宮之浦岳 (とつぜんの白谷雲水峡 編)

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:飛行機/フェリー)

◆5月8日
羽田 (6:40) *** 鹿児島 (8:20/8:50) === 天文館 (9:38) --- (買い物) --- 南埠頭高速船ターミナル (11:20/12:00) *** 宮之浦港 (13:50/13:55) === 白谷雲水峡 (14:25/14:40) --- (歩道散策) --- 白谷山荘 (17:20)

山日記


・・・旅に出るのだ!

天気予報では鹿児島は晴れとなっていたが飛行機を降りてみると空はどんよりとした曇りだった。
いけ好かない天気である。だけど気持ちは熱かった。飛行機の中、霧島山の姿を見た時から心の中にはしっかりと握り拳。

とうとう鹿児島にやってきたのだ!今から九州の百名山を目指す旅が始まるのだ。

空港のロビーでふとテレビを見ると九州の週間天気予報をやっていた。鹿児島は今日から三日間は晴れ、その後二日間は雨が続くらしい。
おーし計画変更だ!計画では開聞岳→屋久島の予定だったけど、この予報通りだと屋久島では雨となってしまう。
何たって屋久島が最優先なのだ、料金が高いので利用するのを躊躇してた高速船を使って先に屋久島に行くことにしよう。

開聞岳で読もうとザックの中に忍ばせておいた文庫本3冊、夏のロケット/川端裕人、真相/横山秀夫、嘘をもうひとつだけ/東野圭吾の内、読みかけだった「夏のロケット」以外の2冊は軽量化のため泣く泣く捨てることにした。(僕はひどい乗り物酔いなのでバス、船の中では本を読むことは出来ないのだ。だから屋久島には持って行けない、情けねぇー)

ロビーで屋久島の地図、高速船の運航時刻、屋久島のバス時刻を照らし合わせる。今から屋久島へ行くとなると今夜泊まる避難小屋は白谷山荘か淀川小屋となるけれど花之江河登山道を歩きたいので淀川小屋は却下になる。
白谷山荘に泊まるとなると乗り継ぎの時間に余裕があるので空港から直接、高速船ターミナルへは行かずに鹿児島市内で買い物してから南埠頭ターミナルへ向かうことにした。

空港から鹿児島市内行きのバスに乗り、天文館で下車、いづろ通まで歩いて好日山荘へ行った。この店でEPIガスのパワープラス缶を買った。ガス缶は屋久島でもいくつかの店で販売していることは知っていたけれど、5月の山でのキャンプは九州でも5℃以下になることもあるらしいのでレギュラー缶(使用気温10℃以上)では心もとなく、低温でもしっかり燃焼するパワープラス缶(使用気温-15℃以上)が欲しかったからだ。

続いて近くのスーパーで食料(ラーメン)とお酒を買い込んで南埠頭の高速船ターミナルに向かった。(いずろ通駅から高速船ターミナルまで約600m)

高速船の待合室でも屋久島へ向けての準備は粛々と進行していく。ウイスキーを瓶からジュースが入っていたペットボトルへ移し変える。隣に座っているおばちゃんが怪訝な顔をして見ているが気にしない。

この後の予定もしっかり確認しておく。12:00発車の高速船に乗ると宮之浦港に13:50に着く。そこで白谷雲水峡行きの13:50発のバスに乗り換えて・・・・・・あれっ乗換え時間が無い!
何をボケッとしていたんだろう?高速船の切符を買う寸前まで全く気がつかなかった。
慌てて切符売り場のおねえさんに高速船からバスへの乗換えが出来るかどうか尋ねると、何とそのおねえさんが屋久島のバス会社へ電話してくれた。高速船が宮之浦港へ着いてバスに乗り換えるまでバスの発車を待っていてくれることになった。(後でバスに乗った時に運転手さんに尋ねると、特に連絡が無くても乗換え時間として5分は待ってくれているらしい、ただおねえさんの親切には感謝!)

高速船ターミナルから見た桜島 個性的で登って見たくなる山だった。

高速船なるものに生まれて初めて乗った。
速いのは良いけれど残念なことが・・・それは船にデッキ(甲板)が無いので船上から例えば桜島、開聞岳、屋久島などの撮影が一切出来ないのだ。(窓越しの撮影は出来る)

僕の席は桜島側だったので桜島や種子島を眺めることは出来た。だけど開聞岳は全く見ることが出来ず、近づく屋久島の姿を見ることも無くあっさりと宮之浦港へ着いてしまった。
何だか屋久島にやって来たという感動が少々薄いのだ。

白谷雲水峡行きバスの乗客は3人だった。客が少ないのを期待してGWを外したけれど、それにしても思ったよりずっと少ない。
それでも到着した雲水峡の駐車場には10数台の車が、バス待ちの人が15人位は並んでいた。
管理棟で入山料300円を払って(安すぎない?)屋久杉の森へいよいよ突入だ。

弥生杉歩道を登って行く。
歩き出してわずか3分で屋久鹿とご対面だ。ラッキー!森の神様はオレの味方だぁー!。
屋久鹿はニホンジカと比べて二回りほど小さく、最初見た時はまだ小鹿だと思ったほどだ。
人馴れしているのか逃げないのでこれはチャンスとばかりにカシャカシャと写真を撮りまくった。(この時、初めて見る屋久鹿にやたら興奮して何枚も写真を撮ったけれど、翌日から何度も屋久鹿を見ることになり、屋久鹿の存在が希少なことでは無いことが分かると、それ以後屋久鹿の写真は一切撮らなくなってしまうのだ。)

雲水峡から歩き出してわずか3分で屋久鹿とご対面


もう森全体が緑のコケで覆われていた、それは神々しいほどの静寂の中

屋久鹿に続いて次は屋久杉とのご対面だった。
気根杉、弥生杉と巨木が次々と目の前に現れ、カメラのシャッターを押しまくる。
だが悲しいことに屋久杉があまりに大きすぎてファインダーに収まりきれないのだ。屋久杉の先端とか根っことかその一部しか切り取ることが出来ず、その撮った画像では屋久杉の大きさを表現することが到底出来ないのだ。
広角レンズを持って来るんだったと激しく後悔した。

僕の勉強不足(または常識知らず)なのだけど屋久杉って言うのは明治とか昭和初期に乱獲伐採された際に残った杉の木だと、つまりその本数は極めて少なく希少価値がある木だと思っていた。
けれどこうして歩いていると森のあっちこっちに杉の巨木が点在しているのだ。
最初は屋久杉の巨木がある度にせっせと撮っていたけれどあまりにもその数が多いので終いには撮り切れなくなってしまった。それでせめて名前が付けられた屋久杉だけに絞って撮る様にした。
(翌日から名前が付けられた屋久杉が目の前に何本も出現することになる。特に辻峠付近には地元の子供や主婦が命名した木が沢山あり、その数のあまりの多さに名前が付けられた屋久杉でさえも撮影しなくなってしまうのだ。)

屋久杉はあまりに大きくてその一部しかファインダーの中に納めることが出来ない、木の大きさが伝わらないもどかしさ。
憧れていた新緑の屋久島の森は期待以上に素晴らしかった。
森全体が緑のコケにびっしり埋め尽くされていて、その様は優美さと重厚さとを静寂で包み込んでいる様な神々しさだ。

原生林歩道は思ったより長く、重いザックを背負って歩くには予想を超える大変さだった。
食料の他にビール2本、ウイスキー1本、それにコーラ1本とこれらだけで2kgを超えている。せめてコーラだけでも減らせば文庫本2冊は捨てなくても済んだのに自分でもアホかと思う。

こうやって最初は屋久杉を丹念に撮影して行くのだが、あまりにその数が多いので全部を撮影しきれないのだ。
屋久杉の画像を厳選した結果、やっぱり三本足杉の脚線美は一押しでしょう。
白谷山荘の小屋の前では水がジャバジャバと出ていた。その水で顔を洗うとすっきりした。
靴を脱いで見ると数日前に靴擦れしたばかりの傷から出血していて、この先のことを思うと気が重くなった。

今夜、この小屋に泊まるのは神戸から来た夫婦、名古屋から来た淳君(仮名)、それと僕の4人だけだった。
小屋の前のテーブルで夕食を食べながら話に花が咲く。この白谷山荘は屋久島の山小屋の中で一番人気が無いらしい。登山口まで近いからと言うのもその理由だけれど、一番の理由は小屋が古くて薄気味悪いと思う人も少なくないらしい。
そう言えば確かに小屋はセメント造りで意外と大きく、中が小部屋に分かれているので独房みたにな雰囲気はある。今夜僕一人だったら小屋の外に外にテントを張ったかもしれない(小屋近くにテントを張るスペースは無いけれど)

こんな小さな沢も緑のコケで覆われている。森は湿っている感じでは無くて、潤っている感じ(同じか?)


白谷山荘には怖い話もあるらしいのだがそれって怪談「牛の首」みたいなもの?その内容は誰もしらない

話が弾んで気がつけば8時を過ぎ、お互いの顔も見えないくらい暗くなっていた。
みんなで小屋に入って寝る準備をした。

今日は急に計画を変更したこともあってバタバタと慌しい一日だった。そのせいで歩いた距離は少なかったけれどかなり疲れていたみたいだ。
今朝、川崎を出て、今はこうして屋久島の山の中に居る・・・大きなため息を一つ、その後は覚えていない。
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