笠ヶ岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆7月27,28日
横浜(21:30) ===新宿バスターミナル(?/?) === 新穂高温泉(5:45/6:00) --- 笠新道登山口(7:05/7:30) --- 杓子平(11:55/12:00) --- 稜線分岐点(12:20/12:35) --- 笠ヶ岳キャンプ地(13:40/16:10)  --- 笠ヶ岳(16:30/17:00) --- 笠ヶ岳キャンプ地(17:15) (テント泊)

◆7月29日
キャンプ地(4:20) --- 抜戸岳(5:20/5:45) --- 弓折岳(8:00/8:30) --- 鏡平山荘(9:25/9:40) --- 水場(10:45/11:15) --- ワサビ平小屋(12:00/12:10) --- 新穂高温泉(13:00/13:40) === 松本(15:52/16:06) +++ 八王子(19:02)

山日記

台風の影響で土日の天気予報は雨だったが金曜・朝の天気では急に晴れに変わった。新穂高行バスに電話してみるとまだ空席があった。笠ヶ岳に行こう!
本当はもっと早く行きたかったが膝が痛くなり先に北岳に行って足の様子を見ることにした。膝を痛めていて急登に対して臆病になっていたのだ。笠新道のあの等高線の狭さに逃げてしまった。でも北岳山行で膝痛は再発しなかった。
こうなると一転して「待ってろよ!笠新道。けえっ!急登5時間がなんだ」と態度を変える僕だった。

5時の終業のブザーが鳴ると会社を飛び出した。残業をやる仲間には悪い気がする。“キャロライン洋子”似の中田さんもまだ頑張っていた。しかしキャロライン洋子の苗字はキャロラインなんだろうか?子供の頃から気になっていたが今だ分からない。


笠ヶ岳 昨日は何も見えなかった。今日は良さそう。
自宅に帰り、ザックに装備を詰め込んだ。忘れ物が無いように持ち物チェックリストと2回も確認した。 横浜からシャトルバスで新宿に向う。新宿バスターミナルには尾瀬や上高地へ向うハイカーが集まっていた。いつもそうだがこの雰囲気!バスの発車を待つ僕の心は決死隊に出撃する合図を待つ兵士のように勇んでしまうのだ。
車中でウトウトしては休憩に起こされ、ほとんど寝た気がしないまま新穂高温泉に到着。林道を歩き、笠新道登山口からいよいよ登りになった。急登を覚悟していたがジグザグ道なのでそれ程急登でもない。
九州訛りの4人パーティーが僕の前を歩いていた。ザックの良い感じのくたびれ方や服装からも山慣れした感じがビシビシと伝わってくる。特に僕の印象に残ったのは僕の鈍足に比べてすごい勢いで登って行くということだ。
30分程登っていると休憩中の彼らを追い越した。亀歩行で登っているとまたしても彼らがドカドカとすごい勢いで登ってきた。上から見ていると他の登山者も彼らの勢いに慌てて道を譲っているのでまるで人をラッセルしているように見える。一度は追い越されたが10分程登っていると彼らは休憩していたのでまた追い越してしまった。この兎と亀バトルを数度と繰り返しながら杓子平らに到着した。
登山道には「ここは○○mです。槍ケ岳、穂高岳の展望地です」と札がある。ガスって何も見えないのでこの「展望地です」の言葉は頭に来る。札を外して谷底に投げ捨てたくなる。

朝焼けに槍ケ岳のシルエット
晴れていればさぞかし素晴らしい場所に違いない。しかし無情にもガスで何も見えない。
「夜行バスに揺られてせっかくここまで来たのに何も見えない」とふてくされた気分で歩いていると前から4人の女子学生が楽しそうに歌を歌いながら降りてきた。
最初は「うるせーなー、こいつら!」と思ったが、屈託のない笑顔を見ていたら「こいつらは天気の悪さを気にせずに単純に山登りを楽しんでいるんだ」と思った。山に費やした時間と金銭の代償に素晴らしい景色を要求し、満たされないとくさっていた自分が恥ずかしい。自分なりの山を発見し、それを楽しもうと反省させられてしまった。
僕の前を学生6人パーティーが歩いているのだが、登山道脇の草地を歩いているのが気にかかる。草が枯れて歩道が広がるという自然破壊につながる。
しかしこの僕もそのことを最近知ったのだ。単独行の僕にそのことを教えてくれる人は無く、道がぬかるんでいたりすると歩き易い草地を歩いていたのだ。無知な自分を後悔して今はどんなに歩きづらくても登山道からはみ出ない様に歩いている。
ここは学生達本人の為だ注意しよう。「気分を悪くするかもしれない」「逆上して殴り合いになるかもしれない」と色々考えていたら気が付けば亀の僕は置いていかれてしまっていた。

抜戸岳からの笠ヶ岳
杓子平から稜線への最後の登りだ。稜線まで登れば笠ヶ岳までは楽に行ける。60歳過ぎらしい女性がほとんど四つん這い状態で登っていた。カッコ悪いと思う。しかしもっとカッコ悪いのはその女性にどんどん引き離されている僕だ。つくづく僕は自分が「鈍足だ、鈍亀だ」ということを思い知らされてしまった。

稜線上の登山道を笠ヶ岳へ向うが相変らずガスっていて視界ゼロ。何となく歩いて笠ヶ岳テント場へ着いた。

「フッ、フッ、フッ」別にバルタン星人の真似をしている訳ではない。「フッ、フッ、フッ」とどうしても笑みがこぼれてしまう。キャンプ地の残雪で作る“ウイスキー雪ロック”の旨さは酒飲みの僕にはたまらない。残雪が有ることは事前に電話で山小屋に確認しておいたのでつまみも沢山持って来たのだ。
テント場でウイスキーを飲みながらガスが消えるのを待つが4時になってもガスは一向に取れない。展望は望めそうに無いがとりあえず笠ヶ岳に登ってみることにする。
酔っ払ってフラフラ歩きながら山頂に到着。山頂は予想通りガスの中だがガスの切れ間から時折、雄大な播隆平が見えた。

岩と残雪と花畑が印象的な秩父平
他のパーティーのガイドをしていた小屋番さんの話ではここで播隆上人がブロッケン現象に神を感じ、この時はるか彼方に天を突いてそびえる槍ケ岳を望み登拝を決意したのだそうだ。また頂上は石英斑岩のガレ場であるが岩が崩れ落ちて年々標高が低くなっている?とも言っていた。

翌朝、2時半に起きる。テントのファスナーを開け外の天気を見てみる。晴れへの希望と曇りへの落胆が交差する瞬間である。テントから頭を出してみると深青の空に千の輝きを見た。そこには満天の星空が広がっていた。

朝食にはいつもカレーライス、味噌汁、コーヒーにクッキーでエネルギー充電完了!まだ暗いが気分良く出発した。
振り返ると笠ヶ岳へ登る人の列が光の筋となって山頂まで続いている。20分程すると東の空が赤くなり始めた。穂高岳から槍ヶ岳までの山並みが朝焼けにシルエットで浮かび上がる。その時である、槍ケ岳の上空を西から東に青紫色の光粒が流れていった。人工衛星だろうか?分からないけどそこに神秘的なものを感じてしまった。この光景を見たのだろう、笠ヶ岳山頂からの歓声がここまで聞こえた。
昨日は白いどん帳に隠れていた周りの景色が今朝はすっかり姿を表している。中でも蒲田の谷をへだてた穂高岳から槍ケ岳への岩峰はやはり圧巻だ。ただ周りの登山者があまりにも付和雷同に「槍、槍、槍ケ岳」と唱えるのでニセ槍(小槍)を覗かせた槍ケ岳は自尊心の高い横顔に見える。

弓折岳山頂 少しはなれた所に展望が良い場所がある
抜戸岳から見た笠ヶ岳は周りの山々と少し離れているので堂々としているがどこか寂しそうに見える。
笠ヶ岳から弓折岳へは登り降りが余り無い道なので爽快な稜線歩きが楽しめる。弓折岳から槍ケ岳は逆光でいまいちの展望だが反対方向の青空を背景にした双六岳のなだらかな山容は素晴らしかった。これだから山登りは止められない。双六小屋の奥には鷲羽岳が見える。ずっと見ていると心が体から離れ、遥か立山まで続く稜線まで飛んで行きそうだ。
ここまで来るとさすがに北アルプスらしくテント泊の大きいザックの人が目立つ。頭の後ろに兜の角みたいに丸めた銀マットが突き出ていてこれが中々カッコ良いのだ。
鏡平の池は逆さ槍を見るビューポイントらしく大勢の人がいた。僕もここで写真を撮るが槍は薄雲の中で霞んでいた。
小池新道は良く整備されているので歩き易い。膝を痛めないように降り道はいつもゆっくり降るようにしているのだが岩の上を弾むように歩いていたら予定よりも早く降りることが出来た。
途中の沢でラーメンを作って食べた。前回(北岳)の山行で他の人がラーメンを余りに旨そうに食べるのを見て「次の山行ではラーメン食べよう。絶対食べてやる!」とひそかに心の中で思っていたのだった。これで大願成就することが出来た。めでたし、めでたし。

弓折岳付近から見た双六岳
ガイドブックに新穂高温泉の無料温泉が記述してあったので僕としては珍しく温泉に入っていくことにした。やっぱり温泉は気持ち良かぁー。湯の中に手足を伸ばすとこの二日間の疲れが溶け出していくようだ。
湯から上がって着替える木綿のTシャツと短パンの感触も心地よい。
浴場から出るとまだ濡れた髪に風が爽やかだ。
そこに松本行き直行バスがすべりこんできた。ふっ!きまりすぎだぜ。
松本へ向うバスの中、自分の山行について考えてみた。山行形態は低山から始めて高山へ、季節も夏から春、秋、冬へとステップアップしていったつもりである。しかし、いつも単独行であるため他人から教えられることは無く自分の経験から学ぶ知識の域を出ない。登山道の草地歩行の件でもパーティー登山する人は良識あるリーダー等から学ぶだろう。他の人が1年で習得する知識を僕は10年かけて学習しているのかもしれない。歩行速度にしても他の人に比べると遅いようだ。どこか間違った歩き方をしているのかもしれない。
初日、展望の無いガスの中で花を観賞し、楽しそうに花の名前を教え合う夫婦を見た。僕はといえば天気が悪いことに不機嫌歩行。比べてみると僕の山登りはあまりにも貧困だと思えてならない。花、草木、野鳥それに星座の名前などを知っていたらより充実した山行なることだろう。これから少しずつでも勉強しようと思う。それが僕の進化論だ。
僕は二人掛け座席の通路側に座っているのだが、僕の前方に座っている人が振り向いた時、視線が僕で止まるようなことが数回あった。気になって全身を見てみた。靴を脱いで座席に立膝をして座っている股間から横チンしていた。さっそくだが短パンの下には必ずパンツを履くことを学んだ。

参考

新穂高温泉バスターミナル:無料温泉、トイレ有り
笠新道登山口:水はホースから出ている。
杓子平:登山道が抜戸岳寄りに変更されていた。1箇所残雪からの流水有り。(要確認)
笠ヶ岳山荘:8月中旬まで残雪からの流水(要確認)それ以降は小屋から1リットル/100円
秩父平:残雪はあるが流水はしていない
鏡平山荘:小屋から1リットル/100円
小池新道:沢、数箇所有り
わさび平:水場(小川)有り

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