御岳山 (ロックガーデン)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2015年11月21日
御嶽駅 (7:22/7:50) === ケーブルカー下 (8:00/8:10) --- 御岳山 (9:05) --- 御岳神社 (9:20/79:30) --- 綾広ノ滝 (10:40/10:50) --- 長尾平 (11:15/11:20) --- 七代ノ滝 (11:35/11:45) --- 長尾平 (12:00/12:10) --- 展望台 (12:15/12:20) --- 御岳山 (12:30) --- ケーブルカー下 (13:00) --- 御嶽駅 (14:10)

山日記

奥多摩の山は嫌いだ。
どの山も個性が無くて面白くない。
雲取山、棒ノ折山、川乗山はまだ良いけど高水三山、大岳山、御前山、三頭山はつまらない。

だけど奥多摩の山々は人気の山。
もしかしたら僕に登山者としての審美眼が欠けているのかもしれんと思う。

十数年前の12月末、御前山に登った時のことだ。
天気予報では晴れだったのに朝から終日曇り空で寒い一日だった。
下山後、奥多摩湖畔でバスを待っていた。冷たい風が容赦なく体温を奪って行く。

「オレ ・・・ こんな所でいったい何をやっているのだろう?」
灰色の空を見ていると急にむなしくなった。

この時のことがトラウマになったのかもしれない。

先日の鈴鹿セブンマンテン縦走中、急に日帰り登山に目覚めてしまった。
山登りを楽しむにはなるべく負の要素は排除するべきだ。
重いザックを背負って歩くのはやっぱり疲れる。

奥多摩が嫌いな僕でも日帰りで歩きたい山があった。



登り坂の車道歩きは意外と疲れるので御岳山ケーブルまではバスに乗ることにした。

御嶽駅を降りてバス停まで行ってみると発車時刻までまだ30分もあったので御岳渓谷を少し散策することにした。
20分後、バス停に戻って見るとそこには30人ほどの行列が出来ていた。
これでは座れやしない!
さっき来た時にはたった3人だったのでこれにはガッカリした。

御岳山への登山道は御岳神社の参道になっていた。
バスを降りた人の中で参道へ向かった人は僕を含めてわずか6人だった。

暗い参道には空気を清めるかの様に杉の大木が立ち並んでいる。
道は舗装されているので登山道って感じは全くしない。

展望は無く単調な登りなのでザックからウォークマンを取り出した。
好きな曲を聞きながらの山登り、これも日帰り登山の楽しみだ
(テント縦走でもやろうと思えば出来るけれど)
最近お気に入りの「Paris」(ZAZ)が流れ出した。ZAZの明るいハスキーボイスに元気をもらう。


御嶽神社の参道(登山道)には杉の大木が並んでいる。中にはこんな朽ちかけた大木もあって屋久杉みたいだ。

丁度CD一枚聞き終わった所で山頂へ着いた。
山の上に忽然と集落が現れるので少し戸惑ってしまう。
周りを見渡すとわらぶき屋根の家屋も残るちょっとした白川郷みたいな雰囲気なのであっちこっちに貼られた選挙ポスターに違和感を感じてしまう。

御岳神社本殿はブルーシートに覆われていて改修中だった。
宮大工が「カンカン」と柱を打ち始めると、チワワが驚いて「ワンワン」と吠える。
すると犬の飼い主が「○○ちゃん、ダメよ!」と叱咤する。

「カンカン」「ワンワン」「ダメよ!」が繰り返される。
もう降りたら?と思うけれど犬の飼い主は全然動こうとしないのでこの小コントが境内で繰り返されるのだった。

せわしなく参拝をすませてロックガーデンへ向かった。


御岳山頂からの都心はうす曇。スカイツリーは見えなかったけれど雲の上にポッカリと筑波山が見えていた。

長尾平の標示板を見るとロックガーデンへの道はいくつかあって分かりにくい。
とりあえず綾広ノ滝の方へ向かって下りて行く。

登山道は展望の無い単調な下り坂なのでここもウォークマンを聞きながら歩くことにした。
選曲は「GUITARS」(ゴンチチ)にした。これがユルユル山歩きにぴったりだった。

天狗岩を過ぎるといよいよロックガーデンだ。
もちろんウォークマンはザックにしまってここからは沢の音がBGMだ。

小さな渓流、苔の緑、日本庭園の趣きに心が安らぐ。
紅葉には少し遅かった。
ただ落ち葉と苔の緑のコントラストのゆるい感じがまた良いのだ。


ダラダラと御岳ロックガーデンを散策する。NDフィルターをONにしっぱなしなので人物がブレてしまった。


紅葉には少し遅すぎたようだ。ジメッとした落葉の道だけど歩くことが気持良い。


NDフィルターをONにしてもシャッタースピードは1.5秒にしかならなかった。

今回の山行の目的の一つが撮影の練習。
一年前にデジカメをデジイチ(Kiss Digi N)からコンデジ(PowerShot S120)に買い換えたけれど、どうも思ったように写せないので今日は実践練習だ。

ところが今日は三連休の初日でしかも天気は晴れ。
カメラの設定をあれこれ変えて撮影しようとするけれど次々と登山者が歩いて来るので落ち着いて撮影出来ない。
自分の技量のもどかしさにイライラした。

それにS120に内蔵されているNDフィルターをONにしてもシャッタースピードが2秒以上には成らないので沢が白い絹糸みたいに写ってくれずガッカリだ。


岩壁に挟まれた登山道。この辺りも良い感じだ。立ちんぼになっているのは前後に大勢の人がいる恥ずかしさ。


天気は晴れているけれど雲が多くあまり日差しは無かった。カメラの設定を試しながら撮影する。


綾広ノ滝にもハイカーが多かった。シャッタースピードが遅いので滝の下に立っている人がぶれてしまって見えない。

綾広ノ滝でロックガーデンは終わり?
もう眠ってしまったかのような落葉の道を歩いて行くと長尾平へ戻って来てしまった。
まだ七代ノ滝は見ていないけれど?
どうも道を間違えたみたいなので今度は七代ノ滝へ向かって降って行った。

七代ノ滝への登山道はこのまま下まで降りてしまうのでは?と思うほどの急斜面だった。
展望の無い道を歩いて行くとやがて沢の音が聞こえてきた。

視界がパッと開けるとそこに岩に挟まれるようにして七代ノ滝があった。

暗く陰になった岩に間に光を集めたような一筋の流れ。
豪快な滝も良いけれど、こんなこじんまりした滝の方が心に染み入るのかもしれない。

山を歩いていてパッタリとこんな滝に出くわしたらきっと自分の吐息が自然の中に溶け込んで行くのを感じられたと思う。
だけど今日は人が多い。ザワザワした喧騒の中では鑑賞する心に余裕は無かった。
ただ自分も喧騒の要因の一人なので文句は言えないけれど。

スマホのカメラって手ぶれ補正とかISO感度設定とかの機能は無いのだろうか?
滝の前で男女4人が記念撮影しているのだけれど何度撮って手ぶれしてしまうらしい。
何度も撮り直す間に撮影の順番を待つ人が30人程に増えてしまった。
滝の前は狭くて濡れた岩盤なのでちょっと危険な感じだ。


神秘的な七代ノ滝。この滝を見るには急な坂道を降りなければならず観光客がここまで来ていたことに驚いた。

七代ノ滝の先はハシゴ状の階段の連続だった。
一気に登れずに途中で休んでいる人も多かった。

急な登りだった道も天狗岩の分岐まで来るとやっとなだらかになった。
「やっぱりこの道、さっき歩いた道だよーぉ!」無駄な努力をしてしまった自分に少しへこんでしまう。やっぱり登山道はきちんと確認しなくてはいけない

長尾平のベンチで昼食にすることにした。
山で弁当を食べるは久しぶりだ。ファミマで買ったから揚げ弁当が旨い。
テント縦走しているとまともな昼食を食べたことが無く、いつもソイジョイとかカローリーメイトとかいわゆる行動食ばかり食べている。

それに炭酸飲料も旨い。
もしかしたら体が過呼吸状態になっていて無意識に二酸化炭素を欲しがっているのかもしれないなどと考えながらペプシをがぶ飲みした。


長尾平から見た鍋割山。きれいに紅葉している。

展望台から日ノ出山を眺めると山全体が紅葉に包まれていた。
日ノ出山までピストンしようか?とも思ったけれど時間が無い。
ロックガーデンで道に迷ったのでその時間はもう無かった。
次に来た時には登ってやるけんね!と思いながら下山開始だ。

ウォークマンの楽曲が「Swift」(Bill Laurance)から「24のプレリュード」(加羽沢美濃)に変わった。
御岳神社前の土産街はスゴイ混雑だった。耳にゆったりと流れるピアノの調べのせいで目の前の雑踏はどこか映画を見ている感じがした。

ハイカーの中には犬を連れた人の姿も少なくなかった。
連れている犬の種類はトイプードルやチワワなど小型犬ばかりだった。
それがビジターセンターですれ違った女性は茶色のでっかいグレートデンを連れていた。
僕自身、こんな大型犬を見るのが久しぶりだったのでそう思ったのかもしれないけれど、御岳神社のあの雑踏の中でのこの大型犬はちょっとしたパニックになるのでは?とワクワクした。


展望台からの日ノ出山の眺め。木に隠れて見えないけれど日ノ出山の左側はしっかり紅葉している。
沢山の人が草地に寝転がっていた。


御岳山からの大塚山。御岳山の周りの山ではこの山が一番紅葉している。次は縦走してみるか。

下山もケーブルカーは使わずに参道を歩いて降る。
降り出してすぐ見覚えのある男性が登っていた。
今朝、この参道を登った時に僕の20mほど前を歩いていた70歳くらいの男性だった。

「あの・・・今朝、登ってましたよね?」と声をかけれると「今日はこれで3回目です」という返事だった。話を聞いてみると今日は下から山頂まで6往復するそうだ。
お百度参りではないのだろうけれど何か深い訳がありそうなのでその理由を尋ねることは遠慮した。
ただ、ちょっと怖い!

ウォークマンはザックに仕舞ってポケットラジオを取り出した。
TBSラジオを聴いていたら高尾山から生中継をし始めた。
何とケーブルカーは100分待ちで、待っている人は推定2000人だそうだ。

100分も待っているのだったら登山道を登った方が早いのでは?と思うけれど高尾山にはスニーカーすら履いていない人も多いのでそれはしょうがない。
ケーブルカー下駅まで下って見るとこちらの駅には20人ほどが並んでいるだけだった。

やっぱり三ツ星の高尾山は人気があるなと思いながら車道を降っているとそこには駐車場待ちの渋滞が500mほど続いていた。
この渋滞は中々解消するようには思えない。
自家用車はともかく渋滞に巻き込まれている路線バスはどうするのだろう?

大きな鳥居が立つ所から御嶽駅までは川岸の遊歩道を歩いた。
御岳渓谷は紅葉の名所として知られているけれどその紅葉を期待していたほどでもなかった。
これだったら御岳山から日ノ出山か大塚山へ縦走した方が良かった。
だけど川辺の遊歩道歩きもまんざら嫌いではない。
自分が歩く速さより早く変わる景色に時間も埋没してしまったかのようだ。


御岳渓谷を散策する。神路橋付近の紅葉。大勢の人が写真を撮っていた。


御岳小橋付近の紅葉。新しく買ったS120はうまくボケてくれないのでジオラマモードで無理やりぼかす。

スラロームをやっているカヌーが水しぶきを上げている。
御岳橋がもう目の前だ。
今年の山登りもこれで終わりなんだな!と思う。

ここ数年、山登りに関しても断捨離してきた。
自分が好きな山登りの形態は何か?を考えた。
惰性で登るのではなく、自分が登りたい山に、登りたい時にだけ登ることにした。
そして雪山用登山靴、ピッケル、スノーシューを捨てた。

奥多摩の山も断捨離の対象だった。
もう二度と登ることはない山だと思った。

小さな沢、小さな滝を見たくなって御岳山に来たけれど山頂から周りの山々を眺めていたら奥多摩の他の山にも登りたくなってしまった。

ひきつけられる山に誘われた時に登る。

山の断捨離もかなり道草しそうだ。

●山麓をゆくへ   ●ホームへ
inserted by FC2 system