箱根外輪山ぐるり
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:ロープウェイ)

◆12月6日
小田原 (7:30) === 箱根関所跡 (8:30/8:45) ---登山口 (9:15/9:20) --- 海ノ平 (9:55) --- 山伏峠 (10:50/11:00) --- 三国山 (12:00/12:15) --- 湖尻峠 (12:55) --- 箱根芦ノ湖展望公園 (13:30/13:35) --- 富士見ヶ丘公園 (13:45/13:50) --- 長尾峠 (14:30) --- 丸岳 (15:10) (テント泊)

◆12月7日
丸岳 (7:40) --- 乙女峠 (8:05/8:10) --- 長尾山 (8:30) --- 金時山 (9:10/9:30) --- 矢倉沢峠 (10:00) --- 火打石岳 (10:45) --- 明神ヶ岳 (12:05/12:25) --- 明星ヶ岳 (13:40/13:45) --- 塔ノ峰 (15:00/15:10) --- 箱根湯本 (16:00/16:08) +++ 小田原 (16:23)

山日記 (海ノ平→三国山→丸岳 編)

箱根関所跡でバスを降りる。
ここから屏風山までピストンしようかとも思ったけど朝の静けさと肌寒さに気力もなえてしまって予定通り箱根峠へ向かうことにした。

今回の箱根外輪山ぐるり一人旅、出来ることなら箱根湯本を基点に箱根山の外輪山を一周してやろうと企んだのだけれど、いざ計画を立ててみると一泊二日ではかなりキツイ行程であること分かった。
それで箱根湯本→浅間山→屏風山→箱根町は次の機会に歩くことにして今回は箱根町から箱根湯本まで縦走することにした。
だから厳密に言えば今回の山行は箱根外輪山一周ではなく3/4周といったところだ。

箱根関所跡のトイレでペットボトルに二日分の水4リットルを満たして歩き出す。
箱根町を過ぎた辺りで国道1号線は勾配が急になった。やっぱり水4リットルは重い。体が重力に反するように前かがみになっているのが自分でも分かる。

海ノ平への登山口を探しながら1号線を登って行くと目の前に箱根峠のガソリンスタンドが・・・どうやら登山口を見落としてしまったらしい。
もうこうなったら芦ノ湖スカイラインを歩いて行こうと思ったけどスカイライン入口に「歩行禁止」の看板があるので仕方なく来た道を戻ることにした。

なんてことは無い、道の駅の真ん前に登山口はあるではないか。
登山前のこんなポカ、無駄なカロリーを消費してしまったようで自分に腹がたつ。

登山口から登っていくと20メートルほど先に展望台があって少し雲に覆われていたけれど箱根山の展望が良かった。
ちょっと箱根の山を軽く見ていたのかもしれない。着ていたダウンジャケットを脱ぐと刺すような寒さが体を包む、風が強くて耳が痛い。予想以上の寒さだ。
ウールの帽子は持ってきていなかったのでネックウォーマーを頭にかぶって歩き出した。

登山口から登りだして直ぐの箱根山の展望。
かなり雲が多いけれど天気予報では曇りのち晴れ。
そのうち晴れてくるさ!と歩き出す。


海ノ平を降りて行くと前方にでっかい富士山の姿。
登山道は芦ノ湖スカイラインと並行しているのでちょっとがっかり。

植林帯の中、小さく登ったり降ったりを繰る返しているとパッとススキの原が目の前に広がった。
海ノ平からは二子山、箱根山、それから南側の鞍掛山の眺望が良かった。
そして前方にはでっかい富士山の姿、山と雲の境がはっきりしないけど良い眺めには変わりない。

海ノ平から先には富士山まで延びるような草原の中の一本の道。
この雄大な構図にいつのも僕なら有頂天になってしまうのだけれど、何だかなぁ、登山道に寄り添うようにすぐ隣には芦ノ湖スカイラインが走っているのが見えてしまって、ここは標高900メートル、山なのだ!と気分を盛り上げようとするのだけど車道との並走にはどうしても気分が殺がれてしまう。
それに直ぐ横のゴルフ場から「ファー!」という声が聞こえる度にこっちまでボールが飛んでくるのでないかとヒヤヒヤした。

車道と隣り合わせの登山道だけどススキの原を歩くのはやっぱり気持ちが良い。富士山の上には雲が無かったけど僕の頭上には厚い雲で覆われていた。


アンテナの建つ二子山。
風が強くて寒いので芦ノ湖の遊覧船もどことなく寒そうに見えた。

なだらかな草紅葉の道を進んで行くと山伏茶屋があった。
店の中にラーメンやうどんをすすっている人の姿が見える。風が冷たくて顔が痛いし、指先はジンジンしびれているし、温かいうどんが恋しくなってしまう。せめて自販機の温かい缶コーヒーでも良い。
だけどそれではせっかく下から水4リットルをボッカして来た事が無駄になってしまうので我慢することにした。
ちなみにこの店は雨水もしくは持ち込んだ水を使っているので水道は無い。テント縦走をするならやっぱり下から水を持ってこなければいけない。
店の横からは芦ノ湖や箱根山の展望が良く、白くなった箱根山頂を眺めていると低山も冬に向かっているという実感が胸に響いてくる。
ただ車を降りた人がデカザックを背負った僕を不思議そうに見ているような気がしたので写真を撮ると直ぐに歩き出した。

山伏茶屋からは車道と離れ、山の中を歩く感じになる。木々の間からの芦ノ湖の展望が良かった。歩いていると道の横に「山伏峠」の標示板があった。とくに周りより高くなっている訳ではなく、それにコジンマリしたピークなのであまり峠らしくなかった。

山伏峠からは背の高い竹のトンネルのような道が続いた。すぐ横で車の走る音が聞こえるので登山道と車道はほんの数メートルしか離れていないようだけど竹が密集しているので向こう側は見えない。そのため視覚的には車道と並走している感は薄れる。ただ「危険です。柵の外に出ないで下さい」と書かれた札がいたるところに立っているのにはうんざりした。

海ノ平から三国山まではこんな竹林の中を歩くことも多い。すぐ横で車の走る音が聞こえるけど竹の密集に阻まれてその姿は見えない。


山伏峠の山伏茶屋からは芦ノ湖それに箱根山が正面に見える。でかザックを背負った僕の姿は駐車場にいる観光客には異様だったかも。

三国山の名前の由来は「甲州、駿河、相模の三国を分ける山」らしいのだけど、その山頂は木々の間から箱根山や金時山がかすかに見える程度の展望しかなく、それに特に標高が高いわけでもないので「三国を分ける山」といった風格は感じなかった。
それでも山頂のベンチでは5人のハイカーが昼食中なのでそれなりの人気はある山なのだろう。
登山口からここまでの間に誰とも会わなかったのに、それがこの山頂だけにどわっと人の姿があるのはちょっと不思議な感じがした。

ザックからペットボトルを取り出して飲んでいると唇の感覚が寒さで麻痺してしまっていて口の端から水がポタポタと垂れてしまうのは自分でも情けない。

三国山山頂はあまり展望が良くない。今日初めてこの山頂で他の登山者と遭遇した。他の人がガスコンロで温かい昼食を作っているのを見ていたら羨ましくなってしまっら。


三国山から湖尻峠へ降って行く。目の前に山肌が一面竹で覆われた緑の山々が現れた。歩く意欲をそそられるような山だ。

どうしたわけか?とてつもなく腹が減ってしまっていてオニギリ2個とミックスサンドを一気に食べてしまった。食べ終えてしまうと他にこれといってやることも無いし、じっとしていると寒いので直ぐに湖尻峠へ向かうことにした。
途中で登って来たソロのハイカー二人とすれ違う。三国山はあまり面白い山だと思えなかったし、むしろここまでの登山道の方が僕には面白いと思えた。だからこの山だけに人が集中しているのが不思議だった。

湖尻峠からは緑色の竹で覆われた山を登って行く。
登山道は防火帯なので広く、また地面は芝状なので歩いていて気持ちが良い道だ。
振り返ると箱根山が大きい、それに今朝からずっと雲が多かったけれどここに来て青空が広がったのも嬉しい。ただ逆に富士山には雲が増えていた。午前中は麓にあった雲が午後になって山頂まで上がって来たようだ。

湖尻峠からの登り。後ろには芦ノ湖と箱根山がずっと見えている。ここで今日初めてフリースを脱いだ。


展望所(箱根芦ノ湖展望公園)からの箱根山。車でやってきた人も登山者の姿も無かったけど走っている人がなぜか多い。

湖尻峠から長尾峠まではずっと笹原が続き、展望も良くて今日一番のプロムナードコースではないだろうか。こんなに素晴らしい道なのに他の登山者の姿は全く見かけない。
たまに高地トレーニングのマラソンランナーなのか?それともトレイルランナーなのか?は分からないけれど動いている物がどわっといきなり目の前に近づいてくるのですこぶる心臓に悪い。

箱根山頂の木々は真っ白になっていた。今、箱根山に登っている人にはどんな景色が見えているのだろう?


富士見ヶ丘公園からの富士山。だけど雲に隠れてしまっていた。テントは張ったら気持ち良いだろうな!と思わせる公園だった。

標示板が無かったら決して分からなかった長尾峠を通過していよいよ本日最後の登りになった。前方の山頂には目標のアンテナが見えているので足は疲れているけれどその一歩一歩がカウントダウンとなっていると思えば気分は楽だ。

さていよいよ前方に丸岳が見えてきた。建っているアンテナが目印だ。湖尻峠から丸岳まではこんな感じのススキと竹の広い登山道が続いた。


長尾峠の先にあった富士見台。「富士山と芦ノ湖が見えるのはここだけ」という札があるので展望台に登ってみたけれど、それほどでもなかった。それよりもう直ぐそこだ!

予定してた時間通りに丸岳へ到着した。もし予定より早く着けたら長尾山まで行こうと思っていたのだけれどそれは無理だった。
山頂にはテーブルやベンチもあって、それに予想以上に展望が良かった。富士山は見えないけれど箱根山、明神ヶ岳、金時山、それに今日歩いて来た稜線の向こうに熱海の市街地が見える。
仙石原のススキの原は有名でよく旅行雑誌やテレビ東京の旅番組で紹介されるけれど山頂から見た仙石原は民家でゴチャゴチャしていて、ススキの原も台ヶ岳の麓にひっそりと小さくてショボイ感じだ。

丸岳山頂です。でっかい無線中継所が建ってます。
テーブルに上がると富士山が見えます。だけどそんなお行儀が悪いことはしないで下さいね。


山頂には二つのテーブルとイスがあります。思ったよりもずっと展望が良いです。人気の金時山のすぐ隣なのにこっちには誰も居ませんでした。

ずっと向こう、芦ノ湖奥の海ノ平から今自分が立っている所まで山の稜線を目で辿ると意外と長くて予想以上の達成感があった。縦走の一日目にして早くも「箱根の山は面白い!」と思った。

何故だろう?草原と富士山・・・これは最強の組み合わせではないだろうか?
今日一日歩いて他の登山者に会ったのは三国山周辺だけだった。
箱根山外輪山の中でも金時山から明神ヶ岳までは人気コースなのだけど乙女峠からこっち側はあまり人気が無いみたいだ。
富士山の眺望は良いし、高低差は少なくて歩き易いし、車のエンジン音を気にしなければここは穴場的なコースなのだ。

丸岳山頂からの仙石原、箱根山、芦ノ湖の眺望。ゴルフ場が幾何学模様みたいに見えていた。
この左側には明神ヶ岳や金時山が並んでいる。
さて、眺望を楽しむのはこれくらいにして地面が凍ってしまう前にテントを張らなければいけない。
テント場以外の場所でテントを張る場合に気をつけなければいけないのは自然になるべくダメージを与えない場所にテントを張ることだ。そこで今回は山頂にある二つのテーブルの間にテントを設置しようと思った。
だが待てよ!山頂にある巨大アンテナの下に設置した方がもっと自然に優しいのでは?と思えたのでアンテナ中継所を探して山頂から乙女峠の方へ降りて行った。

山頂から50メートルほど降って行くと登山道の横にポッカリと開いている場所が見つかった。そこは中継所の作業場みたいな場所で富士山の展望が良かった。
ただここから箱根山は見えない。山頂からの箱根山か?ここからの富士山か?迷ったけどやっぱり富士山の吸引力には勝てやしない。

おーっ、テントを張った中継所横の空き地から夕焼けを眺める。


夕日の中に沈み行く富士山を眺める。かなり雲も取れて良い感じです。

テントを設営し終えると、とりあえずコーヒーだ。
わずか一杯の湯気の揺らめきにホッと落ち着きを取り戻す瞬間だ。

体がホットウイスキーで暖まるとサキイカをポッケに突っ込み、ホットウイスキーを片手に山頂へ向かった。
山頂のベンチでサキイカを噛みつつ、ウイスキーを舐めつつ、仙石原高原の夕景を眺めた。
もうこれはテント泊の醍醐味の一つだろう。静かな時間の流れの中に居る実感!

テントに戻って再びホットウイスキーを作ると今度はビーフジャーキーをポッケに突っ込み、テントの横で夕日に沈み行く富士山を眺めた。
富士山が紫色の背景にシルエットになって消え行く。この感動を四文字熟語で表現しようと思ったけど酔っ払っているのか情け無いことに言葉が全然浮かばない。

丸岳山頂の中継所横から夕日に沈み行く富士山を眺めた。太陽が地平線の向こうに姿を消すと街が輝きだした。
片手にカメラ、もう片手にはウイスキーとかなりやばい奴になっていたかもしれない。
すっかり日が落ちたテントの中での夕食、風がテントの底が持ち上げようとするのでコッヘルを抑えながら味噌ラーメンを作った。ラーメンの具は魚肉ソーセージ、モヤシ、それに乾燥ワカメをぶち込んだだけのなんとも寂しい夕食だけど、まーっ、男のテント山行はこんなもんだろう。

夕食の後、シュラフに入って文庫本を読んでいたらいつの間にか眠ってしまった。
夜中にあまりの暑さに目が覚めた。ダウンジャケットを脱いだらちょうど良い温かさになった。
いつの間にか風の音が止んでいる。明日は晴れると良いな!

金時山→明神ヶ岳→塔ノ峰 編へ続く
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