蓼科山(北八ヶ岳) |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆10月12日 ◆10月13日 ◆10月14日 |
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山日記 (1/2) 10月の3連休は八幡平に行こうと思っていたのだが夜行バスのチケットが取れず、それだったら多少値段は高くなるが奮発して新幹線で行こうかと思案していた。 中央本線の終電は夜中の0時30分に小淵沢に着いた。朝一番の小海線に乗るために小淵沢のホーム待合室に泊ることにした。待合室に言ってみると既に登山姿の男性が高いびきで爆睡していた。シュラフを広げて中にもぐり込んだがイビキがうるさくて眠れやしない。仕方なく小海線ホームの待合室に避難することにした。ドアを開けてみるとここにも先客がシュラフに包まっていたがこちらは静かだったのですぐに眠りに入った。 |
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みどり池 奥に見える硫黄岳の岩壁とは対照的に静寂な池だ。 |
小海線の始発に乗って松原湖駅で下車、駅近くのバス停に行って時刻表を見てみると稲子湯行きのバスは第1、3、5土曜日(学校がある日)のみの運行になっていた。ということは今日は第2土曜なのでバスは運行していない!もしかして稲子湯まで歩き!!!冗談ではない! 地図を見ると稲子湯まで7km位あるので歩いて2時間の距離だ。「大事なエネルギーは登山するために残しておきたい。登山の前に2時間の歩きは辛い」と焦燥した。「だが待てよ!今、学校の土曜日は毎週休みである、ということはこの時刻表は古いという事だ。新しい時刻表では少しは運行しているかもしれない!」と思い、バス停前の酒屋のおっちゃんに聞いてみると「今日は連休だし、多分運行するんじゃないかな?」と少し期待が持てる返事だった。 |
小さな期待に胸を膨らませてバスが来る方向を凝視しているとやがてバスが信号を右折してこちらに向ってくるのが見えた。視界にバスが見えたときには「やった!やった!」と本当に嬉しくてザックとマイムマイムを踊りだしたい気分だった。 | |
みどり池からは紅葉が目立つようになった。紅葉したダケカンバの間に稲子岳が見えた。 |
バスの前乗車口のステップを登るといきなり「お客さんが今日始めての客だよ。客が居て良かった!」、「小海駅にはバスを待つ登山者が一人も居なくて不安になったよ」と運転手さんが笑っていた。 バスが稲子湯に着いてみるとバスを待つ客が3人いたのでほっと安心した。それというのも、でかいバスに一人というのは貸切みたいで気持ちが良いんだが反面、僕一人のためにわざわざ運転してもらって悪いような気がしていたのだ。 |
稲子湯は森に囲まれた木造の宿で新しくはないが小綺麗で泊りごこちが良さそうな感じだ。小屋近くを流れる小さな沢の川底が赤茶色になっているのは温泉のせいなのだろうか?小屋で水筒に水を入れて歩き出す。登山道は林道を何度か横切り緩やかに高度を上げるとトロッコ跡を歩くようになった。どことなく懐かしい感じがする道である。 | |
稲子岳 足をとめて岩壁を飾る紅葉の美しさを観賞。 |
休憩するのに良さそうな開けた場所で「みどり池までここからはって行っても30分」の札を見つけた。はって30分だから歩いたら5分で着くかと思ったら20分かかってみどり池に着いた。 みどり池はしらびその森に囲まれた静寂な池だった。西の方を仰ぎ見ると硫黄岳の岩壁が迫力ある姿で迫ってくる。今日は暖かいし、何よりも良い景色の中で食べるおにぎりは美味しい。休憩している周りの人の会話に本沢温泉という言葉が聞こえることを考えるとここから本沢温泉に行く人も多いようだ。そういえば本沢温泉には一度も行った事が無い。80歳くらいになったらゆっくりと行ってみたいもんだ。 |
みどり池を後にして歩き出すと紅葉が目立つようになった。先ほどみどり池から見えた稲子岳の岩壁が黄色く色づいたダケカンバの間に見える。 登山道はやがて急登になるがそれもすぐ終わり中山峠に着いた。そこからは天狗岳の双耳峰が実にでっかい。 今回の山登りコースは「北八ヶ岳を歩く」という漠然とした計画しか立てていなかったのでこうして広大な天狗岳を目の前にすると「やっぱり主峰の赤岳を目指して南に進もうか」と浮気心が早くも湧いてきた。北に行くか南に行くか?迷いながらとりあえず黒百合小屋に行ってみる。 小屋前の巨岩が乱積する登山道を登ると視界が一気に開けて展望が良く僕のお気に入りの場所だ。中山や茅野市街の展望も良いがなんてったってここから見る天狗岳は良い。天狗ノ奥庭はゴツゴツとした岩だらけだが天狗岳まで緩やかな延びるスロープに点在する這松の緑との調和にどこか庭園を思わせる風情がある。 スリバチ池は水が少なく頼りない感じがする池だが、こんな岩だらけの場所でも水を溜てめている頑張っている池なのだ。 |
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スリバチ池と天狗岳 天狗ノ奥庭は自然が作り出した造形美 |
この時、「やっぱり北に向かおう!」と思った。北に歩いて行って北八ヶ岳の湖や池をなるべく多く見てみようと思った。「北八ヶ岳の湖と紅葉の旅」とテレビ東京の番組みたいなトレッキングをするのだ。 上から見る黒百合ヒュッテは屋根の上に太陽電池パネルが設置されて近代的に変身していた。トイレもなんだかすごく綺麗になっていた。黒百合という言葉とソーラーパネル、どうもちぐはぐな様な感じがするが環境には優しそうだ。 ここからニュウへの道を初めて辿る。ん?ところでニュウとはどういう意味だろう?。入?、乳?、まさかNEW??? |
地図を見るとニュウまでの登山道はほぼ水平のようだが実際歩いてみるとどんどんと降って行くので「くそったれ!騙された!!」と思いながら歩いた。帰りはこの道を登らなければならないと考えると気が重い。 40分ほど歩くと木々の間からポッカリと高くなっている露岩が見え、その上に数人の人影が見えた。どうやらあそこがニュウらしい。登り詰めるとそんなには広くない山頂で5、6人が景色を眺めていた。 南の方を見ると硫黄岳の爆裂火口が荒々しい、火口岩壁のすぐ下まで迫った紅葉が山の動と静、両面の美しさを演出している。更に硫黄岳の奥には富士山が見えた。あいにく逆光なので白っぽくにしか見えなかったが早朝に見れば素晴らしい景色に違いない。 |
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高見石から見た白駒池 紅葉の中に静かにたたずむ |
中山峠まで引き返えし中山経由で白駒池まで行こうと考えていたのだがここからみる峠は遠く高く見えた。引き返すのは大変そうなので直接白駒池に向かう事にした。今回はゆっくり、のんびりと歩こうと思っているのでこういう楽な方向への変更は決心が早い。 白駒池までの道は木々の間が緑の苔に覆われた原生林で「これぞ!北八ヶ岳の森」を歩いているという感じがして「おっ、良いね!良いね!」と軽快に歩いてしまうのだ。 |
緑の苔に覆われた森を抜けるとキャンプ場に飛び出した。明るい感じのするキャンプ場で湖畔に近く、白樺の木々の間にテン場が点在している。 地面に直接テントを設営する場所もあれば板を敷いてある場所もある。テン場代は650円だが板の上にテントを張ると更に900円加算される。こんな値段が高い場所にテント張る奴なんかいないと思っていたらこれが結構いるのだ。新品のテントでクーラーボックスや簡易バーベキューセットなどリッチな装備を持ち込んでいるところを見ると車で来た人もしくは鍋割山荘のオヤジみたいに怪力の持ち主なんだろう。 ここは湖と白樺という組み合わせがなんとも良い雰囲気のキャンプ場なのでテントそばの板や岩の上に腰掛けてマグカップでコーヒー(多分)を飲んでいる夫婦の姿が妙に絵になってしまうのである。それからソーセージにかぶりついている男性の横には角瓶(サントリー)が似合っている。服装はフリースも良いがここはやっぱりマウンテンパーカで決まりだ。僕にはアウトドア=マウンテンパーカみたいなイメージがあって山登りをやるようになって直ぐにマウンテンパーカを買ったのだけれどいつの間にか使わなくなってしまったなぁ。 夕食にするにはまだ早い時間だったのでテントを設営し終わると高見石までピストンすることにした。 |
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茶水池付近の登山道 白駒池からこの辺りまで原生林と苔の森を歩く |
確かにこのポーズは話題になったが”タイタニック”は5年も前の映画である。いまだにこれをやる人が居ると思うと可笑しくて笑ってしまった。僕の悪い癖で笑い出すと止まらない。「いい歳の親父が一人でニヤニヤしていたら気持ち悪いだろうな」と思っていても「ブフッ」と笑いがこみ上げて来て困ってしまった。 ニヤニヤしながら30分も展望を楽しんでいたら段々と日が傾いて薄暗く、少し寒くなってきたのでテントに引き返すことにした。 登山道を降っていると普通の格好をした男女6人の若者たちが「綺麗な夕日が見られると良いね!」とわたせせいぞう・ハートカクテル風会話をしながら登ってきた。どこまで行くのか知らないが手には何も持っておらず「戻り道は暗い中をどうやって降りるのだろうか?」と少し心配になった。 |
青苔荘のオヤジが「朝には水道が凍結するので必要な水は今夜中に確保しておいて下さい」と言っていた。朝はそんなに気温が下がるのだろうか?考えたらここは標高2000m以上あるのだ。丹沢より高いのだ。「このまま酔っ払って裸で寝てしまったら凍死するな」とホットウイスキーの湯気で酔った頭の片隅で思った。 翌朝、4時に起きて朝食を済ませ、テントの撤収をしようと外に出てみるとフライシートがバリバリに凍りついていた。テントを解体するときにクシャクシャにフライシートに揉んで広げてバタバタと叩いてみると薄い氷がきらきらと白く輝いてまだ薄暗い朝の中に消えていった。手は思いっきり冷たかったのでポケットに突っ込んでキーンとした痛さが通り過ぎるのを待った。テント本体も濡れていたがナイロンの袋に無理やり押し込んで出発した。 |
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雨池に映った縞枯山 写真を撮る前に転んで実はお尻が冷たい |
麦草峠までの木道は霜で真っ白だったので滑らないように気をつけて歩いた。少し肌寒いが空気が澄んでいて気持ちが良い朝だ。 麦草峠から雨池に分岐して直ぐに茶水池があった。池の周りの草も霜で真っ白で見ているだけで寒い。池を過ぎ、苔が一面を覆う道はやがて笹の中の道へと変わり、それが延々と続いて「いいかげん退屈だなぁ」と思っていたところで雨池に着いた。 余りの綺麗さに歓喜の声を挙げた。僕の歓喜の声はいつも「カァーッ!」である。山で良い景色に出会うと無意識に「カァーッ!」を連発してしまう時がある。このを時も気がつけば「カァーッ!」連発していた。あまりにも興奮していたのか登山道から湖畔に飛び降りた時、見事に滑ってしまってお尻がべったりと黄土色になってしまった。冷たかった。かっこ悪かった。 |
湖畔には霜が一面に降りて朝日をあびて白く輝き、湖面は対岸の紅葉を映して黄色く染まっていた。この景色を眺めながら池を半周して反対側まで歩いた。こちら側からは逆光のせいもありイマイチの景色だった。この池は雨池峠からピストンする人が多く、この時も雨池峠から来た女性と一緒になったが池を見ると直ぐに引き返していった。なーんてもったいないことだ!30分かけて池を半周回ればいい景色に出合えるのに。。。 | |
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