白毛門、朝日岳 |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:ロープウェイ) ◆7月31日 ◆8月1日 |
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山日記 土合駅からロープウェイ駅まで歩いただけで既に額から汗が滴り落ちた。空を見上げれば夏の太陽が元気だ。太陽の光は屈折も湾曲もまして分散なんか決してしない頑固さで僕に熱線をジリジリと浴びせてくる。 |
熊穴沢ノ頭から山頂まで近くに見えて意外と遠い。 人の列が続いている |
天神平から目の前に対座して白毛門が見える。明日はあの頂に立てるだろうか?ぐるりと清水峠を回ってあそこまで行くのには随分長い距離を歩かなければいけない気がする。 トイレで水筒に水を入れ、谷川岳に向って歩き出した。 熊穴沢ノ頭避難小屋を過ぎると平坦だった道が登りになる。汗が全身から吹き出てきた。僕の体の中にこれほどの水分が有るなんて不思議な気がする。2年ぶりのテント山行で背中のザックが重たい。頭上の輝く太陽がこんな時は憎たらしい奴に思える。 クタクタになって登っていると50歳位のおばさんが疲れて道にうずくまっていた。 |
トマノ耳から見たオジカ沢ノ頭 |
人が疲れているのを見ると「皆、同じように疲れているんだ!僕だけじゃない」と急に元気が出てきた。 周りをよく観察してみると色々な人が登っている。ボンレスハムみたいに太ったおばさんはゼェーゼェーと喘ぎながらも世間話にも忙しい。背中のザックが妙にカワイかったりする。 ビール腹おじさんのふくろはぎは子持ちシシャモみたいに太く重くて大変そうだ、それでも暑さに負けず陽気に高笑い。ザックの中身はやっぱりビールらしい。 あまり広くないトマノ耳は人で一杯だった。白毛門の写真を撮りたいのだが山頂の東側は切れ落ちているので怖くてあまり端には近づけない。 |
もうクタクタに疲れていた。武能岳から蓬峠への道がなだらかで助かった |
ここから見る万太郎山、仙ノ倉山への稜線は形が良く何時か歩いてみたい! オキノ耳で弁当を食べて一ノ倉岳を目指す。途中、ヘルメットを被ったロッククライマーと出会う。肩のザイルやガチャガチャ音をたてるカラビナが「ちくしょうー!カッコ良い」 一ノ倉岳に着いた時にはクタクタに疲れていた。僕と前後して歩く男女6人のパーティーは花の観賞が好きみたいで疲れも見せないその笑い声には羨ましさを感じた。 武能岳山頂から蓬ヒュッテの黄色い屋根が見えたときには「あそこまで行けば今日の歩行は終わる」とほっとした。 蓬ヒュッテ横のテント場に幕営した。僕の他に単独行の男性が二人だけだった。小屋のほうには20人位の宿泊者だったようだ。 |
翌朝は小雨だった。ここから土合に下山するか?予定通り山行を続けるか?迷ったがとりあえず清水峠まで行くことにした。朝から雨の中の歩行は気分が沈む。清水峠についても相変わらずの悪天に雲だけではなく気分も低迷するばかりだ。 送電線監視所は鉄筋で大きな建物だ。建物の影で雨風を避けて休んでいると数組のパーティーが到着した。皆考えることは同じでここから下山するか?先に行くか?と言う事で話し合っている。 |
朝日岳山頂は明るく緑が眩しかった なんで手を揚げているかは不明 |
単独行はこんな時、相談する相手がいなくて心細くなる。他の人はどうするのか気になって自然と周りの会話に聞き耳を立てることになる。皆なかなか決まらない様子だった。たとえ雨の中でも山行を続けたい人もいれば下山して近くの温泉に行こうと主張する人もいるのでリーダーも判断に悩んでいる。 僕は一人なので誰に気兼ねすることも無く迷惑かけることも無い。周りがぐずぐず悩んでいるうちに「僕は行っちゃうもんね!気合い入っているもんね!」と一人雨の中を出て行った。 |
笹子鉱泉の50Mほど先、ガソリンスタンド手前の道を左に曲がり、稲荷神社の手前を右に曲がると柴犬が待ち伏せていた。こいつがやたらと吠え、唸る。今にも噛み付きそうなので慌てて走って逃げた。これでだいぶん時間が短縮出来たが正直言って疲れた。それにしてもデカイザックを背負っているとやたらと犬に吠えられるような気がする。泥棒と間違えているのだろうか?まさか僕の人相が悪いって事はないよなー。 追分トンネルを抜けて道を1時間ほど歩くと変電所に到着、ここで前を歩いていた人にやっと追いつくことが出来た。急いで歩いたつもりだったが相変わらずの鈍足だな。 |
笠ヶ岳山頂 とにかく暑くてヘトヘト状態 |
30分ほど歩いていると雲の切れ間に一瞬だが朝日岳が見えた。晴れそうな予感がした。 朝日岳の登りで振り返るとさっきまでガスの中だった送電線監視所がはっきり見えるまでに天気は回復してきた。 朝日岳山頂は広い草原で緑が目に鮮やかだ。水場近くでワイワイと食事中の人も居たりして魔の山:谷川岳の印象など微塵も無い。 谷川岳を見ると山頂は雲が少しかかっているが快晴である。二時間前まで登ろうか?降りようか?迷っていたのが嘘みたいに思える。 しかし晴れたのは良いが今度は日差しが強く暑くてたまらない。笠ヶ岳から白毛門への道は灼熱地獄だった。 |
白毛門から朝日岳を振り返る 完全に疲れていた。 |
笠ヶ岳避難小屋でラーメンを作って食べたのでその分ザックの重量は軽くなっているはずであるが両肩にショルダーベルトが食い込んで痛い。 白毛門山頂は熊笹に覆われてあまり広くは無い。ザックを降ろすと背中がべっとりと汗に濡れて気持ち悪かった。 山頂は谷川岳を眺める好展望台だ。「あそこから良くここまで歩いてこれたな!人の足って結構丈夫に出来ているもんだ!」と他人事のように感心してしまった。 一ノ倉沢の険しい岩壁が谷川岳の悲痛な歴史を物語っているようだ。一方、笠ヶ岳、朝日岳は熊笹に覆われていて優しさを感じさせる対照的な山容である。 ここから土合駅まで降って行けば今回の山行は終わる。時間が許す限りこの景色を見ていようと思った。 |
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