本社ヶ丸、三ツ峠山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2020年11月6日
笹子駅 (7:30) --- 送電所 (8:30) --- 清八峠 (10:00)
--- 本社ヶ丸 (10:20/10:30) --- 清八山 (10:50/11:00) --- 大幡山 (11:15)
--- 茶臼山 (11:25) --- 三ツ峠山 (12:10/13:10) --- 達磨石 (14:50) --- 三つ峠駅 (15:20)
山日記

何とこれが今年初めての山登りになった。
コロナ禍の影響で登山口へのバスが不通になったり、山小屋やテント場さえ縮小営業が余儀なくされた。
不要不急の外出を控える要請が出せれ、見るからに「遊びに行きます」と分かるバレバレ登山ウェアでは電車に乗ることさえ躊躇された。
自家用車で山に向かえる人が本当にうらやましく思えた。

笹子駅を降り、本社ヶ丸尾根への登山道を探したけれど全然見つからず、諦めて送電所への車道を歩く事にした。(後で本社ヶ丸山頂で一緒になった男性に尋ねると登山口は笹子駅を降りて山の方に登って行くと車道があり、その道沿いに登山口があるとのこと。地図を見たらちゃんとそんな表記になっているのに何を勘違いしたのか甲州街道をひたすら歩きまわっていたのだった。)

それにしても寒い日だ。車道を登っていると湿ったアスファルトから冷気が立ち上って来てスニーカーを履いた足先はジンジンとしびれた。

登山口が分からずにロスした20分が気になっていたのだろう。歩くペースが無意識に速くなってしまって送電所まで着くまでにヘロヘロに疲れてしまった。
送電所を過ぎ登山道に入った途端に「歩きたくない。もうここから帰ってしまおうか?」とかなり弱気になってしまったが今日登らないと今年はどこの山にも登らないで終わってしまうかもしれないと思うとそれは出来なかった。

登山道というより荒れた林道のような広い道を登って行くと鹿よけの柵があり、柵の中に入ると道は灌木の中の細い道に変わった。
こんな道だったっけ?この道を登るのは4度目なのに全く記憶がない。

灌木帯を抜けると見晴らしが良くなって日差しの暖かさが身に染みた。
右に見える大沢山の山肌一面はカラ松に覆われているのか太陽の光を受けて色付いた紅葉が金色に輝いて見える。

今日、都心では「木枯らし一号」の予報が出ていたけれど確かに風が強く冷たい。
耳の奥が寒さでキリキリと痛むので耳をすっぽり覆うニット帽が外せない。それでもまだ顔が寒いので少し息苦しいけれどマスクを着けて歩いくことにした。

笹子駅が標高約600m、清八峠1590mなのでその標高差は約1000m。これを一気の登っているのだ。清八峠までの急な登りはさすがに疲れた。
ただ登るにつれて自分の歩くペースが段々と出来上がって来た感じがした。呼吸が落ち着くとほぼ一年ぶりの山登りも登るにつれて少し余裕が出てきた。


清八峠への急な道を登って行くと大沢山が黄色に紅葉していた。

清八峠から本社ヶ丸までは明るい尾根道で富士山、三ツ峠山が一気に視界に飛び込んできた。富士山頂付近は風が強いのか?山頂から東に向かって長く雲が棚引いている。
3776mの山を1590mから見ている。2000m上空での壮大なドラマチックに思いを馳せる小さな出来事だった。

10分ほど歩くとテラス状の岩場があり、冷たい北風も除けられたのでここで少し休憩することにした。
やっぱり山は気持ちが良い。幾層にも連なる山に視線を泳がせる。
今年計画していた山登りのほとんどはコロナ禍のため行けなくなってしまった。
「好きな時に好きな山に登る」を信条としている僕としては山登りの回数は決して多くは無いけれど、反面狙って登山計画を立てているだけに行けなかった時の落胆も大きい。
今年はその落胆の連続だった。「山は逃げない」とは言うものの来年は本当に大丈夫なのだろうか?とどうしても思ってしまう。


清八峠から10分ほどの場所に岩場のテラスがある。富士山の眺望が良い。

地図には「危」印で表記されていたけれど特に危険な箇所も見当たらず本社ヶ丸へ着いた。
他に誰もいなかったので富士山を眺めながらのんびりと昼食を摂った。

しばらく休んでいるとソロの男性3人が登ってきて山頂は一気ににぎやかになった。やっぱりこうして天気が良くて、キッパリと富士山が見えると初めて会った人同士でも会話が弾んでしまう。

地図で見る限り本社ヶ丸から三ツ峠山までは近いけれど、本社ヶ丸から清八山、大幡山、茶臼山へとぐるりと続く稜線を眺めると登ったり降ったりが意外と大変なのでは?と思えた。


ほんじゃーっ、やって来ました本社ヶ丸。最初は誰も居なかったけれどやがて3人になってにぎやかです。


本社ヶ丸山頂から釈迦ヶ岳の向こうに荒川岳、塩見岳の姿。


本社ヶ丸山頂からは甲府の市街地と南アルプスが一望できた。

左に富士山を眺めながら本社ヶ丸から清八峠へ戻り、三ツ峠山の方へ3分ほど歩くと清八山へ着いた。
山頂にはポツンと松の木があり、居合わせた3人のハイカーが「富士山と松が同時に見える縁起が良い山頂だ!」とガハガハ笑っていた。
「ここと本社ヶ丸ではどっちが絶景ですか?」と尋ねられたので「本社ヶ丸の方が鼻血ブーですよ!」と答えると三人はガハガハと嬉しそうに本社ヶ丸へ向かって行った。
死語である「鼻血ブー」には何の突っ込みも無しにだ。


清八山の山頂には何故かポツンと松の木がある。梅と竹があったらもっと良かったのに。

清八山から三ツ峠山へ向かう道に眺望は無くて揺れる木々の間からチラチラと三ツ峠の電波塔が見えるだけだった。本社ヶ丸から臨む三ツ峠山は思ったよりも遠くに見えたけれど少し歩いた先の電波塔は随分と近くになった。

登山道の近くまで林道があるためか?エスケープするための分岐があって紛らわしかった。
それで茶臼山を過ぎた辺りから登山道が右に巻くように登って行った時にはどこかで道を間違えたのでは?と少し心配になった。


大幡山、茶臼山と歩いて三つ峠山へ向かう。この二つの山の山頂も道も森の中なので眺望はありません。

登って行くといきなり目の前に電波塔がデーンと現れた。
御巣鷹山の狭い山頂全部が電波塔に占領されている感じだ。
ここには休憩出来そうな場所もないので10人ほどのハイカーが建物の塀横を居場所を探すような感じでウロウロしている。

山頂を表す標柱はどこか敷地内にはあるらしいけれどこれでは見たいとも思わないのでトットと先に向かうことにした。


御巣鷹山の山頂は電波塔に完全に占領されています。山頂も施設の敷地内にあります。

御巣鷹山から開運山を見るとそこにも電波塔があるじゃないか!
三ツ峠山には電波塔があることは事前に知っているので特にこの景観にガッカリはしないけれど自分だったらこの山だけを目標にする登山は計画しないと思った。

開運山へ登っていると濃紺色の作業服を着た多分NHKの職員を思われる10人ほどの人から挨拶された。濃紺色の作業服と登山靴という組み合わせが機動隊に見えてしまって山頂でまさかのデモ隊制圧?と一瞬、異空間に迷い込んだ気分だ。


御巣鷹山から一旦下って開運山へ向かう。あっちにも電波塔だ!

開運山の山頂は三ツ峠山のランドマーク的な存在だと思う。
頂に立つと市街地の向こうに富士山が大きい。無機質な電波塔の存在も気にならなくなり一気に山度がアップする。

山頂から眺めた富士山はすでに逆光の中に沈んで山頂の雪だけが中空で銀色に光って見えた。
グルリと周りの山の眺望も良かったけれど大菩薩嶺、八ヶ岳もこの季節としては少し霞んでいる。肉眼では見えた山の濃淡も写真ではただのシルエットでしか写らなかった。


開運山の山頂から定番の撮影ポイントです。以前来た時より富士山前の枝が伸びていた。


左から倉見山、真ん中に杓子山、右に裾のだけの御正体山。写ってはいないけれどもっと右の方も見える。


三つ峠山から富士山を眺めるのは午前中が良いみたい。もうすっかり逆光の中に隠れていました。


開運山から左に木無山、三つ峠山荘。真ん中に展望地。左に四季楽園。

開運山から少し下った所にある展望地から開運山を振り返ると山の南側は山頂のすぐ下から岩壁になっているのが分かった。あそこにロッククライミング有名な屏風岩があるのだ。

そう言えば以前この展望地での幕営を計画したことがあった。
ネットで検索するとこの場所でのテント設営は禁止されているとのことで幕営計画はお流れになってしまったのだけれど、ただ縦走者はテントNGだけど岩登りに来た人のテントはOKだという書き込みもあってその辺はどうなんだろう?と気になった記憶がある。


展望地から開運山の直下に屏風岩が見える。この展望地はクライミングの人のみテントOKだそうだ。


展望地から少し歩くと広い岩場がありました。足元に金具が打ち付けてある。

今回の山行で楽しみにしていたのが三ツ峠山でカラ松を見る事だった。
山の雑誌に「三ツ峠山はカラ松の名山」と書かれていたので紅葉の時期を狙ってやって来た。

開運山から木無山へ向かって歩ていくと確かにカラ松の木が目に付くようになったけれど期待していたほどその数は多くは無くて「カラ松の森」という感じは希薄だった。
それに紅葉には遅かったようで葉はすっかり落ちてしまいそこに広がっていたのは冬の到来を感じさせる景色だった。


今回の一番の目的は木無山のカラ松の紅葉を見ること。ところが紅葉はとっくに終わっていた。


カラ松が多いのに木無山とはこれいかに。山頂はどこかハッキリしない山でもあった。

山頂を後にして降りだすと直ぐに屏風岩の下に出た。
垂直な岸壁が長さ200mほど続いている。
ロッククライミングで有名なこの場所だけど、あまりに岸壁が垂直なので落石した場合、下を歩いている人は一発アウトだなと心配になった。

なぜこの山のこの場所にだけにこうした岸壁があるのか不思議に思う。
そのうち「ブラタモリ」でその謎を解明してくれないかな。


クライミングのメッカ、垂直の屏風岩が200mほど続いている。もちろん落石注意!

八十八大師から下辺りでは紅葉がまだしかっりと残っていた。
残照で透明になった葉のキラキラと足元から聞こえるサクサクは秋の暖かさを感じさせた。

途中で登山道と並行するようにカエデの散歩道らしき所があった。
秋の日は短い!カエデがちょうど赤く色付いて良い感じだけどもうすっかり日陰で暗くなっていたので歩くのは止めにした。
今回は本社ヶ丸から三ツ峠山へと歩いたけれど三ツ峠駅までの紅葉を楽しむには逆コースで歩いた方が日差したっぷりで良かったかもしれない。


八十八大師は四国八十八番霊場巡りの模倣として1860年に祀られたもの。四国お遍路したことになる?


三つ峠駅までの登山道はまだ紅葉が残っていました。西日に輝いて綺麗です。

三つ峠駅の待合室で電車を待った。

コロナ禍の影響で今年初めてとなった山登りも無事に終了した。
ザックから取り出したマスクはしわくちゃになっていて「あーっ、めんどくせーっ!」と思った。

いつになったら気兼ねなく山に向かえるだろう。

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