南郷山、幕山、城山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2016年3月5日
川崎 (5:19) === 湯河原 (6:38) --- 五郎神社 (7:05) --- 南郷山 (8:15/8:25) --- 自鑑水 (8:50/9:00) --- 幕山 (9:15/9:30) --- 湯河原梅林(幕山公園) (10:05/10:40) --- 一の瀬分岐 (10:50) --- しとどの窟 (11:20/11:40) --- 城山 (12:20/12:30) --- 湯河原 (13:15/13:18) === 川崎 (14:30)

山日記

車窓の外に朝の太平洋が広がった。
太陽から伸びたオレンジ色の帯の中に飲み込まれた小さな漁船が陰を作り、
その風景は切り取られた映画のワンシーンみたいな始まりだった。

周りを山々にぐるりと囲まれるように湯河原の街はあった。
車内で読んでいた「かもめ食堂」の中の街とどこか風景が重なりサラリとした朝の空気に霞んで見えた。

幕山に来るのは13年ぶりだ。
湯河原駅から地図を頼りに歩き出すけれど道はすっかり忘れてしまっている。
地図と「幕山公園」の案内板を頼りに歩いて行く。

鍛冶屋行きのバスに追い越せれる度に「バスで行った方が良かったかもしれない」と思ったけれど直ぐに「時間に余裕がある山行ぐらいはのんびり歩こう」と思い直す。

五郎神社の直ぐ先から右に入り南郷山へと進んで行く。
道は舗装された急な坂になっているので登るのが意外と大変だった。

30分ほど歩いているとやっと舗装道路から開放され山道へと変わった。
やっぱり登山道は気持ちが落ち着くな!などとと思ったら道はゴルフ場に沿っていて竹やぶの向こう側には広いグリーンが広がっていてガッカリする。
登山道とゴルフ場との境にある獣避けらしい高圧線に威圧されながら歩いて行く。


箱根竹のトンネルが続いている。だけど直ぐ横にはゴルフ場のグリーンが広がっている。

登山道がゴルフ場から離れ、やっと人工物の呪縛から解放されたと思ったらゴルフ場の先は林道(白銀林道)になっていて一気にしらけてしまった。
車を持っている人はここまで座って来れたのでは?何だかここまで無駄な努力をしていたのでは?とガッカリさせられる。

林道を100mほど歩くと南郷山への登山口があった。
ここでやっと登山モードへ突入すると真鶴半島を背にして登って行く。


真鶴半島を背にして登って行く。半島の右には初島も薄っすらと見えていた。

南郷山頂は一面が広い草原になっているので開放感はあるけれど、山頂からの眺めはあまり良くなくて、特徴の無い星ヶ山がわずかに見える程度なので達成感には乏しい山頂だった。

燦々と春の日差しが降り注いでいる。
草地にドッカと腰を下ろして見るとまだお尻に冷たさを感じたけれど、こうして心にポッカリと隙間が空いてしまうような休日に早春の暖かな日差しを楽しむには良い山頂だった。

数年前、南郷山には足繁く訪れた。
南郷山→星ヶ山→白銀山への藪漕ぎルートがヤマケイに紹介されていたのでトライしてみたけれど防火帯を歩いて星ヶ山まで行くのがせいぜいだった。

今だったら多少ルートファインティングに慣れてきたのでもしかしたら藪の向こう側まで到達出来るかもしれないけれど今ではその興味もなくなってしまった。


南郷山頂。山頂からの展望はこんな感じであまり良くない。珍しく誰もいない。

南郷山から白銀林道へ降る道は急勾配で、せっかく登ったのに勿体無いと思う。
林道を50mっほど歩き、自鑑水への分岐から再び登って行く。
しばらく登っていると南郷山からの縦走路と合流したので白銀林道へ降り無くても良かったみたいだ。

自鑑水は突然現れた。
森の中に突然現れた。

自鑑水は小さな水溜りだと思っていたら20mx15mほどの池だった。
周りの木立が本当に鑑のように湖面に映り込んでいた。
木陰と木漏れ日のコントラストが青白い月の光とその陰みたいに水面に並んで見えた。

平家に追われた源頼朝がこの池に映るやつれた自分の姿を見て自害すること考えた。
そして乱れた髪を直していると平家を破り天下を治める自分の姿が水面に映り心機一転、自害を思いとどまったとされる。
源頼朝って単純な人?楽天的?と言う感じは否めないけれど、これ以上のパワースポットってあるだろうか?自殺から一転して天下人に気持を変えさせるなんて!


森の中に忽然と現れた自鑑水は思っていたより大きかった。本当に水面は鑑のように周りの景色を映していた。

自鑑水から再び林道へ降りて今度は幕山へ登って行く。
群青の空の下、キチンと整備され過ぎた登山道も嫌な感じはしない。

幕山山頂には誰もいない!
いつ来ても大賑わいの山頂がこんなことってあるのか?
次々と登山者が登って来るけれど昼食にはまだ早すぎるのか?山頂で記念撮影すると南郷山へ向かって行くので混雑しなかった。

南郷山、幕山の残念な点は富士山が見えないこと。
こんなに富士山に近い位置にあるのに間にはどっしりと箱根山があるのでその姿は悲しいくらいに一切見えないのだ。

山頂は草原になっているけれど潅木に囲まれてあまり眺めは良くないので周遊コースを散策してみた。
山頂の北側はそれなりに展望は良いけれどやっぱり箱根山の特徴の無い稜線が見えるだけだった。
南側は潅木帯の中で展望は無いけれど新緑の時期に訪れたら木々の隙間を緑が埋める気持の良い散歩道になるだろう。


幕山の山頂にこれだけ人の姿が無いのは初めてだ。この山頂も展望は良くないし周りに目立つ山も無い。


幕山の山頂からは薄っすらと真鶴半島が見えていた。前回来た時はもっとくっきりしていたのに残念。

沢山のハイカーとすれ違いながら幕山からズンズンと降りて行くけれど梅林は一向に見えない。
やっと見えたと思ったらそれはもうずっと山の下まで降りた所だった。

梅園まで来ると極端に人が多くなった。
登山姿のハイカーとコート姿の観光客が入り混じっている風景はどこかチグハグな感じがする。

幕岩を見ると多くの人が岩に取り付いていた。
僕は岩場が苦手なのを十分自覚しているので岩登りやボルダリングをしようとは思わないし、こうして岩登りをしている人を目の前にしても憧憬感は無かった。


幕岩はロッククライミング、フリークライミングに人気の岩場。この日も多くの人が岩に取り付いていた。

早春の予感を漂わせる梅のたたずまいには憧れる。
白、ピンク、赤。色んな色の梅花があった。
(白梅、紅梅と言うのは花の色ではなく幹の色らしい。赤い花の白梅、白い花の紅梅も当然あるので何だか面倒くさい)

ネットで調べると「湯河原梅林−見ごろ」となっていたけれどもうしおれてしまっている花も目に付いた。8分咲きの先週来た方が良かったかもしれない。


湯河原梅林(幕山公園)は以前来た時に比べて整備されていた。菜の花も以前は無かったような気がする。

一の瀬橋を渡って100mほど先を左折する。
林道を登っていると石仏の前からいきなり山道になった。
今日は整備され過ぎたような道ばかり歩いて来たのでここで一気に気持ちが山登りモードに変わって、同時にほっと落ち着いた。

登山道は谷沿いの道で水が涸れた沢を何度も横切る様にして登って行く。
日差しが暑い。天気予報では今日の最高気温は16℃になるらしいと言っていた。
フリースを脱いでTシャツ一枚になった。毛糸の帽子じゃなくてツバ付きの帽子が欲しい。
閉じた瞼の間から差し込む光もにじむ様な暖かさだ。

しとどの窟(いわや)は平家に敗れた源頼朝が身を隠した岩窟。
追手が岩窟へ近づいた時、シトト(鳥)が飛び出したのでここには人の気配は無いと追手は引き返したと言われている。

しとどの窟は暗くて冷たい感じではなく、無垢な朝のような澄んだ空気に満ちていた。
岩窟の上部に小さな滝があって小雨のように水が滴り落ちている。
水滴が光を反射して荘厳な感じ、薄暗い岩窟の中には石仏が鎮座していて神々しい。


荘厳な光・・・岩窟の上から小雨のような水滴が落ちていた。周りの空気もヒヤリとしていたシトドの窟。

しとどの窟から弘法大師の石仏が並ぶ道を登って行く ・・・ えっ?、車道に出てしまった!
城山への分岐を見落としたらしいので今登って来た道を再び下って行く。

しとどの窟まで引き返したけれど城山への分岐はやっぱり見つからない。
登って来た女性に道を尋ねると車道へ出てトンネルを抜けた先にある休憩所の横を登って行くと教えてもらった。(自宅に戻った後、前回2003年に来た時のレポを読むと同じ様に道に迷っているので全然進歩していないのだ!)

休憩所の横を上って行くと登山道は石畳のように整備された道だった。
さっき通ったトンネルの今度は上を歩いて行く。
(立体的な道になっているので地図では分かりにくい)

城山は豪族土肥次郎実平の城跡で空気が澄んでいたら房総半島や伊豆大島まで見えるらしいけれど今日は真鶴半島も霞んでしか見えなかった。
ここまで来たらいい加減に富士山が見えるのでは?と周りを見渡してもやっぱり富士山の稜線すらも見えなかった。


今日最後の山頂、城山です。眼下には湯河原温泉の街が広がっています。ここからも富士山は見えなかった。

城山山頂で深呼吸。
今日の山登りはここで終了なのだ。

低い山より高い山が良い。
日帰りより縦走が良い。
小屋泊まりよりテントが良い。
そして何てったって冬山より夏山が良い。
・・・逆に言えば低山の日帰り冬山は一番つまらない山と言うことになる。
南郷山、幕山はその典型的な山の一つかもしれない。
おかわりは ・・・ 無い山だなと思った。

古代のロマンに満ち、小さな春を告げる小さな山。
眼下の湯河原温泉の向こうにはでっかい太平洋が広がっている。

また来てしまう感じがした、また来ても良いかなと思った。

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