北岳 |
|
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆7月13,14日 ◆7月15日 |
|
山日記 前回の御座山山行の時に持病の膝痛が再発してしまった。足が完治するまで山に行くのを我慢することにした。休日に晴れると自分の頼りない足が情けなくなり歯軋りして悔しがっていた。 甲府駅に夜中の12時に列車は到着した。ここで早朝4時30分発の広河原行きのバスを待つのだ。 |
北岳から見た間ノ岳は雲の中 |
するといきなり地を這うような重低音。。。なんだ。何なんだ?起き上がって見渡してみると暴走族風兄ちゃん姉ちゃんがロータリーを行進中である。闇を引き裂くエンジン音、空ぶかしに吼えるマフラー。おまけにカーステレオの音が大きく車体全体がバスドラムに合わせてズンズン振動している。こんな車がロータリーを走り回っているのだ。 とてもじゃないがこんな中で眠れやしない。しかし「てめえら!うるせいぞ!糞でもして寝ろ!!!」とは怖くてとても言えない。こちらが退散するしかない。 |
駅内の通路に戻りシャッターを降ろした店の前にテントマットを敷いて横になった。それにしても駅内は暑い。背中がじっとりと汗ばんでくる。アイマスクに額の汗が染みこんでいくのが分かる。 暑くて寝苦しい。その上、誰かが構内を歩いている靴音が気になって眠れない。 2時になった。急行アルプス号が甲府駅に着いたのだろう。沢山の足音が僕の横を通り過ぎて行く。話し声が聞こえて来た。「ねえ、浮浪者が寝ている。嫌ねぇ!」。 僕は浮浪者じゃないぞ!あー情けねぇー。 結局一睡も出来ないまま4時になってしまった。4時半に広河原行きバスの始発に乗り込んだ。バスの中で2時間寝れば何とかなるだろう。 |
しかし事態は最悪になった。乗ったバスは超満員のすし詰め状態なのだ。広河原までの2時間はバスの中で立ったまま行くことになってしまった。眠るどころか疲れ倍増である。まったく座席で眠り込んでいる人が羨ましい。 おまけに途中のバス停で5,6人の客が乗れる乗れないで10分程停車した。この停車している時間にはイライラして余計疲れた。 広河原でバスを降りる。山のすがすがしい朝の空気、空の抜けるような青さ、小鳥達の澄んださえずり。そんなもの何も感じない。感じるわけ無い!。頭は鉛のように重く、気を抜くと意識はズブズブと睡魔の沼に引き込まれそうだ。 |
北岳からの降りにあった花畑 急斜面に咲いていた |
こんな状態で今から山に登るのが自分でも信じられない。今の自分と山登りはどこか無縁の様な感じがする。「どこかで少し仮眠しなけりゃまずい!」と思った。しかし時間が勿体ない。それに徹夜して頭は「ボケェー」としていても体はけっこう動くものだ。「なんとかなる!」そう思ってとりあえず出発することにした。 今年は雪が多かったのかな?登山道を水が流れていて涼しく楽しい。これって子供の頃、雨上がりに水溜りを歩いた気分に似ている。 途中、下山してきた人に尋ねると二俣の雪渓下端で水が出ていると言うことなので手持ちの水3リットルの内2リットルを捨てた。 |
北岳名物 朝焼けの富士山 |
二俣から八本歯ノコルに行く予定だったが、少し予定よりも早かったので右俣コースを行くことにした。こっちの道のほうが甲斐駒を近くに見ることができるに違いない。 急登を上り詰め樹林帯をぬけると、東に鳳凰三山、北に甲斐駒が姿を表した。 地蔵岳、観音岳、薬師岳で鳳凰三山という余りにも神々しい名前と山容の符合を納得してしまった。名前の由来は分からないけれど、雲間に見えた花崗岩の白い山頂が崇高な印象を与える。 甲斐駒は雪のように白い山頂が天を突くようにそそり立ち神秘的である。神々が住む山という印象だ。 ここから西の方角に見える仙丈岳は猫背で少し元気が無いように見える。 |
ここから道は緩やかな傾斜となり約1時間半の登りで北岳頂上に到着した。あいにく雲が多く展望はあまり良くない。 仙丈岳―伊那荒倉岳―三峰岳の長い稜線が見える。数年前、南アルプスを縦走した時に歩いた道だ。良くあんな長い稜線を歩いたものだと自分でも感心した。同時に今はそんな元気が無い自分が情けない。 以前、鳳凰三山に登った時、薬師岳から「あれが南アルプスの主峰北岳だ」と偶像崇拝的視線で北岳を見ていた自分を思い出した。 |
今、その憧れの場所に立っているのだがどうも感激が薄いようだ。天気がいまいちの性もあるだろうが原因は肩の小屋から余りにも楽に登頂したのが原因らしい。 僕の中にある登頂のイメージは。。。頂上への急斜面をどんどん登って行き、一歩一歩登るたびに視界の青空の割合が段々広くなり、やがて自分の視界全てが空になった瞬間、「あぁー!頂上だぁー。俺は遂にやったんじぁー」と感動するのが理想である。がしかしどうも今は感動が薄いようなので自分に「なんてったってここは日本第二位の標高だ」と言い聞かせた。 足元に目を落とす。ボーコン沢ノ頭それから小太郎山もたおやかな稜線で砂礫の道を漫歩してみたら気持ち良さそうだ。次にここを訪れる時にはぜひ歩いてみたい。 |
間ノ岳山頂からは塩見岳が遠望できる |
予定より早く登頂したので道の両脇に咲く花をゆっくり観賞しながら北岳山荘に向う。小屋に着いてみると受付に長蛇の列。受付の人が一人一人に丁寧に案内するので中々列は縮まらなかった。いよいよ自分の番になり受付時に水場の場所を尋ねると「往復1時間以上かかります」とのこと。自分で水汲みは諦めて水3リットルの代金とテント場代合わせて800円を払う。ちょっと高いと言う感じは否めない。 |
間ノ岳から見た農鳥岳 |
テントを設営した途端、急に眠くなる。テントの中は暑いので稜線の砂地で小一時間の昼寝。 5時になり夕食にする。隣のテントから良い匂いがしてくる。どうも焼肉らしく醤油やニンニクの焼けた匂いがたまらない。それにひきかえ僕の夕食はマーボ春雨だけだ。わびしい夕食なのだ。 |
翌朝、今日は行程が長いので夜明け前AM4:15に出発した。ライトは点けなくても何とか歩ける明るさだ。 中白峰には三脚を立てた「富士山を撮るもんね」写真隊が早くも場所取り合戦を始めていた。 |
間ノ岳頂上からは農鳥岳の展望はもちろんのこと塩見岳から続く南アルプスの山々が遠望できた。南へと延びる稜線を見ていると数年前に南アルプスを縦走した時の記憶が次々と脳裏に蘇り懐かしくなった。思い出の時計は今もあの日のまま止まっているのだ。 間ノ岳から農鳥岳を見ると一度鞍部まで降っての登り返しがキツそうだったが登ってみると意外と楽だった。しかし振り返って見ると逆コースで間ノ岳へ登ったらかなりキツそうだ。それほど間ノ岳はでかく見えた。 |
農鳥岳から間ノ岳を振り返る やっぱりデカイ |
大門沢下降点から奈良田までの約6時間の下りが始まる。1時間下ったところで沢に出た。裸になって水を浴びると生き返った。 男性が沢の水でチキンラーメンを作って食べていた。ちくしょう!美味そうだ。何を隠そう僕はチキンラーメンが大好きなのだ。他のラーメンとは違うあの妙に安っぽい味のスープが何とも美味いのだ。しかし弱点は麺がもろいことだ。ザックから取り出すと粉々になっていて、それが何とも悲しい。 日清製粉さんにお願いしたい。登山者の供としてスーパーハードGショックなる硬麺チキンラーメンを作ってほしい。 「おいしそうですね」と声をかけた。「すいません。あいにく一つしかないんですよ」と返事が返ってきた。僕はもちろんそんなつもりで声をかけたわけではないがチキンラーメンを見つめる目が異様な熱を帯びていたのかもしれない。 |
大門沢降下点は明るい雰囲気で降るのが勿体ない |
大門沢小屋には予定よりも早く到着した。膝を悪くして以来、下りはゆっくり歩くようにしている。いかんいかん!反省しよう。せっかちな性格なので常にゆっくり歩くことを意識していないとついつい早くなってしまうようだ。 小屋からはゆっくり歩いて奈良田に着いた。温泉宿の駐車場に登山姿の人が多い。車で登山口まで来る人は車に着替えを用意できるので温泉に入るのには好都合だ。僕は荷物をなるべく軽くする為、必要以上の着替えは持ってきていない。バス停の水道で顔を洗い、体を拭いてTシャツと靴下だけを着替えた。 |
バスを待つ間、甲府から来たという男性と話す。この男性は昨日、大門沢小屋に泊まり午前中に奈良田に到着して今まで温泉とビールを堪能していたそうで大分出来上がっていた。広河内岳から黒河内岳を経由して奈良田まで下る道が有るらしい。このコースが素晴らしく次回はぜひ歩いてみてくれと言った。そのうち「南アルプスがこんなに素晴らしい山なのに北アルプスより人気が無いのは山梨の観光課が宣伝しないからだ。「山と渓谷」が北アルプスの特集ばかりやりすぎるからだ」と一人で段々興奮してきた。 そこへバスが到着。降りてきた運転手に男性が詰め寄り言った。「奈良田から広河原までなぜバスの運行をしない?行路の延長をしろ!来年、いや今すぐ運行しろ!さあ出せ!今すぐ出せ! 参考甲府駅前には24時間営業のコンビニが二軒。24時間営業の吉野家(牛丼)有り。 |
●山麓をゆくへ | ●ホームへ |