戦場ヶ原、社山、半月山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆10月18日
浅草(6:20) +++ 東武日光(8:24/8:35) === 竜頭滝(10:30/10:40) --- 戦場ヶ原(?) --- 湯滝(12:55/13:05) --- 小田代原(?) --- 千手ヶ浜(15:50)

◆10月19日
千手ヶ浜(6:00) --- 梵字岩(7:00) --- 阿世潟(9:10/9:30) --- 阿世潟峠(9:50) --- 社山(10:45/10:55) --- 阿世潟峠(11:25/11:35) --- 半月山(13:00/13:10) --- 茶ノ木平(14:35/14:45) --- 中禅寺湖バス停(15:15/15:25)=== 東武日光(16:10/16:15) +++ 浅草(18:45)

山日記

それはこんな場面から始まったりする。
でかザックを両足で挟み込み、両手は運転手横のパイプをしっかり掴んでいる。バスがいろは坂のカーブを曲がる度に手がちぎれそうだ、大事なオチンチンがつぶれてしまいそうだ。
後ろを振り向くと補助席まで埋まった満員バスの乗客の冷たい同情視線が僕に注がれていてなんとも情けない。

東武日光駅を出て駅前のバス乗り場を見ると人でごったがえしていた。湯元行きのバスに人が次々と乗り込んで座席が全部埋まったところで乗客整理係の人が「座れなくても良い方は乗ってください!」と叫んだ。増発便は無く、次のバスは一時間後だと言うので慌ててバスに飛び乗った。
バスは完全に満員状態で運転手が「ドアを閉めますのでもう一段ステップを上がって下さい」と言っているがでかザックを置くスペースしか空いておらず、かろうじて両つま先をグリグリと割り込ませパイプを掴み体を持ち上げたのだった。
こうやって無理やりバスに乗り込んだのもつかの間、このバスは前乗り/前降りのバスだったため誰かがバスを降りる度にザックを抱えて一度車外に出なければいけなかった。
バスはやっといろは坂までやって来た。今はこうして手の痛み、股間の刺激にもだえ苦しんでいるのだ。

明智平の一キロ手前付近から渋滞が始まり、500メートル前ではバスはほとんど動かなくなってしまった。バス無線で「中禅寺湖まで45分の遅れ」と言っているのが聞こえる。紅葉のこの時期では仕方が無い。

竜頭の滝でバスを降りて滝を見に行く。滝は観光客で一杯でここではでかザックを背負った僕はただの邪魔者でしかない。滝に沿った遊歩道を上って歩いて行くとやっぱりここでも僕は異邦人であるわけで落ち着いて川を眺めることは出来ず、借りてきた山猫状態で汗だくになって歩くしかなかった。
車道を横切って戦場ヶ原への入り口に来た時には「ここが本当に秋への入り口なんだ」と思ったが元気になるより疲労の色が濃い。道はセメントから土に変わり、周りはザックを背負ったハイカーの姿が多くなった。景色は一転して森の姿になった。
熊笹の緑と唐松の黄金色の中を歩く。「風が吹くと熊笹の葉がサラサラと音を立てて揺れ、その瞬間だけ銀色の葉の裏がキラキラと陽の光に輝き、唐松はパラパラと黄金色の雨を降らしている。こんな景色って本当に良いですね!」と直ぐ後ろを歩いていた女性が話し掛けてきた。「おい、待っちくれ。その言葉、今僕が言おうとしていた言葉でないの!何で先に言っちゃうの?せっかくカッコ良い台詞で決めようと思ったのに!」つまり良い物は誰が見ても良いんだな!と言うことでまー良いかぁ!


戦場ヶ原からみた日光連山 右から男体山、大真名子山、小真名子山そして太郎山。
川沿いの散策路は進むにしたがって段々と唐松から潅木へと姿を変える。赤沼への分岐点の少し先に休憩所がありテーブルやベンチが設置してあった。ここで初めて男体山の全貌とご対面である。夏の青々とした緑の衣を脱いで今は赤茶色の装いだ。
こちらから見る男体山は端正な三角形で日光連山の盟主らしく堂々としている。
木道を歩いていると「自然保護のためロープの外に出ないで下さい」と立札がある所で熱心に写真を撮っている人を見かけた。問題はその撮影している人のカメラの位置である。撮影している人はロープのこっち側に居てのだが三脚はしっかりロープの外側に立てられている。これははたしてアウト?セーフ?か判断は微妙なんだけどこれだけは言える。「三脚の足は細いが数本の草花はその下敷きになっている」ということだ。自然の風景が好きで写真を撮っている人がその自然を破壊しているなんてどこか矛盾している気がする。自分さえ良い写真が撮れたらは後はどうなっても良いって思っているのだろうか?この前行った室堂でも同じような光景を目にした。どこに行ってもこんなどうしようもないヘタレカメラ野郎が多い。

さらにわっせわっせと歩いていくと草原に変わった。なんとも青空が似合う風景だ。広い金色の平原の奥、男体山の左には大真名子山、小真名子山さらに左には太郎山が横一列に並んでいる。普段だったら下から山を見ているとただただ無性に登りたくなるのだけれど今は眺めているだけで十分だ。秋の山はファイトむき出しの真っ向勝負で挑むよりもゆったり、むしろ一歩引いたくらいで眺める方がしんみり対話出来るのかもしれない。

戦場ヶ原の端っこまで歩いて小田代原へ行こうと思っていたが余りにも景色が良いので湯滝まで道草することにした。
日光連山としばしお別れをして樹林の中を進んだ。この道は展望は無いのだが川沿いの平坦な道なのでゆっくり紅葉を楽しみながら歩くのにはもってこいなのだ。ちっちゃな女の子がモミジの葉を両手に抱えきれないほど拾いながら楽しそうに歩いている姿を見ると、なんだか秋そのまんまの風景に触れたような気がして視線を足元に移しおもわず赤く色付いた葉を拾ってしまった。
湯滝休憩所のすぐ横のモミジは絵の具を塗ったように真っ赤に色付いていてまったく出来すぎの風景である。観光客が一杯ででかザックの僕は完全に浮いた存在だったので滝の写真を撮ると足早にその場を離れ周遊路を通って来た道を戻った。

戦場ヶ原を流れる湯川 唐松の葉が無数、水面を流れていた
小田代原から高山に登り、中禅寺湖周遊路に出て千手ヶ浜へ向かう予定だったが道の所々に立っている案内図には高山へのルートは描かれていなかった。僕の地図は古いので「やべぇー、もしかしたら既に廃道になってしまったかもしれん」と考えてグルッと西ノ湖の方を回って行くことにした。
小田代原は熊笹と唐松林が綺麗だ。少し日が傾いて黄色味を帯びた陽に照らされて一層金色に輝いた唐松がすばらしい。

湯滝 この写真、実は露光オーバーで白っぽくなっていた。実際はもっと紅葉が綺麗だった
木道を歩いていると犬を連れた人とすれ違い、その先で休んでいる人達を追い越そうとした時、会話が一部聞き取れた。「こんなところに犬を連れて来ちゃいけないんだよねー。犬はいろんな面で自然破壊につながるだよねー」と言っているオババが居た。休んでいるオババは木道から離れ、その巨体でしっかり草花を踏んでいる。「犬よりもお前が来るな!」と蹴っ飛ばそうと思ったがオババのケツがあまりにデカく、頑丈そうだったので止めた。
この付近の森は鹿による食害?を防止するために植生保護柵で仕切られていて人は金網で出来た回転扉を通って行く。
弓張峠からは林道を歩いた方が千手ヶ浜に近いけれどそれでは味気ないので登山道を歩くことにした。
この辺りの森はうっそうとした感じはなく明るく北欧や北アメリカを連想させる森であり、どこか開放的で歩いていて気分が良い。しかしこの道は崩壊のため行き止まりになり、車道へ迂回するようになっていた。
西ノ湖入り口のバス停には登山客が10人位いた。西ノ湖は日光国立公園の端っこに位置している小さな湖である。そのへんぴな湖をこれだけの人が訪れたということは何かしら魅力があるに違いないのだが今回は時間がなく寄って行くことは諦めた。
千手ヶ浜に向かって車道をのんびり歩いていると右の方から「ドカドカ」と音がする。そっちの方に視線を移すと十数頭の鹿が群れをなして走って行っているのが見えた。弓張峠辺りでも数匹見かけたので今日だけで20頭ほど遭遇したことになる。
千手ヶ原のバス停を200メートルほど歩くとやっと千手ヶ浜に出た。管理小屋は閉じてしまっていて人気は全く無い。時間も既に4時近く、おまけに2時頃から空はどんよりとした雲に覆われだしていたので一層薄暗く、もの悲しい感じがしたので早くキャンプ場に行ってテントを設営しようと思った。
キャンプ場を目指して歩くが行く先々には「キャンプ禁止」の標示板が冷めた表情で立っているだけだった。そしてとうとう場所が分からないまま浜の端まで歩いて来てしまった。「どこかで見落としてしまったらしい」とまた道を引き返すが見つからない。○○庵(名前は忘れてしまった)という休憩所まで来ると坊主頭の男性から「あれーっ、今、最終バス出てしまったよー!」と声をかけられた。「いや、僕はキャンプ場でテントを張りたいんです!」と言うと坊主頭はさっきより9dB音量を上げて言った「キャンプ場は3年前に閉鎖になったよー」。僕はえなり目(注:えなりかずきのような目)になって「えーっ!嘘だろー」とつぶやいた。「キャンプ場は今、菖蒲しかやってないんだよね。ただそこまで歩いて1時間半かかるから今から行くわけにもいかないなー」。
「しょうがないから管理小屋付近にテントを設営して、翌朝は人が来る前に撤収するしかないだろー」と言う事だったので小屋まで引き返してテントを張った。

小田代原の唐松林 この林の上に男体山が見える
テントを設営すると近くを流れている川から水を汲んできて早速、ウイスキーを飲み始めた。キャンプ禁止の場所にテントを張る事は流石に気になるがこの場所は綺麗な砂浜になっているので幕営にはもってこいの場所だった。なんでこんなに良い所を閉鎖してしまったのだろう?幕営好き野郎にとってはもったいねー話だ。
夕闇が段々とテントを包み、湖の波はざわざわと泣いている。「今日の昼間に見たロープ超え写真撮影のオッサン、それから木道を外れて歩いていた太っちょオババ、確かにこの二人は悪いやっちゃ。だけど一番悪いのはもしかしたらキャンプ禁止の場所で幕営している僕かもしれない」と反省。
「アルコールが全身に染み込んだのでそろそろ夕飯にするべ!」とザックからガス、ストーブ、コッヘル、それから夕食のパスタを出した。そうしたら大変なことに気がついた。
「ライターが無い!あーっ、やってもーた!!!」

千手ヶ浜 管理小屋前にテントを張る すぐそこは白い砂浜
タバコを吸わない僕は当然、この時まで気がつくわけはない。どうしよう!パスタはこのままでは食えそうに無い。明日の朝飯用のレトルトカレーを舐めるか、それとも昼食用のパンを食べてしまうか?考えたがどれにしても明日は断食山行になってしまう。「コリャ、まずいよー!あっ、そうだ坊主頭に借りに行こう!」と妙案が浮かんだので早速、歩いて5分の所にある先ほどの休憩所まで酔っ払った足取りで行った。
休憩所の奥にある民家の戸を叩くとさっきの坊主頭が出て来て「またお前か!」というようなあきれ顔をした。「マッチ貸してください!」と言うと「まったくしょうもない奴だな!」とさらにあきれ顔をし「これ、もってけ!」と100円ライターを僕に差し出した。
坊主頭に礼を言ってテントに引き返す道、なんだか自分が情けなくて仕方なかった。閉鎖されていることを知らないでのこのキャンプ場までやって来て、おまけに装備を忘れて来ている。これじゃバカボンドじゃなく、ただのバカだ!「まったく、ダセーッ!」と叫びながらドカドカと小さな橋を渡るのだった。
食事が終わるとサキイカをつまみながらシュラフの上に寝転がりラジオのスイッチを入れた。今日はこれから日本シリーズ、ホークスvsタイガースの第一戦があるのでここ中禅寺湖から王ダイエーを気合を入れて応援するのだ。

「キォーッ!」という鹿の絶叫で目が覚めた。
時計を見ると夜中の12時半だった。何ってこった!応援するつもりが情けないことにシュラフに横になった途端に眠ってしまったらしい。はたしてどちらが勝ったのだろう?と気になるが勝敗の行方は朝のニュースで確認するとして今はとにかく寝ようと思った。

小便をしようとテントの外に出てみると頭上を覆っていた雲はすっかり消え、半月が青白い光で中禅寺湖を照らしている。「トイレはバス停にあるトイレを利用して下さい」と言った坊主頭の声を思い出した。しかしここからバス停まで200メートルほどある。夜中の12時に一人でそんなに離れたトイレに行くのはかなり勇気がいる。そのトイレだって今は電灯は消えて真っ暗状態で、これはもう何か出たっておかしくない状況だ。「なにもこの歳になって肝ダメシなんてすることもないんでないの!誰か見ているわけではない、ホームページの山行記には勇気を出してトイレに行ったと書いておこう!」と砂浜でジョボジョボとやってしまった。そしてテントに戻りシュラフにもぐり込むとたちまち眠ってしまった。
よく見ると水鳥が泳いでいる。望遠レンズを持っていたらと思うが無い物はしょうがない
「キォーッ!」という鹿の絶叫で目が覚めた。
時計を見ると一時半だった。テントの外でゴソゴソと鹿が歩き回っている音がする。丹沢や雲取山の経験で真夜中の鹿の彷徨には慣れてはいるが丹沢や雲取山の鹿は慎ましくこんなにテントのそばで絶叫しなかった。なにか僕に恨みでもあるのだろうか?それとも威嚇のつもりだろうか?キャンプ禁止の場所で幕営することへの因果応報か?
「うるせー!」と叫ぶとテントの外の足音は遠のいて行ったのでやっと安心して眠れそうだ。

「キォーッ!」という鹿の絶叫で目が覚めた。
「なんでわざわざテントのそばで絶叫せにゃならん!」鹿の絶叫が朝まで繰り返され、僕はその度に驚いて飛び起きるのだった。


中禅寺湖の紅葉 右下の山は太郎山。
朝4時半に起きる。これは時計のこよなく優しいアラーム音で起きた。朝食にカレーを食べているとテントの外でドスドスと鈍い足音が響いた。「コリャ、鹿じゃなさそうだ。もしかして、もしかしたら熊???」そう言えばここに来る途中の随所にあった「熊出没注意」の文字が脳裏をフラッシュバックした。
僕はガツンガツンとコッヘルをスプーンで思いっきりぶったたいた。。逃げただろうか?と耳を澄ますと人の話し声が聞こえてきた。慌ててテントから顔を出すとカメラを抱えた5,6人の男性が夜明け前の暗い砂浜に寒そうに立っている姿が見えた。「何だ、人だよー!まったく人騒がせな奴らだ!」
5時半にはテントを撤収、出発準備をして僕もカメラを構えてご来光を待った。中禅寺湖の反対側から2台のモーターボートが桟橋に乗り付け、僕の周りには30人ほどの人垣が出来た。男体山の右の方が段々と明るくなって来たが思ったよりもショボイご来光の景色にガッカリしてしまいザックを背負って出発することにした。
歩き出して50メートルほど歩くと後ろから「オーッ!」と歓声が聞こえたので慌てて振り向くと桟橋近くの紅葉に朝日が当たり真っ赤になっていた。この時、僕は全くの無防備だったので突然燃え上がった木々の鮮やかさに驚いてしまった。
写真を撮り、再び歩き出して直ぐに後ろから何か叫んでいる声が聞こえてきた。振る返ると50メートル程後ろの男性が僕に対して必死に大声で叫んでいるのが見えた。「まさか熊が出たのを僕に知らせようとしているのか!」とビビリながら周りをキョロキョロと見回してみたが特に変わった様子は無い。どうやら男性が撮ろうとしている被写体の中に僕の姿が写ってしまうので「どいてくれ!」と叫んでいることに気がついた。「おー、そかそか!だったらちょっと退いたろ!」と思い、さて道を外れて藪の中に隠れようか?それとも走ってこの場を過ぎるか?と思案していた。だけど考えたらむやみやたらと登山道を外れて森の中を歩くのは自然破壊になるし、でかザックを背負って走るのは大変だ。それに第一、この見知らぬ男性のためにそこまでやんなくてもいいんでないの?」と考えたら逆にこの男性の身勝手にモーゼンと腹が立ってきた。
中禅寺湖から見た奥白根山 小さな砂浜に降りるとこんな景色が待っている
僕は決して聖人君子ではない、全ての人に優しく。。。ってそんな福音書みたいな生き方は出来るかっつーの。
「あーっ、もうー!」と男性の悔しがる声が後ろから聞こえるがシカトして歩いて行った。

阿世潟は白い砂浜、マーマレード色の湖畔、それからでっかい男体山の姿
中禅寺湖周遊路は平坦で歩き易いがクネクネと湖の淵に沿った道なので予想していた以上に距離が長かった。八ヶ岳の白駒池や雨池を歩いた時もそうなんだけど湖の周りを歩くのは本当に気持ちが良い。朝の澄んだ光に紅葉した木々がマーマレード色にキラキラと輝いている。湖の対岸を眺めると日光連山の山々が水面から切り立って見え、その姿は雄大であるがどこで見るよりも優しい表情をしている。
周遊路を歩いていて小さな砂浜や岩礁を見つけるとそれだけで嬉しくなってそこまで降りていってしまう。ある小さな砂浜に降りて行くと水鳥が数羽泳いでいるのが見えた。時間も風も止まった溢れる光の中で音も無く水面を水鳥が滑って行くと赤や黄色の影は驚いたように逃げてしまう。こんな風景に出会うと望遠レンズが欲しくてたまらなくなる。この色彩をこのまんま全部切り取って持って帰りたい気持ちだ。
阿世潟も一際デカイ砂浜だった。この浜も以前はキャンプ場があったみたいだけど今は真新しい「キャンプ禁止」の立て札が浜を監視している。
ここから阿世潟峠に向かって登りだすと途端に背中のザックが重くなったように感じた。昨日一日は平坦な道ばかり歩いて来たのででかザックの重さをすっかり忘れてしまっていた。峠までわずか20分の登りだったのに額は大粒の汗で一杯になった。

峠にザックは置いて社山までは空身でピストンすることにした。登りだして10分で最初のピークに着いた。


社山への登山道 一面熊笹に覆われいる。 展望は文句なし。
この景色には絶句である。圧倒的な美を目のあたりにすると誰だってただ黙って景色を見入るしかないのだ。真っ青な空と深青な湖に挟まれて紅葉した男体山、湖畔の木々の姿はどうしようもないくらいに良いのだ。社山、それにこれから行こうとしている半月山は200や300名山に入ってはいないけれど日光の山をどうしようもなく素晴らしく見せる山なのだ。

社山 下の方は唐松、上の方は熊笹の原になっていた。
展望が良い笹原の道を登って行くと社山山頂に到着。山頂の北側は木々が生い茂りかすかに男体山の山頂が見える。南側の展望は良く皇海山や庚申山が見える。皇海山は行ってみたい山の一つなんだけど秘境というイメージが強く未だに足を踏み入れていない。ここから見てもうっそうとした緑に山全体が覆われてどこか人を拒絶しているように見える。

阿世潟峠へ引き返す途中、20人位のパーティーが一列縦隊で登って来た。道は熊笹の中の細い一本道であるのでこういう場合は僕が避けた方がスムーズにすれ違う事が出来る。もしこれが20人.vs.20人のパーティーすれ違いだったらどうするのだろうか?そんな対決シーンを見てみたい気がする。

5人とか、10人に分けて行動すればすれ違いや追越しも楽になると思うのだけれどまぁー色々とそのパーティーの事情もあるのだろうからウダウダ言うのはよそう!
ただ雨でも雪でもないのに全員がスパッツをキチンとつけているのはなぜだー!おせーてくれ!。
阿世潟峠から半月山へ向う。風が吹くと唐松の黄色が熊笹に降り注いでパラパラと音をたてる。午前中は雲一つ無い快晴だったが社山を降りる頃から頭上は段々と雲に覆われて今は曇り空になってしまった。
目の前を25人位のパーティーが歩いている。このパーティーは良く言えば”自由気まま”、悪く言えば”統制が取れていないわがまま集団”で皆がバラバラに歩いているので返って追い越しが楽だった。パーティーは中高年というよりも初老に近い人達で登る途中で振り返っては中禅寺湖や男体山の姿を見ては「ほんと、きれいだぁー!」と繰り返していた。「おばちゃん、違うよ!晴れていたらこれの何倍も綺麗な飛びっきりの風景なんだよー!」と他人事ながら残念に思う。あと30分早く登って来ていたら。。。飛びっきりのごっきげんな風景だったんだよー!。

社山に登る途中から見た男体山。この景色には説明は不要ですね。
展望台からの展望は良く、晴れていたら!とまったく残念の一言だった。
千手ヶ浜から阿世潟までは黄色に紅葉した木々が多かった。この展望台から見ると八丁出島付近は赤色が多く、これぞまさしく紅葉と言う感じだ。晴れていたら!とまったくしつこいのだ。

社山山頂 北側の展望は木々に遮られてあまり良くない。でも間から男体山が見える。

展望台には10人くらいが昼食を食べたりして休憩中だが、さっきのパーティーが登って来たらここはたちまち満員になってしまう。この過密状態をいかに打破するのか?観戦したい気分なんだけどTシャツ姿で待っていると寒いので諦めて山頂に向った。
半月山山頂は木々に囲まれて展望は全く無い。やっぱ、さっきの展望台で休憩するのが正解だったなー。

半月山から茶ノ木平への道も唐松と熊笹の道だ。
やっぱり紅葉は天気が良い時と悪い時では輝き方が全然違う。陽が翳るとさっきまでの鮮やかな生彩は遠い幻であったかのように陰を潜めてしまった。たまに木々の間から見える景色にも気分がそそられずにただただ歩くだけとなってしまっている。

茶ノ木平は広く明るい森だった。歩いていると熱心に木々を一本一本丹念に眺めている男性の姿が目に映った。
草花や樹木を楽しそうに眺めている人を見かけると自分の薄っぺらな山登りが恥ずかしくなる。まだまだ修行が足りん!一つ山を越えるたびに少しでも大きく、少しでも深く、新しい自分になるって事はなかなか難しいな。

茶ノ木平から降っていると所々雲が取れ始めて「ほれ、どんだ!」と男体山にもスポットライトが当たった。
やっぱり、紅葉の山々は飛びっきりの青空が似合う。どうしようもないほど青空が似合う。

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