一ノ倉沢トレッキング

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2019年10月31日
土合駅 (10:45) --- 登山指導センター (11:00) --- マチガ沢 (11:25/11:30)
--- 一ノ倉沢 (11:45/11:50) --- 幽ノ沢 (12:20/12:30) --- 一ノ倉沢 (13:10/13:20)
--- マチガ沢(13:40) --- 巌剛新道・敗退 (13:45/14:35) --- 土合駅 (15:10)
山日記

2週間前、谷川岳に登った翌日の健康診断でとんでもない結果が出てしまった。
明日はその再検査の日。医者には検査前日の登山は控えるように注意された。
それで今日は登山は止めて散策するだけにしたのだ。
たまたまニュースで一ノ倉沢の紅葉が見頃だという情報を見たのでやって来た。

車窓の外の高崎の風景は町全体が霧に覆われ、500mほど先に灰色の壁があるみたいにその先は全く見えない。
朝霧は晴れの兆候と言うけれど何だか気分が乗らない。
わざわざ一ノ倉沢まで散歩に行く価値があるのか?と急に落ち込む。

電車は水上へ ・・・ 晴れている!いつの間にか晴れている!
いつの日か登りたいと思っている吾妻耶山も青空の下ではないか。
やっぱり空に太陽の存在は重要だ。さっきまでの気持ちとはガラリと変わってもう気分はイケイケどんどんなのだ。


土合駅は通称モグラ駅、下りのホームが地下深くにある。ここで一人電車を待つのは怖いような感じ。


別に意味はないけれどヘッ電でハートを作ってみた。もし周りに人がいたら何やってだろ?と思われたはず。

土合駅からロープウェイ駅までは緩やかな登りになっていて、これが結構疲れる。
だけど行く先に見える白毛門が秋色に染まっているのでどうしても足が速くなってしまう。

何度も秋に谷川岳に来たはずなのに谷川岳の山々がこんなに紅葉するとは知らなかった。
紅葉する木が多いのは山頂付近だけかと思っていた。
現に2週間前に来た時には山頂付近の紅葉は終わっていたので、もう谷川岳の紅葉は終わりなのだと思っていた。

紅葉は山頂から山麓に徐々に降りてくると言うけれど、目の前にそびえる白毛門は落とした絵具が山頂から染み入るように山麓に向かって秋色が溶け込んでいるのだ。


下りのホームに電車が着いて歩き始めるまで1時間弱経ってしまった。ゆっくりし過ぎた。


白毛門ってこんなに紅葉する山だとは知らなかった。ロープウェイまでの道も歩きがついつい早くなってしまう。

登山指導センターを過ぎ、西黒尾根登山口へ来た。
2週間前に来た時にはここでかなり気合が入っていたことが何だか懐かしい。
今日は散策するだけなので気合も闘争心の欠片もない。
背中の軽さにもう気持ちがユルユルに緩んでいてブフフと笑っている自分が気色悪い。

道は舗装されているので味気ないけど半面歩き易くて良かった。これだったら登山靴をはいてくるんじゃなかった。
周りを歩いている人を見ると7割の人がハイカーで残り3割が観光客といった感じだ。

紅葉の向こうが開けて目の前に岸壁が迫った。
ネットを見ると一ノ倉沢の紅葉の画像はたくさんあるけれどマチガ沢の画像は見たことがなかった。
それがどうだマチガ沢もしっかり紅葉している場所だったのだ。

マチガ沢から見上げる岩壁は想像していたよりはるかに大きかった。
そして紅葉した木々とはまるで住み分けているようにその後ろに屹立している岩壁は神々しいほどの静寂に包まれていた。

これまで西黒尾根は何度も登ったことがあるけれど巌剛新道は一度も登ったことがないので、まさかこんな場所があるとは知らなかった。それにしても巌剛とはゴッツイ名前を付けたものだ。

振り返って白毛門を眺める。
山肌が錦の秋色に染められていて素晴らしい。
谷川岳の山々がこんなに紅葉するものだとは知らなかった。
それに、しつこいけれど、ネットに一ノ倉沢の紅葉の画像はたくさんあるけれど白毛門の画像も見当たらなかった。全く予想していない風景に出会えたのだ。

白毛門の山頂付近を見るとすでに灰色になっているので紅葉は終わっているのだろう。
今まで秋の谷川岳に登ったことがあるけれどその時見ていたのは谷川岳の紅葉のほんの一部だったのだ。


谷川岳には何度も登っているけど初めてやって来たマチガ沢。ここも十分素晴らしい場所。


錦色のマチガ沢。何でこんな場所知らなかったんだろう?

マチガ沢から一ノ倉沢へと進んで行く。もう頭の中は期待でいっぱい。
駐車場みたいな広場の向こうに、まるで壁だ、でっかい白い壁だ、これが一ノ倉沢なのだ。

今まで勘違いしていたことに気が付いた。
西黒尾根を登る際に右側に見えていた岩壁は一ノ倉沢ではなかったのだ。
もう全然岩肌の色が違っている。

想像していたより大きく、そして白い。圧倒されそうなほどの迫力だ。
ロッククライミングをやる人はよくもまあこの急峻の岩壁を登ろうと思うものだ。

白い岩肌と紅葉のコントラストが素晴らしい。
多くの観光客がこの景色を見に来る理由がよく分かる。
燃えるような赤や黄色の色鮮やかさと冷厳な岩壁が重なる様は優美さの中に迫力を感じる雄大な景観だった。

ただ非常に残念なのは白い岩壁に陰が出来てしまっていること。
一ノ倉沢は谷川岳の東側にあるので午前中、それも早朝に来訪した方が良いみたいだ。

風景写真の基本は人工物(人を含めて)が一緒に写りこまないこと。
だからプロの写真家が撮った一ノ倉沢の写真の中に弁当を食べているオバサンが写っていることなんてありえない。(あったとしたらそれはそれで面白いけれど)
僕もそこまではこだわらないけれどやっぱり知らない人が写ってしまうのは後で見たときに白けてしまう。
一ノ倉沢は人があまりに多い。沢の岩の上で食事をしている人も多いので一ノ倉沢の写真を撮ると何かの御食事会みたいな絵柄になってしまう。

1、2枚撮ったところで、もっと撮りたいけれど人が少なくなった帰りにまた撮れば良いや!と考えて先に行くことにした。
このことを後悔することになる。写真は撮れるときにとっておけ!なのだ。


フカフカ紅葉のトンネルを歩いて行く。散策コースはこうでなくちゃ!


目の前に一ノ倉沢がでーん。この時、後で撮ろうと思ってしまって撮ったのがこの一枚だけ。


一ノ倉沢を少し登って振り向くとそこには紅葉した白毛門の姿。沢の岩に座って休憩している人多い。

一ノ倉沢から幽ノ沢へ向かってすぐの岩に遭難者慰霊のプレートが数多く付けられていた。
見失っていたもの、一瞬で空気感が変わって頭が何かを探して彷徨っている感じがした。
一ノ倉沢のもう一つの姿は流れゆく時代の中で今も深く息づいているのだ。

道が未舗装に変わったことで何だか落ち着く。ここから先に向かう人も少なくなったせいもあるかもしれない。一ノ倉沢にいた人の半分以下だと思う。


一ノ倉沢から幽ノ沢へ行く人は少なり、道も土になるけど逆に雰囲気はアップ。


幽ノ沢へ向かう道からは絶えず紅葉の山々を眺めることが出来た。

右手に白毛門の紅葉を眺めながら歩くこと20分で幽ノ沢へ着いた。
ここにも紅葉と岩壁の織り成す秋の風景が展開されていた。
ただ一ノ倉沢と比べると少しスケールダウンした感じだ。

「幽」という字から連想するのは幽霊しかないけど(僕だけ?)幽の意味は「奥深く静かな様」なので特に怖い場所ではないのだ。


幽ノ沢へ着いた。ここも素晴らしい場所。この先まで歩きたかったけれど・・・


幽ノ沢からの白毛門の紅葉。写真では分かりづらいけれど自分の周りは雲の影になっていた。


ほんの数分ですっかり曇り空になってしまった幽ノ沢。ここから来た道を引き返す。

写真を撮ろうとしていると急に周りが暗くなった。
見上げると一ノ倉岳の向こうから大きな雲が次々と流れて来て太陽をすっぽりと隠してしまった。
別に曇っているわけではないので弁当でも食べながら雲の切れるのを待ってたけれどけど次から次に流れて来るのでずっと日陰のままだった。

ここから川沿いの道を戻りことも考えたけれど、もう一つやりたいことがあったので来た道を戻ることにした。


戻って来た一ノ倉沢もやっぱり雲の下。雲空だけど逆に岩壁に陰は無くなった、けど・・・


確かに戻って来た一ノ倉沢に人は少なくなっていたけれどまさか曇りになるとは思わなかった。

巌剛新道に展望台があり、そこからマチガ沢の眺めが良いと聞いたので登ってみることにした。
帰りの電車の時間を考えると余裕は1時間しかない。地図を見ると展望台の表記がないのでコースタイムが分からない。
登りで30分、降りで30分かかるとしてはたして30分で展望台まで行けるのだろうか?

登山道の所々には水が流れている個所があるので滑らないように気を付けて登って行く。
展望台という位だから稜線に登るのでは?と思っていたけれど道はマチガ沢沿いに登って行くばかりで全く眺望が開けない。

途中で降りて来た男性に展望台までどれくらい掛かるか尋ねると登山口から1時間位らしい。
登り出して既に30分経っていた。かなりハイペースで登ってきたのでもしかしたら展望台へ着くかもと思ったけれどそんな感じは全くしないので残念だけど途中で引き返すことにした。


マチガ沢も朝とは違った景色。この後、展望台を目指して登るけど敗退する。


心惜しいけれど帰る時間です。一ノ倉沢、マチガ沢は曇ってしまったけれど白毛門はずっと晴れていたのだ。

マチガ沢まで降りると今日の散策も終わりだ。

今回歩いたコースは登山指導センターから幽ノ沢まで平坦なので楽に歩く事が出来た。
谷川岳の紅葉を発見する一日だった。今後登山コースを選択する時に参考にしようと思う。

心残りは来るのがもう一時間でも早かったらもっと素晴らしい景色に出会えたのでは思うとちょっと悔しい。

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