八幡平、秋田駒ヶ岳 (裏岩手連峰縦走)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 9月26日
東京 (6:04) +++ 盛岡 (9:19/9:42) === 八幡平頂上 (11:35/11:40) --- 八幡平 (12:05/12:10) --- 畚岳 (12:50/13:00) --- 諸桧岳 (13:40/13:50) --- 前諸桧 (14:30/14:35) --- 嶮岨森 (15:10/15:20) --- 大深山荘 (15:45)

山日記 (おすすめコース 編)

気になる、気になる、すごく気になるコースがあった。

八幡平ー秋田駒ヶ岳の裏岩手山縦走コースは行かなきゃ損ですよ!
ずっと以前、船木さん(仮名)からメールをもらった。

当時、僕は百名山の八幡平と岩手山を繋げて歩く縦走を計画していた。
秋田駒ヶ岳は二百名山だし、まずは百名山の岩手山を先に歩きたかったけれど船木さんの「秋田駒ヶ岳への縦走がおススメですよ!」の言葉が脳裏から離れなくなってしまった。
すげぇー気になってしまった。

しかしこの八幡平ー秋田駒ヶ岳の裏岩手山縦走コースは土日の二日間で歩くのは無理、最低でも二泊三日は必要なので気になっていたコースだけれど中々訪れる機会は出来無かった。



盛岡で新幹線を降りて東口バスターミナルへ行った。
平日にも関わらずザックを背負った登山者らしい人が何人も行き来していた。

バスの乗車券を買って八幡平行きの3番乗り場に並んだ。
ところが3番に並んだのは僕一人だけで他の登山者10数人は10番乗り場に並んでいる。
僕はてっきり乗り場を間違えたのだと思って10番乗り場へ行って見ると10番乗り場は雫石・網張温泉行き、つまり岩手山へ登る人の列だった。

岩手山って人気あるな!それに比べて八幡平って意外と人気無いんだな!

結局、八幡平行きのバスに乗った登山者は僕一人だった。
(盛岡から八幡平へ行くバスは路線バスより30分早く八幡平山頂へ着く八幡平散策バスがあります。新幹線はやぶさの指定席が取れずその散策バスには間に合わなかった。)

バスが市街地を抜けると左方向に岩手山の姿が現れた。
さすがに南部富士と言われるだけあって丹精な裾野を持った堂々とした山だった。
山全体が赤茶色をしているので無骨さと力強さを感じる。

実に良い山だ。

僕を天を仰いだ・・・ 船木さん、おすすめコースで間違いは無いよね!

バスは更に高度を上げる。八幡平を目指してひた走る。

すげぇー!山が黄色に染まっている。
源太岩、茶臼岳登山口、黒谷地湿原と車窓の外の山肌はキッパリと秋色だ。

八幡平の紅葉の全盛期は10月上旬なのでその前に訪れたら紅葉はダメかもしれないけれど観光客は少なく、ゆっくりと登山を楽しめるのではないか?と9月下旬を狙ってやって来た。
そうしたらこれだ、しっかり紅葉してるじゃないか!

晴れた日の夕空みたいに山が輝いていた。

駆け出したくなった。バスを降りたくなった。
紅葉の誘惑は恐ろしい!
計画を変更し、八幡平を一日かけてたっぷりと散策してみるのも良いかもしれん!と思った。
だけどそうすると秋田駒ヶ岳まで縦走出来ない。秋田駒ヶ岳を置き去りにしてしまう。

ちょっと待てよ。
秋田駒ヶ岳じゃなくて岩手山までだったら今日一日、八幡平を散策しても行ける!

しかしだ!

僕を天を仰いだ・・・ 船木さん、おすすめコースで間違いは無いよね!

バスが八幡平頂上バス停(見返り峠)に到着した。
お土産さんの店先にザックを置かせてもらって空身で八幡平山頂へ向かった。

時間が有ればもちろん八幡平をじっくり散策したかった。けれど今回はその時間が無いのだ。

石畳の登山道を登って行く。
源太岩や茶臼岳登山口と比べるとあまり紅葉は見られない。
ただただ広い緑の中にポツリと光を溜めたような青さの八幡沼が広がっていた。

あーっ、ここで引き返さなければいけない!
その大きさの中に後悔の念が積もるばかりだった。


八幡平の青い瞳、八幡沼。
東京を今朝6時に出て約6時間、念願の八幡平へついにやって来た。 あーっ時間があればきっちりと散策したい・・・

八幡平・・・良い山じゃないか!
さすがに久ちゃんが百名山に選んだことはあるな。

オレはねぇ、オレはねぇ(とりあえず2回言っておく)このままただのピークハンターでは終わらないのだ!
次はきっちりと八幡平を散策してやろうじゃないーの!


八幡平山頂はぐるりと木々に囲まれて眺望無し。
展望台は補修工事中でした。


八幡平には幾つかの池が点在している。
これはその中の一つで鏡沼。

頂上バス停に戻って、いよいよ裏岩手連峰縦走へ突入だ。

ちなみに裏岩手山縦走の裏岩手山とは、岩手山を盛岡方面から見ると端正な三角錐なので表岩手山、雫石や八幡平から岩手山を見るとデコボコの山容に見えるので裏岩手山と言われている。
だから裏岩手山縦走はあっても表岩手山縦走は無いのだ。


八幡平頂上(見返り峠)からも一番目立っていたモッコ岳へ向う。 いよいよ裏岩手縦走の始まりだ!

ふと思った。
八幡平→秋田駒ヶ岳の縦走って岩手山に登らないけれど裏岩手山縦走になるの?

まずは目の前のピコンと尖った畚岳(もっこだけ)だ。
この山名の由来は完全に下ネタだと直感した。


エゾオヤマリンドウがあっちこっち咲いています。
緑の葉と茶色の葉の株があるけど種類が違うの?


モッコ岳山頂は岩がゴロゴロ。
狭い山頂だけど展望良し!

車道から登山道に入ると50分で畚岳山頂へ到着した。

山頂からは今歩いたばかりの八幡平が緩やかな裾野を見せている。

岩手山はそんなに遠くないはずなのに大気の中に青く霞んで見えた。


モッコ岳山頂からの八幡平。 本当にどこが山頂だか分からない八幡平の姿。


モッコ岳山頂からの裏岩手縦走路。 岩手山は雲に隠れ始めた。 印象派の絵画を思わせる様な色合いだ。

裏岩手の「裏」って文字はどうしても陰や暗を連想させた。
登山道は薄暗くてジメッと湿気を帯びている印象だったけれど、こうして始めて歩く裏岩手は広大な尾根の中の登山道で爽やかな空気に包まれていた。

登山者が多くないのも良かった。
人の多さと開放感は反比例するみたいだ。


モッコ岳を降って諸桧岳へ向う。 秋色の登山道は歩くだけでやっぱり単純に楽しい。

笹の緑と木々の紅葉に彩られた道を降り、緩やかな坂を登って行くと諸桧岳だ。
あまりになだらかな山頂なので標柱が無かったら山頂とは分からないだろう。

八幡平を出た頃に比べて随分と雲が多くなった。デッカイ雲の塊が空をゆっくりと流れて行く。
雲の影に入ると汗ばんだシャツがひんやりした。
やっぱり季節は秋なのだ。


石沼は水深が浅い池でゴロゴロと岩が露出している。


石沼の隣の池。ミツガシワが湖面に゙群生している。

立ち止まることが多いってこと、良いことだ。

登山道のアチコチに小さな沼が点在していて湖面が空を映していた。
それは心も潤される風景だった。


前諸桧から嶮岨森へ向う。 写真では分かりづらいけれど雲が多くて山肌にいくつもの影を作っていた。

地図を見ても登山道を横切る等高線は少ない。

諸桧岳から前諸桧まではほとんど平坦な道だった。


嶮岨森から前諸桧を振り返る。 山頂付近だけ紅葉が目立つ。 緑の中の一本の道も良い感じだった。

前諸桧を過ぎたら正統派?登山道みたいに登り降りするのかと思えば、やっぱりほんの少し降ってほんの少し登ったら嶮岨森へ着いてしまうのだ。


嶮岨森山頂。 諸桧岳も前諸桧も高さを感じない山頂だったので写真は無い、せめてこの山頂だけでも。


嶮岨森山頂からの鏡沼。 森の中にポツリ、青く静かな沼だ。 沼までの道が無くて良かった。

不完全燃焼?

山登りは楽に越したことはないけれど、あまり楽すぎるのも達成感が無くて物足りないものだ。
この日の縦走路中で山らしい山は畚岳と嶮岨森だけだった。
後は何だか緩やかな丘を歩いている様な感じだ。

でもそれは嫌な感じではなむしろく山を楽しむには十分な条件だった。

今日、八幡平を出て嶮岨森に着くまで10数人の日帰りらしい登山者とすれ違ったけれど、その人たちはどこまで歩いたのだろう?どの山を目指したのだろう?と気になってしまった。


嶮岨森山頂を後にすると今日の行程も終わりが近い。目の前の紅葉した山が1418mピークでその向こう側に
大深山荘がある。奥のなだらかな裾野の山は大深岳、源太ヶ岳。その後ろに雲に隠れた岩手山。

こんなに平坦な縦走道ってあるの?

あまりにもあっけなく、疲労も無く、ボロ雑巾状態にもならず、予定時間より早く大深山荘へ到着した。
こんなに早く着くんだったら八幡平をもう少し丁寧に散策しておくんだった。

小屋に着くと直ぐに水を汲みに行った。
僕の持っている2003年の昭文社地図には表記されていないが小屋の直ぐ前から分岐している道(松川温泉へ向う)があり、その先の草原の中に水場はあった。

地面に挿されたぶっといパイプから水がジャブジャブと出ていた。
小屋から降り3分、登り4分の距離だった。

小屋はまだ新しくきれいだった。
特にトイレは今まで見た避難小屋の中では一番のきれいさだった。
(それも洋式のバイオトイレ)。

(どうでも良い話: 夜になって用を足していたらいきなりヘッ電の光が消えて真っ暗になった。
これじゃ狙いが定まらない!こんなきれいなトイレを汚すわけにはいかない!
 ・・・僕は慌ててチ○コを押さえた。)


大深山荘は新しくきれいな避難小屋。 水場も近い。


小屋の中にサンダルがあったのは快適で嬉しい。

汲んだばかりの水は冷たくてポリタン表面に無数の水滴を作った。
その水でウイスキーの水割り ・・・旨かった。
文庫本を読みながら山小屋で過ごす時間は至福の時だった。

やっぱ解説は舞ちゃんが一番うまいなぁ!

好きな大相撲のラジオ放送を聞きながら簡単な夕食だ。

大相撲の後のニュースを聞いていたらいつの間にか眠ってしまった。



昨夜、この小屋に泊まった人は僕を含めて8人だった。
ヘッドライトの光が飛び交う中、その8人がゴソゴソと暗闇の中で出発の準備をしている。

やっぱり小屋泊まりだと準備が楽だ(テント泊に比べて)。
4時に起きて朝食を済ませると5時には小屋を出る仕度が出来た。

他の宿泊者7人(ペア1組、ソロ5人)に今日の予定を尋ねると・・・
八幡平へ降る人が一人、他の人は岩手山へ向うらしい。
何で?秋田駒ヶ岳へ行くのは僕一人だけだった。

小屋を出ると外はまだ薄暗かった。見上げた空は灰色の雲に覆いつくされている。


僕は天を仰いだ・・・ 船木さん、おすすめコースで間違いは無いよね!


天空の大草原 編へ 続く
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