行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆1月25日
横浜(4:54) +++ 沼津(6:33/6:35)---黒瀬(?) ---香陵台展望台(?) ---香貫山(7:10)---香貫山展望台(7:15/7:35)--- 横山(8:10) --- 徳倉山(8:35/8:55) --- 志下山(9:25/9:30) --- 小鷲頭山(9:50/10:00) --- 鷲頭山(10:10/10:30) --- 大平山(11:10/11:20) ---多比(11:45) --- 長浜(12:40/12:50) --- 発端丈山(13:30/13:50) --- 葛城山(14:40/15:00) --- 田京(15:55/16:05) +++ 三島(16:28/16:31) +++ 熱海(16:45/16:47) +++ 横浜(18:08)

山日記

冬の低山は地味で元気が無いので面白くない、かといって雪山の白塗り厚化粧も興味が無い。こうなると冬はもっぱら富士山の見える山を探して歩くことになる。先日見たヤマケイJOY冬号や岳人2月号に富士山が見える山として沼津アルプスという山が紹介されていた。何だ、こんな山があるのか?これはもう行ってみるしかない!
それしてもこの山。。。アルプスと言う割には「これでもかぁー”!」と言うくらい標高が低いがはたしてどんな山なのだろう?

沼津駅から登山口の黒瀬まではバス行こうと考えていたが駅前のロータリーでバス乗り場を探すのは面倒だ。地図を見ると近いので「これだったら歩いて行こう!」と思った時にはすでに西武デパートの角を曲がっていた。歩きながら自分はつくづくせっかちな性格だと思った。
黒瀬橋を渡っている時に後ろを振り向くと愛鷹山の奥に朝日に赤く染まる富士山が見えた。急げば香貫山からも朝焼けの富士山が見えるのではないかと思うと興奮して黒瀬の登山口から登る足は自然と早くなった。普段はゆっくり登るのだがこれから登ろうとしている山は高々200メートルである「けえっ!これくらい、一気に登れるはずだ!」と登って行くと五重塔が立つ香陵台展望台に着いた。
展望台からは富士山は良く見えた。がしかし遅かった!すでに明るくなっていた景色にガッカリした。「山が赤く染まるのは太陽が昇って数分間だけだということは少し考えたら分かりそうなもんだ。いくら低い山でも間に合うわけがねぇよなー」と額から吹き出る汗を拭いながら愚痴ってしまった。
背中の汗が冷えて寒く「あーあ!ここからはゆっくりと行こう。。。。」となんともしまらない始まりになってしまった。


徳倉山からの富士山 のんびりと昼寝したいてっぺんだった。
香貫山へ歩いているとすごく鳥が多いことに気が付いた。沼津中の鳥がこの山に集まって来ているのではないかと思えるほどだ。シジュウカラやメジロが登山道をブンブンと飛び回っているし近くの茂みの中からバタバタと鳥が飛び立ったりと朝から騒がしい。
登山道の所々には水道があり名水”柿田湧水”と書かれてある。「あーっ!ここにも名水があるんだったらラーメンを持ってくるんだった」北八ヶ岳の名水蓼科山水で作ったラーメンを食べて以来、名水と聞くとラーメンを作って食べたくなるというパブロフの犬状態になってしまった。
香貫山頂上にはコンクリートの建物があり展望は良くない。指示板を見ると展望台の指示があったので行ってみる。
展望台からは富士山の姿が雄大である。宝永山の爆裂火口が正面に見え迫力ある姿だ。駿河湾の向こうには遠く天子山魂、その奥には白く雪を被った南アルプスが一望できる。海から見る南アルプスもなんだか新鮮に映る。それから意外だったのが天子山魂が屏風のように富士山の後ろにそびえている姿だ。天子山魂ってあんなに尖鋭だったろうかと感心した。
それにしてもここは山の匂いがしない所だ。市街地に近く標高も低いので公園化していて少し味気ない。一応沼津アルプスと名前はカッコ良いがこの先も同じように公園化していて味気ない山歩きになるのではないかと少し気がかりになってしまった。
テルモスのコーヒーを飲もうとザックを空けた。すると強烈なコーヒーの臭い。「なんでやねん?」となぜか関西弁になってザックを覗き込んでみるとコーヒーが中に飛び散って帽子やジャケットが褐色のベトベト状態になっていた。どうやら電車の中でコーヒーを飲んだ後に中栓を閉め忘れたらしい。「最初からこれではこの後の山行がどうなることやら!」と展望台の水道でコーヒーを洗い流しながらシオシオになってしまった。。

志下山の山頂 海がすぐ眼下に見えてなんとも心地よい登山道
気分を取り直して徳倉山へ向かうと道路は10mほど降った所で左右に分かれていた。標示は無かったが直ぐそこに徳倉山が見えていたので迷うことは無く左に進んだ。どこかで犬が凄く吠えているのが聞こえる。あんなに吠えるのを聞いたのは藤田さん家のジョン以来だ。犬は吠えているし道はドンドン降りて行くので道を間違ったかなと心配になったが途中で標示が有ったので安心した。
ゴルフの打ちっぱなしを過ぎると広い道に飛び出した。目の前を車がビュンビュン走っていていきなり街の雰囲気である。
「ぬわんなんだ!沼津アルプスと言うくらいだから山はつながっているんじゃねぇーの?」いくら標高が低いとはいえせっかく登ったのに下まで降りてしまうことはねぇだろ!。
車道を左に100mほど進むと徳倉山への登山口があったので再び登り始めた。すると生意気にも急登だ。おまけにロープまで下がってイヤミな道だ「標高が低い割になんでこんなに急なんだ?しかしこのくらいでこの僕がロープに頼るわけねぇーだろ!バーロー!」と意地になって登ると直ぐに山頂に着いた。それなのに。。。「ぬわんだ!ここは徳倉山ではなく横山?バーロー、バーロー!」なんだかバカにされているような感じである。おまけにここは木々に遮られて展望は無い。「けぇ!こうなったらさっさと先を急ごう!」と思った。
しかしさっきから気になっているものがある。山頂や登山道の所々にある標示板である。方位が細かく指示してあり分かりやすく、なんたって”沼津アルプス”と書かれた指示板は手作りらしくカラフルで可愛らしく親しみやすい感じだ。「きっとこれを作ったのは沼津アルプスがとても好きな地元の人なんだろうなー!ほんなこつ良か指示板たい!」と思ってしまった。

小鷲頭山の展望 富士山の展望は鷲頭山よりここの方が良い
横山山頂で”良か良か気分”になって歩き出すと山頂からまたしても急な降り道である。でもそこは標高が低いので登るのも降るのも直ぐに終わってしまい平坦な歩きやすい道になった。しばらくは平坦な道が続くと思ったら急登が待っていた。ここにはロープは無いが鎖がずーっと上の方まで延びている。
また愚痴りたくなった、でもこれ以上愚痴ったら僕は中尾彬になってしまうのでやめよう。それに愚痴りながらもこの人を小馬鹿にしたような登山道が段々面白くなってきた自分に気づいた。なんか沼津アルプスが仕掛けた罠にまんまとはまってしまったようだ。
ここからは僕本来の素直で温厚な性格に戻って低山ハイキングを楽しんでみよう。意地を張るのは止めて鎖にぶら下がって登って行くとそこは広い原っぱ状の山頂だった。徳倉山山頂からは北側は富士山、南側はこれから向かう鷲頭山がしっかりと見えている。展望も良いがそれにもまして嬉しいのは心地良い原っぱの山頂だ。今日は天気が良く風も無い。昼食を食べて昼寝をするのには絶好の場所なのだ。しかし時間はまだ朝の9時、昼寝するには早すぎるのでおにぎりを食べて山頂を後にする。

大平山の山頂には大きな桜の木がある 春になったら満開の桜で華やかな山頂になるだろう
山頂の原っぱを離れるといきなり急な降りである。こうなったらもはや笑うしかない。
20mほど降ると道は平坦になり色々な木々の中を抜けていく。木の種類が多いのも低山の良い所だ。山の中を歩いているというより森の中を歩いているような感覚である。
気になったのは所々に黄色のペンキで印が付けられていることだ。「こんなに整備された道で迷う人はいないと思うのだけれど。。。」これはきっと北アルプスや南アルプスを意識しているに違いない。北や南アルプスをライバルだと思ってペンキによる道案内を真似をしているに違いないのだ。かなり意識過剰だけれども、せっかくここまでやるんだったら山の名前も徳倉山や鷲頭山じゃなくて徳倉岳や鷲頭岳だったら”100%アルプス!気分”になれたのにおしい、おしい!
登山道は海岸線を見下ろす道に変わり歩いていてなんとも気持ちが良い。山から海が見える所は沢山有るが多くは逆光で海が白くしか見えない、ここみたいに律儀に青く見えるのは少ない。
海に沿って歩いていると志下峠からはまたまたまたーまたしても急登が待っていた。でもここまで来ると急登も苦にならず、むしろ「勝負!勝負!」と小気味良いゲーム感覚で登ってしまうのだ。
小鷲頭山山頂からは北側のみ展望が開けていて富士山の雄大な姿の下に沼津市街が白く輝いて見える。ここから少し登ると鷲頭山山頂に着く。山頂は広いが展望は西側と東側だけで富士山は木々の間に少し見える程度だ。山頂にいる人に挨拶すると「今日は天気が良いですね!」と返事が返ってくる。ここに来るまでのいくつかのピークでも決まってこの言葉だった。今日はよほど天気が良いのかと改めて思ってしまう。僕の日頃の行いは良いんだなと改めて思ってしまう。

発端丈山に登る途中のミカン畑から見た淡島と富士山
シーパラダイスのショウのアナウンスが聞こえた
鷲頭山から大平山へはウバメガシの林の中を歩く。ウバメガシは常緑低木なので群生していると野暮ったい冬の山の中では緑が鮮やかだ。
この舌を噛みそうな木の名前は反対方向から来たおばさんに教えてもらったのだ「この木の名前ご存知ですか?」と尋ねると「これはウバメガシ、こっちがコナラ、それからこっちが。。。」と説明が止まらなくなった。さすがに沼津である。”佐々木のじいさん”みたいにとても木の名前に詳しいおばさんだった。
歩いているとウバメガシの木の間が狭く通り抜けづらい箇所があった。幹にマジックインキで”肥満度測定木”と書いてあったのには思わず大笑いしてしまった。
小さな起伏の昇り降りを繰り返すと分岐点に到着。そこからひと登りで大平山に着いた。山頂は広いが木々に囲まれて展望は無い。山頂の真中に桜の木が一本立っていてコゲラのドラミングの音が頭の直ぐ上から聞こえてきた。
分岐点まで戻り多比へ降る。「ここは海抜5m」と標示があるので完全に地上まで降りてしまった。「すぐ南に発端丈山という山があるがこの山は沼津アルプスに入るのだろうか?それとも別で長岡アルプスとでも言うのだろうか?もしかしたら鷲頭山の連峰が沼津・北アルプスで発端丈山の連峰が沼津・南アルプスなのかもしれない」などとグダグダ考えている間にもせっかちな足は発端丈山に向けてドンドン歩き出していた。
長浜まで歩いていくと発端丈山ー葛城山ハイキングコース”と指示があったので示す方に歩いて行った。
歩いて行くと小さなお寺があるがそこから次の指示が見つからず道が分からなくなった。

発端丈山山頂に一本のイチョウの木 なかなか良い感じだけど、どこか”ちぐはぐ”のような感じもする。
しばらくウロウロと歩き回ったが道が分からず仕方なく海岸通りまで引き返して通りがかりのおばさんに道を尋ねた。教えられたようにお寺の左の道を進むとミカン畑中をドンドン登って行く。
途中に”ミカンを取らないで下さい”と書かれた札が幾つかあった。登山者の中にもミカンを盗むヘタレ野郎がいるのだろうか?
「山から下に降りるほどクソ野郎は増える」と誰かが言っていたのを思い出した。たしかブラッドピットの”リバー・ランズ・スルー・イット”の中の台詞だったと思うがもしかしたら高嶋政宏の”山岳救助隊紫門一鬼”だったかもしれない。「山頂で会う人は皆良い人であるが地上では結構クソ野郎なのだろうか?」と正直で正義感の強い僕は思ってしまうのである。
やがて杉林になり木の間から淡島と富士山が並んで見える展望台がある。杉林を抜けるとぽっかりとした所に出るがそこは山頂ではなく、さらに平坦な道を10分ほど歩くと発端丈山山頂だ。
山頂は原っぱで広くイチョウの木が一本立っていた。富士山の眺めも良い。秋に来たら紅葉したイチョウと富士山とのツーショットが見られるかもしれない。

葛城山からの展望 今日一日歩いた山が一望できて最後を飾るのに相応しい「お疲れさま」してしまう山
ふと隣の男性を見るとジーンズの膝から下にビニール袋を付けていた。ビニール袋が薄くヒラヒラしているので何かのコスプレのようにも見えるが多分スパッツのつもりなんだろう。もしかしたら沼津では流行の登山服なのかもしれない。
写真に撮って後でもう一度大笑いしようかと思って男性に近づいてみると手に持ったビニールバックには(ザックではなく)分厚い本が何冊も入っていた。「何だ!こいつは?」とひるんでいたら逃げられてしまった。
気分を取り戻して「あと一つで縦走も終わりだべぇ!」と葛城山に向かう。
登山道は杉や桧林の中を大きく迂回している。葛城山直下と思われる地点から道は一度林道と合流し更に迂回してそれからジグザグの登山道を登る。登っているとやがてザワザワと人の話し声が聞こえてきて木の歩道に飛び出した。木の歩道は自然散策道で50m程小高い所まで延びていた。山頂に行く前に寄り道してみると樹木や鳥の説明が随所に書かれていたので一つ一つ読んでは勉強してしまう。
いよいよ山頂に登ってみると展望台ありレストハウスありの観光地化した山頂だった。ロープウェイで上って来た人でごった返していてザックを背負った僕は完全に浮いてしまった。展望台からは遮るものが無い180度の展望で今日歩いた山を一望に見ることが出来、思わず自分自身に「お疲れ様!」をしてしまう風景だ。

先週、TBSテレビ報道特集”なぜ転落?山岳レスキューの悲劇”の番組を見た。雪山の魅力は僕にはまだ分からないがブラウン管に映る映像は綺麗というより怖いというイメージが強く残った。
雪山も良いのだろうが僕は冬のポカポカした日にオニギリと温かいお茶を持って陽だまりハイクに出かけてしまうのだ。
沼津アルプスはやんちゃだけど陽だまりとオニギリが似合う山だった。

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