霧ヶ峰 (車山)
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆2月7日
茅野 (10:15) === 車山高原 (11:15/11:20) --- 一本樺の丘 (12:30/12:35) --- 南の耳 (13:10/13:20) --- 物見石 (13:25/13:40) --- 八島ヶ原湿原付近 (13:55/14:00) --- 物見石 (14:10) --- 蝶々深山 (14:35/14:45) --- 車山乗越 (15:00/15:05) --- 車山高原 (15:50/16:10) === 茅野 (17:10)

山日記

ミステリーをちょうど半分位読み終えたところで電車は茅野駅へ着いた。

駅そばを食べてバス乗り場に行くとそこにはすでに登山者の長い列。
やっぱ八ヶ岳へ違うな!登山者が多いとそれだけで華やいで見える、微かな熱気を感じる。
それにしてもいつもの疑問に思うことがある。
スノーシューを電車で運んでいるのって僕だけなのでは?
今まで電車でスノーシューを持っている登山者を見たことが無い(カンジキはあるけれど)。
右にストック、左に三脚、そして背中にはスノーシューを付けた35Lのザックはやたらゴタゴタとしていて、自転車で空き缶を運ぶホームレスのおっちゃんを彷彿させている。
こんなに登山者が多いのにスノーシューを持っているいる人の姿はやっぱり無かった。
まー、良いけど・・・

今年は暖冬だそうで榛名湖では氷がはらなくてワカサギ釣りが禁止になったらしいし、そう言えば途中の車窓から見た鳳凰山や甲斐駒ヶ岳にも雪が少なかった。
そしてバスの車窓から見える八ヶ岳にもやっぱり雪は少ないように見える。

バスは一路、白樺湖へ向かう。
んーん、やっぱり雪が少ない!この辺りの積雪量は10cmほどで先に見える車山の斜面も地面の草が露出していて山肌全体が薄茶色をしている。
霧ヶ峰のスノーハイクは雪が多い1月/中〜2月/下が良いと言われている。それでも心配性の僕は出発前にネットで車山スキー場の降雪量を確認して来たけれどゲレンデの降雪量125cm/滑走可となっていた。山の上ではそんなに雪が積もっているのだろうか?

中央線穴山駅からの甲斐駒ヶ岳。こんなに雪が少ないんじゃ僕でも登れるのでは?と思えてしまう。
韮崎から小淵沢まではこんな景色が車窓の外に広がっている。ただ僕は誰かさんとは違って車内でビールは飲まないけどね。

終点の車山高原(車山スキー場)でバスを降りる。
んーん、この辺りでも積雪量はわずか20cmほど、木の根元は地面が露出している。
ゲレンデの降雪量125cmと言うのはどういう訳だ!噴霧機とか降雪機とか反則技を使っているのか?
山の上にはもっと雪が積もっているのだろうか?これではせっかく持って来たスノーシューがただのアクセサリーになってしまう。

ここで登山の準備をしようと思っていたけれどロッジの前にもリフト乗り場にも僕の他には登山者の姿は一人も無くて、何となく居場所に困ってしまってそのままゲレンデ横の登山道を登って行った。

3分ほど登って行くと稜線の上へ出た。
すぐそこに白樺湖が、おーっその向こうには蓼科山がでかい、八ヶ岳も浅間山もしっかりと見える!
喧騒から離れ、こうして目前に山を臨むと気持ちが落ち着いて、同時におーし行っちゃるけんね!とファイトもムクムクと湧き上がってくる。
ここでダウンジャケを脱ぎスパッツ、グローブを付け、気合一発いよいよ山登りの始まりだ。

登り初めて3分後。
早くもやっぱりスキーリフトに乗った方が良かったのでは?と思い始めた。
バスが車山に着いたのがam11:15そして帰りのバスがpm4:10なので今日の行動時間は5時間弱しかない。5時間あれば八島ヶ原湿原まで往復出来ると思っていたけれど、こうして歩いてみると雪の積もった道は予想以上に歩きづらく、それに歩く度に足が5cmほどズボッと堅くなった雪の表面を踏み抜いてしまう。車山頂も思ったよりずっと上に見えてるし、はたして5時間で往復出来るだろうか?と不安になってしまった。
ネットで霧ヶ峰スノーシューハイクを検索するとほとんどの人が上りはスキーリフトを利用しているみたいだし、やっぱりここはリフトに乗った方が正解だったかもしれない。

バスを降りてわずか5分後にはこの眺望が待っていた。
ここでバッチリと登山準備をして登って行く。


先日、噴火したばかりの浅間山には正直ガッカリした。
煙が少ないじゃないか!灰が降ってこないかなー。

山の上でも積雪量は30cmほどしかなくて登山靴のままでも歩けなくは無いけれど、せっかくスノーシューを持って来たことだし、それに雪を踏み抜いて歩きにくいのでここは素直にスノーシューを着けることにした。
今日の天気図では等圧線の間隔が広かったので穏やかな晴天を予想していたけれど、こうして登って来ると山の上はそれなりに風が強く、雪の粉がサラサラと雪面を流れて行く。
寒さは感じなったけれど頬の感覚が無くなってきたので慌ててネックウォーマーも着けた。

車山は以前夏に一度だけ訪れたことがあるけれど登山道の記憶はかなり希薄だ。
夏道はすっかり雪に埋もれてしまっていて、たまに杭とか標示柱があるけれど道がどこだか分かりづらいのでゲレンデの端っこに沿って登って行く。
このスキー場のゲレンデは歩行禁止なので登山者はリフトを使うかこうして夏道(の上)を歩かなければいけない。

八ヶ岳を背に登って行く。リフトに乗った方が良かったかもしれないけれど、こっちの方が与えられる物が多いかも!
きっとそうに違いないのだ!


踏み跡は有るような無いような・・・
ゲレンデの横を奇妙な引力に導かれる様に登って行く。
多少風があるけれど寒さは感じなかった。

車山乗越付近にたむろするスキーヤーを尻目に一本樺の丘へ登って行く。
すると目の前が急に開け、そこに霧ヶ峰の広大な景色が広がった。
夏の山は山全体が自然の息吹に包まれていて思わず深呼吸したくなるほどの開放感に満ち溢れているけれど、冬の山は全ての物がじっと息を潜めて静止している感じだ。それでいてハッと息を飲むほどの美しさがあるから不思議なものだ。
一面に真っ白な雪原が広がり、その向こうには北アルプスの山々が蜃気楼のように青白く屹立していた。
こんなほんの一瞬のきらめきが僕を山から離れられなくさせてしまうのだろう。

おーし、一本樺の丘へ駆け上がるとそこには広大な眺望が待っていた。
一見するとここには何も残っていない、だけどそれは良い時の予感をさせる。
大気の冷たさは決して嫌いではなく、ただ中空へと僕を向かせるだけ。
誰の姿も見えない雪原を一人歩いて南の耳へ向かった。
登山道を表す杭が雪の上に道しるべとなって突き出ているし、眺望も良いので自分の位置を絶えず確認出来るので迷う心配は無かった。

木曽駒ヶ岳はただ真っ白であの下までロープウェイで行けるのが不思議な感じだ。
南アルプスはこの左側にちょっとだけ見えた。


御岳山は相変わらずどっしりとしてる。もちろん冬にも登ってみたいけどこうして眺めているだけでも良い山だった。
手前のコロボックルヒュッテも良い感じの小屋だ。


大き過ぎてまったく頭がキリキリと痛くなるような北アルプスの山々。
左から穂高連峰、蝶ヶ岳、常念岳、大天井岳へと続く。よーく見ると槍が蝶の上にちょっとだけ見えていた。
南の耳も展望が良かった。写真を撮ってウヒャウヒャ喜んでいた・・・だけど待てよ!このままゼブラ山から八島ヶ原湿原へ行くにはやっぱり時間が足りないのでは?!この突きつけられた現状に急に焦ってしまった。
ここで急遽、予定を変更し、ここから物見岩まで雪原をショートカットすることにした。
もちろん雪の上の出ている草や木の枝を踏まないように細心の注意を払って歩いて行く。

今日一番困ったのはあまりにも何も無い山なのでいつも風にさらされているってこと。落ち着いて休める場所が無いこと。
それで物見岩へ着くとすぐに風を避けながらの遅い昼食になった。風が当たなければグローブを外してもオニギリを持った手は冷たくはなかった。岩に腰掛けて北アルプスの山々を眺めながら飲む熱いミルクティーは体にじんわりと温かだ。

何でだろう?せっかく撮った南の耳から蓼科山の写真はピンボケ。こんな風に雪があまり無い所もアチコチにあった。


風が強い山の上にあって物見岩はオアシスだった。
風を避けながら遅い昼食を摂った。

物見岩から八島ヶ原湿原へ向かおうと時計を見るとpm1:40。
眼下には湿原が白い雪原となって広がっている。
はたしてあの湿原まで行けるだろうか?たとえたどり着かなくてもpm2:00になったらその時点で引き返すことに決めて歩いてゆく。中々近づかない景色が何ともじれったい。

もうそこが八島ヶ原湿原なのに行く時間が無い。
残念だけれど今日はここまでで引き返すしかない。
西の空から雲が出て来て北アルプスを隠してゆく。


物見岩からは車山頂のドームアンテナを目指して歩いてゆく。ザックの右につけたストックは今日一度も使わなかった。

時間はpm1:55。
湿原までもう少しと言う地点でとうとう時間切れだ。あと30分あれば行けるのに!何とも悔しい。
帰りのバスを一つ遅くすれば良いのだけれどそれだと自宅に帰るのが遅くなってしまうし、湿原まで行って戻りは急いで歩けば何とかバスに間に合うかもしれない、などと思惑が交錯するけれど、やっぱりこんな散策はノンビリ歩きたい。惜しいけれどここできっぱりと引き返すことにした。

沢渡への分岐点。ただただ、広ーーーーいの図!
雪原は退屈な景色では無くて、そこに何があるのか、何が待っているのか、色々と発見することも多い。
物見岩まで戻り、そこからは蝶々深山を経由して車山乗越まで戻ることにした。
雪面に薄っすらと残るスノーシューのトレースを辿って歩いて行く。少し盆地のような状態になっているので視界の全てが真っ白だ。周りに人影は見えないけれど視界も良好なので迷ったりする不安は無く、本当に楽しいそぞろ歩きだ。

幾重もの雪の波、去り行く風の足跡は雪紋になった。


周りには誰もいない。空っぽの雪原を一人歩いてゆく。

ほんの少し高くなっている所が蝶々深山頂だった。
もうここからは車山も近くて、ゲレンデを滑るスキーヤーの姿も確認出来るようになった。
これで本日のスノーハイクも終わりに近づいたと思うとどこか寂しい感じがした。

あーっここも広いや!蝶々深山からの蓼科山。今にして思えばパノラマ写真を撮るんだったなー
車山乗越では数組のスノーシューのパーティーと出会った。
湿原まで往復する間には誰とも会わなかったので他の人達は別のコースを歩いたのだろう。
他にどんなコースがあるのだろう?興味津々だ。帰ったらまたネットで検索して、そして再訪してみよう。

登山道から車山頂を見上げる。思ったよりずっと高低差があって今から登って行く根性は無かった。
車山乗越からはまたゲレンデの端っこを歩いて降って行く。
相変わらず道はどこだか分からないので草を踏まないように適当な所を歩いて行く。
僕の前にはやっぱりスノーシューで歩いているソロの男性が居て、ジャンプしたり、雪の上をゴロゴロと転がったり、と思ったらいきなりダッシュしたり、やたらハジけているのが可笑しかった。
雪の上で大の字も気持ち良いだろうなとは思うけれどフリース姿の僕にはそれが出来ない。
やっぱり冬用のジャケットを買おうかな、ユニクロで売ってないかな。

終点はすぐそこ。八ヶ岳の山々が傾いた太陽のコントラストに映える。富士山はその向こう側にあって見えなかった。
道は雪に埋もれてしまってどこか分からない、だから面白かったりする。
今朝、登山準備をした箇所まで戻って今度は撤収だ。
スノーシューを外した途端に足が軽くなって気持ちまでホッとした。
「本日の営業は5時までです!!!」場内アナウンスが遠くの山にまでこだましている。
ふと蓼科山を見ると空にポッカリと月が浮かんでいる。
八島ヶ原湿原までは行くことは出来なかったけれど面白い一日だった。

雪まみれのスノーシューをザックに付けるとバス停まで降りて行った。
こんなゴタゴタしたザックを背負っているのってやっぱ僕だけだなと少しニヤリとする一日だった。

太陽が傾きだした、楽しかったスノーハイクも終わりだ。
いつまでもこうして輝いているんだろうな!
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