南郷山、幕山、城山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆3月9日
川崎(5:39) +++ 湯河原(7:03/7:05) --- 鍛冶屋(7:25) --- 南郷山(8:35/8:55) --- 幕山(9:25/10:05)--- 一ノ瀬橋(10:50/11:10) --- しとどの窟(11:30/11:40) --- 椿ライン駐車場(12:05/12:10) --- 城山(12:25/12:55) --- 湯河原(13:38/13:43) +++ 川崎(15:09)

山日記

AM5:20自宅を出て駅に向かっていると東の空が既に明るくなり始めていた。前回、沼津アルプスに行った朝は真っ暗だったので確実に段々と日は長くなってきているのを感じる。気のせいかもしれないが干した布団や洗濯物から香る日向の香りも強くなった気がする。
今回の登る山は幕山である。10年ほど前の12月に登って以来今回2回目だ。この山は標高は低いのだけれど山頂がカヤトの原っぱになっていて、しかも海が見えるので陽だまりハイクにはもってこいの山なのだ。それに2月中旬から3月の上旬までは山麓に梅が咲きにおうと聞いたので行ってみることにした。
それにしても昨年の末から。。。金時山、沼津アルプスそして今回の幕山とお気楽ハイクばっかりなのはちょっと情けない。

列車は相模川に架けられた鉄橋をゴトゴトと渡って行く。東海道線を走る列車から丹沢が一番良く見えるのはこの鉄橋からなのだ。車窓から見た丹沢は塔の岳、丹沢山、蛭ヶ岳の主脈にポツポツと白が残っている程度でかなり雪が少なくなっているようだ。「早く雪が無くなって山に緑が戻ってこないかなぁー!」と眠たい頭で眺めた。
湯河原駅で電車を降りる。鍛冶屋まではバスも出ているのだが時間に余裕があるのでのんびり歩いて行くことにした。
鍛冶屋からはミカン畑の中の舗装された道を登る。道が舗装されているとどうもズンズンと登ってしまい気が付くと汗ダクダクになっていたのでフリースを脱いだ。


南郷山山頂 レジャーシートを忘れるべからず。 そのまま座ると枯れ草がいっぱいくっついてしまうのだ
道は意外と急登でこれがゴルフ場まで続いている。ゴルフ場にぶち当たるとそこからはゴルフ場を避けるように回り込んでいる。
2メートル程の高さの竹林の道はポカポカと日当たりが良く、自然とのんびりした歩調になってしまうのだった。
ゴルフ場との境には動物除けのための高圧電線が張られ、”キケン”の札が随所に立てられていた。そういえば道の途中に”野猿注意!”の立て札が有ったけれど、これって猿除けなのだろうか?それとも猪や鹿がいるのだろうか?良く見るとタンスの防虫剤・パラゾ−ル(太鼓タイプのデカイやつ)が30センチの高さに吊るしてある。こうなってくると虫か?動物か?何の駆除だろうか?謎は深まるばかりだ???
登山道はやがて立派な林道に飛び出す。10年前の記憶だと林道に出る直前の道は両側から竹が覆い被さり、丁度竹のトンネルになっていた記憶があるがここではなかったかな?トンネルの中を歩くと結構ワクワクして楽しかった。道が整備されるのは嬉しいがこのトンネルは残して欲しかった。
林道を右に50mほど進むと南郷山への最後の登りになる。背後に真鶴半島や初島が見える様になるといよいよ山頂だ。

幕山山頂から真鶴半島を見る。 なんだかしょうもない写真だけど僕の周りには沢山の人が居るのでこんなんしか撮れなかったポリポリ
鍛冶屋から一時間で南郷山山頂の到着。
山頂はカヤトの草原になっていてこんなポカポカ陽気に来るには最高なのだ。ススキの奥にはうぐいす色の星ヶ岳も見える。視線を星ヶ岳の右に移すと三浦半島や房総半島が見える。やっぱり山から海を見るのは気持ちが良い。なんだかすごく開放的に気分になってしまう。遠くには伊豆大島も見え本当に爽快な気分だ。
山頂には案内板があるが10年前に来た時には無かったはずだし「南郷山」の標示も以前はかなり古くて傾いて立っていた。標示は変わったがポカポカの山頂はあの日と変わることなく同じだった。
南郷山から幕山に向かう。途中の指示板から左に進むと幕山に行くのだけれど真っ直ぐ方向にも踏み跡がある。
10年前来た時、時間に余裕があったので星ヶ山まで行ってみようとこの踏み跡に入って行った。道はやがて防火帯を歩く事になるのだけれど途中でパッタリ消えてしまう。星ヶ山は直ぐそこなので藪こぎしてなんとか山頂まで行ってみようとしたが強靭な竹に遮られてやむなく敗退したのだった。敗退はしたが山登りを始めたばかりの頃だったのでなんだかすごい冒険をした気分になって意気揚揚と山を降ったのだった。

幕山山頂は混雑していたが周回コースはうららかな陽の下でのんびりと散策するのに最高!
登山道は竹の生い茂った中を進んで一度林道まで降りる。
200m程歩くと左に幕山への指示があり、杉の植林を抜けると緩やかな登りになる。
この辺りは10年前と比べてずい分道が整備されているのに驚いた。砂利を敷き詰めた登山道に沿って桜の木が植えられている。これって観光客にとっては靴が汚れないし歩きやすくなったと思うのだけれどこう人の手が入るのも山が味気なくなるので僕は昔の方が良かったな!
(後日談:偶然目にした神奈川県レッドデータ生物調査報告書よると(以下原文)「幕山の上部はススキ草原であって向陽を好む草本類の種類が多いが最近は茅戸刈を行わないので遷移が進み、稀少種が絶滅する方向にある。また行政が遊歩道整備を行い山頂部に大量の砕石を敷いたので乾燥化が進み環境破壊を起している。」とある。ポカポカ山頂も何時の日にか消滅してしまうのだろうか?なんだかすごくやるせない気持ちだ!とんだバカヤローだ!)

幕山山頂もカヤトの原っぱになっていてここもポカポカ山頂なのだ。ここからも初島や真鶴半島の眺めが良い。南郷山山頂では僕の他に一人だけだったがここには30人ほどが休憩していた。昼食にするには時間が少し早かったので山頂の周回コースを一回りしてみることにした。周回コースは山頂の直ぐ下を回っているのだが誰も居なくて静かだった。抹茶色の竹に覆われた星ヶ山それから大観山のレーダー局、海まで延びた稜線の岩戸山が見える。カヤトの原っぱののどかな散策だ。


岩に取り付いているクライマーが見えますか?
なんだかすごくカッコ良いのだった!
再び山頂に戻ってみて驚いた。山頂の人は30人から100人程に確実に増殖していた。ここでの昼食は諦めて降りることにした。
しっかり整備された登山道をジグザグに繰り返し降りて行く。
僕の記録では一位:雨飾山、ニ位:天城山がダントツで他の山を引き離していたけれどこの山が二つの山を抜いて堂々第一位に決定した。それは”登山道の人口密度”である。登山道を降っていると後から後から人が登って来る。山頂に居る人100人、登って来る人100人位だ。直ぐ降りる人も居るだろうが、けっして広くは無いあの山頂にこれだけの人が立てるのだろうか?心配になっていった。「僕、知らねぇーっ!」とワクワクしていった。
登山道を降りていると目の前に春がやって来た。「ジャジャーン!噂では聞いていたけれどこれが梅林か!。やっぱ花は良いよなぁー!」とガラにもなく梅を見てニンマリしてしまうのだ。確かに人は多いけれど梅の持つ気品のせいなのか?騒がしい感じはしない。皆,やさしい人間になって少し早いうららかな春を満喫しているのだった。
梅も良いけど。。。花の間に見えるロッククライマーの存在も気になってしまう。「けぇ!俺には花なんて関係ぇーねえよ!」とひたむきに岩壁に向っている感じだ。

梅が咲き匂う幕山山麓 これは見なきゃ損!な景色
なんだか梅の木の下のにこやかな観光客と木の上で岩に挑戦している真剣なクライマーの表情が実に対照的だ。
岩にアタックしているクライマーは男性よりも女性が多いようだが散策路を歩いていると観光客とクライマーの女性は見た目が全然違うのでそのギャップが面白い。観光客のオバサンはいかにも”おでかけ服”に厚化粧、ダミ声で完全に”ばってん荒川”化しているのに対して女性クライマーはスッピンでフリースをひっかけた野暮ったい格好なので直ぐに見分けがついてしまうのだった。だけど同じ登山者として僕のようなお気楽ハイカーにとってロッククライマーの野暮ったい格好は眩しすぎるだ。
「本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。。。皆様のおかげをもちまして4000本の梅を植林するまでになりました。。。」ラウドスピーカーがガサツな声をはりあげている。周りでは楽しそうな笑い声が聞こえる。山は自然のままが良いのか?人の手で整備、観光化された方が良いのか?分からなくなる。僕はぼんやりと梅の花の向こう側の幕山と白い雲を見上げた。

これで帰ってしまうのは時間も早いし足もプスプスと不完全燃焼状態なので城山まで足を延ばしてみることにした。城山に登るのは初めてである。


しとどの窟は小さな滝の奥にある 今になってちゃんと立て札を読めば良かったと反省。
一ノ瀬橋から城山に向う分岐点に「城山への道は一部工事中のため。。。」と注意書きがあり心配になったが「バーロー!こんな低山で敗退してどうする!」と強気で進んだ。城山への道は南郷山や幕山の道と違って木々の生い茂る沢沿いの道を登る。
結局、工事中の箇所なんか無く?無事に”しとどの窟”に着いた。”しとど”とはなんだ?と思っていると説明を記述した立て札があった。読んでみると”エースの錠”とは関係なく、おまけに長く難しいので途中でなげてしまった。
しとどの窟は陽の光で白く輝いた水が小さな滝となって岩の上から流れ落ち、その岩の奥に石仏が安置されていた。信仰心が全く無い僕でさえ何か神々しいものを感じてしまうのだ。
しとどの窟からの城山に向う道の両脇には灯篭とお地蔵さんが並んでいる。「正直に言って夜一人ではとても歩けません!」などとバチ当たりな事を思っていたせいで椿ラインの駐車場から先の道が分からなくなってしまった。
しかたなく灯篭とお地蔵さんが並んでいる道を引き返し、しとどの窟まで戻って近くに居た男性に道を訊ねると「駐車場からトンネルの方に行く」と教えられたのでまた駐車場まで戻ることになった。御礼を言って分かれる時に男性から「初めての人には分かりにくい道なんですよね!」と言われて救われた気持ちになった。実は「こんな低山にハイキングに来て道に迷っているようじゃーあまりにも情けねぇー!」と思っていたのだ。
男性に教えられたようにトンネルを抜け50mほど先の公衆トイレの裏を折り返すように登って行く。つまり登山道はさっき通り抜けたトンネルの上を歩く感じになり地図では交差して記述されているのだった。
それにしてもこの峠には”俺サB級”のライダーがハングオンなんかしちゃったりして騒音を撒き散らしているのでとてもうるさいのだ。数百メートル離れたしとどの窟との静寂とは別世界と思える。

城山山頂 写真を撮る時だけ雲ってしまった。眼下には太平洋の大海原が広がっている。
残念なのはこの写真の僕、やけに足が短い。
喧騒を離れ登山道を登って行くと道はほとんど水平でおまけに石畳で歩き易い。こうなるとさっきまで道に迷ってヘコんでいたことなんかすっかり忘れて気分はまさに絶好調!
石畳を離れ登っていくと目の前に広い草原が見えた。その向こうに海がドーンと広がっていて僕得意の感嘆詞「カァーッ!」も連発!おもわず走り寄ってしまった。
真鶴半島、初島の展望は良いが伊豆大島は雲に覆われていて島の下半分しか見えない、天城山も山頂は厚い雲に覆われている。だけど雲を運ぶ風は南南西の風、天上の黒い雲も春に向けての序章だと思えて許してしまうのだ!。
山頂は広く20人位が休憩していた。焼きそばパンを食べてニンマリしていると伊豆半島の雲がここまでグリグリと押し寄せ曇ってきたので写真を撮って降りることにした。
登山道はミカン畑の中の急な道で海に向って降りて行くような感じだ。海は銀色にキラキラと輝いていてなぜか水平線だけが海を縁取りしたみたいに濃いブルーだった。そのブルーの水平線に大型の船が浮かんでいるのが見えた。
「あの船はどこに行くのだろう?」どこかぼんやりした頭で海に向かって歩いていると疲労した体がじんわりと心地良かった。

10年ぶりに訪れた山、人の手によるものは変わってしまったが自然は変わっていなかった。幕山、南郷山、城山の青空志向の山々はうららかな陽に輝いて春がそこまで近づいていることを教えてくれた。
山麓から春を告げるメッセージ。。。しっかり受け取ったでぇー!

春は梅の次には桜、そうやって花びらを一枚一枚重ねて輝きを増していくのだ。
春よー!ぴらぁーっと 来んしゃい!

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