乾徳山、徳和渓谷 |
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆5月6日 |
山日記 「んなろーっ、見とれっ!」とGWの山登りは行く前から、もうそれは気合十分だった。 なにせ1月に愛鷹山へ登ってからほぼ5ヶ月間もどこの山へもお邪魔していない。ネットで山登りのサイトやブログを見ては「今に見とれっ、オレだって!」と鼻の穴を膨らませていたのだ。 GWの計画は前半は北アの蝶ヶ岳〜燕岳だろっ、そして後半は谷川岳だろっ、と完璧だぁ。 ところがいざGWへ突入してみると恨めしいかな晴天が続かない!仕方なくあれこれ計画を練り直しているうちにとうとう連休最後の日になってしまった。 まさかGWの山登りが日帰り登山になろうとは・・・! 軽い憤りとめまいを感じながら計画を立て直す。日帰りでは遠出はとても無理、残雪の雪は諦めるしかない・・・さてどこへ行こうか? とにかく遠くを見よう!色んな山を見てやろう!これが今回のせめてものキーワードだ。 それで選んだのが乾徳山。標高2016メートルで展望が良い山なのだ。 塩山発のバスは満員で座ることが出来なかった。 バスの中の乗客の顔は一通り観察してしまったし、他に何か面白いことはないかな?と思っていたら突発的に車窓の外に富士山が見えた。御坂山塊が黒くシルエットになってその向こう側に真っ白い頂の富士山が顔を覗かせている。車内が急にザワザワし始めて数人が携帯電話で撮影し始めた。オレが最初に見つけたんだよ!まー良いけど。 乾徳山登山口でバスを降りたのは僕を含めて 5人だけだった。 空を見上げるとそこには抜けるような青空が広がっていて、バス停前の小川は黄緑色の草でびっしりと覆われている。周りの木々も黄緑色で風が吹く度にまぶしく光をキラキラ乱反射させている。 おーし最高の登山日和だ! Tシャツ一枚になって歩き出す。周りに山々を眺めると山の中腹辺りまでびっしりと緑の濃淡に覆われていて、その上はまだ薄茶色を残している。 道路の両脇には民宿が閑散と並んでいてちょっと寂しい雰囲気だ。以前来た時に地元のお婆さんに聞いた話によると、数十年前の登山ブームの時には登山者は前夜、徳和の民宿に泊まり、翌朝に列をなしてゾロゾロと乾徳山へ登る様子が見られたらしい。 だけど最近では日帰りの登山者ばかりになってしまいどことなく村全体に元気が無くなってしまったと嘆いていた。 そういう話は丹沢でも聞いたことがある、以前は麓や途中の山小屋に多くの登山者が泊まってのんびりと山頂を目指していたらしいけれど今は日帰りのハイカーばかりだそうだ(オレもそうだけど)。最近では北アの燕岳でも中房温泉から日帰りでピストンする登山者がいるらしい。最近は都会だけではなく山までがどことなくせっかちなってしまったって事なのだろうか? |
長尾の滝。緑の中の滝、好きな感じです。 |
徳和神社で地球の平和を祈ると舗装道路を緩やかに登って行く。30
分ほどで登山口へ着いた。 今日は帰りのバスまでに少し時間があるし、乾徳山へ登るだけでは少し歩き足りない感じがするのでその前に徳和渓谷を散策することにした。 登山口から10分ほど登って行くと徳和渓谷遊歩道の入り口に着いた。 入り口のすぐ近くに最初の滝、夢窓の滝があった(いきなりメルヘンだ)。林道からわずか10メートルほど下がっただけで流れ落ちる水の音に周囲の音が忽然とかき消された。岩の間をすり抜けた光が水しぶきを照らし無数の光の粒を作っている。滝の落差は3メートルほどで水量は多い。 写真を撮ると次の滝へ向かった。遊歩道は川に沿ってつけられていて小さなアップダウンを繰り返しているのでヘトヘトに疲れた。山に登る前にこんなに疲れてしまっていいのだろうか?全く予想以外の展開に軽くへこんでしまった。それでも新緑の眩しさ、川のせせらぎに柔らかく包まれていると清しくて何とも気持ちが良い。 |
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遊歩道を歩く人はあまりいないのか? |
夢窓の滝。渓谷の最初にある滝。 写真から受ける感じより実際は大きい。 |
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荒神の滝。一番見ごたえがある滝。 んーん、写真では滝の奥行きが出ていないのが残念。 |
乾門の滝、白虎の滝、滝神の滝、柳滝・・・ もうどこがどの滝だか分らない・・・ただ雰囲気は良い。 |
来た道を登山口へと戻って行く。 |
国師ヶ原は良いーんだよっ!僕の横では学生たちのテントの設営が始まった。羨ましい限り! |
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銀晶水は地面がしっとりと湿っている程度で水は出ていなかった。 銀晶水を過ぎた辺りから岩が多くなり、前方を見上げると生い茂った木々の向こうに青空が透かして見えた。もう少しで着くのでは?などと思いながら登っていると錦晶水へ着いた。 とうにペットボトルは空になっていたので水が出ていて助かった。ここの水が涸かれる事はほとんど無いらしいから余分な水は持って来なかったのだけれどパイプから流れ出る水の量は指くらいの太さしかなく意外とか細い水場だった。 すくって口に含むと冷たくてほんのり甘い。 ここは冷たい水でのどを潤し、腰を下ろして一息したくなる場所、実際休憩している人が数組いたけれど僕は水を補給するとすぐに出発した。 歩き出すとすぐに登山道の傾斜が緩やかになって、やがて平らになった。前方を見ると草原の向こう側に乾徳山の山頂付近の岩場が見えた。国師ヶ原だ。 それにしても乾徳山山頂って周りの風景から浮き出た存在だ。 山頂の周りは緑の木々に覆われているのに山頂だけゴツゴツとした黒っぽい岩がむき出しで、その存在がどこか突然すぎる。 連立する木々の向こう側の景色にボーッと見とれていると先ほど錦晶水でポリタンクに水を汲んでいた学生さんらしい男性が登って来た。行き先を目で追っていると先の方にデカイザックがいくつかデポしてあった。どうやら今日はここで幕営するらしい。 今の時期って大学登山部の新人合宿の時期なのか?あっちこっちの山で幕営する学生の姿をよく目にする。それにしても良いよなー!天気予報では今日から3日間は晴天が続くと言っていた。今日で連休終わりの僕にとっては羨ましく歯軋りしたいようなザックの大きさだった。 |
扇平付近は草原になっていて黄金色一色。草原の中を縦横無尽に歩き回る人がいるらしく。自然破壊が心配。 |
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あまりここで長居をしていると学生のザックにバックドロップしてしまいそうな気がするので,視線を前方に向け金色の草原をひたすら登って行く。 振り返ると塩山市街地の向こうにでっかい富士山が見えた。前回、来た時に富士山が見えた記憶がないのでこの展望は意外だった。それに富士山はかなりデカイのだ。距離的には隣の大菩薩嶺より離れているはずなのにこっちの方が大きく見えるのはなぜだ?それは富士山のかなり下の方まで見えるためだと思う。それにしても市街地の向こうに見える富士山はエエよなー!夜景も綺麗なのではないかな?今度はテントを持って来ようかな!などと企んでしまう。 西の方向に視線を移せばそこには奴らがいた。 南アルプスの白峰三山だ。南アルプスも前回来た時には気がつかなかった?もしくは見えていたけれど記憶に残らなかった?以前のオレ、何やってんだ! 残念なのは富士山も南アルプスも逆光ぎみで白く霞んでしか見えないこと。午前中だったならもっとクッキリとその姿を拝めたに惜しい! 扇平からはもうすぐ目の前に岩の塊が迫っている。 ここからは樹林帯の中を登って行く。たまにでっかい岩が行く手を塞いでしまって岩場が苦手な僕はその度にドキッとするのだけれど岩に取り付いてみると鎖も付いているし意外に簡単に登れることが出来た。 |
乾徳山山頂への最後の関門。 「どーぞ、登ってきて下さい!」声がかかる。 さあ、行きますか! |
途中に西側が大きく開けた場所があって富士山や南アルプスの展望が良かった。ただそこは切れたった崖の上なのであまりは端には近寄らないようにしていたら、後ろから
T シャツにクライミングパンツ、指には白いテーピングのいかにもフリークライミングしてます風の男性が登って来た。 これでチョークバック中身が携帯電話だったら怒るけんね!と思っていたらスルスルとほとんど絶壁の崖にしがみついた。そして一緒に登って来た来た女性にアレヤコレヤと岩の登り方を伝授していたんだけれど、ザイルはもちろん安全確保用のロープも付けていないので見ているこっちの方がヒヤヒヤした。 そして最後の岩場、これを登れば山頂なんだけれど、その前に立ちはだかるのはツルリとした一枚岩。 高さは3メートルくらいなのだけれど縦に一本クラックがあるだけで突起がほとんど無い。 岩登りに長けた人だったら何の苦もなくよじ登ってしまうのだろうけれど、そこは岩場が苦手なオレ、岩登りの技術の無いオレ、不器用なオレ、ただ鎖をつかんで強引によじ登って行く。 3メートルの一枚岩を登って後は2メートルほど登ればそこが山頂だ。 |
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頭上いっぱいに青空が広がった。 |
乾徳山山頂。岩ゴツゴツで弁当を広げる場所も無い。 ただ展望は良いよ、360度の展望。 |
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山頂で展望を楽しみながら今日2回目の昼食にした。 今回試してみたい食物があった。それはウイダーインゼリーだ。以前、山で一緒になった女性が「私、山では食欲が無くて食事がノドを通らないの、それでもっぱらこればっかり・・・」と食べていたのがゼリー飲料だった。お菓子類を全く食べない僕にとってこの発想は無かったし、今まで食べたことも無かった。 ゼリー飲料は大きさも重さもオニギリ1個分でしかも栄養バランスが良い。特にこれから暑くなる季節でも傷む心配がないのも嬉しい。これは良いかも知れないとそのうち試してやろうと思っていたのが今日になってしまった。 食べてみたら味はレモン味でそれほど悪くない。ゲロみたいな食感がちょっと気持ち悪いけれど冷やして食べたらそれなりにイケルかもしれない。 ただお腹はどこか満たされないような感じがする。隣に座っている二人組が食べているカップラーメン・・・こっちの方が正直美味しそうなんだよな。 結論・・・ゼリー飲料は食いしん坊には薄幸な食べ物だった。 そろそろ下山の時間だ。 地図を見ると山頂から少し北へ行って左に曲がる道が下山道となっているけれど(何でだろう?岩場で登る人と鉢合わせしないようにか?) バスの時間まで余裕が無いので、最短距離である、登ってきた道を扇平まで戻り、道満尾根から道満山を経て徳和まで降りることにした。 |
乾徳山山頂からの展望、左から黒金山、牛首。牛首の後ろに甲武信ヶ岳、右に笠取山、飛龍山と続く。 黒金山の左には国師ヶ、金峰山とあるのだけれど写真に入りきれない。 実際にはどの山ももっと大きき見えたはずなのに写真ではその感じが伝わらない。 |
岩場は登りより降りる時の方が難しいと言われているけれど、どの岩場も上から下を覗くとあまり高さを感じなくて、これじゃ落っこちても死なないな!て思ったら気が楽になって、そうしたら意外とスンナリ降りてしまった。 扇平に道満尾根への分岐標示があったので付近の草原の中をアッチコッチ歩き回ったけれど道が見つからない。 10分ほど道を探したけれど見つからないので諦めて分岐点まで戻り、登って来た道を下っていたら何のことはない、すぐ下の月見岩から道満尾根への分岐があるではないか! 道満尾根は展望は良くなかった。ただひたすら降って行く。 道満山山頂も展望は無い、無いどころか山頂を示す標示が無かったらそのまま通り過ぎてしまいそうな山だった。 登山道からいきなり畑の中に降り立った。 畑には人影があって GW なのに働いて人がいるんだな!とじっと見ていたら顔がひょっこりと上がって「今日は一日晴れて良かったですね」。こうした何気ない一言に幸せな気分は突然やってくる。 車の音・・・街の喧騒が少しずつ戻って来た。僕はバス停へ向かって歩いて行く。 昔は乾徳山へ登る人はそれは多かったんですよ!お婆さんの言葉をふと思い出して、後ろを振り返ったけれどもう乾徳山は見えなかった。 何かを見つけたのかな?小鳥たちがせわしなく新緑の木々の間を飛び回っているのが見えた。 |
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