鶏冠山、笠取山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 10月18日
塩山(7:35) === 大菩薩登山口 (8:02/8:10) --- 丸川峠分岐 (8:30) --- 丸川峠 (10:00/10:05) --- 寺尾峠 (10:30) --- 六本木峠 (11:20/11:30) --- 黒川山 (12:15) --- 鶏冠山 (12:25/12:30) --- 見晴台 (12:45/12:50) --- 六本木峠 (13:30/13:35) --- 柳沢峠 (14:10/14:25) --- 柳沢ノ頭 (14:52) --- ハンゼノ頭 (15:15/15:20) --- 鈴庫山 (15:45/15:50) --- ハンゼノ頭 (16:15)

山日記 (やっぱり地味な山 編)

ソロ(単独登山)の良い点の一つは自由に計画を変更できること。
だけどそれは妥協、気楽という誘惑との戦いでもある。

土曜の朝3時、無神経な目覚ましの音で起こされる。
睡眠時間は3時間・・・やっぱり眠い。
ぼんやりとした頭でザックのパッキングを始める、あーっ温かい布団が恋しい。
もう一度ベッドにもぐりこんだらどんなに気持が良いだろう。

重いザックを背負って山に登るのも面倒くせーっ!
いっそ今日の山登りは止めて一日ソファーに寝転がってDVDでも見てようか?
それとも友人を誘って何か美味しいものでも食べに行こうか?

ソロの山登りはこんな誘惑との戦いから始まるのだ。




塩山で大菩薩登山口行きのバスに乗ったのは9人だった(全員が登山者ばかり)。
これでも意外と多いと思う。だって甲斐大和駅から上日川峠行きのバスに乗れば歩きが2時間も短縮出来るから。

大菩薩登山口でバスを降り、自販機の缶コーヒーを飲んで歩き出した時にはもう他の8人の後姿さえ見えなかった。
皆さん、歩くの速ぇーな!

丸川峠分岐から20分ほど林道を歩いて行くと登山道はいよいよ山へと登って行く。

いきなりの急登に額から汗が流れ落ちる。
立ち止まると汗の冷たさに思わずブルッと体が震える。
季節はもうすっかり秋なのだ。

30分ほど登ると少しなだらかになった。と同時に紅葉している木々が多くなった。
木々の向こう側に赤や黄の光の塊を見つけると思わず歩調が遅くなる。

歩き出して2時間、丸川峠は静けさの中にあった。

小さな丸川荘の屋根から薄っすらと白い煙が昇っている。
小屋をポツンと真ん中に置いて周りはほんのり薄化粧したような木立の静寂。

丸川峠分岐には10台以上の車が停めてあった。
皆さん大菩薩峠の方へ行ったのだ。

ザックを降ろしてコーラを飲んだ。
空は抜けるような青さだった。


何も探しはしないのだ! 丸川峠の草原には誰もいないから。木道をはさんで反対側はもっと紅葉していた。


何だかなーっ、心がゆったりするなーっ!


丸川峠の丸川荘も静けさの中。

丸川峠から鶏冠山への道、この道は初めて歩く道なのだ。
ずっと以前から大菩薩嶺から笠取山まで繋げて歩きたいと思っていた。
だけどこのコースは地味なのだ、どうしても優先順位が下がってしまう。
地味な道でも秋はキッチリ彩ってくれそうだ。そんな感じがした。

先月の八幡平もそうだったけれど今回もまた熊鈴を忘れてしまった。
今回のルートは登山者が少なそうだし心配なのだ。
と思いつつ歩いていたら前から黒い物体が・・・何のことは無い、上下黒い服の男性だった。

だけど上下共に黒い服は無ぇーだろ、センス悪りぃー男だな!
そう思って自分の服を見ると僕は上下共にグレーだった。

地味だな!センス無ぇーな!

丸川峠から六本木峠まで登山道の登り降りはほとんど無く平坦な道が続いた。

日が当たる場所は紅葉、日陰の場所は苔むした道と両極端な風景が繰り返され、静かな木漏れ日の中、のんびり歩く事が嬉しくなる道だ。


決して派手ではないけれど紅葉を透かした光がしっかりと足下まで届く。それは小さく嬉しい事だと思う。

「あーっ海、行きてぇー!」

六本木峠でオニギリを食べていたら柳沢峠から3人組の男性が登って来た。
その3人に中で一番若そうな男性が「あーっ海、行きてぇー!」と叫びながら丸川峠の方へ歩いて行った。

なぜ海に行きたい人が山に登っているのだ?無性に理由を知りたい衝動に駆られた秋の日。


北側の日陰はこんな苔むした緑の登山道。


六本木峠にはもちろんクラブやディスコは無い。

フィトンチッドの香りが強くなった。
六本木峠から横手山峠までも平坦な道だったけれど横手山峠を過ぎると緩やかな登りになった。
大した傾斜ではないので紅葉を眺めながらのんびりと歩いて行く。

実に困った。
黒川山は達成感の全く無い山だったのだ。ただの峠だったのだ。

満たされない愛の形。
欲求不満になりそうなので休憩無しでとっとと鶏冠山へ向った。

木々の向こう側にチラチラと岩壁が見えている。
鶏冠山は乾徳山みたいに山頂付近が岩場になっているのでは?
これはかなり期待出来るぞ!

何だかあっさりと鶏冠山頂へ着いてしまった。

ゴツゴツした岩の山頂は広くは無い。
小さな祠があって標柱の裏にひっそりと山梨百名山の文字があった。
大菩薩嶺の眺望は良いけれど逆光なので悲しいくらいのシルエット状態だ。

僕にとって鶏冠山は大菩薩嶺の奥に位置しており地味な印象だった。
ところが六本木峠から黒川山までの間に8人の登山者とすれ違った。
人気がある山なのだ!もしかして隠れ名山!と行く気満々になった。

やっぱり地味な山だった ・・・それは

満たされない愛の形。


ここが黒川山となっているけど見晴台が山頂なのでは?


鶏冠山頂は一方が崖になっているので眺望は良い。


鶏冠山頂からの大菩薩嶺は大きい、今向こうの山頂はにぎわっているんだろうな!こっちは一人。

黒川山の見晴台は分岐から緩やかに登って5分の所だった。

盛り上がった岩の上に立つと北西方面の展望が良く乾徳山や金峰山が見えた。
明日歩く笠取山までの稜線も見えたけどそれは思ったより遠くて少しヘコンだ。。


黒川山の見晴台からは奥秩父の山々を臨むことが出来た。ここも一人だけのヒッソリとした山頂だった。

六本木峠から柳沢峠へ降る途中で道はブナ坂とナラ坂とに分かれていた。

六本木峠からあまり下がってはいないのにこの辺りの紅葉はまだ先のようだ。

どっちを歩こうか?
柳沢峠へはナラ坂の方が近そうだ。それに新緑のような木々の緑に誘われた。


六本木峠から柳沢峠へ向う道は紅葉と苔の道だった。振り返って見た六本木峠は唐松の紅葉が素晴らしい。

柳沢峠で水を確保しなければいけない。
だけどトイレの水道には「この水は飲めません!」としっかり書かれていた。

ドライブインの前にはバイクが20台ほど停まっているのにライダーは店の外で喫煙中。
店の中には誰もいない。

何も買わない僕に店のおねえさんは嫌な顔一つせずに水道を使わせてくれた。


バリバリの柳沢峠の唐松の紅葉はもう少し先みたいだ。


柳沢ノ頭は晴れてはいるけど雲が多くて何も見えません。

柳沢ノ頭への登山道は駐車場の奥にあった。
ただ行先標示が「三窪高原」とくくりが大きい。

柳沢ノ頭は眺望の良い山頂なんだろう。
だけど雲があって何にも見えない。

柳沢ノ頭を降ると広い草原になっていて休憩所とトイレがあった。
休憩所の中にテントを張ろうかとも思ったけれど直ぐ横が藪になっていて暗い雰囲気だったので止めた。


次々と目の前に現れる季節の1ページ。
三窪高原はどこも登山道(散策路)がしっかり整備せれていて休憩所やトイレも設置あり。

休憩所からすこし登ると広い山頂のハンゼノ頭、ほぼ360度の展望だ。

ネットで調べるとハンゼノ頭は富士山と夜景の好展望台となっていた。
だけど富士山はしっかりと雲に隠れているし、周りの山々もうっすらと白く霞んでいた。
山頂の方位標示盤によると富士御坂山嶺や南アルプスもズラリと目の前に並ぶはずったのに。


ハンゼノ頭は富士山と夜景の好展望地なんだけどこの日は雲が多くて何も見えず。
大菩薩嶺からこの辺りは気温の変化や気圧の変化があると雲が出易いらしい。

テントを張るには早いし、かと言って何も見えないし。
山頂にザックを置いて鈴倉山へ行って見ることにした。

鈴倉山への登山道は地図では点線表記の難路となっているけれど整備もされていて歩きにくい箇所も無かった。ただあまり踏まれていない感じだ。


広くは無い鈴倉山頂には甲府市を見下ろすように小さな石碑がポツンとあった。
この山頂も雲が無ければ富士山や市街地がキッチリ見えるんだろうなとちょっと寂しい感じがする。


鈴倉山頂は狭いけど西側の眺望が良い山。


鈴倉山からハンゼノ頭を見ると紅葉が素晴らしい。

夕方4時を回ると傾いた太陽の光も赤みを帯びた。

もう誰もやって来ないだろうとテントを広げると ・・・7人の登山者が登って来た。
6人パーティーとソロ一人だったけれど皆さん富士山の眺めを期待していたようなのでこの眺望にはがっかりしていた。

話を聞くとハンゼノ頭は柳沢峠から近いこともあり、夏は山小屋の灯りが点々と山頂まで続く富士山、冬は雪をまとった荘厳な富士山の姿を割合簡単に眺めることが出来る人気スポットらしい。

下の休憩所辺りに熊のフンがけっこうありましたよ。今夜は気をつけて下さい!
6人パーティーは柳沢峠にテントを張るらしくしばらく休憩すると降りて行った。
先月も奥多摩の川苔山で登山者が熊に襲われる事件があったばかりだ。
山頂付近には熊のエサになるようなものが無いので来ないとは思うけどやっぱり心配だ。

後に残ったソロの男性から以前撮影した富士山の画像を見せてもらっていたけれど気になることがあって会話が中途半端になってしまった。

そう、クライマックスシリーズ、ホークス対ファイターズの四戦目があるのだ。

テントを張り終えると直ぐにラジオを付けた。
温かいコーヒーが旨い。

今夜は冷えると思ったのでビールでは無くてウイスキーを持って来た。
500mlの飲みきりサイズ、ちょっと少ないかなとも思ったけれどホークスが勝ったので気持ち良く酔っ払った。


時計を見ると夜中の12時。
あーっ鹿の夜襲だよ。キューンキューンと鳴く。やたらとテントの周りを走り回る。
どうしてこんな真夜中に騒ぐ必要があるんだ?

眠らせろ!

忘れじの山になる日 編へ 続く
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