石棚山、檜洞丸

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2018年5月25日
箒沢公園橋 (8:40) --- ヤブ沢ノ頭 (10:1010:20) --- 石棚山 (10:35) --- テシロノ頭 (11:10) --- 檜洞丸 (11:50/12:05) --- ゴーラ沢出合 (13:20/13:30) --- 西丹沢ビジターセンター (14:10)
山日記

新松田駅を降りて朝一番の西丹沢行のバス停に並ぶと前から5番目だった。
やっぱり一つ前の電車にして正解だった。
本当は谷峨駅でバスに乗った方が交通費は安くなるけれど混雑が予想されるこの時期はやっぱり始発に乗らないと座れないと思った。

バスの発車時間まで30分ほど,、次第に僕の前に並んでいる人がどんどん増えていく。
トイレに行っていた人や次の電車で来た人が同じパーティーに平然と合流している。
結局、バスが発車する頃には15番目ほどになってしまった。
まー、座れそうだから文句は言わないけれどもっと後方に並んでいる人はこんな割込みに良くブチ切れないなと思う。

最近、花火や花見でレジャーシートだけを置いた場所取りが問題になっているけれど、この同じパーティーへの割込みもどうなんだろうか?と同じ登山者として疑問に思う。

今回の檜洞丸登山の目的はズバリ、シロヤシオと新緑が狙いだ。
前に来た時には檜洞丸への最短ルートであるつつじ新道が渋滞してイライラしたので今回は混雑を避けるために少し遠回りの石棚山稜を登ることにした。

道路が混雑していたのでバスは定刻より10分ほど遅れて「箒沢公園橋」へ着いた。
バスを降りたのは僕を含めて二人だけ、今日はのんびりと歩けそうだ。

石棚山は今回初めて登る山だ。ヤマケイJOY「新緑の山100」の「ブナの森」として紹介されていたので前から一度は歩きたかったけれど檜洞丸へ登る時はやっぱり最短ルートのツツジ新道へ向かってしまう。

箒沢公園橋を渡り、大石キャンプ場の横を抜けて板小屋沢沿いに登って行く。
沢の岩壁が苔むしていて沢全体が緑色になっている。
緑を照らす太陽のスポットが陰陽を作り、風が木の葉を揺らす音と沢の水の弾ける音に包まれているとどこか深い谷を歩いているような錯覚を覚える。

登山道は沢沿いから離れると尾根に向かって登って行く。
急な上り坂で一気に汗が噴き出るけれど気温がそれほど高くないので少し立ち止まるとすーっと汗が引いて気持が良い。

40分ほど登っていると段々と傾斜が緩やかになって来た。
右の方を見ると木々の向こう側に「県民の森」から延びる稜線が見えて来たのでかなり上の方まで登ったことを実感する。
登山道の周りにはヒメシャラやブナの木が立ち並び、その若葉が初夏の陽気に包まれて明るく輝いている。
急斜面の箇所には木の階段が設置されていて歩き易い。
ちょっと整備され過ぎている感も否めないけれど公園を歩いているようで気持ちが落ち着く。


急だった登山道が緩やかになった。先を見るとヤブ沢ノ頭らしいピークが見える。

登る先を見上げると木々の間に空が見えるのでもうヤブ沢の頭は近いのでは?と思うけれどピークに立つとその向こうに更に高いピークがあって中々ヤブ沢の頭へ着かなかった。

ようやくたどり着いたヤブ沢の頭は一部が開けていて眺望は良さそうだけれど、今は白く霞んで何も見えなかった。
天気予報では朝は曇りでその後は晴れだと言っていたけれど10時になっても空全体が白く霞んでいた。
遠く南の方角からドーンという重低音が連続して響いてくる。自衛隊演習の音なのだと思うけれど空が曇っているのでもしかしたら雷なのでは?と少し不安になる。


ヤブ沢ノ頭で少し早い昼食にすることにした。開けているけれど白く霞んで何も見えない。

ヤブ沢の頭から10分ほど歩いて行くと「県民の森」からの道と合流、目の前に美しい光景が広がった。

ブナの森だ!

ヤマケイ「新緑の山」では石棚山稜は「丹沢の隠れたブナ街道」として紹介されていたけれど正直あまり期待していなかった。
と言うのも世の中には「隠れた○○」と言われるものがやたら存在しているけれど本当に良い物は世間に知れ渡っているものだし、逆に皆が知らないものはやっぱりダメなものが多い。

でも目の前に広がるブナの森は本当に素晴しかった。
道が割かし平坦なので森として意識し易いのかもしれない。
丹沢には何度も来たけれど僕の知らない場所がまだ残っていたのだ。
少なくともここは僕にとってやっぱり「隠れたブナ街道」だった。


「県民の森」からの道との合流点の先には「ブナの森」が広がっていた。


急斜面に設置された階段は新緑の舞台のようだ。


1401mのピークからテシロノ頭までは平坦で歩き易い。鹿よけの策で覆われている登山道。


やっぱりブナを見上げてしまう。

この辺りまで登って来るとシロヤシオやトウゴクミツバツツジが目立つようになってきたけれどもう花はほとんどが散ってしまっていた。
一週間前の西丹沢山開きの日に来たら満開だったのだろう。それがたった一週間で花はこんなにも散ってしまうものなのだ。

石棚山は山頂を表す標示が無かったらそれとは分からないほどなだらかな山頂だった。
山頂を過ぎると道は平坦に変わり、登山道の両端には植生保護のロープが張られていた。また鹿侵入のための防護柵が壁のように張り巡らされていた。
あまりにも整備されているので山という感じで希薄だけれど庭園や公園の中を歩いているようで悪い感じはしない。

テシロノ頭を過ぎたあたりの山肌が崩壊している場所で南側の眺望が開けた。
富士山は?と探してみると灰色の空の中に雪を覆った山頂が薄っすらと見える程度だった。
今回は今年三回目の登山だけど富士山が見える確率が低いのでじんわりと凹む。


ユーシンへの分岐にあるテーブルは一面の緑に囲まれていた。


シロヤシオもほとんど散ってしまっていた。一週間早く来たら良かったけれど・・・混雑しているのは嫌いだし。

ツツジ新道の合流地点からさすがに人が多くなった。
絶えず誰かが前後を歩いている感じで人が途絶えない。
残念なのはここまで来てもやっぱりシロヤシオは散ってしまっていて咲いている数は少ないのだ。
ヤマレコを見ていたら今年はシロヤシオの当たり年とあったので花の咲き乱れ状態を期待していたけれどやっぱり来るのが一週間遅かったみたいだ。

合流地点を少し登った場所はバイケイソウの群落地になっている。
バイケイソウの花はまだ咲いていなくて葉だけの状態なので足下から緑の炎が立ち上っている様な景色なのだ。


バイケイソウの葉が揺らぎ立つ中の木道を進む。晴れていたらもっと良かった。


ブナの古株が日本庭園のような趣だ。

檜洞丸山頂に到着。山頂の周りは真っ白で遠望は無かった。
20人ほどの登山者が休憩していた。山頂にはいくつもテーブルがあるので空いている場所に座って休憩した。

景色が何も見えないのでこんな時ソロはやることが無くて時間を持て余してしまう。
持って来た文庫本を広げたけれど「山頂で本を読んでいるオレって完全に周りから浮いてしまっているのでは?」と思い始めたら本の内容が一向に頭に入って来ないので読むのを止めてしまった。

予定では犬越路へ降りようと思っていたけれどツツジは終わっているし、天気も悪いのでツツジ新道を降りて早めに帰ることにした。

合流地点まで戻ってツツジ新道を降って行った。
シロヤシオやトウゴクミツバツツジがまだ少しは残っていて登って来る登山者が足を止めては静かに花を見入っている姿があった。

ツツジ新道という位だからツツジの花が一面に咲いている道だと思っていたけれど合流地点から50mほど降るとパッタリと花の姿は途絶えてしまった。
朱色の山ツツジがポツポツと山を彩っていた。

この登山道もブナが多いけれど急斜面なので「ブナの森」という感じは希薄だった。


檜洞丸山頂からの大室山。こんな天気なので犬越路へ降りるのは止めてしまった。


檜洞丸山頂からの富士山。下山し始めると徐々に青空が広がって行った・・・んーん、残念!

ゴーラ沢出合について山を振り返ると青空が少し増えていた。
今日は歩く距離も短かったし物足りない感じがして少し寂しい様に感じた。
そう言えば今年三回の山行を思い返してみるとどれも歩行時間が少ないのだ。

ゴーラ沢出合から下りの道は山を巻いた平坦な道を進んで行く。
木陰が日差しを遮ってくれるので涼しい。
ウォークマンで高中正義の初期の曲を聴きながら歩いた。夏はやっぱりサンバだな!パーカスのリズムが心地良かった。

西丹沢ビジターセンター14:40発のバスは空いていたので余裕で座ることが出来た。。

途中、丹沢湖で小学校の子供たちがバスに乗って来た。
熊避けなのだろうか?子供達のランドセルには皆、鈴が付いている。

谷峨駅で登り電車を待っていると10分ほどで電車が到着した。
電車の最前車両、それも一番前のドアしか開かず、ホームにいた僕を含めた10人ほどの登山者は慌ててその開いたドアに向かってダッシュしなければいけなかった。
電車はワンマンなので整理券を取らなくてはいけないのだ。

今年のツツジの開花は例年より少し早いようで満開の姿を見れなくて残念だった。
ただ石棚山稜でのブナの森に出会えたことはまだ見ぬ丹沢があることを認識させる嬉しい出来事だった。

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