霞沢岳 |
|
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆10月23日 ◆10月24日 |
|
山日記 焼岳から上高地を眺めた時、東の方向に寂しそうに一人取り残された山があった。霞沢岳だ。 |
徳本峠から見た穂高岳 |
夜明け前、精算所に僕は立っている。ここ新島々から上高地行きのバスに乗り換えるのだ。そのためにここまでの精算とバスのチケット購入のため並んで待っているのだ。 夜行電車で揺られてあまり寝ていない。今日一日の山行を考えると上高地までのバス中でもう一眠りしたい。しかしここの精算所は下車した人が一度に押し寄せるので何時も混んでいて中々バスに乗り込むことは出来ない。朝のヒンヤリとした空気に体は段々冷えて頭は覚醒するばかりだ。 |
やっとバスに乗り込んだら僕の席は補助席でバスがカーブを曲がる度に大揺れ状態。結局、一睡も出来ず上高地に到着。 上高地から徳本小屋を目指した。途中、明神から分岐点に「徳本峠から岩魚留小屋までは登山道破壊のため通行止め」の掲示が有る。バスターミナルの喧騒が嘘のように人も急に少なくなりなんとなく不安になる。 徳本小屋に宿泊の予約をしていなかったので霞沢岳に登る前に立ち寄ることにした。 僕「あの、今日泊まりたいんですが」、 小屋番さん「ウーム。。。」 |
霞沢岳から見た焼岳 |
霞沢岳への登山道は樹林の中で展望は無い。歩いていると昨夜の睡眠不足の影響か?「ウトウト」と眠くなってしまう。ハッと目が覚めると道を外れて危うくブッシュの中に突っ込みそうになったり、夢と現実が交互に繰り返されるのでなぜ自分は歩いているのか一瞬分からなかったりと夢遊病者のようにフワフワとした足取りで進む。(今考えるととても危険!)天気もガスっていて晴れているのか曇りなのか僕の頭と同じではっきりしない。 霞沢岳に到着したがガスっていて何も見えない。先着していた二人のパーティーもそそくさと降っていった。風が少しあったので木陰で昼食を食べた。 このまま下山してつまらないので少し昼寝でもしようかと砂地に寝転がったが頭はぼんやりしているが眠くはない。 |
霞沢岳から見た穂高岳 |
「仕方ないもう下山しよう!」と腰を上げた時、ほんの一瞬ではあるが雲の切れ間から奥穂高岳の薄琥珀色した岩壁がちらりと見えた。男はチラリ見えが好きである? たちまち体内にアドレナリンが分泌され血糖値は高まり、心臓はバコンバコンのフル回転状態。先ほどまで休暇中だった脳も「隊長!準備できました!」と報告してきた。 |
雲の切れ間を狙っての写真撮影。焼岳、乗鞍岳もだんだん大胆になって露出度が大きくなってきた。そのうちに雲はほとんど取れて目の前に360度の雄大な展望が広がった。中でも西穂高、奥穂高、前穂高ががっちりとスクラムを組んだ姿には圧倒されるばかりだ。 もっと待てばもっと雲が取れそうであるがそろそろ下山しなければならない。最初ガスのせいで諦めていた展望を見ることが出来たのでなんか徳をしたような気分になって帰り道は気分良く歩くことが出来た。 |
蝶ヶ岳からの展望 何時来てもここからの眺めは素晴らしい |
明神館に着いた時には既に暗くなりかけていた。通された部屋は通常の山小屋に見られる大部屋とは違い二段ベット式になっていた。自分の場所が確保できたのでゆっくり休むことができた。なんといっても風呂があるのが嬉しい。汗も疲れも湯で洗い流してしまった。 |
ここの宿は登山者だけではなく上高地散策の一般客もいる。食堂での夕食時、周りの客を見てみると一般客の豪華な食事に比べて登山者の食事は少し質素である事に気がついた。僕を含めて登山者は宿泊料金を倹約しているらしい。 でも食欲は負けていない。登山者は何回もご飯のお代わりをしていた。隣の席の人はおしんこだけで飯2杯の合計4杯食べたいた。今日槍ヶ岳から降りて来たと言っていたが山登りだけではなく飯を食うのにも気合が入っている。 次の日。予定では徳本小屋に泊まり、大滝山経由で蝶ヶ岳に行くつもりだったが予定変更して徳沢園 - 長堀山経由で行くことにした。 |
横尾への分岐点からの展望 穂高岳から槍ヶ岳までが一望できる |
蝶ヶ岳山頂は快晴だった。このパノラマとは5年前の夏以来の再会だが相変わらず素晴らしい。今は夏とは違って山の色も鮮やかな緑から深い褐色に変化している。青く澄んだ秋の空の下で眺める穂高岳、槍ヶ岳はどこまでも端麗でそれでいて力強く威圧感さえある。 山は崇高で単租である。だからこそ永遠であるとあらためて感じさせる景色である。 |
今回は小屋泊まりでザックが軽い。おまけに天気も良い。横尾への下山道、ここは一つ歌でも歌いたい気分だが普段カラオケ嫌いの僕は歌える曲が思いつかない。仕方ないのでバルタン星人の物まねを練習することにした。物まねしながら歩いていると急に樹林帯からぱっと開けたところへ飛び出した。ベンチで休んでいた夫婦が不思議そうに僕を見ていた。「フウー、フ、フ、フ」と言いながらいきなり飛び込んできた男を見てバカな奴だと思ったに違いない。恥ずかしくてそこで休憩など出来やしない。足早にその場を離れた。 |
●山麓をゆくへ |