと念仏ヶ原だ。
念仏ヶ原は小川の流れる湿地帯で月山が一望できる場所だ。昨日歩いた登山道は人も多く道も石畳状態に整備されていた。たどり着いた山頂には神社が密集して山の匂いは薄らいでいた。しかしここから見る月山は薄茶色の草原の奥にでんとなだらかな山容を構えていて実に山らしさを取り戻していた。残念なのは余りのなだらかで広い山頂なのでカメラのファインダーに納まりきれない事だ。

念仏ヶ原からの月山
茶色に紅葉した草原の奥に広がる山頂はやっぱりデカかった
草木が緑に色付き、花が咲き乱れる夏の山が動だとしたら秋の山は静だ。特に草原に一人ぽつんと立って広大な山を眺めていると時間が止まってしまったような錯覚に陥る。風の音は頭の中で独り言のようにこだまし、目の前の風景は切り取られた写真のように微動だにせず無言でたたずんでいる。
良い景色を見ると腹も減るもんだ。避難小屋の前でラーメンを作る事にした。7月の北岳山行でラーメンを食べている人を見た時から山でラーメンを食べることを信念とする自称「やまラー」となった僕は今回こそ鉄則に基づいてラーメンを食べるのだ。今日はとんこつ醤油味の和歌山ラーメンにした。秋風に吹かれながら腹にフハフハとアツアツのラーメンを流し込むと元気百倍になった。

肘折温泉への道は尾根道で山々の紅葉が「これでもかぁー!」と言うくらいに次々と目の前に展開していった。小岳の山頂は紅葉の中にぽっかりと湿原の茶色がうずくまっていた。
赤沢川に出たところで休憩して時計を見ると予定よりも随分早く着いたことに分かった。急げば予定していた1つ前のバスに間に合うかもしれない。持病の膝痛も今のところ大丈夫なのでここからは急いで降りることにした。しかし歩きながら見る紅葉は素晴らしく急ぐのがなんともったいないことか!。特に幾重にも黄色に色付くぶなの木に覆われていたネコマタ沢は圧巻だった。

肘折温泉は古びた温泉と言うよりも数十年前にタイムスリップしてしまったようなどこか懐かしい温泉だ。お客も年寄りばっかりでお土産屋さんも爺さん婆さんでごった返している。湯治場なのかもしれない。
バスに乗ると中はなぜか座席に正座をしている婆さんたちでいっぱいだった。バスが発車すると一斉にお土産屋で買ったこんにゃくを食べ始めた。バスはこんにゃくの甘辛い醤油の匂いに満たされて山道を走ってゆく。

参考

牛首下の水場は水量も多くきれいだ。しかし登山者の多い姥ヶ岳から流れてきているので汚染されていないか心配だ。頂上付近に水場は無い。念仏ヶ原手前の立谷沢川も川なので水量は多い。川を過ぎて登っていると念仏ヶ原から流れてきた沢があるがこの沢では水は補給しないほうが無難だ。上の避難小屋から汚水が流れてきているかもしれない。念仏ヶ原避難小屋の前に小川を堰き止めた水場ある。小岳を過ぎた所にある赤沢川も水量は多い。
念仏ヶ原避難小屋は1階の扉は板付けされ開けられない。(この時期だけだろう)小屋への出入りは梯子を上った2階から行う。驚いたのは小屋の外見は古びた感じに比べて室内は新しくきれいに使用されていた。

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