四尾連湖、蛾ヶ岳、三方分山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2016年11月17日
市川本町 (8:35) --- 四尾連峠 (11:00/11:05) --- 四尾連湖 (11:10/12:10) --- 大畠山分岐 (12:45/12:50) --- 西肩峠 (13:30/13:35) --- 蛾ヶ岳 (13:50)
山日記 (どかどか紅葉巡り旅 編)

今回はちょっと紅葉を意識した山登りなのである。

これまで紅葉を見に色んな山に行った。
榛名山、赤城山、丹沢山、大菩薩嶺、高尾山、八ヶ岳、尾瀬、奥多摩それから昨年の御岳渓谷。
どの山も確かに紅葉しているけれど思っていたよりコジンマリしていた。
やっぱり紅葉が有名な山、大雪山、涸沢、栗駒山などに行かなきゃ満点の紅葉は見れないだと思った。

ところが先日登った鳳凰三山の夜叉神峠や広河原付近では予想外の紅葉に出会えた。
まだまだ隠れている紅葉はたくさんあるのだ!とその色鮮やかを目の前にして考えた。

今回の目的地は蛾ヶ岳だ。
前に登った時に眺望が良かったこと、それにその時は素通りした四尾連湖を見ること。
そして以前から気になっていた富士山周辺の山の紅葉状態を確認すること。

以上のミッションを遂行するに当たり困ったことがあった。
昭文社の山と高原地図(富士山)では市川本町 - 蛾ヶ岳 - 八坂峠間は切れているのだ。
そこでYahoo地図と市川三郷町発行の地図をプリントして持って行くことにする。
(http://www.town.ichikawamisato.yamanashi.jp/50sightsee/40map/files/2011-0414-1301.pdf)





市川本町の駅は小さくて、駅前には置き忘れられたようにずらりと自転車が並んでいる。
その小さい駅の小さな待合室で登山準備を済ませるとまずは碑林公園を目指して歩いていく。

駅前の大通りに出て右へ曲がるとすぐに碑林公園の案内板があった。
線路を越えて山へ向かって歩いて行くと山の中腹に中国風の建物が建っているのが見えた。

碑林公園の奥に蛾ヶ岳の登山口があった。
四尾連湖までは車道があるのでわざわざ登山道を歩く人は少ないと思うけれど登山道は意外に整備されていて歩き易かった。

展望が全く無い道をひたすら登って行く。
遠くで学校のチャイムや女性のアナウンスが聞こえる。それらの音も空に吸い込まれるように次々と消えて自分の靴音だけが残る。

今回の山登りは時間に余裕がある。時間に余裕があると心にも余裕が出来る。周りの景色をじっくりと眺め、その景色をソシャクすることに心地よい時間の流れを感じる。

登って行くと鮮やかな黄色に紅葉した木々が目立つようになった。
スポットされた紅葉は藤城清治の影絵みたいに鮮明で心の中にまで届きそうな透明感だ。

途中に展望台(のろし台)があったので寄り道することにした。
山頂から甲府の街が一望できた。ただ甲府もその向こうにある八ヶ岳も白く霞んでいた。

山頂の真ん中に丸太がドカンと立っているけれどこれがのろし台なのだろうか?
のろしって戦国時代というイメージがあるけれどそんな古い物には見えないし、それにこの上で火を焚くのも無理みたいだけれど。
近くに説明板の跡らしい朽ちかけた柱が立っていた。何だか謎だけが残る場所だった。


市川本町駅からの登山道は良く整備されて迷うような所は無かった。落ち葉が多くなったかなり登った所。

登るにつれて地面を覆う落葉が多くなった。
ガサガサと落葉をラッセルしながら歩くのも自然を肌で感じるようで悪くない。

四尾連峠から四尾連湖は見えなかった。
案内板によるとすぐ近くに展望台があるらしいので登ってみようかと思ったけれどさっきののろし台でも白く霞んで眺望は望めなかったので行くのは止めてしまった。

峠から降って行くと木々の間にキラキラとした湖面が見え隠れした。

水明荘の前に出た。おおっ四尾連湖が一望出来る。
紅葉がまだ残っていた!湖の周りをぐるりと紅葉が取り巻いている。
もう紅葉には遅いと思っていたけれど残っているどころか今がピークかもしれない。

今回の山行は紅葉している山を確認することが目的の一つだけれど四尾連湖の紅葉は期待していなかっただけに嬉しかった。

「やだぁー、あの人、Tシャツだよー!」
水明荘のテーブルで昼食中の人達からガン見される。
しょうがねぇーだろ、こっちは20kgのザック背負って登って来たんだかんな!と思う。
期待以上の紅葉を目にしてニヤニヤしていたので変わったオジサンにしか見えなかったのかもしれない。

近くのテーブルにザックを置かせてもらい、カメラだけ持って湖を周ることにした。
湖は黄色やオレンジ色に紅葉した山にグルリと囲まれていて、その彩を映す湖面が風に小さく波打っている。
湖の周りの遊歩道を歩いて行くと景色が変わった、そしてどこの景色もため息が出てしまうほど良いのだ。


水明荘前のテーブル付近からの四尾連湖。この景色を眺めながら昼食です。

前に三方分山から蛾ヶ岳へ縦走した時は時間が無くて四尾連湖には寄ることが出来なかった。
伊豆の達磨山や丹沢の大野山みたいに眺望が良くても山頂まで車道がある山はどうしても敬遠してしまいがちだ。
ここ四尾連湖も湖畔まで車道があるので市川本町から歩くのは馬鹿らしいけれどこの景色に出会えて良かったと思う。

湖を半周した所がテント場のようだ。
風も無い小春日和の暖かな日差しの中にポツンとタープが張ってある。
小さな焚火の煙が湖面の上を低くゆっくりと漂っている。
男性がマットに寝転んで何かハードカバーを読んでいる。
その男性の横にはダルメシアンがくたっと寝そべっている。
そのすべてが静かな時間の流れの中にあるのだ。
山のテント場とはまた違う雰囲気だけれどこれも良い感じだな。


四尾連湖を半周しました。向こう側に水明荘が見えています。この左側にテント場があります。それにしても・・・

四尾連湖の名前は四つの尾を連ねた竜が住んでいる湖ということでその名前が付いたらしいけれどビリッとしびれるほどの良い湖だった。

水明荘で水2Lを入れさせてもらい、重くなったザックを背負って蛾ヶ岳へ向かう。
ところが登山道が見つからない。水明荘の周りにはバンガローが立ち並んでいて車道が入り組んでいるのでどれが地図にある道なのか分からなくなってしまった。
それで水明荘へ引き返しご主人に道を尋ねると周辺地図までくれた。


登山口が分からなくて迷ったけれど四尾連湖からの登りも紅葉に包まれた登山道。やっぱりTシャツで登るのだ。

駐車場横の登山道から登って行くと一面紅葉の森が広がっていた。
残念なのは道の途中に眺望良い場所が無くて四尾連湖を望めないことだ。

30分ほど登って行くと大畠山への分岐へ出た。
この辺りはカラ松の紅葉が美しく、まだカラ松の紅葉も残っていたのだとニヤニヤしてしまう。


大畠山分岐付近はカラ松の森。見上げてばかりいたのですれ違う人が何があるのだろう?と不思議顔。

今回は時間に余裕があるので紅葉を眺めながらのんびりと歩いて行く。
コースタイム2時間の道を1時間で歩くのは難しいけれど1時間の距離を2時間で歩くのも難しい。
写真を撮りながらゆっくり歩いたつもりなのにほぼコースタイムで蛾ヶ岳へ着いてしまった。


六地蔵の西肩峠からは急な坂になるけれど山頂はもうそこ。

今日は朝から薄曇りだったけれどここまで来るまでに雲の厚みが増したようだ。
南側の富士山はすでに雲の下。西側の南アルプスも白く霞んでいる。
甲府市街の向こうにあるはずの八ヶ岳は雲に隠れて全く見えなくなっていた。

四尾連湖は紅葉の大畠山に抱かれるようにひっそりと佇んでいた。
周りを山に囲まれている姿はカルデラ湖なのだろうか?


蛾ヶ岳山頂からのでっかい富士山は雲の下。富士山の左下に三方分山、右下に竜ヶ岳が見えるはず・・・


紅葉の大畠山の左下に四尾連湖。奥には南アルプス、櫛形山、鳳凰三山が見えたけれど白く霞んでいた。

今日はどこで幕営するのか決めずにやって来た。
歩けるまで歩いて適当な場所があったらそこにテントを張ろうと思っていた。
まだ時間は午後2時なのでもっと先まで歩こうかと考えたけれど前に来た時の記憶だとここから八坂峠までに眺望が開けた場所は無いはずだ。

僕は開けた場所でテントを張るのが好き、と言うより森の中など閉塞感が漂う場所が苦手だ。
それでよほど風が強い時以外は森の中にはテントを張らないのだ。

悩んだ末、眺望の良い蛾ヶ岳山頂で幕営することにした。
こんな早い時間にテントを張ると他の登山者の迷惑になってしまうので人が居なくなるまで待つことにした。
この山頂から下の駐車場まで歩いて1時間なので4時まで待てばもう登山者は来ないだろう。

ところが3時になっても誰も登って来ない。
それに急に風が冷たくなって山頂でウロウロしているのがつらくなってしまった。
もう誰もやって来ないことを祈りつつテントを設営することにした。

こんな薄日でもテントの中は暖かかった。
ビールを飲みながら寝転がって「臨場」を読んだ。
そして時々テントの外に出ては暮れゆく景色を眺めた。
ビール、横山秀夫、富士山、ため息 ・・・ こんなの良いなぁ!
影が伸びていった。静かな良い時間がここにもあった。


暮れていく山々を眺めながらビールと文庫本は至極のひと時。

夕方6時になるともう真っ暗だ。
あーっ、すごい!テント横は一面の輝きで覆われた。
標高が低いので光一つ一つが宝石のように瞬いて見える。
夜空に漂う小さなテント、宇宙を漂っているような、そんな甲府の夜景に心踊った。

遠くでゴォーッと音がしたと思ったら風がテントを大きく揺らした。
舞い落ちた落葉がガサガサとテントにぶち当たる。
そしてまた夜の静寂が訪れる。

たぶん7時頃だと思う、いつの間にか眠ってしまっていた。

ぐだぐだ迷走の旅 編へ 続く
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