金時山、明神ヶ岳 |
|
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆12月15日 |
|
山日記 今年最後の山登りは日帰りで箱根の金時山に富士山を見に行く事にした。本当は土日で一泊登山を計画していたが前日の金曜日が忘年会では土曜日の朝、早起き出来るわけがない。早起きどころか二日酔いで一日寝ていることになるだろう。 小田原で大雄山線に乗り換える。3両電車に4人しか乗っていない。暖房は入っておらず、座席に座っていると足元から寒さがジワジワと伝わってくる。車窓から見える家々の屋根は霜で真っ白になっていて一層寒さを感じさせる。 |
|
矢倉岳山頂はススキの原で広い |
「でっけぇー!」目の前にドカンと雪景色の富士山だ。突然の雄大な姿に思わず頂上に駆け登ってしまった。富士山はすぐ近く、空気が澄んでいるせいもあり五合目まで覆われた雪の風紋の感じまでが伝わってくる。富士山上空は空路になっているのか?数本の白い飛行機雲が青い空の下、富士山に向かって延びている。 矢倉岳山頂は広く、金時山、愛鷹山、富士山など西側の展望が良いカヤトの原になっている。東側は丹沢山魂のてっぺんが木々の上に少しだけ見えた。2m位の展望台があり、その上に登ると三つ峠山魂も見える。 |
風も無く、気温もだいぶ上がった頂上は気持ち良く、おにぎりが美味い。もう少し暖かければ昼寝をしたいような場所だ。 矢倉岳から足柄峠に向かう登山道は山の北側で雪の量が多く10cm位、吹き溜まりでは20cm位積もっている。杉の植林の中を歩いていると時々、葉にたまった雪が重さに耐えられなくなって「ドカドカ、ザザッ」とかなり大きな塊が落ちてきた。こんなのが頭に当たったらたまったもんではないが「誰か他の人の頭に落ちたら面白いな」と悪いことを考えてしまう。 僕の前を歩いている男性は登山者ではなくハンターみたいだ。向こうは自分が動物と間違われて撃たれないように蛍光色の服を着ているがこっちは黒のフリースなので誤って撃たれるんじゃないかとドキドキする。せめて撃たれた時に「なんじゃ、こりゃー!」とジーパン刑事の真似が上手く出来ると良いのだけれど。。。 万葉公園は万葉集に詠われている歌を刻んだ歌碑が雪の中に点在していた。休憩所、トイレはあるが水は無い。ここからの矢倉岳を見ると展望が良かった割には低く「せっかく登ったのにあんなに低かったのか!」とがっかり来てしまった。山の名前には○○山というのと○○岳とがある。この違いは分からないけれど○○岳だと標高が高い山だというような感じを受ける。だから。。。できたら矢倉岳にはもう少し高くなって欲しい。 |
|
金時山山頂 とにかく人の多さに驚いた |
しばらく右手に富士山の展望を楽しみながら歩くとやがて林道は車両止めになり、ここから道は緩やかな登りとなった。 丸鉢山は、表示がないと分からないほど緩やかな山頂であるが西側の展望が良く、富士山や御殿場市街が眼下に広がっている。丸鉢山山頂から少し降るといよいよ金時山の登りになる。”いよいよ”と言うのも今まで歩いてきた道とうって変わって急登になるのだ。おまけに北側斜面なので雪が多く階段状の梯子もいくつかあり大変そうである。滑らないように注意して登り30分で山頂に到着した。 |
山頂に到着すると直ぐに富士山の姿を探したのだが人の陰に隠れて見えない。富士山を落ち着いて見れる場所を探すのに苦労する。少し下がった所の岩の間にやっと空いている場所を探してザックを降ろし、改めて富士山とのご対面となった。ここから見る富士山もでっかい! 茶屋の人だろうか?展望の説明をしている。こんなに綺麗に富士山が見える日は少ないと言っている。だけどこれだけ近いのだからどんな天候でも良く見えると思うのだが。。。まあここは素直に喜んでおかなきゃ金太郎さんに悪い。 富士山山頂は快晴なのだけれど5合目から下はどんよりとしたモヤに隠れている。左の方に見える愛鷹山も山頂だけがモヤの上に飛び出した格好だ。眼下に見える千石原はモヤの中で逆光に反射して白くぼんやりしている。なんとも不思議な光景である。 それにしても「金時山」と書かれた看板の前は撮影ポイントらしく次から次に人が並んでいる。僕も看板の横に立って記念写真を撮りたかったが、そういうことにかけては要領が悪いのでとうとうそのチャンスは無かった。「けぇっ!ここよりも矢倉岳や足柄峠からの富士山の方が良かった」と負け惜しみで茶を濁すしかない。金時山は標高が低いので登るのには疲れないが小心物の僕には何かと疲れる山だ。 昼食におにぎりを食べる。おにぎりは気温が低くなるとご飯が硬くなってとたんにマズくなる。食べる5分前にポケットに入れて暖めた。本当はパンを持って来たかった。この季節、テルモスに熱いコーヒーや紅茶を入れて来てサンドイッチなんかを食べると美味い。しかし今朝。流しに用意しておいたテルモスをザックに入れるのをすっかり忘れてしまった。しかたなくコンビニでペットボトルのお茶とおにぎりを買ったのだ。 金時山から矢倉沢峠に降る登山道はすごくぬかるんでいた。靴は泥だらけ、ズボンも泥だらけ、歩くたびに靴の裏に土が重なり合ってくっ付き足が重い。僕の前を歩いているやたら話し声の大きいおばさんによると「登る時はまだ凍結していてそれほどでもなかった。気温が高くなったのと大勢の人が歩いたせいでこれほどグチャグチャになってしまった」となぜか楽しそうだ。「ズックなど短靴で歩いたらとんでもないことになりそうだ」と思っていると短靴の人が登って来た。やはりとんでもないことになっていた。 |
|
矢倉沢峠から火打石岳へ向うと途中 竹に覆われた金時山 |
金時山から降ってくる途中から見た明神ヶ岳までの登山道は竹林の中の道で展望が良く、歩きやすそうに見えた。ところが矢倉沢峠から歩き始めて直ぐに雪の重みでしな垂れた竹が登山道をふさいでいた。道が広い箇所では除けて通れるが狭い場所ではしな垂れた竹が作るトンネルの中をしゃがんで歩かなければいけなかった。竹のトンネルは高さ1mほどで大人がしゃがんでやっと通れる位の大きさだ。トンネルの中を通過している時、天井部を背中で押そうものなら絶妙のバランスでしな垂れている竹の雪が跳ね上げられ、大量の雪が頭の上から落ちてくる仕掛けだ。 |
それにしゃがんで歩いている状態では地面の竹や草などの障害物を避けづらく余計疲れた。 竹トンネルが無い所では視界が開け、緑の竹に覆われた金時山を見ながら爽快な気分で歩くことが出きる。だけど竹トンネルが行く手を遮ると途端に憂鬱な気分になってしまう。一番最悪なのはトンネルが上手く形成されていない箇所である。こういう箇所は強行突破あるのみで強引に竹を押しのけて進むしかない。何度竹のビンタを食らったか分からない。あーっ!、僕にSMマゾッ毛があったなら気持ち良くてたまらないかもしれないが、その毛は無いのでやっぱり痛いだけだった。トンネルを一つ通る度にズボン裾の泥汚れがお尻から腿にかけて広がっていくのにも腹立たしい。 火打石岳近くまで進んで来た時、竹トンネルの向こうから話声が聞こえてきたので待っていると、反対から60歳位のパーティーがトンネルを進んできた。そうしたら先頭のおばさんが竹に足を獲られて思いっきりコケたのが見えた。笑っちゃいけないと思うのだけれどおばさんが真っ赤な顔をしてトンネルから出て来たのを見るとどうしてもこらえきれなかった。「この先、こんなトンネルはまだ有りますか?」と僕がニヤニヤしながら尋ねると「いや、ここだけです!」という返事だ。どうやらこれが最後のトンネルらしくホッとした。 パーティーとすれ違う時心の中で「トンネルはここだけじゃないんだよ。この先、いくつもあるんだよ」と教えてあげようと思ったけどトンネルを抜け出してほっとしている顔を見るとそんな残酷なことは言い出せやしなかった。 竹林を抜けると一変して雑木林になるが100mほど歩くと突然視野が開け明神ヶ岳が正面に見えた。竹のトンネルを抜けた開放感と展望の良い稜線に嬉しくなり歩いていると反対から来た10人くらいのパーティーは「この先の道はどんな様子ですか?」と暗い表情だ。「竹のトンネル状態です!」と答えると「やっぱりそうですか。。。」とここの分岐点から宮城野にエスケープするかどうか思案していた。宮城野への標識は有るのだが道は完全に雪に埋まっていて分かりづらそうだった。 明神ヶ岳への登り道は展望が良く足を止めて振り返りと富士山や金時山が見える。反射板が立つ地点まで登るとそこから山頂まではほぼ水平の道を歩き頂上に到着した。 |
|
明神ヶ岳山頂 富士山とその下に見える丸い山は金時山 |
明神ヶ岳頂上には富士山をさえぎる物は無く、素晴らし展望が待っていた。 この時間だと富士山は逆光になり白けて見えると予想していたが左後ろからの光で上手い具合に陰が出来てより立体的に見えた。ここまで来る間に竹にビンタはされズボンは泥だらけになったがこの景色を見せられては許してあげるしかない。 山頂には僕の他には60歳位の男性が一人だけだった。その男性が「富士山綺麗ですね!」と一言だけ言うと富士山に視線を移した。二人で黙ってずーっと富士山を眺めていた。 |
予定より早かったので隣の明星ヶ岳まで足を伸ばしてみることにした。明星ヶ岳へ向う稜線の登山道からはずっと富士山が見えていたが明星ヶ岳山頂は木々に囲まれて展望は無かった。 山頂で休んでいると急に日が暮れて薄暗くなりだした。「暗くなる前になんとか宮城野まで降りたい!」と思い慌てて山頂を後にした。 ところが下山道はまたしても竹が道をふさいでいた。歩きづらく前に中々進まない。どんどん周りは暗くなるので焦ってしまう。そういえば明神ヶ岳と明星ヶ岳の間の鞍部分岐点に遭難者の捜索写真が貼られているのを思い出した。やっぱりこんな低い山でも条件が悪ければ遭難の危険があるのだ。 そう考えていたら竹にビンタを食らった。またズボンが汚れた。竹が道をふさぐ。どんどん暗くなっていく。 。。。まったく自分の不幸ほど腹立たしいものは無い。 |
|
●山麓をゆくへ | ●ホームへ |