甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2015年9月21日
甲府 (4:35) === 広河原 (6:28/7:05) --- 北沢峠 (7:30/7:35) --- 北沢長衛小屋 (7:40/8:20) --- 栗沢山 (10:00/10:30) --- 仙水峠 (11:15/11:20) --- 駒波峰 (12:45/12:55) --- 双児山(13:25) --- 北沢峠 (14:40) --- 北沢長衛小屋 (14:45)

山日記 (南アのためのぶよぶよした前奏曲 編)

シルバーウイークは北アのダイヤモンドコースだぁ! ・・・ 夜行バスの予約だ取れない。
だったら蝶から餓鬼まで縦走だぁ! ・・・ さわやか号もムーンライト号も予約が取れない。

急遽、予約が要らない南アルプスへ行くことにした。
こんなマイナス要因で選ばれる山ってどうよ?と思うけれど甲斐駒から光岳はもう一度歩き直したいと思っていたので今回はその一部だけを歩くことにしたのだ。




広河原から北沢峠へのバスは満員で乗れず、増発便に乗り15分遅れで北沢峠に到着。
車道を降って北沢長衛小屋へ向う。

何だこりゃ!
沢にそって色とりどりのテントが乱立している。それが道と並行してずーっと長く続いている。
200張はあるな!
長衛小屋(北沢駒仙小屋)に来たのは初めてだけれどこんなにテントの数が多いとは。

テントの受付を済ませる。
しかしテントを張る場所あるかな?と進んでいくとオレンジ色のエアライズの間にポッカリと一畳分のスペースが空いていた。。
・・・ だけど狭い。
フレームを全部繋げてしまうとその長さで周りのテントを突いてしまうのでフレームを一節繋げてはテントに差し込んでいくしかなかった。
両隣のテント間も10cm位しか隙間が無いので張り綱もお互いに交差している状態だ。

ただ幸運だったのは両隣のエアライズも僕のテントも出入り口が長方形テントの短辺にあるタイプのテントなので出入りは支障が無かった。
これが長辺にあるタイプだったら出入り出来なかったと思う(もっとも出入り口が長辺のテントだったらここには張らなかっただろうけどね)。

サブザックに必要最小限の装備だけ詰め込み8時20分予定より30分遅れでアサヨ峰へ向った。

アサヨ峰は一番最初に朝日が当たることからその名が付いたとバスガイドさんが言ってた。
(朝日岳とはせずに「朝よぉーっ!」って呼びかけ調にしたところがエライ)
以前一度だけ登った時のアサヨ峰山頂からの眺望が忘れられずに、また見たくなったのだ。

地図には載っていないけれど長衛小屋の直ぐ先に栗沢山への分岐があった。
何だか得した気分だ。
シラビソの樹林帯の中、鼻をツンと突くようなフィトンチッドの香りに包まれながら急な道を登ってゆく。

何だか体の調子が悪い。
昨夜、甲府駅では一睡も出来なかったせいもあるけれど、ケエッ!完全にバスの乗り物酔だよ、全く体弱ぇーな!
予定より時間が押しているので急ぎたいのに足が出ない、体が重い。
寒くて腕には鳥肌が立っているのに額にはじっとりと汗がにじんでいる。
マジでやばそうな感じだ。
「とりあえず登るけれど途中でダメそうだったら素直に引き返そう」内なる声がつぶやく。
体の中がぶよぶよした感じ ・・・ こうしてシルバーウイーク南ア4日間が始まったのだ。

地図に無い道なのでコースタイムが分からない。
登り出して一時間、樹木の間に甲斐駒が見えた。きれいな山だと思った。
ただその思いがあまりにも素直だったので死ぬ間際の透明な感情では?と怖くなってしまった。

登り1時間40分で栗沢山頂に到着した。
あーっ仙丈ヶ岳の眺めが良い!
思い返してみるとこんなに仙丈ヶ岳をきっちりと見たことって無かったかもしれない。
やばい、これって死ぬ間際の人の感情かも?
もーっ、精一杯に息を吸ってみる。


シラビソの樹林帯を抜けるとそこには仙丈ヶ岳の姿。今までこうしてきっちりと見たことが無かったような気がした。

山頂の記念写真でも撮ろうと標柱を見る。
あーっ、その向こうに見てはいけない物を見てしまった。
甲斐駒と駒津峰、その下には黄色く広がる紅葉した峰が広がっていた。
いかん、いかん、こんな光景を見せられてはまた来なくてはいけなくなってしまう。

山頂には4人の男性。皆さんザックがデカイ。
栗沢山は縦走する人しか来ないのだろうか?
栗沢山やアサヨ峰は仙丈、甲斐駒、鳳凰の真ん中にあるのでどの山の眺望も素晴らしい。
けれどやっぱり日帰り登山だったら栗沢山やアサヨ峰より甲斐駒へ登るよね。


栗沢山から甲斐駒を眺める。花崗岩の白と木々の紅葉のコントラストが疲れを忘れさせた。

さてアサヨ峰へ向おうと見ると東側から雲が湧き上がっていてアサヨ峰山頂は今にも雲に飲み込まれそうになっていた。

これでは行っても眺望は期待できないので計画を変更して甲斐駒へ行くことにした。


栗沢山の降り、振り返ると紅葉の上に秋のヒツジ雲。あまりに空が高くて木々のざわめきさえも届きそうにない。

最初は甲斐駒を眺めながらの降り、けれど直ぐに樹林帯へ入って眺望は無くなってしまった。
一心不乱、次のシーンへ向けてもくもくと降っていくのみ。

目の前が開けたと思ったらそこは仙水峠だった。
巨岩の間を下っていると、あっちこっちの岩にティッシュがへばり付いているのが気になった。ちょっと汚ねーなぁ!と思ったが同時に何で岩の上なの?普通は草むらでやるものじゃないの?
まったく器用な人がいるものだ。

仙水峠で休んでいると段々と周りはガスって白く変わっていく。
これでは甲斐駒に登っても何も見えないのでは?体調も悪いのでここからテント場へ降りようかとも考えたけれど時間はまだ11時だ。今から戻ってもやることが無い。


これっ立ちションしてるところじゃなくて甲斐駒を目指して降りているところ。花崗岩の白が段々と雲ににじんでゆく。

駒津峰へ登っていく。ガスったせいか風が冷たい。

登っていて気が付いたことが三つ。
1.女性のソロが意外と多い。それも若い人だけではなく中高年まで。
2.ダブルストックの使用者が多い。登山者の半数以上は使っている感じだ。それにしても以前、中高年の登山者の多数が使用していたシングルストックが全く見当たらなくなったのはなぜだろう。
3.ザックが小さい人、軽登山靴に人が多いのはやっぱりキャンプ場からのピストンだろうか。

甲斐駒がガスに隠れたり、見えたりを繰り返している。途中で何度引き返そうと思ったことか。


どんどん天気が悪くなる。引き返そうか?駒波峰を登りながら栗沢山を振り返る。

12時45分、駒津峰へ着いた。甲斐駒山頂は雲の中だ。

今から甲斐駒へ登るとキャンプ場に戻るのは5時半と日没時間とほぼ同じだ。
甲斐駒へ登っても眺望は期待出来そうにない。
相変わらず体調が悪い

甲斐駒へ登るのは諦めた。

ここまで来て登らないのはバカみたいだけれど元々登る計画では無かったので意外とすんなり諦めることが出来た。


駒波峰に着く頃には甲斐駒山頂は雲の通り道。体の調子が悪く、ここで断念、甲斐駒・・・敗退です。

以前甲斐駒登った時に思ったこと。
甲斐駒って富士山と同じで登りよりも眺める山かも ・・・
あれから時間は流れても ・・・
駒波峰、そして双児山から振り返り眺める甲斐駒の姿は今回も良かった。


双児山からの甲斐駒、駒波峰は柔と剛、表裏一体の風景。ただ・・・もうどこにも影が無いのが残念。

双児山から北沢峠へ降って来るとキャンプ場の方からぞろぞろと十数人の人が歩いて来た。
デカザックを背負っているので皆さん長衛小屋でテントを張った人なのだろうけど両手には大きなバックを抱えている。
北沢長衛小屋でキャンプする人はテントを張ったままにして甲斐駒や仙丈ヶ岳を日帰りピストン登山するスタイルの人が多いみたいだ。逆に縦走する人は少ないのかもしれない。
それにしても両手に抱えたバックには何が入っているのだろうと思うほど荷物が多い。


このテントの数がずっと奥まで続いているのだ。


おーっ、しっかりとオレンジのエアライズに挟まれている。

いまにも手が届きそうなくらい低い灰色の雲がキャンプ場を覆っている。

テントに戻って汗ばんだシャツを着替えた。
歩いている時に何かヒリヒリするなと思っていたけれど裸になってみると乳首から血が出ていた。
寒さでピコンとなった乳首がドライメッシュTシャツで擦れてしまったのだ。
だせーっ! あーカッコ悪りぃー!

乳首の絆創膏を貼る。
カッコ悪い ・・・ だけど笑える ・・・ 写真を撮っておくか!
だけど撮るのは止めてしまった。

先日、後輩の長嶋君から相談された話を思い出した。
長嶋君の一人娘の早紀ちゃんがまだ赤ん坊の頃、ふざけて自分の(長嶋君の)乳首を吸わせている写真を撮った(奥さんもよくそんな行為を許したな)。
その写真を小学3年生になった早紀ちゃんに見せたら口を利いてくれなくなったらしい。

いらんことはしない事だ。男の乳首は撮っちゃいかんのだ。

何となく気分が優れないし、乳首もヒリヒリ痛いので寝転んで「影踏み」(横山秀夫)を読んだ。

4時になったのでラジオで大相撲を聞きながら持って来たビールを飲んだ。
体調が悪いのできっと不味いだろうと思ったけど
 ・・・旨い ・・・旨い やっぱりビールは旨かった ・・・ アホだ、やっぱアル中だ。

500mlのビールを2本飲んだら気分が良くなってきた。
きっとアルコール分で体に中の悪玉菌が消毒されたのだ。


薄っすらと雨に濡れた長衛小屋も夢の入り口。


紫の煙が夜に漂う。お疲れ様でした。

夕食を作ろうと水を汲みに行ったら流し台にキャベツくずが散乱していた。
「ここで洗い物をしないように」 ・・・ こんな小さな規則でさえ守れない輩がいるんだな。
まだ花火とかやりださないだけマシか。
あぁ、体の中がぶよぶよした感じがする。

ジムノペディみたいな雨音。
頭上をどんよりと覆う灰色の雲から雨粒が落ちて来て周りのテントがパチパチと音を立てた。
慌ててテントに戻った。

南アルプスのショート縦走はまだ始まったばかり。
フライシートに空いてた穴はふさいだけれど雨漏りしなきゃ良いけどと思った。

南アの二つの女王 編へ 続く
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