三ッ峠山、黒岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆12月13日
立川(5:50) +++ 高尾(6:10/6:18) +++ 笹子(7:07/7:25) --- 変電所(8:15) --- 清八峠(9:45/9:45) --- 本社ヶ丸(10:00/10:10) --- 清八山(10:25/10:35) --- 三ッ峠山(12:30/12:50) --- 天下茶屋(13:50/14:00) --- 御坂山(14:45/14:55) --- 黒岳(15:50) --- 展望台(15:51)(テント泊)

◆12月14日
黒岳展望台(7:40) --- 破風山(8:05/8:10) --- 中藤山(8:45/9:00) --- 大石峠(9:30/9:50) --- 節刀ヶ岳(10:40/11:10) --- 鬼ヶ岳(11:40/12:00) --- 十二ヶ岳(12:40/12:45) --- 毛無山(13:40/14:00) --- 長浜(14:45/15:09)=== 河口湖駅(15:25/15:37) +++ 立川(17:33)

山日記(一日目)

日光・戦場ヶ原はそれはそれで素晴らしい散策だったのだけれど草原歩きは山登りみたいに達成感が無く終わった後も体がプスプスと不完全燃焼、頭は刺激を求めて頭蓋骨の中をグルグルと彷徨い歩いている感じで充実感が少ない。
今回はとにかく、できれば、なにが何でも!縦走したかったので以前から計画していた富士山の外輪山である御坂山地を数回に分けて縦走しつなげる富士山完全包囲網縦走の一回目を決行(なんて大げさ!)することにした。

電車が笹子駅に着いたので降りようとするとドドドッと体が前につんのめってホームに飛び出した。駅はカーブの途中にあるので電車は傾いたまま停車していたのだった。
朝のひんやりした空気が僕の寝ぼけた顔をツンツンとつねる。それにしても自分でもよく起きれたな!と思う。昨夜は忘年会でもんどり打つまで飲んだので朝の3時に目覚ましが鳴った時もまだ酔っ払っていて、こりゃダメだな!と思いながらザックに装備を詰め込んだのだけれどどうにか南武線の始発に乗る事が出来た。


本社ヶ丸への途中、岩が突き出て展望が良い所がある。三ッ峠山と富士山
駅でポリタンに水4Lを入れザックに押し込み、やたら重くなったザックを背負って歩き出す。笹子駅でザックを背負った人ばかりが10人ほど降りたが前方を見ると一人の姿しか確認できない。

今回歩くコースの地図を見ると破風山は展望が良いと記載されているので出来たらそこまで行って幕営したいけどコースタイムを見るとかなり厳しいかな。
舗装道路歩きで少しでも時間を縮めようと急いだが道路は緩やかな登りになっているので後ろからザックを引っ張られるような感じで中々足が前に出なかった。

笹子鉱泉の50Mほど先、ガソリンスタンド手前の道を左に曲がり、稲荷神社の手前を右に曲がると柴犬が待ち伏せていた。こいつがやたらと吠え、唸る。今にも噛み付きそうなので慌てて走って逃げた。これでだいぶん時間が短縮出来たが正直言って疲れた。それにしてもデカイザックを背負っているとやたらと犬に吠えられるような気がする。泥棒と間違えているのだろうか?まさか僕の人相が悪いって事はないよなー。
追分トンネルを抜けて道を1時間ほど歩くと変電所に到着、ここで前を歩いていた人にやっと追いつくことが出来た。急いで歩いたつもりだったが相変わらずの鈍足だな。
道は水路を渡ると砂利道に変わり、登山届のポストがある所からいよいよ登山道らしくなった。ジグザグの登山道をサクサクと霜柱を踏んでひたすら登る。久しぶりの山の感触に足が喜んでいるのが分かる。背中の荷重が何とも心地よく足の筋肉に力を入れてズッシリとした体を一歩一歩進めて行くと山に来たって感じがする。
木はすっかり葉を落としてしまっているので木々の間からは周りの山が見える。振り返ると変電所、その奥には紅葉した木の茶色と檜の緑がマーブル模様になった山々の姿が綺麗だ。高度をドンドン上げていくと滝子山、大菩薩、甲武信、それから山頂を白い雪で覆われているのは金峰だろうか。
「おー!えーど、えーど!」二日酔いでぼんやりしていた脳は視覚から刺激を受け騒ぎ出した。

ほんじゃまー!本社ヶ丸山頂 20人くらいで一杯になってしまうが展望は良い
清八峠に着いた。木々に遮られて富士山の姿はまだ見えない。はたして富士山は雲に隠れずにちゃんと見えるのだろうか?不安と期待でドキドキする。ザックを置いて空身で本社ヶ丸までピストンすることにした。おっと!歩き出す前に「ほんじゃまー、本社ヶ丸まで行くべぇ!」とこの峠で言うことが決まりになっている?オヤジギャグも言い忘れてはいけない。
本社ヶ丸までの登山道は岩が露出した展望の良い尾根道だった。歩き出して直ぐに富士山の姿が現れた。「やった、やった!よーく見える」雲が少しあるがコニーデのなだらかな稜線は美しく、相変らず秀麗であるのにどこか懐かしささえ感じさせる山だ。風の冷たさでかじかんだ頬でぎこちなくニターッとしてしまうのだ。

御巣鷹山から見た木無山と富士山 この景色けっこう好きです
本社ヶ丸は山梨百名山になっている山なのでさすがに展望は良く360度の展望だ。富士山、大菩薩連領、奥秩父ももちろんだけど南アルプスが綺麗に見えたのにはビツクリ。今から向う三ッ峠山は逆光のシルエットになっていて良く見えないがとりあえず山頂のパラボナアンテナがアクセントになってお茶目だ。

清八山から富士山を眺め、ゆで玉子を食べる。
この季節は僕の好きなおにぎりは寒さで硬くなるためあまり美味くは無い。そこで冬季最強助っ人であるゆで玉子君の登場となるわけなのだが、弱点は殻をむくときに薄皮がうまく上手くむけないとイライラして黄身だけ食べて、殻がついた白身はゴミ袋へ直行となってしまいなんとももったいないこと。

歩いていると数人の登山者とすれ違うが決まって「縦走ですか?今日はどこに泊まるんですか?」と声をかけられる。よほどデカザックを背負った僕が珍しいのかはたまた、バカな奴がいるな!と思っているのだろう。僕が笹子から登りましたと言うと「すごいですね!健脚ですね!」と絶賛の嵐なのだけれど三ッ峠山に登るには富士急行線の三ッ峠から登っても笹子から登ってもそんなに距離は変わらないのでなんだかダマしているようで気が引ける。
本社ヶ丸から三ッ峠山を見るとけっこう近くに見えた。二つのピークを過ぎてこれなら楽勝だ!と思ってゆったりと歩いていると三ッ峠山への登りになった。これが予想以上に急だった。もう終わりだろ!と思って先を見るとさらに上があり、ヘトヘト、クタクタになって御巣鷹山に到着した。
山頂にはアンテナが連立していて殺風景な景色にがっかりした。地図をみると御巣鷹山、開運山そして木無山と三つの山がある。三ッ峠山とはこれら三つの山の総称なのだろうか?。
御巣鷹山はどうも二百名山らしくない山頂なのであっさりと開運山へ向うがアンテナが立った白い建物が並んで建っているし、道幅は広くワダチの跡もはっきりあるのでどうも山頂にいるような気がしない。

三ッ峠山山頂 写真では人がいないように見えるが実は周りにはうじゃうじゃと人が多いのだ。
建物裏のはっきりとしない小道を登るといきなり大勢の人の姿が現れた。どうやらここが開運山山頂、そして三ッ峠山の最高地点みたいだ。12月だというのに山頂には30人くらいの人で賑わっていた。
「おー富士山が見える!」これで今日、数回目の御対面だけれどまたまた一段とでかくなった富士山の姿が単純にうれしい。

三ッ峠山山頂から見る御坂山、黒岳 分かりづらいが後ろは南アルプス
御坂山魂に目をやると今から向かう御坂山、黒岳の姿が見える。思ったよりもずいぶん遠い、そして何よりずい分下まで降りて登り返さなければいけないような感じに気持ちがちょっとしぼむ。
三ッ峠山と書かれた石が記念撮影ポイントらしく人が入れ替わり立つので中々写真が撮れなかったが誰もいなくなった瞬間を狙って撮影成功。これだけ人で混んでいると山頂での写真が貴重な宝物に思えてくる。
ところでこの石の裏側ではおっちゃんが旨そうに弁当を食べているので、もう皆の写真にはしっかりとおっさんと弁当が写ってしまっているのだった。
ぐちゃぐちゃどろんこ道を降りて木無山へ向かう。木無山山頂付近は草原になっていてここもやっぱり富士山の展望が良い。ここでも富士山の写真を撮ったが考えたら今日一日、富士山の写真ばかり撮っていることに気がついた。まあ、それもしょうがない。花は咲いてないし、木々もすっかりと葉を落としてしまっている、柳の枝にネコがいるわけでもない、だから被写体は富士山だけになってしまう。これで良いのだ!
天下茶屋へ降っているとデカザックを背負った一行が登って来た。「やー、テント泊だ!どこに幕営するのだろう?」と同じデカザック友の会としてどうしても気になってしまう。挨拶がてら尋ねてみるとさっき見た木無山の草原に幕営すると言うことだった。あの場所は幕営する人が多い場所ですと言うことだったがなるほどあそこだったら富士山の眺めも良いし気持ち良いに違いない。
降ってくるとトイレがあり、駐車している車が多い。道は舗装道路に変わり、歩きやすくなった。
緩やかな坂を降っていると道脇のパイプから水がジャブジャブ出ている箇所に出くわした。「なんで僕はここまで水4L=4キロの荷物を背負って来たのだろう!」と一瞬にして空しくなった。
あー、北風が冷たい!

木無山からの富士山 ここは草原になっていてテント愛好家の絶好のテント場になっているらしい
バス停から道は緩やかな登りになったが少し歩くと天下茶屋に到着。路肩に沢山の車が停まっていた。この峠の茶屋は太宰治が滞在し執筆したことで有名だが「富士には月見草がよく似合ふ」との言葉どうり茶屋からの富士山も良い。それにしてもまさかこんなに多くの太宰ファン、文学愛好家いるとは思わなかった。

黒岳展望台にテントを張る もう人も来ないだろうから登山道に設営した。テントの先には富士山が見えてこれ以上の場所があるだろうか?
太宰治文学碑のベンチで休憩して再び登山道を登って行く。
この道はジグザグなのでそんなには急登ではないのだけれど体は既に疲労困憊状態なので足が前に出ない、直ぐに息があがってしまって辛い登りだった。
稜線に登りつめるといきなり風力5の北風がぶち当たってきて火照った体も急速に熱を奪われて寒くなった。自分の予想ではここまで登りさえすればあとはダラダラと楽に御坂山まで行けると思っていたが御坂山は予想以上に遠かった。
やっとのことで御坂山山頂に着いてみるとぐるりと木々に覆われて展望がなかった。時間は既に3時だし展望が良かったらここにテントを張ろうと考えていたがあいにく良くないので頑張って黒岳まで行ってみることにした。黒岳は300名山にも選ばれている山なのできっと展望は良いに違いないのだ。
途中、御坂峠に山小屋があったが今は無人らしく人がいない山小屋はちょっと薄気味悪い感じがした。地図にある水場を確認しようと思ったが時間も無いし、お化けが出てきてはマズイので止めた。
三ッ峠山から見たとき、御坂山から黒岳へはずい分距離があるように見えたが歩いてみると1時間弱で黒岳山頂に到着できた。
山頂にはなぜか沢山の山頂標示が立っていた。数えてみると黒岳と書かれたものが六つもあった。がしかしこれは大した問題ではない。問題なのはせっかく頑張ってここまで来たのにここも展望が無いことだった。まさか黒岳って苦労だけ?(。。。スマン)
ここから破風山まで行く体力は残っているが時間が無い!もう4時であり陽が傾きかけている。
どうしようと悩んでいたらしつこい標示の中に「展望台」の文字を見つけた。
さっそく行ってみると富士山方向の展望が良い場所に出た。広くはないが登山道にテントを張れそうである。
こりゃ良い!ここに決めた!本日終了!

黒岳展望台 広くは無いが富士山、河口湖の展望が良い 手が冷たくシャッターを押せなかった
テント泊の良い所の一つはこのいい加減さにある。気に入った場所がそのまま今夜の宿泊地になるところだ。先ずは目の前の富士山の写真を撮ろうとザックを降ろした。ところが手が寒さにかじかんで指先の感覚がまるで無い。カメラを三脚に取り付け出来ない、撮影モードダイヤルを回せない、シャッターを押せない、とイライラした。せっかちな僕はこの野郎!バンバンと手のひらを叩き合ったり、木の幹にぶつけてみたりしたけれど一向に良くはならなかった。仕方が無いので先にテントを張ろうとザックからテントを出したが手がかじかんで上手く出来ない、特にフライシートのフックを掛けるのに手間取ってしまい、普通は設営に10分もかからないけれど、この時は20分もかかってしまった。ただテントの設営が終わる頃にはどうにか指の感触が戻ってきたのでめでたくシャッターを押すことが出来た。

黒岳展望台からの夜景 夜景と言っても時間は5時半くらい。後から聞いた話では7,8時ごろが一番輝くらしい。
テントに飛び込むと直ぐにお湯を沸かし始め、ぐらぐら沸騰するとウイスキーのお湯割を作って冷えた体に染み込ませた。じんわりと体の芯から暖まってゆく。
普段、テント設営する場合は開口部(出入り口)を風下に向けるのだけれど今日はもう無条件に富士山に向けるしかない。
前室を開けるとお湯割の湯気の向こうに富士山が見える。
うーっ!これだからテント泊は止められないだよな。

時計が五時を過ぎると急に暗くなってきた。さすがにこの季節は日が落ちるのが早い。暗くなるにつれて河口湖湖畔の夜景が輝きだした。これは予想以上というか、予期しなかった光景だった。これほど光の数が多く明るいとは予想していなかったのですごく得をした気分だ。
それから一つ楽しみにしていた事、それは月と富士山のツーショットを見ることである。今、月が南東の空にあるので後数時間で富士山の頭上に来るはずである。
今夜はその姿を見てから寝ようと思っていたがしかし夕食にパスタを食べてお酒を飲んでいたらまだ6時だというのにむちゃくちゃ眠くなってしまった。
シュラフにもぐり込んでライトを消すと青白い月明かりが薄っすらとテント内を照らしていた。

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