乗鞍岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆6月1日
立川(0:19) +++ 松本(4:10/4:25) +++ 新島々(4:55/7:15) === 位ヶ原山荘(9:50/9:55) --- 富士見岳(10:20/10:30) --- 剣ヶ峰(11:30/12:00) --- 肩ノ小屋(?) --- 位ヶ原山荘(13:20/14:53) === 新島々(16:20/16:41) +++ 松本(17:11/17:15) +++ 立川(19:45)

山日記

イライラしていた。
新島々の駅に降りて1時間経つがバスの発車時刻まであと1時間もある。僕と一緒に電車を降りた人は全員上高地行きのバスに乗ってしまい駅に残っているのは僕一人だけになってしまった。
バスが出るまでの2時間を寝て待っているつもりだったが夜行電車であまり眠っていないのにかかわらず目が覚めて眠れない。理由はただ一つ、夜が明けて明るくなったら空は雲ひとつ無い快晴なのだ。天気予報では晴れの予想だったがそれにしても梅雨にこんな晴天があっても良いのか!この天気を見ていたら睡魔なんか吹き飛んで早く乗鞍岳に登りたくてイライラしてしまうのだ。
この時の心境。。。「今日は天気が良いなー!」6%、「イライラする、早よバス来んかーい!」94%。

待ちに待ったバスは「GO、GO、行け行け!」とやたら興奮している僕一人を乗せて乗鞍岳を目指す。途中、乗鞍高原で登山者が10人ほど乗ってきたので車内が賑やかになり、いっそうGOGO!気分になった。
バスが位ヶ原山荘に着くとなぜか他の登山者はドカドカと山小屋に入ってしまい今から登り始めるのは僕一人になった。さて、登り始めるのだけれど・・・道は???完全に雪に埋もれてどこが道なんだか分からない。「もう6月というのに何て雪の多さだ!」草木は雪の下に隠れているので目の前は雪の平原が広がっている。でも慌てることは無い、こんな時は道なんか無視して目標の山を目指して直登すれば良いのだ。


富士見岳から見た鶴ヶ池 富士山は見えないが景色は良い
(写真を2枚くっ付けたがどうも綺麗に出来ない。。。ポリポリ)
見上げると一際高い頂が見えた。近くにいたスノボーの兄ちゃん達に「あの山は剣ヶ峰ですか?」と尋ねると「そうです!」と機嫌が悪そうに答えた。(後でこれは剣ヶ峰ではなく違う山だということが分かるのだ。しかし今考えるとスキーヤーが剣ヶ峰がどの山かを知っている訳が無いので訊ねたやっぱ僕が愚かだよな!)
剣ヶ峰を目指して登り始める。
アイゼンは持って来ていなかったので滑らないように気をつけて登るがこれが結構疲れる。登っていると勾配が段々急になってきたので「ズバッ」とキックステップで雪につま先を蹴り込んで登った。
でへっ!いつの間にか僕もキックステップが出来るようになった。自分でもちょっと得意だ。しかし考えたらキックステップって特に練習が必要という訳では無く、知っているか知らないかというだけかもしれない・・・まぁー!どっちにしてもプロの登山家みたいに歩いている今の僕ってちょっとカッコ良い。
後ろを振り向くといつの間にかさっきのスノボー兄ちゃん達が僕が刻んだステップを後ろから続いて登って来ていた。
スノボー兄ちゃんが後を付いて来ているのを知って・・・「先導者としての優越感」65%、「なんだか損をしている感じ」35%。

富士見岳から見た剣ヶ峰 観測所が見えた
登っていると生意気にも傾斜がきつくなり、これはもう僕のキックステップの実力を試そうとしているに違いない。「スノボー兄ちゃん達はこんな勾配でもはたして付いて来れるだろうか?」と後ろを振り向くと兄ちゃん達の姿は既にそこには無く、スノボーで気持ち良さそうに滑降していた。
後ろに誰もいない事に気がついて・・・「こんな上まで登らなくて良かったね!」3%、「裏切り者!俺一人にしやがってバーロー!」97%。
更に傾斜がきつくなって「こりゃ危ねぇ、おっかねぇー」と少しビビッていたらガードレールを超えてポンと道路に飛び出した。どうやら乗鞍エコーラインに飛び出したようだ。
自分が居る位置を確認しようと地図を見る。何かおかしいぞ!どうやら道を間違えた!・・・というより道を歩いた訳で無いので方向を間違えたようだ!地図で確認してみると剣ヶ峰に向かっているのではなく富士見岳に向かっているのが分かった。位ヶ原山荘から見えていたのは剣ヶ峰ではなく富士見岳だったのだ。「くそーっ!あのスノボー兄ちゃんに騙された!」とカードレールから見下ろすと兄ちゃん達のスノボーが白銀にシュプールを描いていた。

蚕玉岳付近から見た剣ヶ峰 雪渓で遊んでいる登山者も多い
せっかくここまで登って来たので予定を変更して富士見岳へ向かうことにした。道路を横断してまた雪の斜面をまた直登し始めた。
汗だくになって頂上に到着。雪との格闘(これは少しオーバーだけど)で予想以上に全身ガクガクに疲れていた。疲労した視線の先には雄大な展望が広がっていた。あれは鶴ヶ池だろうか?半分凍っている。雪の白と荒涼とした褐色の山容が対照的な陰陽を創造して綺麗だ。もったいないのは山頂にしてはやけにでっかい駐車場があることだ。山頂にこうした人工の建物が乱立するとせっかくの景色がどうにも色褪めてしまい残念だ。それにしても想像以上の雄大な景色に満足!
ことわざを思い出して。。。「犬も歩けば棒に当たる」30%、「怪我の功名」30%、「棚からボタ餅」40%とどれも同じか?
視線を足元に移すと自分が立っているすぐ10mほど下には道路があり人がぞろぞろと歩いているのが見えた。どうやら駐車場から歩いてきたらしく、なんだか下から汗ダクになってここまで登って来た自分が馬鹿みたいに思える。
この行列は剣ヶ峰に向かっているようなので僕もその行列に混じって歩き出した。

剣ヶ峰山頂からの展望 しかし視線は向って左のオッサンのビールに。。。
右の方に観測所を見ながら肩ノ小屋まで歩く。小屋を過ぎるとそれまで舗装されていた道は急に登山道らしくなる。登山道にはまだ沢山の雪が残っているが完全に押し固められ歩き難いことは無い。もしアイゼンを付けたら返って周りの登山者(および観光客)から浮いてしまいそうである。
岩場などの危険な箇所も無くザレた箇所と雪の箇所を繰り返し登っていくと剣ヶ峰山頂に到着。
頂上は360度の絶景である。北は穂高連峰、南は御嶽山が良く見える。
頂上で景色を見て・・・「へぇーっ!」1%、「おおっ!」6%、「ぐわ、わ、わーっ!」93%

山頂に吹く風はまだ冷たさを残しているが天気が良いので頬に当たると爽やかに感じる。良い景色を見ながら食べるお弁当は美味い。
本当はこれだけで十分なんだけれど横のオッサンが飲んでいるビールがやけに美味そうだ。雪の中にはまだ数本のビールがズンと差し込んであり「プルトップをプシューッと抜いてくれ!」と僕に訴え掛けてくる。「このオッサン一体何本飲むんだ!!!」と恨めしそうに横目で睨みつける。
ビールを飲んでいるオッサンを見て・・・「さ、寒そう!」0%、「登山中にアルコールを摂取すると判断力が落ちるので控えよう」0%、「人の気も知らんと美味そうに飲みよる、俺にもよこせ!」100%

山頂から肩の小屋まで戻り、そこから肩の小屋口までは雪渓の中を歩く。踏み跡が沢山あり登山道がどこだか分からないのだけれど目的地がハッキリと見えているので迷う心配は無い。でもガスっていたら僕のことだからとんでもない方向に進んでいったかもしれない。


肩ノ小屋口付近から剣ヶ峰を振り返る ここから見ると結構緑が多い
周りを見ると雪渓で春スキーを楽しんでいる人が多く歓声が賑やかだ。スノボーの競技会なども行われていてとても3000mの高所にいるという感じがしない。スキーで滑るのも気持ち良いがこうやって太陽の光で白く輝く雪の上をサクサクと歩くのも気持ちが良いもんだ。
肩の小屋口から位ヶ原山荘までは道路を歩いて降りても良いのだけれどそれではやっぱりつまらない。エコーラインを横断して雪の斜面に突入、かかとを雪に蹴り込みながら歩き、傾斜が急な箇所ではシリセードで遊んだ。今日は山歩きというより山遊びといった山行だった。
今日の感想・・・「梅雨の思わぬ晴天に満足!」100%

次の日。。。「足が筋肉痛!」13%、「日焼けした顔が痛い!」87%

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