武尊山 |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆8月23日 ◆8月24日 |
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山日記 まったく。。。マイナー、アングラ、B級、インディーといずれにしても日本百名山しては全く目立たない山だ。 百名山としては人気が無さそうな山なので出来れば日帰りで登山したい。登山口までタクシーを利用すれば日帰りも可能だが、タクシー利用の登山は80歳になってからと決めているのでそれまではバス利用で頑張るしかない。色々と登山コースを検討してみたがどのコースも登山口までのアプローチに時間がかかってしまい日帰りは無理だった。どうしても手小屋沢避難小屋に一泊するしかないようだ。 なんだか急に行く気がしなくなった。気分は乗らないのだがとりあえず準備をする。久々に押入れの奥からズリズリとテント一泊セットを引きずり出した。 |
尾根道まで登ると山頂が見えた |
久保でバスを降りる。天気が悪かったら計画は止めようと思っていたが晴れてしまった。降りたのは3人で観光客らしい夫婦と僕だけ。 おいおい!人が少ない。これでも日本百名山なのか!それにしてはちょっと人気が無さ過ぎるぞ! これだけ人が少ないと言うことは今夜、頂上での幕営は僕一人になる可能性が大きい。それは非常に困るのである。 心の中はこれから登ろうとする山の景観への期待よりも山頂での一人幕営の不安でいっぱいになった。 舗装された道をどんどん進んでいく。しばらく歩き、道が鋭角に折れ曲がった地点で登山道に入る。登山道は小さな沢沿いで涼しく、水の心配もしなくて良いのだが全然誰とも会わない寂しい道だ。 |
じめっとした道を辛抱して登って行くと名倉ノオキからは一転して尾根歩きとなり景色が良い。見渡すと緑の山並みが続いて、その中に黄金色に光る三角形をした山が見えた。地図で確認すると笠ヶ岳とある。”ほたか”といい、笠ヶ岳といい北アルプスから著作権で訴えられそうだ。でももしかしたらこっちが先かもしれない。それにしても笠ヶ岳は北アルプスに負けない綺麗な山だ。いつの日か登ることがあるだろうか? 登山道に入って3時間ほどで手小屋沢避難小屋に着いた。2〜4人用の鉄製、蒲鉾型の小屋だった。入り口の扉を開けると小屋の中はジメ−ッとしてカビ臭く、色あせた新聞紙の切れ端が泥にまみれて散乱し最近は使われていないような感じだ。電話で聞いたようにあまり居心地が良さそうではない。小屋の前には小さな沢があり、川底の小石を避けた水がキラキラと太陽の光を反射して流れていた。ここで水を補給して頂上を目指す。 |
沖武尊山頂から見た前武尊 他の登山者は降りてしまって一人だけの景観 |
小屋を過ぎ歩いていると武尊神社からの登山道が合流し急に人が増えた。武尊神社に車を停めて山頂まで日帰り登山がメインルートなのだろう。人が増え、明るい緑の登山道を歩いて行くうちに幕営の不安は忘れていつもの登頂を目指す気力が充実してきた。より上を目指す元気も出てきた。ちょっとした岩場があるがぐんぐん登っていく。 |
木々の間に緑に輝く山を見つけるたびに山に来て良かったという思いが重なり合っていく。 パッと光の中に飛び出る。周りにここより高いところは無い。頂上に着いたのだ。 |
山頂でお酒を飲んでいたら雲が茜色に |
ザックからテントマットを取り出し頂上にバーンと広げた。靴を脱いでドンとあぐらをかいた。靴下も脱ごう、気持ち良い!シャツも脱ごう。 どうせ誰も来やしない。えーぃ!ズボンもパンツも脱いでしまおう!。。。ぐふふふっ!マットの上で恍惚の薄ら笑いを浮かべていた。 オチンチンに日光浴をさせる事もそうあることではない。目を閉じても太陽の日ざしがオレンジ色のスクリーンになって瞼の裏を染めている。日差しは強いが爽快な気分で身を横たえた。 |
突然、男性の話声が聞こえてきた。誰かが登って来た。 まずい!非常にまずい!頂上で全裸になっている男をみたらどう思うだろう?きっと変態にしか見えないだろう。自分のお調子者な性格がつくづく嫌になる。だが今そんな反省をしてる暇は無い。いくらなんでも全裸はまずい!せめてパンツだけでもどうにかしよう!急いでパンツをつかんでズリ上げた。あまりに勢い良く上げすぎて玉を打ってしまった。下腹に激痛が走る。だが今は痛がっている時間も無い。声は直ぐそこまで近づいて来た。もう間に合わない!!! とっさにマットに寝転がって日光浴をしているように装った。これでなんとか誤魔化せるだろうか? 設営が終わって景色を眺めていると隣でテントの設営を終えたらしい二人が「良かったら酒でも飲みませんか?」と声をかけてきた。酒は大好きなのだが今回はザックを少しでも軽くするために寝つき用に少量の酒を持って来ただけだった。良い口実を見つけて断ろうとモジモジしていたら「酒はいっぱい持ってきたので心配いりませんよぉ!」と駄目押ししてきたのでお言葉に甘えて仲間に入ることにした。 |
中ノ岳から見た沖武尊 この付近はまだ歩きやすいが、この後は嫌な岩峰群が連立することになる |
風景指示盤に酒とつまみを広げ3人で囲んだ。酒はおろかツマミも二人がここまで苦労してボッカしてきたものである。普通だったら遠慮しなくてはいけないのだけれど、あまりにも二人が陽気で良い人だったので笑いとともについつい酒に手が伸びてしまった。 酒を飲んで山の話で盛り上がっているとそこに単独行の男性が登ってきた。結局、この夜は3つのテントが山頂に並んだ。 夜になって星を見ようとテントの外に出ようとした時、酔っ払って足がもつれ、張り綱につまずき見事に転んでしまった。周りのテントから「だいじょうぶですか?」と声がかかった。なんて今日は最後までしまりの無い一日なんだろう。 |
翌朝、起きると風が強かった。孤軍奮闘してどうにかテントを撤収、前武尊に向けて出発した。 稜線の気持ち良い尾根歩きだ。家ノ串山から振り返ると沖武尊まで緑の木々の間を登山道がくねくねと続いているのを見ると「ああ、もうこんなに歩いてしまった。もったいない」と思わずにはいられない。しかし家ノ串山を過ぎると目の前に岩場や鎖が現れ、岩場が苦手な僕を悩ませる。 |
剣ヶ峰から見た沖武尊、剣ヶ峰山 岩場が嫌いな上に風も強く直ぐに逃げる |
沖武尊は緑の木々に覆われた穏やかな表情の山である。がしかし山岳信仰の山らしく、こんな険しい一面も持っているのだ。 頑張って鎖を登ると剣ヶ峰の山頂は思ったより広く、沖武尊や剣ヶ峰山の展望が良い。 だが強風のために落ち着いて景色を眺めることが出来ず写真を撮ると早々に通過した。 |
嫌な岩峰群を通り過ぎると前武尊に到着した。ここにも日本武尊像があり東側の展望は良い。ここで最後の展望を楽しんで川場野営場まで一気に降る。 昨日、山頂で酒を飲んだ二人に「川場野営場の駐車場で待っていて下さい。車で送りましょう」と言われた。この二人は久保に下山し、そこからタクシーでぐるっと回ってここまで戻ると言っていた。だけどこの炎天下に何時間待てば良いのだろうか?山頂で吹き荒れていた風もいつの間に止んでいる。二人の好意には悪いけれど予定通り川場温泉まで歩くことにした。 それにしても暑い、全身から汗が吹き出てくる。太陽に焼かれたアスファルトの道路はまさに灼熱地獄だ。 |
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