大岳山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩)

◆5月29日
立川(6:04) +++ 青梅(6:34/6:35) +++ 奥多摩(7:17/7:30) --- 愛宕神社(8:00/8:05) --- 岩場(8:40/8:50) --- 鋸山(9:50/10:05) --- 大岳山(11:20/11:40) --- 岩石園散策 --- 御岳山(13:40/13:45) --- 日ノ出山(14:20/14:45) --- 三室山(15:10/15:15) --- 日向和田(16:30/16:33) +++ 青梅(16:39/16:44) +++ 立川(17:12)

山日記

あやうく憤死するところだった!
4月に那須岳に登って以来、どこの山にも行けない日々を過ごした。五月連休は天気がイマイチでどこの山にも出かけず、その後は仕事疲れや二日酔いで土曜日の朝起きられない日が続いた。
こんなこっちゃいかん!たまに気合を入れて準備をすると決まって天気がくずれる。
やばい!グズグズしていると梅雨の突入、いよいよ山へ行くチャンスが無くなると焦る。
今度の土日の天気はどうだろー?土曜日は晴れのち曇り、日曜日は雨の予報だった。雨に濡れた新緑がきれいだ!って言う人がいるが僕の場合、天気が悪い時の山行は気持ちが内側に入り込みすぎるので好きではない。
また今回も山に行けないな!と思っている所へフナさんからメールが届いた。「最近、山に行ってる?、私は残雪の八ヶ岳にも行ったし、雲取山へ日帰り、雨が降ったって大菩薩へ行ったよ!」
「良いなー、うらやましいなー!」という気持ちでいっぱい!このままでは脳の血管がブチブチ切れて憤死してしまいそうだ。
少し天気は悪そうだけど土曜日に日帰りで奥多摩の大岳山に行く事にした。


愛宕神社からワッセワッセと登って来るとパカッと見晴らしいの良い岩場に出た。
そこには天使の羽?を持った天狗様が・・・
正直に言えば奥多摩の山々はあまり好きではない。鷹ノ巣山から雲取山なんかは好きだけど奥多摩駅周辺の山ときたら植林化された杉や檜がやたらお行儀良く並んでしまっている。それにどの山も山頂付近まで木が生い茂り、遠目で見るとどの山も似たような山容をして個性が無い。

だけど考えたら今まで奥多摩の山は冬にしか登っていないのに気がついた。冬以外の季節に登ると何か新しい発見があるのでは?夏に登ると灼熱地獄なので今のうちに行ってみよう。それに奥多摩は川崎から電車で片道2時間と近いので今回みたいに天気が悪くなりそうな時にはちょうど良い。

青梅線の終点、奥多摩駅で30人ほど電車を降りた。ほとんどと言うか、全員がザックを背負った登山者ばかりだ。
改札を抜けるとそれぞれが目的の山へ向うバス停に並んでいる。「あの人達は雲取、でこっちの人達は川乗かな」と想像しながら一人歩き出す。
橋を渡ると直ぐに愛宕神社・鋸山への指示板があり、いきなり登りになる。「まだ体の準備が・・・」と慌てていると目の前に100段ほどの石段が現れた。これがまたすごい急!いやらしいほど急!「やってくれるじゃん、むふっ!」と鼻の穴おっぴろげて一気に登ると早くも汗がジワーッと流れる。
愛宕山山頂には戦没者を奉った朱塗りの五重の塔があり、その色が周りの山に特異でドキッとさせられる。

みずみずしい新緑には無限の力を感じます。

鋸山から大岳山まではこんな新緑の中を歩く
神社にお参りをして降って行くと登山道は一度、舗装道路を横断して山に向っている。
いよいよ2ラウンド目に突入。

ジグザグの道を登って行くとポッカリと天狗の石像がある岩場に出た。ここからは御前山の展望が良い。この季節は薄っすらとモヤがかかったような翡翠色の空でぼんやりした眺めだけど暑くはなく爽やかで気持ちが良い。
ここまでに既に二人の男性から追い越された。相変わらず亀足で・・・久しぶりの山歩きだけど亀足なのは僕にとって何より調子が良い証拠だ。
登山道は尾根道なのでジメッとした感じは無く明るいのだけど展望は悪くひたすら登るのみだ。

鋸山はその名前から想像するように険しく鋭鋒な山ではなく、山頂はグルリと周りを木々に囲まれて展望は全く無かった。お世辞にも面白いとはいえないのですまねェ!休憩すると直ぐに出発した。
鋸山から大岳山までの道は大した登りも降りも無く気持ちよく歩ける。登山口付近は木々の葉が既に濃い緑になっていて「新緑には少し遅かったかなー」と思っていたがここまで登って来るとちょうど良い感じだ。
新緑の中にポツポツと薄紅色の山ツツジが咲いている。見上げると頭上を覆う新緑が太陽の光を透かしていっそう鮮やかに見える。周りの景色が全体的に緑っぽく見えるのは気のせいではなく葉っぱがフィルターの役目をしているせいなのかもしれない。ただ残念なのは尾根の左側(東)は雑木林の新緑が光の濃淡を作っているのに右側(西)は植林された檜が枝の間から限りなく直線的な光を差し込ませているに過ぎず味気ない。
平坦だった登山道の勾配が急になり、ゴツゴツとした岩がアチコチに現れアセビの木が目立つようになってきた。額からドバドバと汗が滴り落ちてくる。人の声が聞こえた?と思ったらパーッと木々の間に青空が広がった。

大岳山山頂は20人くらいの人でにぎわっていた。西側の展望が良く、雪がうっすらと残る富士山が見えた。奥多摩の山でこんなに富士山が見える山って他にあったっけ?雲取山や鷹巣山で見た記憶はあるけど・・・他にもあるかもしれないが、とにかく富士山が見えたので何だかえらく徳をした気分だ。山頂から富士山が見える、ただそれだけで十分OK!なのだ。新緑に山が輝き、そんでもって青空の下に富士山が見える・・・このムフフ組み合わせって良いと思う。

登り出した時、霞のように空全体を覆っていた雲もいつの間にか、いくつもの塊に寄せ集まって「せーのっ!」と空全体に散らばっていた。そのチリジリになった雲の間に見える空はなんだか久しぶりに青が濃く、重そうに御前山を押しつぶすかのようだ。

本当に来て良かったと思う。自分の部屋からこの空を見ることになっていたら間違いなく憤死していただろう。なんか良いタイミングでメールをモラッタナー。



大岳山山頂 僕の後ろにはでっかい富士山があるのだけれど今日は写真写りが悪かった。
下の写真は上の写真を撮った場所、やっぱりここも新緑が綺麗です。

シワシワの雲の下に御前山の姿 忘れかけていた空の青さ
これは偏見かも知れないけれど奥多摩=ジジババ山って感じだったけで若い人が多いのが意外だ。ちょっと言葉が悪かったけど奥多摩=低山=楽に登れる=ジジババが多い・・・と言うことでは決してない。(まー、ちょっとは思うけど)奥多摩の山は特徴があまり無く、こんな山の魅力が判るのは人生を重ねたジジババしかいないだろ?若い奴らが奥多摩に登ってシンミリ「山って良いなー」とつぶやいたりしないだろし、そうだったらそれはそれで「バーロー、10年早いぜっ!」って感じもする。
御岳山にロープウェイで登り、そのままここまでやって来たらしいジーンズにズック姿も多い、多分、山登りをあまりしない人達なんだろう、やたらとハシャイでいたり、グッタリと疲れて座り込んだり、色んな人がいるがとにかく皆元気いっぱいだ!
大岳山から御岳山へ向かう道はなだらかな下り坂なのでユッタリと新緑を眺めながら歩いた。人が次々と登って来るけれど登山道は広いので道を譲ったり譲られたりマドロッコシイことは一切無いのだ。
今回の大岳山は細かい計画も立てずに急に来たので地図も良く見ていなかった。ここまで歩いてきて地図に滝が表記されているのに気づき、ほんじゃー行ってみるべー!ということにした。

元気な大岳山とは対照的で静寂な綾広ノ滝。まぎれ込んでしまった光は影を無くしてしまう
小さな沢に出くわした所に休憩所があり、そこの案内板を見て「んー、色んなもんがあるな!」と感心しつつ、行ってみるべー!と岩石園へと向った。
すぐに綾広ノ滝があった。高さ5メートル位で水量もそれほど多くない小さな滝だ。滝の上の方は新緑が輝き、その間から流れ落ちた水は一瞬にして輝きを失い暗い滝壷に吸い込まれてゆく。
鳥居も有ったりして心落ち着く場所だ。滝から20メートル下では家族連れが食事中、おとっつぁんとおかっつぁんはすでに爆睡、子供だけが起きてハシャギまわっている。ここはヒンヤリとして昼寝にもってこいの場所でもあったのだ。

小さな、本当に小さな沢に沿って歩いて行く。岩を覆う苔の水滴が緑を集めてきれいだ。


緑匂う岩石園 まばらな光が初夏をいたるところに宿している
岩石園の最後を飾るのは七代ノ滝だ。滝への指示板があって「ここだ、ここだ、行ってみるべー!」と進んで行くとドンドン下に降りて行く。鉄の階段が数箇所あってドンドン降りて行く。降りながら「滝の先に御岳山ってあるはずなんだけど、御岳山ってこんなに下なの?こんなに低いの?」と疑心暗鬼になるのだけれど道は間違ってないしー!とにかくドンドンと降りて行く。
七代ノ滝はちょっと奥まった所にあり、下に降り立った所では水しぶきの音しか聞こえない。その音の方へ進んで行くと光の陰の中にその姿を見ることが出来た。
滝の上の方には新緑が輝き、その下の滝壷は光を失って緑が深く静寂な雰囲気。高さは綾広ノ滝と同じで5メートル位、水が真っ直ぐ下に落ちていて端正な形の滝だ。
写真を撮っているとキセキレイがツツーッと飛んで来て水から突き出た岩の上に止まった。二三度、頭をかしげたかと思ったらまたツツーッと飛んで行ってしまった。一瞬の出来事だったけどなにか目の奥のほうで初夏のにおいを感じさせる光景だった。
滝の前では男10人くらいの人が休んでいる。マグカップでコーヒーを飲んでいる男性、ヘッドホンステレオを聞いている若者、ポケットブックを読んでいる男性、おしゃべりに夢中になっている女の子、色んな人がシートの上に寝転がったり座ったりとマッタリとして緑と涼を楽しんでる。
もー、ここで個人的に宣言してしまいましょう。ここは東京都のムーミン谷です。滝の前、半径15メートルの範囲内は別世界、下界とは別のゆったりとした時間が流れている。
七代ノ滝はずっと長い間、時が止まっていたかのような空間、それでもしっかりと夏を予感せせるのは木々や鳥の確かな存在を感じるせい?
ここでマッタリの仲間に入るのも良いんだけれど僕にはまだまだ見たいものがあるので御岳山へ向かう。少し歩くといきなり急登が待っていた。何だか嫌な予感がしてたけど、先ほど階段をいくつも降りて来たのでその分を登り返さなければいけないのねー。
本日、二回目の汗ドバドバ状態になってしまって「あー、あれは幻だったか?」滝の清涼感は一気に消えてしまった。

御岳神社 今日は山あり、谷あり、色んなシーンが目の前を展開して行きます。
ザワザワと人の話し声が聞こえて来た!ドバドバ坂をようやく登りきって御岳山展望台への道に合流。沢山の人がいて、汗ドバドバの僕は何だか浮いた存在になっていた。
表参道の方へ歩いて行くとそこにはこれまた沢山の人が石段を息を切らせて登っていた。上を見上げるときらびやかな神社が見える。「こんな山奥の、こんな山の上に何てキラキラ!何て豪華!やったー!・・・って僕が喜んでどーする」
僕も息を切らせながら石段を上がり・・・本当はもっとゆっくり登りたいのだけどザックを背負って登山靴を履いている僕がゆっくり登ってたんじゃー一般参拝者にナメラレルと思ってガンバッタのだ。
石段を登りきりヘロヘロになって参拝する。
「アルプス遭難でラジオから聞いた悪魔の囁き、妻の保険金疑惑と遺体のない葬儀」
ここでいきなりブッソウな言葉が羅列します。これは先日放送された日テレ・火曜サスペンス劇場、水谷豊さん主演の「事件記者・三上雄太」のタイトルです。ドラマの中で八方尾根で雪崩れ遭難したはずの風間杜夫さんが実は生きていて大晦日に奥さんと子供と山荘で会うと言う場面が有った。
その山荘と言うのがこれから向おうとしている日ノ出山の日ノ出山荘なのだ。(ドラマは別の山荘でロケされたみたいだけど)
地味な奥多摩の山の中でもさらに地味な日ノ出山。このドラマを見るまで日ノ出山なんて全然気にならない山だったのに「新年を迎える山?おまけに名前が”日ノ出”!んー、これは言ってみるしかねーべ!」と山ヤ心が妙にくすぐられるのだった。
というわけで今回の山行計画はまず日ノ出山を主役に考えたのだった。その日ノ出山へいよいよ向う。
土産屋が建ち並ぶ参道を外れると急にもの寂しい雰囲気に変わった。だけど逆に本来の山に戻れたようで気持ちが落ち着く。道は登り降りもなく平坦で植林された檜の中を進む、歩くのには楽だけど整備されすぎて登山道という感じはしないのが残念。
道が少し登りになると上のほうに山荘が見えた。この付近はツツジを始めとして花が多いがツツジの花はしおれている物が多く、もう2週間前に来たら満開だったのではとまたまた残念だ。

山荘から少し登ると日ノ出山山頂だ。今日歩いて来た大岳山、御岳山の展望が良い。ここから見ると大岳山はデカイ!でそのずっと下のほうに御岳神社の赤い屋根が小さく見える。


日ノ出山山頂 向って右には木のベンチが沢山有って寝転がって市街地を眺めるのは最高です。夜景も良いんだろうな!

山ツツジ 日ノ出山は特に多い もう2週間来るのが早かったら満開だっただろう
山頂は思ったよりもずっと広く、歩いて行くと小さな休憩所があって中のベンチに人が寝転がっているのが見えた。でその先に歩いて行くと目の前にバーンと広大な都心の街並みが広がった。この展望は全くの予想外!もしかしたら奥多摩の山で一番の展望なのかもしれない。名前が日ノ出山って言うのもウナズケル。ちょうど東側が開けているのでここからは初日の出が良い感じかも!風間杜夫さんが大晦日にここにやって来るのも分かる。
あー、ここにテントを張ったら良いんでないのー、テント+夕日+お酒の組み合わせもシアワセ仲間なんだけどテント+夜景+お酒も中々のシアワセ仲間ではないんでねーの!おまけに翌朝の御来光付きとなればこれはタマンナイ!。
この関東平野が一望出来る山頂には10個以上のベンチが設置してあり、この日も数人が弁当を食べたり、寝転がったりとマッタリムードで休憩していた。奥多摩は疲れた都会の人の心を癒す場所、ポッカリと空いた心の空白を埋める場所なんだな!と思った。

今日は奥多摩の山を少し見直したかな。新緑を見て、富士山を見て、大岳山は元気は人達でいっぱい、それから滝も緑の苔も良かった、ツツジの花もそうだ。御岳神社にお参りして今はこうして都心の街並みを眺めている。
ベンチに寝転がって空と向き合ってみる。うっすらと広がった雲の間から青い空が覗いている。天気予報では午後から曇りだったがまだ日が差している。自分じゃ見えないけど今の僕はけっこうホクホク顔でベンチに寝転がっているんだろうなと思った。

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