九重山 (久住山 編)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:飛行機/フェリー)

◆5月24日
阿蘇駅 (9:46) === 牧ノ戸峠 (11:28/11:40) --- 沓掛山 (12:20) --- 扇ヶ鼻分岐 (12:55/13:05) --- 久住分かれ避難小屋 (13:35/13:50) --- 久住山 (14:10/14:20) --- 稲星山 (14:40/14:50) --- 中岳 (15:20/15:25) --- 久住分かれ避難小屋 (15:55)
山日記

朝8時、リビングのテーブルで出発の準備。
ウイスキーを瓶からペットボトルに移していたらテーブルのはす向かいに座っていたイタリア人夫婦がじーっつとこっちを見ていた・・・・・・やっぱりこの作業は不思議に見えるのか?

文庫本を取り出して読み終えたページまで破っていたら(軽量化のため)またイタリア人がじーっつとこっちを見ていた。
最近、都内の図書館や本屋でアンネの日記を破るという事件があったので何か勘違いされていないかと心配になった。

阿蘇駅前から湯布院行きのバスに乗る。
今回の百名山巡りで山を繋げられるか心配した区間の一つが阿蘇山→九重山だ。
JR線で大分→湯布院を経由していたら時間もお金も勿体無いのでこの九州横断バスの存在は大助かりだ。

「やまなみハイウェイはカーブに合わせて車道を傾斜させてありますので横揺れが少なくなっております」
九州横断バスの観光案内アナウンスが流れる。
普通の人だったら揺れが少なくて快適なのだろうが乗り物酔いがひどい僕にはヘアピンカーブの連続は正に地獄だった。

バスが内牧温泉から阿蘇外輪山を登る時が一番過酷だった。マジでゲロするかと思った。
外輪山を越えると急にカーブが無くなった。それまでガチガチだった体の緊張が解けた。

牧ノ戸峠でバスを降りとある人物の姿を探した。昨夜、道の駅で会ったデカザックの男性が同じバスに乗っているのだ。
道の駅にテントを張った武勇伝を聞かなければいけない。

あっ見つけた!と思ったらその男性はレストハウスの中に消えてしまった。
今夜は二人とも久住分かれ避難小屋泊まりになるはずだからその時に話を聞けば良いか!と思って先に歩き出した。

今日は土曜日、さすがに登山者が多い。もう久住山まで登ったのだろうか?早くも下山して来る人の姿が多い。
第一展望台までは石畳の急な坂道、ザックの中にはたっぷりと食料と酒が入っているので重い、でも嬉しい。

第一展望台からの展望。真ん中の奥が涌蓋山、右は黒岩山。こっちも面白そうだ。
第一展望台から見る一目山や奥の涌蓋山は山全体が緑の草原になっていて、こっちも縦走すると面白そうな山なのだ。

先ほどバスが黒川温泉を通る辺りでバスの中から一目山を見ると何と馬で稜線を疾走している人の姿があって、これはきっと大河ドラマの撮影だな?とも思ったけれど鎧は着けていないし、これがマジだとしたら何て優雅な山散歩もあるんだろう!と感心したのだ。
最近、山でマウンテンバイクを見かけることはあるけれどペダルの無い馬で山を走ったら気持が良いだろうな!と、だけど周りの登山者にはえらく迷惑かもしれない。

第一展望台から第二展望台までも急な坂道だったので登るのが大変だった。
だけど展望台に着いて景色を見た瞬間に疲れがふっとんだ。

今回の山旅ではどの山も新緑が鮮やかだったけれどここもまた新緑が綺麗なのだ。
圧倒的な緑の群生!峰から山頂までぎっしりと緑に覆われている。
加えて扇ヶ鼻分岐までの緩やかなスロープに散りばめられた色彩の鮮やかさには心が揺さぶられた。

第二展望台からの展望。新緑が鮮やかな登山道が続く。
第二展望台から先はなだらかな道に変わり登るのが楽になった。何より気持に余裕が出来たので周りの景色を楽しめながら歩くことが出来た。

扇ヶ鼻分岐から扇ヶ鼻へ登る人は意外と多い。
九重山の情報を事前にネットで調べて来なかったので登山のメインコースがどこだか分からず、とりあえず牧ノ戸峠から久住山へ登ろうと考えた。だけどこの扇ヶ鼻へ登る人の多さを見てこれは岩井川岳までピストンした方が良いのでは?と思った。
だけどそうすると今日中に久住山へは登れなくなってしまう。
さてどうしよう?散々迷ったあげく今回は登らないことにした。久住山には思い入れがあるので早く登りたかったのだ。

西千里浜の水場で水を汲まなくてはいけないので扇ヶ鼻分岐からは水場を見逃さないよう右に注意しながら歩いていた。
ところが気がついたら星生山分岐まで来てしまった。水場を見逃してしまったのでは?と思ったけれど、もしかしたらまだ先かも・・・・・・と歩いていたら避難小屋がもう目の前だ。

西千里浜では水場が見つけられずに久住山(右)がもう近くに。
しょうがない、水はこの先で確保しよう!久住分かれ避難小屋に入って見る。

「ここ泊まれるの?」という言葉が思わず口から出てしまった。
小屋の入り口に二畳ほどの部屋でその奥に8畳ほどの部屋、地面は湿った土、壁は白く塗られているけれど所々ペンキが剥がれたり壁の崩れたりして手入れはされているようだけれど全体的に老朽化が進んでいる。

雨や風がよほどひどい時以外はこの小屋で休憩する人はまずいないと思う。
壁際にはベンチもあるけれど古くて汚れているのでその上で一晩過ごす気持ちには到底なれない。
小屋の前は広場に成っているので最悪の場合は外にテントを張ることにし、とりあえず小屋にザックをデポして久住山へ向かうことにした。

サブザックの中身はカメラ、合羽、ライト、ポリタン、行動食だけなので一気に軽くなった。
ガレ場を一気に登って行くと20分で山頂に立てた。

久住分かれ避難小屋前の広場。茶色の建物がトイレ、白色が避難小屋。


避難小屋の内部はこんな感じ。実際はもっと暗い。あまり泊まりたくない。

「あれっ全然違う!」
実は久住山に登るのは2度目。中学の学校登山で登って以来30年ぶりの来訪なのだ。
懐かしいと言うほどでは無いけれど記憶の中の自分と再会したかった。

だけど違っていた。思い出の山頂とは違っていた。
記憶の中の山頂は石がゴロゴロしていて広いという印象だったけれどこうして登って見ると随分狭いのだ。

当時は自分がまだ小さかったから広く感じたのか、それともどこかの山頂の記憶と入れ替わってしまったのか。
それに不思議なのは当時一学年200人が登頂したはずなのにこの広さでは200人が弁当を広げるのはとても無理だ。

どこかで記憶違いをしているみたいだ。僕の扁桃体もくそったれだ!。
もっとも当時の僕は登山に全く興味が無かったので(特に学校行事が大嫌いだった)記憶が希薄なのもしょうがないかもしれない。

久住山頂から見た星生山。根性が無くて登れなかった。右下に久住分かれ避難小屋が見える。
九重山の名前の由来は分からないけれどこうやって久住山頂から眺めていると九重山とはその名前の通り、いくつものピークが重なるようにして山を造っている。
バスの観光案内テープでは山の名前を九重にするか久住にするかで地元の人がモメタらしいけれど山頂から見た山は九重の方が似合っている感じがする。

久住山頂からの展望2。真ん中が三俣山、右が天狗ヶ白と中岳。
あまり感動も無いまま、というかちょっと困惑気味で久住山を後にする。

地図では久住山周辺は登山道が入り組んでいて道の選択に困った。
とりあえずピークだけは踏んでおこうと稲星山→中岳と歩くことにした。

久住山を一旦降りた所で水場を探した。
鞍部が沢になっていたのでそこでポリタンを満杯にした。水場を示す標示板は無かったのでもしかしたら西千里浜の水場にも標示板は無かったのかもしれないと思った。

「オーッ阿蘇山が見える!」と感動したものの他には特徴が余り無い稲星山頂だった。
大気が白く霞んで遠望が利かなかったのがその理由だと思うけれど感動が薄くて自分でも困った。
ただこの山は久住山と違って他に誰も居なかったのでのんびりと休憩することが出来た。
久住山はファミリー登山が多かったけれど子供連れでわざわざここまでは来ないのだろう。

久住山頂からの展望3は稲星山。久住山、稲星山、中岳と同じ位の標高の山が近くにあるのが勿体無い。

稲星山から中岳へ向かいます。水が確保出来たので一安心している。
中岳は九重山で一番高い山なので良い写真がいっぱい撮れそうだと思った。
だけどこんな事ってあるんだ。
山頂はとにかく虫(ハエみたいな)が多かった。それが半端な多さではなく顔に絶えず十数匹が群がっている状態なので目もまともに開けていられない。何か食べるなんて絶対無理!
九州本土での最高峰なのに誰も居ない!と喜んでいたのにこれでは座ることはもちろん立ち止まってさえいられない。
展望を楽しむ余裕は無いので山頂で記念写真を撮ると直ぐに退散した。

逃げるように中岳を降りて分岐点まで来た。天狗ヶ城を見上げると地図の等高線以上の高さに見える。
山に登ることには貪欲なはずなのに気持が天狗ヶ城の高さを越えられない。
小屋の様子を見に行くと理由がこじつけだとは自分でも分かっていたけれど池ノ小屋への道を選んでしまった。

中岳からの御池と奥は久住山。左に小さく池ノ小屋が見えています。こんなに虫が多い山は始めてです。
池ノ小屋の前で若い男女がポージングしてお互いに写真を撮り合っていた。
僕がそばへ寄ると楽しんでいる二人の雰囲気を壊してしまうのでは?白けてしまうのでは?と思うと悪くて近寄れなかった。
それで小屋の様子も見れず、もちろん写真も撮れなかった。・・・・・・そしてオレって何をしに来たのだ?という自己批判。

そのまま御池の横を通って避難小屋へ帰った。
計画ではこの後、星生山へピストンするつもりだったけれど何だかすっかり疲れてしまって(それに時間も16時になってしまっていたので)情けないことに行くのは断念した。

池ノ小屋へは行けずに御池を回って戻ります、気が弱いオレ。


火口跡?の空池。奥は久住山

牧ノ戸峠まで同じバスだった「道の駅テント」の男性が来るのでは?と17時まで待ったけれど来なかった。
今日ここに泊まるのはどうやら僕だけらしい。

避難小屋の二つの部屋の間にはテントを張れるスペースがある。だけど小屋の前は気持良さそうな広場になっている。
何もこんな湿っぽい小屋の中にテントを張ることもないだろうと広場にテントを張ることにした。

久住分かれ避難小屋前の広場にテントを張った。気持良い場所。夕方6時に最後の家族が降りて行ったけど時間大丈夫?
ご褒美ビールはぬるくなっていてもやっぱりうまい!
コンビニでもらったウエットティッシュが気持良い!

今日は三つのピークを踏んだ。久住山、稲星山、中岳の三つだ。
だけど天狗ヶ城と星生山は根性が無くて登れなかった。
満足感も達成感も薄かった感じがする。
なんだかこんな一日の終わりは嫌だな。

九重山はこれで終わってしまうのか?

こんな所だったっけ?久住山頂

誰も居なかった稲星山頂

中岳山頂は虫が多くてほっかむりしています。
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