藤原岳、竜ヶ岳

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2015年10月23日
名古屋 (5:40) +++ JR富田 (6:15) --- 近鉄富田 (6:25/6:33) +++ 西藤原 (7:34/7:50) --- 表道登山口 (8:00) --- 4合目 (8:45/8:50) --- 8合目 (9:40/9:45) --- 藤原山荘 (10:20/10:30) --- 展望丘 (10:50/11:00) --- 藤原山荘 (11:20) --- 天狗岩 (11:40/11:50) --- 白船峠 (12:40/12:45) --- カタクリ峠 (13:15/13:20) --- 白船峠 (13:50/13:55) --- 藤原山荘 (15:00)

山日記 (鈴鹿セブンマウンテンをゆく1 編)

ずっと前に買った鈴鹿の「山と高原地図」。
だけど地図を見ると鈴鹿の山はわずか標高1000mほどしかない。
そんな低い山を登るためにわざわざ三重県まで行くのも面倒だった。
地図は使われないままいつしか本棚の隅にへと追いやられていた。

最近、ガソリン安のためか?高速バスの値段が安くなった。
ネットで調べると東京から四日市まで片道わずか3000円だった。
更に東京から名古屋までだと1800円なのだ。往復で何と3600円。
これじゃー山梨の、例えば大菩薩嶺に行くのとほとんど同じ値段だ。

鈴鹿の山に行くのはガソリン安の今しかない!

さてどの山に登ろうか?
どの山が良いのか分からない。
二百名山の御在所岳、三百名山の藤原岳は押さえておくとしても他の山は・・・
ネットで検索していると「鈴鹿セブンマウンテン」と言うのがあるらしいことが分かった。

おーし、鈴鹿の山がオレを呼んでいる ・・・




何でだ?無人駅だったJR富田駅で電車を降りる。
JR富田と近鉄富田駅の間って商店街なのでは?って予想は見事に外れ、駅前は普通に住宅街だった

困ったのはJR富田から近鉄富田駅へ向う道標が全く無かったことだ。
花壇に水やるおかあさんや部活へ向う中学生に道を尋ねながらどうにか近鉄富田駅へ着いた。

運賃表を見上げる。
あれっ?西藤原が無い!
やばっ、何か勘違いしてたかも、西藤原へはこの駅で乗りかえるのではなかったのか?
慌てて駅員へ駆け寄った。
「西藤原へはここから行けないのですか?」「三岐鉄道へ乗ってください」
「その三岐鉄道へはどこから乗るのですか?」「向こうの窓口で切符を買ってください」

今朝、名古屋に着いた時、名鉄、近鉄、JRと駅が分かれていることにもどかしさを感じたけれど、ここ富田駅でも近鉄と三岐鉄道が妙にキッチリと分かれているのが面倒くさかった。

途中の駅で早朝部活らしい中学生が降りてしまうと電車の中には僕一人になってしまった。
車窓の外にはこれから向う藤原岳が見えてきた。
やっぱり低い山だな、中央本線から見た扇山、百蔵山みたいな感じだった。


三岐鉄道の切符は今時珍しく厚くて旅情を感じる。


三岐鉄道の電車。アンパンマンと配色が同じなのだけど。

西藤原駅から歩いて10分、登山口には立派な休憩所が建っていた。
建屋の中にはテーブルや板間もあって装備があれば泊まれそうだ。
駐車場には10台ほどの車、平日なのに登っている人がいる、やはり人気の山なのだ。

神社の鳥居をくぐり、ザックの重さにふらつきながら登りだす。
水3L、ビール1L、ペプシ0.5L、オランジーナ0.5L、ウイスキー1L。
液体の重量だけで6kg・・・ちょっと持って来過ぎたかもしれん。

登りだして10分、汗がダラダラと額を滴り落ちる。
暑いという感じはしないけれど頭と体の意識は別なのか?
やっぱりザックが重過ぎるのかもしれない。
まさかこの季節にこれほど汗をかくとは予想していなかったので水が足りるか心配になった。


4合目の風景。汗ダクダクで登って来た。


8合目でやっと展望が良くなった。ここからが長い!

3合目付近で休憩している夫婦の登山者を追い越した。
今夜は僕と同じく藤原山荘に泊まると言うことなので嬉しくなった。
誰もいない場所でのテントには慣れたけれど、一人で泊まる山小屋は今だに不気味さを感じる。
「水を6L持って来たのでザックが重い!」とおとうさんがガハガハと笑った。

ジグザグの道を登って行くと8合目でやっと眺望が開けた。
振り返ってみると藤原町の町並みが白く霞んで見えた。

9合目から先が長かった。
白い石灰岩がゴロゴロした登山道の向こうに藤原山荘が見えた時、このデカザックをやっと降ろせると思うと素直に嬉しかった。


藤原山荘は解放的な場所に建っていた。


小屋の中の様子。二階には6畳ほどの板間がある。


雨水タンク小屋の外壁には便器が、誰が使うの?


なぜか北だけを指す方位盤。メッカは北西だしな?

藤原山荘には真新しいトイレ、倉庫、雨水タンク、宿泊所の4つの建屋があった。
重い鉄の扉を開けて小屋の中へ入って見ると誰もいない。
ザックを降ろして、サブザックに必要最小限の装備だけ入れると藤原岳山頂へ向った。

ところが山頂への登山道が見つからない。
地図を見ると小屋のすぐ裏(西側)が山頂みたいだけれど小屋の周りを回ってみたけれどそれらしい道が見つからない。
他の登山者は近くにある展望丘へと向って行ったので僕もそっちへ行くことにした。


展望丘へと登って行く。後ろには石灰岩の台地が広がっている。わずか1000mの山頂に広がる景色とは思えない。

藤原岳は標高は低いけれど個性的な山だった。
広い台地のアチコチに点在している白い石灰岩が龍安寺の静けさを彷彿させた。
石灰岩というと武甲山を思い浮かべたけれど山容は全く違っていて日差しが良く似合う山だった。

展望丘からの眺望は良かったけれど残念、周りの景色は白く霞んでしか見えなかった。
ピークには「藤原岳展望台」の標柱があるけれど山頂の文字は見当たらない。
他にソロの男性が二人居たのでここが山頂ですか?と尋ねたけれど二人ともこの山に来たのが初めてなので分からないという返事だった。


展望丘が山頂なのか?ここも白い石灰岩でいっぱい。


展望丘からの御池岳と天狗岩。

一旦、小屋へ戻り、今度は御池岳へ向う。
今の時間は11時20分、御池岳までのコースタイムは片道125分だから15時半には戻って来れる。
小屋から道はなだらかに登って行く。広く開放的な場所で歩くだけでのんびりとした気分になった。
もしかしたらここが山頂?かなとも思ったけれどやっぱり「山頂」を示す物は無かった。

やっぱり山頂って小屋のすぐ裏、西側のピーク?
藤原岳って山頂へ登れない山?
もしそうだとしたら、こんな山は初めてだ。
標高わずか1128mなのに難攻不落の山なのか?


藤原山荘から少し登るとこんな風景が。どこか冷たくてそして暖かい、こんな山は他に無いな。


藤原山荘から天狗岩へと向う。奥に見えているのは送電鉄塔が立つ頭陀ヶ平。

天狗岩も眺望が良いピークだったけれどやっぱり景色は白く霞んで見えた。
天狗岩から少し引き返した所が白船峠への分岐だったけど、ここから急に踏跡が薄くなった。

送電鉄塔が立つ頭陀ヶ平はハゲ山で眺望が良い。
送電線の先に藤原町の町並みが広がって見えた。
しかし ・・・ ここから見る御池岳の遠さにはガッカリした。


天狗岩からの藤原岳。一番高く見えるピークが展望丘でその手前が藤原岳山頂のはずなのだけど。


天狗岩から見た御池岳。手前が奥の平で山頂はもっと向こうなのだ。


頭陀ヶ平から御池岳を臨む。遠いなぁー!この時点では行く気満々だったけれど・・・

藤原山荘から白船峠まで地図のコースタイムでは60分なのだが80分もかかってしまった。
ザックが軽いので時間短縮出来ると思っていたが逆に遅れてしまった。
天狗岩でゆっくりし過ぎたのだろうか?それとも薄い踏跡を確認しながら歩いたので遅れてしまったのだろうか?

更に白船峠からカタクリ峠までコースタイム20分の道を30分かかってしまった。
ここカタクリ峠までで既に予定より30分遅れている。
この道を往復することを考えると藤原山荘に戻るのは1時間遅れの16時半になってしまう。

ここから御池岳まではたしてコースタイムの45分で行けるだろうか?
もし遅くなってしまった場合、ヘッ電の灯りでこの薄い踏跡や赤テープを追いながら歩くのは厳しいなと思った。

不安になったので峠に居た男性に相談した。
御池岳から降りて来た男性の話では御池岳付近の車道や登山道は通行止めになったりしたので最近、御池岳ー藤原岳間を歩く人が減って道が荒れているとのこと。
ヘッ電での歩行は止めておいた方が良いと言われた。
(この日も、坂本谷コースは通行止め、聖宝寺コースは通行注意になっていた)

戻ろうと思った。御池岳へ行くのは諦めよう。
男性の「御池岳山頂付近の紅葉はもう終わっているからここからのんびり紅葉を楽しみながら戻った方が良いですよ」の言葉が決定打になった。


藤原山荘に戻って見ると三合目で会った夫婦が休憩中だった。
話を交わすとこのご夫婦は大阪から来られたらしい。
二人とも既に80歳を越えていると言う事だが、すごいのはいまだにテント縦走を続けていて百名山のほとんどもテント泊で登ったらしいのだ。

「山は最短コースで登ったらダメだ!それじゃ面白くない!皆、百名山を最短コースで登っているけど何が面白いのか?」とおとうさんが唾を飛ばす。
「でも仕事していたら無理よ。GWと夏休みだけのテント泊で百名山を登っていたら完登するのに何年かかるの?」とおかあさんが笑っていた。

「鈴鹿の山は稜線上に山小屋や水場が無いので縦走は難しい」
「先月、竜ヶ岳に登った時には途中で水が無くなってしまい山頂でシュラフのままビバークした」とおとうさんがガハガハと笑った。
僕にはその状況が分からないけれど、どうして水が無くなったら下山しないでビバークなのか?
そもそもシュラフはあるのになぜテントは持っていないのか?と疑問に思ったけれどあまりにおとうさんが楽しそうなので余計な質問は出来なかった。


藤原山荘から少し登った所のピークはこんな場所。牧歌的で良い感じです。

夕方4時になった。
「そろそろ山頂へ行くか!」二人がベンチを立った。
えっ、まだ登ってないの?
て言うかテーブルの赤ワイン1.5Lのペットボトルがすっかり空になっているけれど大丈夫か?

二人とも今では珍しいウールのニッカポッカを履いていた。
ヒザとオシリには勲章のようにしっかり穴が空いている。
ガラガラと扉を開けて小屋を出て行く二人の影はもう長かった。

4時20分になった。
僕はアーベントロートを見ようと空身で天狗岩まで行ってみることにした。
小屋を出るとそこに二人の姿があった。
山頂への道が見つからないと小屋の周りを歩き回っていたらしい。
藤原岳の山頂はあそこに見える展望台らしいですよと教えると二人は向って行った。

展望台まで20分はかかる。日没の5時までに戻って来れるかな?と心配になった。

天狗岩まで行って5時に小屋に戻ってみると二人の姿は無い。
夕食のラーメンを食べていると5時20分になって二人はようやく戻って来た。
外はすっかり暗くなっていたので30分までに戻って来なかったら探しに行こうと思っていた。
「コースタイムで歩けた!」とおとうさんがガハガハと笑った。

ご夫婦は2階で、僕は1階のベンチで寝ることにした。
6時にシュラフに入ってラジオを聞いた。
今日は日本シリーズ、ソフトバンクvsヤクルトの第一戦があるのだ。
鈴鹿の山頂にも熱男はいるのだ!
ところが6時半に試合が始まった途端に眠ってしまった。

もっと残念だったのは ・・・
大阪の人は寝る前に必ず「屁ぇーこいて寝よか!」と言うと聞いたのでご夫婦がいつその大阪魂を発するのか楽しみにしていたけれど ・・・ それも聞けなかった。

夜中にガサゴソという音で目が覚めた。
ご夫婦がベンチの上に置いていた食料をネズミがかじっている。
だから僕は言ったのだ。ネズミがいるかもしれないから食料は吊るした方が良いですよ!と。

シュラフを抜け出してその食料をテーブルの上に置いた。
テーブルの淵はネズミ返しみたいになっているのでネズミは上がって来れないだろう。

翌朝、ネズミが出たことをおとうさんに話すとガハガハと笑っていた。

鈴鹿セブンマウンテンをゆく2 編へ 続く
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