西穂高岳、焼岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2016年10月15日
松本 (10:10) +++ 新島々 (10:40/10:55) === 大正池 (11:52/12:00) --- 西穂登山口 (12:55/13:00) --- 宝水 (13:50/14:00) --- 西穂山荘 (15:10)
山日記 (ざわざわ上高地 編)

とうとう夏が終わってしまった。
行きたい山、色々なコースを計画していたけれど8月は休みになると決まって天気が崩れた。
そして九月は雨の日が続き、気が付けば山に行けないまま10月となっていた。

とうとう休日と晴れマークが重なる日がやってきた。
さてどこに行こうか?
ここはやっぱり北アルプスに行きたい。今年最後の北アルプスになるという予感がした。

一週間前から金曜夜発の「さわやか信州号」の空席状況を確認した。
だけどどの便も満席で、その度に希望と絶望の間で気持ちは激しく揺れ動いた。

水曜日に空席を調べてみてもやっぱり「さわやか信州号」は満席だった。
それで仕方なく土曜朝一番の「あずさ1号」を予約した。
しかしこのあずさ号の乗り継ぎと歩行時間を考えると行ける北アルプスの山は限られた。
松本駅→上高地
穂高駅→燕岳
大町駅→針ノ木岳、爺ヶ岳

どの山も一度は登ったことのある山ばかりだ。
さんざん迷ったあげく  ・・・ そうだ、北アルプスで一番好きな山に行こう!
焼岳へ行こう!

金曜日の朝、たまたま「「さわやか信州号」の空席状況を確認してみると空席があるのだ。
これにはさすがに腹が立った。
男はなぁー、一度予約したら這ってでも行け!!!




大正池でバスを降りた。
大正池は以前から散策してみたい場所だったけれど登山中心に計画を立てると上高地を散策する時間的余裕はいつも無かった。
今日は上高地から西穂山荘まで登るだけなので上高地を散策する時間がある。

「ねえねえ、大正池って大正時代に出来たんじゃない?」
近くにいる観光客の会話が耳に入る。
「まぁ、普通に考えたらそうだろうねぇ」
目の前に西穂高岳の緑色の稜線が見える。
昨夜の「さわやか信州号」に乗れていたらきっと今頃は西穂高岳の山頂に立っているだろう。
気持ちが卑屈になっている。この時点でまだグダグダ思っている。

大正池の湖畔に降りていく。
眩しすぎる光の中に入って行く感じがする。
光の中に白い穂高の山々が壁のようにそそりたっていた。
あまりにも雄大すぎる景色に呆然となってしまう。

それにしてもあまりに観光客が多い。
そりゃそうだよなぁー、秋の上高地だもの仕方ない。
周りの観光客のざわめきと荘厳な穂高岳の景色が対照的だった。
目の前のその透明な空気感に温度差を感じてしまう。


いつも気になっていた大正池へやってきた。あーっ、さっそくこの景色だよ、来て良かった!


焼岳もしっかりと大正池に映っています。

観光客の中には外人(白人)さんの姿も見かけられた。
驚いたのはそのほとんどがTシャツ(半袖)姿なのだ。
今朝、松本の気温は4℃だったから、ここ上高地の今の気温は10〜15℃位だろう。
寒くはないのだろうか?
映画「クリフハンガー」の中でS・スタローンが雪山なのにタンクトップ姿なのを見てこれはありえないと思ったけれどあながちそれも演出ではないのかもしれない。

それにしてもハチミツ色の上高地はどこへいったのだ?
今年の涸沢の紅葉ピークは9月27日、上高地の紅葉はその2週間後なので今がベストなはずだ!
紅葉には少し早かったのか?それとも今年は外れ年なのか?

大正池から梓川に沿って遊歩道を歩いて行く。
川面に影を落とす穂高の山々は美しかった。
小さな波の一つ一つに溶けた色が揺れ動いている。
清らかな梓川の上にそそり立つ山々の姿は山の上から見る構図とはまた別の趣で新鮮だった。


大正池から梓川へと歩いて行く。以前は立ち枯れの木がもっと多かったらしい。


よく見ると右の木の横に男性が写っています。もう少し引きで撮影したかったけれど周りは観光客でいっぱいです。

三脚を使って自撮り(セルフポートレート)しようとセルフタイマーをセットしてダッシュする。
振り返ってみると決まって自分とカメラの間を観光客がゾロゾロと歩いている。
写した写真を見ると左手が少しだけ写っているだけだった。もう笑うしかない。
上高地はハイカーだけの場所ではないのだ。

今回はPLフィルターを持って来た。
アダプターを自作してコンデジにも付けられるように工夫したのだ。
使ってみると空の青がすっきりと濃くなって良い感じだ。
液晶画面の表示に少しタイムラグがあるので画面を見ながらフィルターを回し、空の色が濃くなった時点より少し戻す感じにする。
残念だったのは広角側で使うと見事にケラレてしまう事。この点はどうにか改善しなくては。


田代池付近の草原。空の雲が流れていた。 それにしても紅葉していなくて残念!


田代池からの霞沢岳。ここももっと引きで撮影したかったぁー、周りは人でいっぱいなのだった。

西穂登山口の門の形をした休憩場を通って登山道を登っていく。
ついさっきまでの喧騒が嘘みたいに静まり返って別の空間に入ってしまった感じがする。
休憩場を境に空気が入れ替わった感じがする。

コメツガなどの針葉樹林帯の森の中を緩やかに登っていく。
登山道からは木々に遮られていて視界は無く、周りにあるはずの山々は全く見えない。

一時間ほど登っていると宝水へ着いた。
ここでポリタンに水2Lを入れていくことにする。
西穂山荘では水は200円/1Lなので少しでもテント場代を節約するためだ。

ネットで検索すると宝水は常水で小さなパイプから水が出ている画像がアップされていたけれど、そのパイプは見つからずに木の根っこから細い水が滴り落ちているだけだった。
2Lのポリタンを一杯にするのに5分以上かかってしまった。

宝水から一時間ほど歩いていると焼岳への分岐があり、その分岐から更に5分ほど歩くと赤い屋根の西穂山荘へ着いた。

上高地から西穂山荘まで3時間半の予定だったけれど2時間半で着いたので得したようで嬉しかったけれど、どこか歩き足りない感じもする。

テント場は山荘のすぐ下にあって20張くらい張れそうな広さだ。
すでに8つのテントが張られていてけれど案内板の横がぽっかりと開いていたのでそこに張ることにした。
今回はテントにするか?小屋に泊まるか?さんざん迷ったのだ。
と言うのも出発前に見た南岳小屋ブログでは「終日氷点下。あまりの寒さにテント客も小屋に避難!!!」と書かれていたのでもう北アルプスでのテントは寒くて無理なのではと思った。
ところが地図を見ると西穂山荘の標高は2100mと思ったよりずっと低かった。
この標高だったらそれほど寒くはないのでは?と急遽テント泊へ変更した。

テント泊をしていると山小屋へ泊るのが面倒になる。確かにテント装備は重いけれど、テントはプライベートスペースなので他人に気を使うことも無く気楽だ。
それに食事の時間も自分で決められるので夕焼けを撮影したり早立ちするのも自由だ。


いきなり西穂山荘の画像です。いまでも山バッチを買う人はいるのでしょうか?と気になったのでパチリ。

この前、小金沢連嶺の白谷丸でテントを張った時は強風のためにテント設営に30分も掛かってしまった。
特にグランドシートの使用は初めてだったっこともあってスムーズに出来なかった。
それで今回は最初からテント本体にグランドシートを細紐で取付けておこうと ・・・
あれっ、それだったらいっそフライシートもくっ付けたら?そうすれば張綱もいちいちフライシートの穴から外に出さなくても済んでしまうし。
と言う事でテント本体にフライシートとグランドシートを最初から付けた状態で持って来た。
(元々付いていた袋には入らないのでダイソーで買ったひとまわり大きいナイロン袋に入れた。)

ザックからテントを取り出しポールを差し込み持ち上げる。ペグ12本を打って設営終了!
 ・・・わずか10分、早っ!!!

夕食にはまだ時間が早いので丸山まで登ってみることにした。
西穂山荘から独標まではハイ松に覆われた緩やかは丘陵地なっていてちょっとした空の散歩道の趣がある。
風の舞う穂高の白い岩壁とハイ松の緑が実に対照的で北アルプスの好きな景観の一つだ。

のんびり、ゆっくり、立ち止まりながら丸山まで歩いていく。
いつものことだけれど、この夕方までの時間は本当にたまらない時間の過ごし方だ。

先ほど山小屋に立ち寄ったらカワイイ山ガールがテーブルにマンガを山積みにして読んでいたけれど勿体ない事だと思う(自分がマンガに興味がないのでそう思うだけかもしれない)。


時間があるので丸山まで登って行く。 振り返ると赤い屋根の西穂山荘。なぜ名前が西穂高山荘ではないのか?


のんびりと歩いて行きます。なだらかな緑の独標と穂高の山容が対照的です。


とりあえず今日は丸山まで、西穂高は明日登りましょう。それにしても高を省略して西穂にこだわるのだ?


丸山からの霞沢岳。右下の赤い屋根は帝国ホテル。笠ヶ岳も見えたけれど逆光でシルエットだった。

やっぱビールは最高だぜぇー!
テントに戻ってカーッとグビグビを繰り返していると近くのテントから少し尖った男性の声が聞こえてきた。
「隣のテントのひとーっ、張綱踏まないように気をつけてぇ!」
その声の方を見ると「隣のテントの人」はテントの中に居て張綱を踏んでいるわけではなかった。つまり事前に注意しているだけなのだ。

「こんなにガラガラなテント場なのに何でわざわざすぐ横にテントを張るのだ」という注意している男性の気持ちも分かる。
ただまだやってもいないことを注意される方はたまらない。

山ではなぜ会う人と挨拶するのか?
爽快感から自然と声をかけたくなる、山登りの仲間意識。・・・など色んな理由があるとは思うけれど僕が思うに「トラブル回避」もその理由の一つだ。
例えば避難小屋へ入って一人の先客がいた場合、ここで黙っていると何だか気まずい雰囲気になる。もしかしたらやばい奴では?とお互いに警戒してしまう。
山小屋でも同部屋の人に必ず挨拶する。後で寝床の争奪戦になってはたまらない。
テント場でも他のテントと隣接する場合は必ず一声かけるようにしている。
「隣のテントの人」もテントを張る前に一言挨拶しておけば嫌な気持ちにならずに済んだのではと思う。

ビールを飲んでほろ酔い気分でいるとテントに差し込む光が赤くなった。
テ丸山の方へ50mほど登って行ってアーベントロートに染まる西穂高岳を眺めた。
あーっ、静かだなーっ!
どこか放課後みたいな時間の流れだ。ただただぼんやりと山を眺め続けた。


テントの周りが赤くなったので慌ててカメラを持って出た。すでにテント場は日陰になっていた。後ろは霞沢岳。


テント場から少し登ってアーベントロートに染まる西穂高岳を眺めた。

秋はさすがに暗くなるのが早い。
夜7時になると空に星が輝きだした。
カメラを掴んでテントを出てみると今夜は満月で明るく、そのため空一面の星空とまではいかなかった。
とりあえず「星空の下のMyテント」を撮ろうとしたけれど酔っぱらっているのでカメラのモード設定が上手く出来ず途中で撮影するのを諦めた。

「何を撮っているのですか?」
デジイチを構えた男性に声をかけられた。テント撮影を失敗した後だったので返答に困った。
それにしてもコンデジの僕に声をかけるデジイチの人ってどうよ?
明らかにこちらが劣勢ではないか?チマチマと撮影しているようで恥ずかしい。

デジイチの男性は最近山の写真に興味を持って撮り始めたばかりらしい。
今夜は満月で山が明るく写るので「西穂高岳と線状になった星」を撮ると意気込んでいる。
けれど ・・・ その男性、カメラを手持ちなのだ。
その写真は三脚が無いと無理ですよ!そんな残酷なことはとても言えやしないよ。


一日が終わろうてしている。黄昏のトイレにも哀愁感が漂う。


山小屋に泊まるのは苦手だけど、小屋の窓の外が段々と暗くなっていく感じは決して嫌いじゃない。

夜7時半になると周りのテントから物音ひとつしなくなった。
どうやら皆さん、就寝されたみたいだ。

眠るのにはまだ早いと思ったのでシュラフに包まってへっ電の光で「ルパンの消息」を読んだ。
わずか3ページで瞼が重くなってしまった。

風も無くて静かな夜だった。
満月の光がテントの中をぼんやりと照らしていた。

ざわざわ焼岳 編へ 続く
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