常念岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆6月25日
立川 (0:29) +++ 穂高駅 (4:52/5:05) === 中房温泉 (6:00/6:15) ---合戦小屋 (8:40/8:50) --- 燕山荘 (9:50/9:55) --- 燕岳 (10:25/10:35) --- 燕山荘 (11:00/11:20) --- 大天井岳 (14:20/14:35) --- 大天荘 (14:40) --- 常念小屋 (17:05) (テント)
◆6月26日
常念小屋 (4:30) --- 常念岳 (5:50/6:15) --- 蝶ヶ岳 (9:30/10:10) --- 長堀山 (10:45) --- 徳沢園(12:15/12:20) --- 明神 (13:05/13:10) --- 上高地 (13:55/14:40) === 新島々 (15:50/16:08) +++ 松本 (16:37/16:59) +++ 八王子 (19:03)
山日記 (6月25日)

穂高駅を出ると直ぐ前を歩いていた男性がチラチラと目で合図を送ってきた。
もちろん彼はホモ野郎ではない。
「相乗りでどうですかぁ!バスより早く着きますよ!」タクシーの誘いに男性がどうよ!視線を送ってきたのだ。
だけどここはしらんぷりだ。タクシーに乗る→バスの乗客が減る→バスが廃線になる という図式になってはバス利用の多い僕にとってそれは非常に困ることなのだ。こんな場合はガンとしてバスに乗るのだ。
バスは小型なので意外とスピードが速い。タクシーが早く着くといってもそんなに変わらんとじゃなかか?と思いながら中房温泉に到着。
中房温泉のすぐ東には有明山がでぇーんと構えているのでまだ朝の日差しは届かず、目ざめる前のどこかボンヤリした夜明け前といった空気に包まれている。空を見上げるとそこに澄んだ青空は無く、今の季節特有の白く霞んだ空が張り付いていた。

あまり食欲がなく、強引にオニギリ一個を口に押し込む。
歩き出す前から何だか体が重いな!と感じていたんだけど歩き出すと鈍い針で刺されているみたいにズキンズキンと頭が痛み出した。
あちゃーっ、こりゃ完全に二日酔いだぁ!だいたい飲みすぎなんだよ!自宅でビールや焼酎を散々飲んでおきながらムーンライト信州号の中でもワインをがぶ飲み。
これも久しぶりの山だし、それも北アルプスだし、それに新装備も仕込んできたし、そんなあれやこれやの期待でパンパンに膨らんでいるところへ、乗った信州号はガラガラでゆったりと旅満喫気分で出迎えられちゃー、もーこれは飲むしかないな!となったわけだけど・・・
しかしもんどりうつまで飲むなってのぉ!飲んでいる時間があるんだったら少しは眠れってのぉ!

それにしても登りだしていきなりの急登、これは二日酔い&徹夜の体には相当にこたえる。マブタは重く、口は半開き、足はヨレヨレ。やべぇー、こんなんじゃ燕山荘までだってやばいよ?とかなりヨタヨタ状態で登って行く。
ドカドカと後ろから8人の男女パーティーが登って来たと思ったら、その8人に一気にぶっちぎられてしまった。
何て早いパーティーだろ!いわゆる中高年と言われる年齢だけど、きっと燕岳まで日帰りピストンするんだろうな!とボンヤリとその背中を見送った。

第一ベンチを過ぎると、それまでの急勾配だった道がいくらか緩やかになり、少し歩くのが楽になった。

第一ベンチで和気アイアイの二人


第三ベンチ付近で展望が開けた


登山道にはコイワカガミが群生
第二ベンチの前辺りで僕よりもっと歩くのが遅い奇特な女性を追い越した。これってナゼだか分からないけど、自分と同じようにバテバテになっている人を見かけると自分のバテバテが嘘のようにスーッと消えていく。バテバテは肉体的なものだけれどそこには精神的な作用が何か働くのだろうか?というわけでこの女性を追い越したら気分が少し楽になった。
更に第三ベンチまで登るとそれまで体の中でドロリと淀んでいた錘が風に飛ばされてしまったかのようにスッキリと無くなってしまった。こうなるとオレは恐いぜぇ、行くぜぇ、絶好調だぁ!!!

第三ベンチの少し手前で、ほんの少しだけど初めて西側の展望が開けた。大天井岳までの稜線が木々の間からパリッと見えた。初夏の山は峰々を覆う緑の中に散りばめられた白い雪がキリリと輝き、それがインパクトとなって全体の景色を一層輝かせている。
おもわず大きなため息がもれる、目の奥がズンと重くなる。今日始めての出会い、その一瞬のきらめきでさえこんなに素晴らしいのだ!この先どんな景色が待っているのか!期待に胸が躍る。

第三ベンチの上にも富士見ベンチなど整備されベンチが並んだ場所を次々と通過して行く。
登山道に花崗岩が目立つようになり、勾配が緩やかになると合戦小屋は直ぐだ。
ここまで登って来るとさすがに空がデカイ!この小屋はスイカが名物なのだけれどさすがにまだ置いてなかった。「まだ水は引いてないんですよ!」との小屋番さんの声に水筒の水を全て飲み尽くしたらしい男性がガックリしていた。「燕山荘に水はありますから頑張ってください!」と励まされている。
合戦小屋からは潅木が増え、景色が見える比率が多くなりワクワク度も増していく。「おーし、いいぞ、いいぞ!」と鼻の穴をおっ広げる。
その時、視線の先に稜線の向こうにそびえる槍の姿をキャッチした。

合戦小屋 まだスイカはなかった
水もなかった!がっかりしていた。


何故かここに鬼がぁ! もしかして?小屋番さんは良い人だった。

槍、発見しました!
木々の間からてっぺんだけが覗いています

今回の山登りは4月頃から楽しみにしていた。
理由の一つは河童橋からの穂高岳を見ること。観光パンフなどにも使われている余りにも有名なこの風景。僕が山登りを始めたきっかけになったのもこの風景の写真を見てからなので今でも何度でも見てみたい憧れの光景なのだ。
それからそれ以上に心の中で憧憬となっていたもの・・・それは昨年登った槍ヶ岳をきっちり見ることだ。一度登った山を今度は少し離れた場所から見る。または逆に遠くから見ていた山に次は登ってみる。こうやって記憶の点を線でつなげて行くと、色々な山を巡る旅をしているみたいに自分だけのストーリーが心に描かれていく。
昨年の槍が余りにも素晴らしかったので、あのままで終わったんじゃ余りにももったいない。どこか近くの山からストーリーの続きを描きたい!春になって歩けるようになったら槍との再会を・・・と5月連休からずっと思っていたのだけれど、それがなんやかんやで今になってしまった。
・・・あれから9ヶ月経って槍との再会!あの矛先に立っていたんだ、グルリと遥かな空を眺めていたんだ、むこうからこっちを眺めていたんだ!コマ落としの映画のように映像がフラッシュバックする。もちろんウルウルと涙腺がゆるんでしまうまでは無かったけれど”つながった”感動は大きい。

合戦小屋から登って行くと稜線に飛び出します。大天井岳までの稜線が一望出来る。

合戦小屋から歩き出して15分、稜線上に飛び出すと燕山荘の赤い屋根が空にポッカリと浮かんでいた。その横には燕岳が花崗岩の白い山肌を見せている。ここまでくれば、あとはゆっくりと登って行くだけだ!と幾度となくシャッターを押しながら赤い屋根を目指した。

燕山荘前に立つ。そこにはでっかい展望が広がっていた。
穂高から槍はもちろん、双六、鷲羽まで壮大な景色!ちょっと白く霞んでいるのだ残念なんだけれど、どうしてどうしてその迫力はそんなもんじゃー隠し切れはしない。
この景色をずっと横に眺めながら大天井岳まで歩けるのかと思うとムフフと自然と笑みがこぼれて来る。

イルカだったりする


穴が空いていたりする


砂山みたいなてっぺんだったりする

これは後のお楽しみに取って置いてとっ!その前に燕岳だ!
小屋前のテーブルにザックを置き、カメラだけ持って花崗岩のカタマリッ!を目指して歩く。
この稜線はミヤマキンポウゲやハクサンイチゲの花が白い砂礫の道を華やかに変えている。
ガァー、グェー、ハイ松の中から雷鳥の鳴き声が聞こえる。(声を文字にするのはムズカシイ!)チッチッとヒナの声もするけど姿は見えない。
そして花崗岩の白い波。鳳凰山も良いけれどここもまた素晴らしい。色んな形の岩、それらが寄り集まってまた複雑な形を造っている。自然は偉大な芸術家だと思う。色んな形があるのにどれをとっても、どこを見てもちゃんと”完成されている!”ように思えるから不思議だ。

燕岳の山頂は広くない。デッカイ岩の上の少し小さなカタマリと言う感じでが5,6人も立てば満員になってしまう位の大きさだ。
花崗岩は岩の角が丸くなっているので山頂というより何だか砂浜にでも作った砂山の上に立っているように感じる。
高瀬川を挟んで槍ヶ岳、双六岳、鷲羽岳、水晶岳と臨む眺望はまさに天空の砂山だった。


燕岳山頂からの展望 この右側にも素晴らしい景色が控えていたのだけれど入りきれないので泣く泣くカット!

燕山荘前のテーブルでオニギリを食べながら作戦を考える。
これから大天井岳まで行くか、それともその先の常念岳小屋まで行くか、燕山荘への到着時間、それから疲労度を考慮して決めようと思っていた。優秀な山ヤだったら登る前にキチンとしたストーリー決めておくものだけれど・・・
到着時間は予定より1時間早い、体調も絶好調!と言うわけで今回のコースの中間地点である常念岳小屋までは行けそうである。
ただここでウダウダと悩んでいるのは大天井岳からの槍ヶ岳がとてつもなく素晴らしいからなのだ。常念岳小屋は鞍部にあるのでテントからのドーダ、マイッタカ度は大天井岳の方が高い。
ここでもう一つの悩みは水だ。大天井荘はまだ営業していないので水が無い。大天井岳で幕営するのであればここから4Lの水を持っていかなくてはならない。常念岳小屋で幕営するのであればそこまでに飲む分の1Lですむ。


ハクサンイチゲ 燕岳への道は砂礫になって咲いている花が変わった。

ミヤマキンポウゲ 花弁に見えるのはガク。本当の花弁はおしべを取り巻くオレンジ色の部分


小屋の前には・・・
あなたは確か!!!

常念岳小屋にするか大天井荘か、水4Lか1Lか、ここで決めなくてはいけない!
・・・散々悩みに悩んで常念岳小屋まで行くことに決めた。確かに大天井岳のマイッタカ度は高いが次の日の上高地までの道程が長くなってしまう。到着時間から逆算すると大天井岳を朝の3時に出発しなくてはならない。
朝早くから歩くことは屁でもないけれど大天井岳から常念岳までの、あの展望が良い道を真っ暗な中で歩くのではあまりにももったいない。(今にして思えば大天井岳から上高地まで一気に歩くのはかなりシンドイことだった。何も悩まずに中間地点の常念岳小屋まで行けば良かったのだ。)

燕山荘の受付の女性スタッフは明るくてシャキシャキで美人で応答が心地良かった。
「今年の梅雨は雨が少なくて大天井岳東側はあまり雪が融けていません。夏道は雪の斜面をトラバースしなくてはならないので、雪の無い直登ルート(冬道)を登って下さい!」とのことだった。
夏道に雪があって、冬道には無い?何だか紛らわしいけれど、とにかく直登すれば良いのだ。
それから大天井荘は営業前だが準備の為、もう人は入っているとのことで宿泊も出来るし、水もあるということだった。
これを聞いて益々気が楽になった。大天井岳まで行ってみてどうしてもそこで泊まりたくなったら泊まれば良いのだ。


小屋の前のテーブルで休憩中の人々 北アルプスの山々の展望が良いです。なぜか映画”家族ゲーム”の食事シーンを思い出してしまう。

どぉりゃー!オレは行くぜぇ、けっ、ここからたった約5時間の歩きだ!
水1Lを買ってザックに放り込むと意気揚揚と常念岳小屋へ向かった。

燕山荘からの道はアップダウンも無く、本当に展望を楽しみながら歩くのには最高の道だ。道の両脇を飾る花の種類も増え、遠くも近くもダブルで楽しみに満ちている。


はたまた花の種類が増えて、大天井岳への登山道にはイワウメが沢山!


花も増えて行きますが雲もドンドン増えて行きました。


この写真を撮ったら買ったばかりのカメラが擦れて傷だらけになってしまった

この道はゴールデンウイークや夏の間は登山者の長い列が出来る。自分のペースで歩けずにイライラする道だ。僕にとって自由気ままに歩く事は何より重要なことだ。それが単独行を続けている理由でもある。今日は人が居ない!嬉しい!こうなると行け行けドンドン!と歩く事が楽しい。
ただ失敗したな!と思ったのは燕山荘を出て直ぐの場所は花崗岩が作る日本庭園のような景色とその奥の槍ヶ岳の姿が相まって何ともいえない景観だったのに、歩き出して直ぐだったのでザックを降ろしてカメラを取り出すのが億劫でそのまま行ってしまったことだ。やっぱり、写真は良いなと思ったらそこで撮っておかなければ後悔するってこと!


燕岳と燕山荘を振り返る 雪のように白い山肌が青空に映えます

大天井岳の下に立って上を見上げるとてっぺんは遥か上方で、しかもかなりの急登だった。でもここさえ登ってしまえば常念岳小屋へは再び平坦な道が続くのだと思えば気分は楽だ。
教えられたとおり冬道を登って行く。冬道というと雪がある期間だけ歩かれているので踏み跡は無さそうな感じだけれどしっかりと付いていた。多分、直接てっぺんに立てるので雪の無い夏の間でも歩いている人が多いのだろう。

大天井岳を目指して歩いてゆくのだ

今日の天気予報は晴れのち曇りだった。その予報が当って、午前中は晴れていたが午後1時頃から段々と雲が多くなって行き、大天井岳山頂に着いた頃にはドンヨリとした灰色の雲が頭上を覆ってしまった。
良い時もあれば悪い時もある!ここから臨む槍ヶ岳の姿は最高とは言えないけどこれで終わりってわけじゃない!
燕岳から大天井岳までの稜線上にはもうほとんど雪は残っていないけど、向こう側の槍ヶ岳周辺はまだまだびっしりと雪が残っている。その雪の白と岩の黒とのコントラストがこんな天気でも山を際立たせている。山が立体的に見える、白一色増えただけで鮮やかだ、なんたって高い山のイメージが放たれる。

雪に覆われた冬や、雪が完全に融けてしまった真夏の山も良いけれど、もしかしたらその真ん中にいる今が一番綺麗なのかもしれない。これで晴れていたらタマンナイことになっていたぞ!
・・・それがせっかく頑張って登って来たのに目の前の槍の姿は雲の下だ。残念!!!
山頂で三脚を立てていた男性は、ここからの槍の写真を撮るためにやっぱり今朝、中房温泉から登って来たらしのだけれど三脚を構えたもののこれじゃーシャッターが押せないよ!と嘆いていた。


大天井岳山頂からの槍ヶ岳
雲よ!あっちに行け!と思った


ちくしょーっ!今回はこれで我慢しよう!と思った

大天井岳を後にして歩き出す 天丼が食べたい!と思った

大天荘は建て直されたのだろうか?思ったよりずっと綺麗だった。外の景色を反射させるほどきれいなガラス窓から中を覗くとまだ準備中だと言う事だったが食堂は整頓され小さなオレンジ色の灯りがポツリポツリと点っていた。ここで夏に暮れ行く景色を眺めながらビールを飲んだら最高だろうな!と思うけれど、今は人が少ないからそんなノスタルジックな雰囲気になるのかもしれない、あの真夏の人でごった返した山小屋を思うとそれはヤッパリ難しいかな!とも思う。
山頂に二人、それから小屋前のテーブルに二人の計四人が今日の客らしいけど空いててラッキーですね。

ほんなこつ、気持ちの良い尾根歩き

天丼が無性に食べたくなった。
実は昨夜、信州号に乗る前にコンビニで、どうしたわけか昼の分のオニギリだけで朝食を買い忘れてしまった。穂高駅前でコンビニを探したけれど見当たらず、結局、昼食用に買ったオニギリを朝食べて、明日の昼食用に買った菓子パンを今日の昼食として食べることになってしまった。ただパンは腹持ちが悪くて直ぐに空腹感に苛まれてしまう。
ここでオヤジギャグを炸裂するつもりはないけど丹沢の鍋割山荘で鍋焼きうどんが名物になっているようにここ大天井でも天丼を、それも大盛りの大天丼を出したらおもしれーのに!とマジで思った午後二時の大天荘だった。

大天井岳から常念岳小屋までは地図のコースタイムで3時間の道程だ。コース途中に東天井岳、横通岳と二つの山があるけれど登山道はどちらの山もピークは踏まず斜面を巻いているのでアップダウンが少なく歩くのが楽な道だ。
大天井岳山頂に立った時点でさすがに疲れていたけれど、この先は楽なのが過去2回の縦走で分かっているのでペース配分にも気を使わない、のんびり歩いていれば3時間後にはテントでお酒が飲めるのだ!

この道は今日一番の花畑だった。ミヤマキンポウゲやチシマギキョウがアチコチで咲きにおっている。それからぼくがいくら花にウトクてもこれは葉っぱを見ただけでそれだと分かるコマクサ、コマクサの花は咲いていなかったけれど群生している場所にはロープで囲いがあった。そんな囲いが道の両脇にあっちにもこっちにもある。あと半月もすればここは花の女王で飾られることになるんだろう。


ハイ松と雲 槍ヶ岳の西側は雲っているのに東側は晴れている


東天井岳はハイ松と残雪の山

いよいよ常念岳が近づいて来ました

空には雲が多く、いくつもの雲が頭上をこえてゆく。
目の前に常念岳が迫って来た。見下ろせば赤い屋根の常念小屋、それに色とりどりのテントが見える。

やっと着いた!!!ヘトヘトに疲れているわけではないけど、ゴールを目の前にするとただもうそれしか考えられない。
小屋前のテント場には10余りのテントの数、テントの外で食事をしたり雑談したり。家族連れの姿も多く、テント場というよりキャンプ場といった明るい雰囲気だ。小屋の前でも宿泊者の姿が多く、食事までの時間をのんびり楽しんでいる。
小屋で受付を済ませてテント場へ、空いている場所はいくつかあるのだけれどどこも地面が平行ではなく傾いた所ばかりだった。地面のデコボコはマットでカバー出来るけど傾きはどうしようもない。
小屋前のテント場は良い場所は残っていなかったので、そのすぐ横にあるもう一つのテント場に行ってみた。そこはテントが5つあるだけでガラガラ状態だった。小屋前のテント場は家族連れや夫婦らしいパーティーが多かったけど、ここは何故かソロの男性ばかり!
テントを設営すると小屋に水を買いに行った。燕山荘では200円/1Lだったけどここは100円/1Lだった。ポンプで下の沢から汲み上げているそうで3L買ってテントに戻るとその沢の水にウイスキーをたっぷりと注ぎ込んだ。


あそこが今日のゴール

しもたぁー、防虫剤忘れたー!テントの横で水割りを飲んでいたらブンブンと虫がうるさい。今まで何度か北アに来たけど虫が多いという印象は無かったので持って来なかったのだ。今の季節はどこの山も虫が多いのねー!!!
しかし、なんでだよー!周りを見ると外で食事したり雑談している人も居て、5,6匹の虫の来襲を受けているわけなんだけど、なんでだよー!僕だけ・・・僕だけ200匹くらいに囲まれている。虫のハートをわしづかみにするフェロモンが出ているのに違いない、やったぁー!・・・なんて思うわけねぇだろうー!
汗臭い?酒臭い?なぜか分からないけど、もー、虫の執拗なジャブ攻撃にイライラ来てテントの中に退散するしかなかった。


明日は夜明け前に常念岳に登るぞ!


だんだんと夕闇に暮れていく常念小屋

雲が多いけれどそれでもしっかりと太陽は沈んでゆく

6時半頃になると空が赤くなり始めた。テントを出てアンテナが建つ所まで登って行った。どこもそうだけれど虫は夕方から朝までは居ないものなのでもう虫に悩まされる事はなかった。

小屋やテントから人が出てきて皆、思い思いの場所座って夕日を眺めている。
日が沈むまでのこのわずかな一時は時の流れが柔らかで気分が落ち着く時間だ。普段の生活の中では決して味わえない山だけの時間が流れている。
陽が完全に沈んでしまい、夜への助走を始めるとそれまで空を眺めていた人がいそいそと小屋やテントに戻り始めた。

明日はこの山に日の出前に登るのだ。てっぺんでご来光を見るのだ!と常念岳を見上げる。
ジグザグの登山道が夕暮れの中で白くかすかに浮き上がっている。
その上空には残照に紅く染まった雲を従えていた。

二日目へ続く
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