白毛門、朝日岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆5月26日
高崎 (9:17) +++ 水上 (10:21/10:26) === 土合橋 (10:46/10:55) --- 松ノ木沢ノ頭 (13:20/13:30) --- 白毛門 (14:30/14:50) --- 白毛門の下 (15:20) (テント泊)
◆5月27日
白毛門 (6:30) --- 笠ヶ岳 (7:25/7:35) --- 朝日岳 (8:40/9:05) --- 笠ヶ岳 (10:00) --- 白毛門 (10:40/10:45) --- 土合橋 (12:45/13:02) === 水上 (13:23/13:48) +++ 高崎 (14:52)
山日記

土合橋でバスを降りる。
目の前にはボカンと新緑の固まりがあってその向こう側にこれから向かう白毛門の稜線が少しだけ見えた。
ようやく着いた!・・・もう何だか疲れている感じ。目の前はこうして広がっているのに。

昨夜は9時に自宅に帰ってそれから西丹沢の檜洞丸へシロヤシオを見に行く登山計画を立てていた・・・人でいっぱいだろうな!なんて考えていたら突然、GWに予定していた谷川岳へ行くのも良いかもしれん!と思った。この時点で既に深夜0時を過ぎていたのでこの時間からテント泊の準備を始めた熱意に自分でもスゴイぞ!と思った。

そうしたら今朝、しっかり寝坊してしまった。


とにかく素晴らしいブナの森。土合橋から歩き出してすぐにそれはあった。

なさけねーよ!こうして予定より1時間半遅れてどうにか土合に到着した。

予定では土合駅→白毛門→朝日岳(泊) →清水峠→大源太山→スキー場前駅とゆるい計画だ。今回はとにかくのんびりと歩いて、そして良いものを沢山見ること、そして縦走路から外れているのでこんな時にしか登れない大源太山を登るってこと。
がしかし時間はすでに11時、のんびり歩くつもりが今から朝日岳まで行くのもけっこう厳しい時間になってしまった。

登山道の雪の状態も分からないし、今から登ってはたして朝日岳まで行けるかどうか不安なので土合橋近くの川で水を3リットル、ポリタンに入れて行くことにした。
ズッシリと重くなったザックに益々滅入ってしまって気持ちが乗ってこない。


信じられない光景が舞っている事もある。
汗ダクダクで登って谷川岳が見えたら、いよいよ始まるって感じだ!

歩き出して直ぐに新緑のブナの森。若葉を透った光が緑色にキラキラしていてそれだけで良い感じだ。土の上を歩くのも久しぶりだし、最近仕事が忙しいのでこうして山を歩いていると煩雑な日常から解放された感じがして、もうこれは休日をしっかり楽しもう!と何だかホクホクしてくる。

日本三大急登って?北ア・烏帽子岳へのブナ立尾根, 南ア・甲斐駒ヶ岳への黒戸尾根, 谷川岳への西黒尾根らしいけど、この道もその西黒尾根のお隣さんだけあってかなりキツイ!高度をぐんぐんと稼げるのは嬉しいが体が後ろに引っ張られるようで体が前に出ない。
暑さはさほど感じないけれど大粒の汗が吹き出てくる。

ブナの森を抜けると松の森、この辺りは4月に歩いた時にはでかい雪庇が出来ていた場所だったけど今は地面に根っこがクネクネと這っているので歩きにくい道に変わった。
見下ろすと右下に白毛門沢大滝が見えた。広い緑の中にポッカリとそこだけ光が集中したみたいに真っ白に輝いている。それにしても谷を挟んで広がっている森は新緑一色だ。他の色や濃淡の無い、混じりっけなしの正しい新緑。何でか分かんないけど思わず良しっ!と思ってしまう。


白毛門沢き大滝。遠目に見ても水しぶきをあげる滝は一服の清涼剤

松の森を抜けるとそこは潅木帯、潅木といっても3メートル以上の木もあって4月に来た時にはこれらの木々も雪にすっかりと覆い尽くされていた。
その雪の多さにも驚くけれどそれがたった1ヶ月半の間にほとんどの雪が解けてしまっているという事実!季節の移り変わりの速さ、過激さには驚いてしまう。
この辺りから谷川岳一ノ倉沢の岩壁が見えるようになる。大気が霞んでいるのでクッキリとは見えないけれど冬の間、雪の中に幽閉されていた山が今、目覚めたばかりの感じがして視線は釘付けになってしまう。

途中、ちょっと開けて展望が良い場所であったのでおにぎりを食べた。
コンビニのおにぎりには海苔が最初から巻いてあるしっとりタイプと食べる直前に巻くパリッとタイプがあるけれど食通の人に言わせるとしっとりタイプは海苔の風味も無く、食感も悪いので邪道なそうだ。でも僕はどーもしっとりタイプの方が好きだな!
今日のオニギリは電車に乗り遅れて上野駅でウロウロしてた時に手作りおにぎり屋で買ったもの。これがご飯がやわらかでメチャウマ!
しっとりタイプのおにぎりはお弁当だよ!山ではやっぱり海苔はしっとりしてた方がうまいのでは?とふと思った。

松ノ木沢ノ頭でようやく視界が開けてようやく一ノ倉沢がズバッと見えた。だけどすでに逆光で白っぽく霞んでしまっていてガッカリした。
白毛門山頂もやっとここで見ることが出来た。まだ山頂付近は茶色にくすんだ感じで春はまだ遠いのか?
ここで急に虫が居なくなったのは嬉しい。さっきオニギリを食べていたら頭の周りを数匹の虫が飛び回るのでうるさかった。
偶然かもしれないけれど焼きタラコを食べだしたら歓声が上がったみたいに羽音がうるさくなって落ち着いて食べれなかった。虫は焼たらこが好きだったのだ。


松ノ木沢ノ頭でやっと展望が開けたって感じ。
この辺りから高山植物が増える。


思いっきり駆け出したい眺望があったジジババ岩もしっかり見えてます

松ノ木沢ノ頭からは花が多くなってノンビリ歩くのに最適。
今まで気がつかなかったのだけどショウジョウバカマって色んな色があるんだよな。ピンク色が一番多いけれど小豆色や薄青色まで多様ですね。

花を眺めながら歩いていると直ぐに山頂への最後の登り。ここは残雪期は“雪の壁”と呼ばれている急斜面、雪が無い今はジグザグに登って行くのでなんてことはないけど、上から下を振り返るとここを雪がある時は直登したのかと思うと、自分でもよく登ったなと思えた。

白毛門山頂からの谷川岳の眺めは素晴らしい!はずなのだけれど・・・
4月に登った時の景色の良さにすっかり魅了されしまって、白毛門は百名山ではないけれど谷川岳の展望台としてはピカイチだ。それが今は逆光でシルエットぎみだし、空気が白く霞んでいるのでちょっとガッカリした。やっぱり谷川岳を見ようと思ったら午前中がベストだな。こうなると寝坊したのがやっぱりイタイ。
それに今日は遠望も利かない。山頂からぐるりと見渡すと三角の武尊山が今にも空の中に消え入りそうにうすぼんやり見えるだけだった。
視線を谷川岳から右へ、一ノ倉岳、茂倉岳、武能岳、それから七ッ小屋山と走らせる。北の山ほど残雪の量が多くなって行く。もう少し雪が多い、そう五月連休あたりに歩いたら爽快だろうな!と思う。来年の五月連休はもう一度狙ってやろうと思った。

白毛門からの谷川岳。やっぱ寝坊したのが痛い!着くのが遅すぎるよ、逆光でイマイチでもまー良いかっ!

山頂に着いた時には晴れていたのに、それからほんの十数分の間に谷川岳の向こう、西の空から突然曇りだした。
谷川岳の向こう側に灰色の壁があるみたいで、そしてその壁から白や黒い雲がしぼり出されるようにモクモクと湧き上がっている。東の空は晴れていてちょうど谷川岳を真ん中に挟んで東と西でくっきりと晴れと曇りが分かれてしまっている。

時間は午後3時、天気が悪くなって気分は乗らないけれど体力はまだ十分だし、今から行けば遅くても5時半には朝日岳へ着けるだろう。

山頂から歩き出してすぐ、目の前の笠ヶ岳山頂が雲に覆われ出した。やがていくつかの黒い雲が笠ヶ岳を乗り越えて頭上までやって来たかと思ったらポツリポツリと雨が降り出した。
あーっ、最悪だぁ!たいした雨ではないのでカッパを着ずに
そのまま歩いていたら少し大粒の雨が腕を濡らした。


白毛門山頂から展望は良い筈なのに霞んでいてイマイチだった


山頂の石碑はピッケルが埋め込まれた鎮魂碑。それだけで・・・

山頂の方位盤。ここからは色んな山が見えるのね!晴れてたら。

寒いし笠ヶ岳は雲の中だし、やーめた!ここにテント張ろう。元々寝坊した時点ですでに熱意や意欲はなくなっていたので、あっさりとここで撃沈!
どこかテントを張れそうな場所は?と周りを見ると登山道の周りは笹だらけで一畳ほどのスペースも無い。しかたないので白毛門の方へ戻って、さっき見かけた残雪の上にテントを張ることにした。

今回の課題の一つが雪の上にテントを張ってみることだったのでちょうど良かったかもしれない。用意してきた竹ペグならぬ割り箸ペグをアンカーとして雪に埋めてみるとわずか数センチの深さなのにビクともしないのには驚いた。もっとも雪が新雪なんかでフカフカだったらまた違ってくるのだろうけれど。

今回の課題は雪の上にテントを張ること。
割り箸ペグもしっかり用意してきた。
十字にするよりもこれの方が埋設しやすいし、どうなんだろう?

翌朝、雪は凍結してなくてチャンと割り箸は回収出来ました!

実際にやってみると色々と不都合に思う点はあったけれど勉強になった。

テント設営中にも時折、雨が落ちてきてテントがパラパラと音を立てた。
笠ヶ岳方面から女性がやって来て足早にテントの横を歩いていった。やっぱりそうだよなぁー、白毛門から見ると笠ヶ岳はもっと高いし、せっかくここまで登って来たのならガンバッて朝日岳まで行きたいよなー!
それにしてもこんな所で早くもテント張っているオレっていったい・・・・


テントを張った時には小雨が降っていたけど夕暮れ近くなると急に晴れた。思わずテントを飛び出してシャッターを切った。

夜になるまで雨が降ったり晴れたり、まったく小ざかしい天気だった。
雨が降ったらテントの中でお酒を飲みながら本を読んで、雨が上がったら白毛門山頂まで酔っ払ってフラフラと散歩に出かけた。(山頂まで
3分の距離なのだ)

気持ち良いやっ!
テントを設営してしまうとこれで寝る所が確保出来たって感じはフニフニに嬉しい、うまく言えないけれどスゴク安心感があってもう何が起こってもオレは大丈夫って感じがする。多分この感覚って一人で幕営している時に再現する感覚だ。振り向くと自分のテントがそこにあるってことが単純に嬉しい。

日没はどうにか晴れていた。薄っすらと相変らず霞んではいたけれど。
日が沈んでしまうまでの30分は好きな時間だ。
いつもソロなので今日一日の思い出を語る相手は居ないけれど一人夕日を見ていると時間が段々と心の奥へ濃縮されて行くような感覚にジーンとくる。

テントに戻ってウイスキーを飲んでいるといつの間にかボトルは空っぽ。
本でも読んでよーっ!と文庫本を広げたけれどモーレツな睡魔に耐えられない。
時々ゴーッと風が吹いたかと思うとテントが狂ったように暴れまくって・・・
もうそれも気にならなくなって・・・




翌朝、アラームの音で眼が覚めた。
アラームが鳴るまで夜中に一度も眼が覚めることは無かった。
あーっ、よく寝たな!と思った午前4時。テントから顔を出してみると薄らぎ始めた空は雲に覆われていて全く星は見えない。
本当ガッカリしてしまった、中越地方の天気予報は午前中晴れで午後から曇り、所によって一時雨だったので朝は晴れていると思っていたのに。
朝食の用意もグズグズ、カレーもあまりウマくねぇー!

どーすっかな?
5時半に撤収完了。計画ではここから大源太山へ向かう予定だったのだけれど西から雲がひっきりなしにやって来ては太陽を隠してしまっている。
ここでいっぱしの山屋だったら”雨でもいっちゃるけんね!”と怒涛の快進撃が始まるのだろうけれど、”やってらんねーよ!”僕の場合、諦めはすこぶる早い。って言うか根性が無いって言うか。
今日の予定・・・1
,2時間山頂でノンビリして、それからゆっくりと土合へ降ることにした。

白毛門山頂でのご来光は残念無し!

夜明けは曇っていたけれど、段々と太陽の光が差し込んできた。
まだまだ弱い光だったけど眩しいね!と谷川岳を眺めた。

西からやって来た雲は頭上を越えて行くと東の空に溶け込むように次々と消えていった。
白毛門山頂にマットを敷いてぼんやりと空を眺めていたら、ほとんど突然、青空が広がった。
気持ちの
3割くらいはくそったれ!と思ったかもしれない、なにせノンビリ、気楽というのは居心地が良いポジションだからね、でも残りの7割は”行こうぜ!”とつぶやいてた。


テントを張った場所からの笠ヶ岳と小烏帽子。突然晴れたじゃねーか!とパチリとシャッター押した。
これは行くしかねーだろ!こんなんなるとどこまでも歩いて行ってやろうじゃん!と思う。

こうなりゃ行くしかねぇー!予定変更して笠ヶ岳へ向かう。
カァーッ!太陽の光に言葉があるとは知らなかったけれど見上げると登山道の周りの笹がカァーッ!と緑色に輝いてものすごくイカしていた。
左に見えるは谷川岳の山々・・・山登りを始めてこうして春を迎えるのは何度目だろう?
春は空気が霞んでいる場合が多いので以前はあまり食指が動かなかったけれど、最近は新緑や残雪の良さに目覚めてしまって、そうなると行きたい山も増えてしまって・・・
日光白根山、草津白根山、乗鞍岳、焼石岳と色々あったんだけれど、今回はアプローチが楽なこの山を選んだけど、お天道様が顔を出すとやっぱ素晴らしい。笹の緑と残雪が素晴らしい!
さっきまでの心の中のモヤモヤが一気にふっしょくされてしまうような光景が目の前に広がった。


笠ヶ岳からの谷川岳。これが見たかった!てっぺんは雪、下の方は新緑。ちえっ、空気が霞んでなかったら・・・

白毛門から笠ヶ岳までの登山道の印象・・・
1999年7月:暑くて暑くて地獄、夏に谷川岳は登ったらイカン!と思った。
2005年4月:なだらかな雪のスロープで本当に歩いていて気持ち良かった。・・・・でぇ今日は暑くも無く大変な道ではないのだけれど小さな登り降りを繰り返すのでやっぱり雪があった方が歩き易いと思った。


朝日岳へ登る途中で笠ヶ岳を振り返る。そこには壮大な景色。青い避難小屋が小さく見えている。

笠ヶ岳山頂は展望が良かった。ゆっくり展望を楽しみたいのだけれど風が強くて、Tシャツでは寒くてしょうがないのですぐに朝日岳へ向かった。

朝日岳へ向かっていると西に見える武能山や七ッ小屋山の向こうからモクモクと灰色の雲が湧き上がってくのが見えた。あの雲がこっちに来るまでに朝日岳まで行きたい!と思って気合いを入れて歩いていたけれど登山道は小さなピークの連続で息があがってしまった。

そうしてヘトヘトになってたどり着いた朝日岳山頂はしっかり雲の中だった。
んなろーっ、ちょっと遅かったか!以前、夏に来た時は池塘があって緑の草原の中に色んな花が咲き誇って天空の別天地・・・だったのに今はその面影はどこにも無くて飴色に枯れた植物がべっとりと地面にしなだれているだけの場所で、夏のあの繁栄を知っているだけに何だか無性に寂しくなってしまった。やっぱりここは夏に来たいな!(暑いけれど)

予定ではここから大源太山へ行くつもりだったのだけれど目の前は真っ白にガスってしまって何にも見えない状態、行けるかオレ!
おまけにマズイな!と思ったのはさらに強くなった風だ。よく雨が降り出す前に風が強くなる事があるのでもしかしたらこれから雨になるのでは?と嫌な予感がする。
朝日岳の西側からドンドンとガスが流れて来ているけれど東側は晴れている。
それじゃー予定変更だ!本当の山屋だったら雨の中でも大源太山を目指すのだろうけど僕の場合、その辺のハードルは実に低い。って言うかハードル除けているじゃん!と思う。あっさりと宝川温泉に下山することにした。(でも本当は上越のマッターホルンには行きたかったのだ!)


写真では分かりにくいけれどガスって真っ白な朝日岳山頂だった

山頂から宝川温泉への道はまだしっかりと雪に覆われていた。やっぱり雪の上を歩くのは楽しい!と思えたのは歩き出してほんの5分間だけ。歩き出しはまだ晴れ間が見えていたけれど、しだいに山頂を越えた雲がこっちまでやって来てとたんに目の前が真っ白、視界ゼロになってしまった。
雪の上にトレースは無いし、コンパスだけを頼りにとても歩けないだろう?と弱気な僕は判断。
またもあっさりと予定変更(・・・今日何度目の変更だろう)
こうなると逃げ道は一つしかない!白毛門へ戻る事にした。

カッパがバタバタと音をたてて体にへばりついてくる。
今にも雨が降ってきそうなので逃げるように笠ヶ岳へ向かって行く。
ゴーッ!という音が遠くから近づいて来る。来た来た来た!と思っているとドカンと吹っ飛ばされそうな風の塊がぶつかってきた。山って空気が薄いのだから風の圧力も弱そうなんだけど、そんなことぜんぜんねぇーっ!

ヘロヘロになって笠ヶ岳まで戻って来た。
大きく息をしながら白毛門を見ると・・・あっちは晴れている?!何でだぁー!
昨日からずっとそうなんだけど、谷川岳が雲の分水嶺になっている感じでその西と東とでは天気が違っている。今度この山に来る時は水上の天気だけじゃなくて中越地方の天気も確認しなきゃな!と実感。
また一つオリコウになったな!と全然喜べずにやりけれない気持ちで白毛門へトボトボと歩いていった。

登山道は朝とは一変して雪融け水が沢のように流れている箇所があった。昨夜テントを張った場所を見ると昨日あれだけ圧積した雪もスカスカに融けてしまっていてテントの痕跡もなくなっていた。こうして一日一日とドンドン雪は融けているんだな、あの灼熱の山に向かっているんだな!と思った。

谷川岳は雲の中にあってつまらなかったので少し休むと白毛門を降って行った。
昨日は
10人くらいの人とすれ違ったけど今日は20人くらいかな。天気は昨日より悪くなって谷川岳も見えないのに登って来る人の表情は明るい感じがして不思議だった。眺望よりも新緑と花に志向しているのだろう。僕にとって白毛門は谷川岳の展望台なのだけれど他の人はもっと違った視点、もっと柔らかい視線でっこの山を見ているのかもしれない。

この二日間はなんだったんだ、迷走ばかりしてた気がする。歩き足らねーな!まだまだずっと歩きたい気がする。
汗だくになって土合橋へ降りて来た。
川がキラキラしてて、小さな子供がはしゃぎまわって、その側でお父さんとお母さんが山菜だろうか?川で水洗いしていた。ほのぼのとした光景がそこにあった。
振り返ると昨日、ここで見たのと同じように白毛門はやっぱり青空の下にあった。
終り良ければ全て良し!・・・ってだから全然良くないし、何か消化不良の山行だった気分は否めない。


土合駅で2時間半も電車を待っているのも面倒くさいし、ここはすんなり水上行きのバスに乗ることにした。
やって来たバスはロープウェイへ行った観光客で満員だった。

ステップを上がって床にドカッとザックを下ろすとザックにしがみついていたらしい虫が数匹、宙を舞った。後ろに立っていた男性がそれを見ていたらしく僕をジロジロと見るのでこりゃ参ったなー!と思った。

しばらくバスに揺られているとつり革をつかんでいた手の甲がムズムズした。見ると2センチほどの虫が手にくっ付いている。気色悪くて思わずウワッと手を振ったらその虫が前に座っている女の子の方に飛んでいってしまった。途端にキャーキャーと騒ぎになってしまった。
マズイなぁー!しらんぷりしてなにげに後ろを振り向くと僕と目が合った男性がニヤリとした。
しもたぁー、また見られたな!とりあえず僕もニヤリとした。
僕から女の子へ自然のプレゼント!喜んでくれたかな?・・・んなわけねーだろっ!

うるせーな!虫の一匹でぎゃあぎゃあ騒ぐなっつーの!
でも何だか他人の不幸は蜜の味!
こんなんでブフフと喜んでいるよーじゃ、僕ってちいせー人間だよな。
でっかい山にもっともっと登ったら少しはデカイ人間になれるだろーか?車窓に映る山を眺めながらそう思った。
だからちいせーよ!そんな虫ぐらいでいつまでも騒ぐなっつーの!オレなんか額と肘としっかり虫に刺されてしまってんだからな・・・


朝日岳山頂のお地蔵さんのニンマリに救われた
●山麓をゆくへ   ●ホームへ
inserted by FC2 system