倉岳山、高畑山、九鬼山 |
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他) ◆1月25日 |
山日記 電車が上野原を過ぎた辺りから車窓の外はただの真っ白だ。 中央本線に乗っていると大月から先(甲府側)で急に雪が積もっていることが良くあるけれど今日はもうこの辺りからすでに真っ白だ。 梁川で電車を降りると目の前の山も街も一面が白い雪に覆われていて、道に積もった雪はまだフカフカなのでおそらく降ったばかりなのだろうけれど何だかいきなり雪国に来てしまったかの様な風景がそこには広がっていた。 梁川大橋を渡って行くと正面の倉岳山も真っ白だ。 その標高は1000mにも満たないのだけれどこうして夜明け前の青白い雪にすっぽりと覆われている姿はしっかりと雪山している。 |
梁川大橋を渡って行く。夜明け直前の雪景色は何とも神秘的だ。 |
今年の山登りの目標のひとつは低山にもしっかり登る事。 |
車道を20分ほど歩くと登山道の入口があった。 2cmほど積もった雪の上にはまだ誰の足跡も付いていない。 ここでダウンジャケットを脱ぐとまずは最初の一歩を踏み出した。 沢沿いの登山道は谷間になっているのでまだ薄暗かった。地面を覆っている白い雪が辺りを鈍く照らしている。森の中は暗いのに足元は明るい、変な感じだ。 水場を過ぎると道は急勾配になった。前方を見上げると霧氷状態の白い木々が朝日に赤く染まって本当に綺麗だった。 立野峠からは雪の尾根歩き。 南側の赤鞍ヶ岳を木々の間に眺めながらゆっくりと登って行く。 もうすぐ倉岳山という辺りで急斜面になって雪でズルズルと滑ってしまって登りづらかった。 |
倉岳山頂は5cmほどの雪だった。風も無くて寒くはなかったけれど足が冷たかった。軽登山靴を履いてきて失敗したな!と思った瞬間だった。 |
|
倉岳山頂は木々にぐるりと囲まれていたけど・・・やっぱりまずは富士山を探してしまう。 ハッとしたように現れた富士山、けっしては広くは無い山頂からの富士山はやっぱり新鮮だった。 中央線沿線の山は標高は低いけれど富士山がしっかり見える山が多い。そしてこの山からの富士山に眺めもまた格別だった。 北側に目を向けるとまたこっちの景観も素晴らしい!上野原の街の向こうに扇山や権現山がスッコーンと見える。 ここで一休みしようと思ったけれどここは一面の雪、座る場所が無いので仕方なく立ったままポットのお茶をすすった。シートか何か下に敷く物を持って来るんだった。 |
倉岳山頂からの富士山。雲ひとつ無くて、ただそれだけで満足してしまう風景です。 |
足が冷たい。 今日は低山を登るので布製の軽登山靴を履いて来た。 まさかこんな雪の中を歩く羽目になろうとは思わなかったのだ。自分でもアホかと思う。 山の装備は慎重過ぎてもそれはけっして誤りではないのだと改めて思う。 歩いている時はそうでも無いけれどこうして立ち止まっていると足の指先がジンジンとしびれる。 たまらなのでトットと先に向かうことにした。 倉岳山からの降りも急斜面で降りづらかった。 下から一人の男性が登って来た、今日初めて会う人だ。ここでコケたらメチャ恥ずかしいので慎重に足を運んだ。 |
天神山頂はあまりパッとしない地味な山頂で写真を撮るだけで通過した。 |
|
先ほどの男性のものらしい雪の足跡は穴路峠から鳥沢方面へ向かっていた。 ここから先はまた新雪の道を歩いて行くことになった。 高畑山は”秀麗富岳12景”だのに、んーん、富士山が意外と小さいじゃないか! でもまぁ空が本当に透けるほどの青空だから全てが許せてしまう。 わずか数センチの雪だけれどこの雪が無い景色はどうなんだろう?また春になったら再訪したくなる山だ。 |
高畑山頂はこんな感じ。雪が無い季節はまた違った様相なのだろう。 |
|
勿体無いなーっ!どこまで降りるのだろう? 高畑山からドンドン降って行くと車道へ降り立った。 鈴ヶ音峠には軽トラックが一台駐車していて・・・その荷台には開けっ放しの8個の檻が積んであって、きっと狩猟の人なのだろうけど耳を澄ましても猟銃の音も犬の吠声も聞こえないし、それに第一この辺りは禁猟区だし。 かなりやばそうな雰囲気なのだけどとにかく間違って撃たれないことを祈るしかねぇー! オニギリもしっかり食べた。鈴ヶ音峠から再び登って行く。 地図でのコースタイムではここから九鬼山までは約3時間。 んーん、正直に言えばここから帰ろうかなともちょっとだけ思った。今から帰れば千秋楽も笑点も見れるし・・・だれど時間はまだ早いし、それに今日はザックが軽いせいもあってすごく体の調子が良い、もっと先まで歩きたい気分なのだ。 |
大桑山の眺望は無い山。それにしても誰とも会わない。 |
|
871m地からの雲取山。防火帯の登山道にしっかり雪が見える。 |
871m地点は檜林になっていて山一面の木が伐採されていた。 そのため眺望が良くて、今日歩いて来た高畑山、倉岳山、それからすぐ隣の赤鞍ヶ岳、朝日山、それに雲取山、小金沢連嶺など周りのほとんどの山々を見ることが出来た。 ここから見る三ッ峠山の姿は実に大きくて、それだけでまた登ってみたくなる山に映る。 しかし困ったのは一面が雪の平原になっているのでどこが登山道だか分からない。 幸いにも積雪量が少なくて登山道は周りより少しだけ凹んで見えるのでどうにか迷うことなく歩くことが出来た。 こんな低山で迷ってどうする!と思うけれどこの辺りの登山道は本当に分かりづらかった。 |
871m地は中央線沿いの山、奥多摩の山、小金沢連嶺の好展望地、ただ富士山だけは見えないけど。 山梨百名山の菜畑山、今倉山、二十六夜山の3つが連なっている。いつか登ってやろうと思った。 |
禾生駅からの登山道、杉山新道への分岐点からは嘘みたいに急に足跡が増えて、ここまで新雪の上に一つ一つ足跡を残して歩いて来たことがどこか別の世界の事みたいだ。 そこから少し進んでいくと10人ほどのパーティーが休んでいた。 本日2度目のハイカーとの遭遇である。こんな低山ではあるけれど誰とも会わないというのも結構心細いものだった。 何だかホッとしたなーっ!ってそのそばを通り抜けようとしたら・・・ そのパーティーの人達がアイゼンを外して、そのアイゼンに付いた雪を落とそうと松の幹に、それも刃の方を叩き付けていた。これって良いの?何だか松の木が痛々しく思えてしまった。 九鬼山頂の手前にオッと立ち止まってしまうほどの富士山の眺望が良い場所があって、そいじゃーここで一発記念写真を・・・と思ったらおかあさん達がしっかりシートを広げて休憩中なんだよ。 しかし居るんだよね、こんな撮影ポイントに陣取っている人って・・・たのむよ空気読んでよ! 参ったなーっ!って思っているとそこへ男性3人が到着した。 「集合写真撮りたいんで少しどいてもらえますか?」ここで弁当を広げているおかあさんもおかあさんだけど、どいてくれって言う方も言う方だと思った。 男性3人が撮影した後、僕もちゃっかり割り込んで記念撮影をした。 「今度は彼女と一緒に来なきゃ!」三脚で撮影している僕におかあさんたちがはやし立てる。 余計なお世話だよ、まったく何なんだよーっ! |
九鬼山頂の50mほど手前に唯一富士山が見える場所がある。ここで休んでいる人は20人ほどでめちゃ混み状態。 周りのおかあさんからやたら話しかけられる。 |
|
富士山の眺望が良い場所から50mほど進むと九鬼山頂へ着いた。 ここからは富士山の眺望は無いけれで小金沢連嶺は絶景だった。 僕の他には誰も居なかったのでオニギリを食べながらノンビリとした時間を過ごすことが出来た。 やっぱり低山の魅力の一つはこうしたノンビリした時間の過ごし方だと思う。 九鬼山から禾生駅へ降りてそこから高川山へ登ろうと思ったのだけれど、そこまで歩く根性はやっぱり無くて、かといってこのまま帰るには早い時間なので猿橋まで歩くことにした。 |
九鬼山頂からは展望は良くて、登山者が多い山だと言う理由が分かる。 小金沢連嶺の滝子山から黒岳までが一望出来ます。 |
九鬼山からの降りは北側の急斜面で圧搾された雪がへばり付いて、それにヤセ尾根で、高度差はそれほど無いけれどここを滑落したら大怪我するような箇所だった。アイゼンを持ってこなかったことを今日初めて後悔した。 九鬼山から馬立山まで眺望はあまり無い、たまに富士急行線沿いの街並みや三ッ峠山が見える程度で、それはそれなりに楽しめたけれどやっぱり物足りなさは否めない感じだ。 田野倉駅への分岐からまた足跡が消えた。 ここから先はまた新雪に一人分の足跡を残しながら歩いて行く。 ここまで来ると足も疲れているので一気に目の覚めるカンフル剤のような景色に出会いたい所だ。そんな時、木々の間から見える富士山はやっぱり嬉しい。暗闇の中でポッと明るい場所を見つけたようで元気が出る。 |
馬立山頂から木々の間に倉岳山が見える。 |
|
神楽山頂は2畳ほどしかなくてアンテナが立っていた???何で??? |
御前山頂はそのまんまのでっかい岩だ、ここは展望が良かった。 今日歩いて来た倉岳山から九鬼山までの稜線が白い空との境界線を作っている様は今日の山登りの終わりをどこか暗示させる景観だ。 もうここまで来ると下に見える大月の街も近くて、市街地とその中を走る中央自動車道がジオラマみたいに見える。 富士山を見るのも今日何度目だろう?指折り数えると指が足りないのが妙に嬉しい。 西へ傾きかけた太陽が空の白さの中に富士山の姿をにじませようとしている。 つなげて歩こう!って思った。富士山の白さに誘われて今度は雪が無い時に来てみようと思った。 |
段々と富士山も空の白さに融けてゆく |
●山麓をゆくへ | ●ホームへ |