高尾山、石老山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆4月22日
立川 (6:04) +++ 高尾 (6:22/6:29) +++ 高尾山口 (6:33/6:35) ---(6号路)--- 高尾山 (7:40/8:00) --- 城山 (9:00/9:30) --- 嵐山 (10:50/11:10) --- 鼠坂(11:50/12:00) ---大明神展望台(12:45/12:55) --- 石老山(13:30/14:00) --- 石老山入口(14:48/14:50) === 相模湖駅(15:00/15:03) +++ 立川(15:31)
山日記

京王高尾線の高尾口駅で下車し、高尾山へ向かって歩き出す。

今の季節、春の朝は少しツンとした肌寒さがあって、それでいてしっとりとした湿気を含んでいて、一言で言えばそれはさ・わ・や・か・と言うこと。別に点で区切らなくても良いのだけれど、もうそれだけ気持ちが良いってこと。
ちょうど夏の山の朝はこんな感じだぁー!あーっ早くテント持って・・・久しぶりの山登りのせいか?色んなことが次々と湧き出ては思い出が心の中に広がってゆく。

昨年の今頃、高尾山を訪れてからこの山も「お気に入り」の一つになってしまった。そしてまた清爽な桜の花が見たくてこうしてやって来た。
コースは昨年と同じ高尾山→城山→景信山→陣馬山だけど、とにかく今日はノンビリと歩いて春を楽しもうと思う。それでもし時間があったら陣馬山の先の生藤山まで足を延ばしてみるつもりだ。

高尾山には多くのルートがあるけれど今回は6号路を歩いてみる。
このルートは沢沿いに登って行く道らしく”ヤマケイJOY・新緑の山100"では「スギの巨木にコケがつく、深山の雰囲気を残す低山」と書かれているので、これはもう行くしかないだろ!と前々からギラギラとほとんどスケベな熱視線を送っていたのだ。

高尾山口駅で降りた登山者は10人ほどだったがケーブルカー駅からそれぞれの登山道へ分かれて行く。1号路へは一人、6号路へは僕ともう一人の二人、後の人はどこへ?と見ると残りの人は稲荷山コースを登って行く。
どうやら稲荷山コースは人気のコースみたいなので次はそこを登ってやろう!と心の予定帖にしっかりと書き込んでおく。

まだまだ修行が足りねーな!
ヤマケイ推薦の6号路に何も見つけられない!オレ!!琵琶滝もそれほどでもないし、なにより杉の巨木にコケ?って一体どこにあんだぁ?
「ハァーッ?」摩邪風にため息ついて、「ガッカリだよ!」桜塚やっくん風に落胆して・・・
「ちっくしょーっ!」と小梅太夫、まーそこまではさすがにくやしくはないけれど、だけどやっぱ、まだまだ修行が足りねーな!と自分の薄っぺらい自然の洞察力にため息が出てしまう。

ふと空を仰ぎ見るとそこには青空が広がっていた。
6号路は沢沿いの道なので太陽が届かずに薄暗いけれど、頭上の樹冠はしっかりと日光に照らされて新緑が眩しい。
青空と新緑、何だかそれはとてつもなく素晴らしい事だと思えた。この先にまだまだ春が待っているそんな予感がする。
色んな小鳥のさえずりが聞こえる。おーし、先へ行ってみっか!


おーっ、高尾山頂は広い!
くーっ、そこにはとんだ青空が広がっていたのだった。


高尾山展望台からの富士山
今年は雪が多いのでは?
どっちにしろ良い感じ!

桜は薄桃色と白色の2種類があるけれど同じ種類?
これもどっちにしろ良い感じ!

高尾山山頂は青空の下だ。
そして何より富士山だ!今日の、それとも今年の?とにかく目の前の富士山にはまだまだ雪が多く残っていて、その雪の白さがここからも眩しいくらい光輝いていた。顔見知りのはずの富士山だけれど逢うたびにいつも新鮮で、それでいてどこか懐かしい。
桜と富士山、自然のイキなはからいに早くも浮かれてしまう。

石の塀にドカッと座ってお弁当を広げる。
風は無く、春の陽射しが柔らかい。こんな日は時間の流れもどこか緩やかに感じるから不思議だ。
桜の木の下で食べる巻き寿司と緑茶、これはもうそれは幸せな気分!
自然は僕に対してなんて優しいんだ!とじんわり思う。もちろんその優しさは僕だけではなくて登山者万人に対して平等なのだけれど、こうして春とたわむれていると太陽は、青空は、自分だけのもの!とどうしても思えてしまう。


あまりにも綺麗に、それでいてイッパイ咲いているのでムセカエッテしまうのであった。


太陽のスペクトルをひときわ眩しく緑色に反射させているのは
・・・やっぱりモミジの葉

これも昨年と同じ場所に植生していたテンナンショウ。昨年の山行記とは違った写真を・・・と思うのだけれど。

いよいよ、今日一番のお気に入りの散歩道へ向う。
高尾山から城山への道はアップダウンも少なく、そして何より花が多いのだ。
花に関してはウトイ僕でさえ、この次から次へと繰り出される花のジャブ攻撃には翻弄されっぱなしなのだ。
高尾山山頂を降って行くとそこはモミジ平、ここはその名の示すようにモミジの木が連立している。モミジの葉(ブナもそうだけど)は何てったって太陽光の”とおしまっせ度”が他の木々とは違う。でっかいモミジの木の下に入るとその翳りがほんのりと緑色を帯びていることがたまらなく嬉しかったりする。
モミジと桜とツツジ、それから色んな草花。それらが次々とノックして来てこりゃ出迎えが大変だ。
日本の桜には約300種類があるらしいけれど、よく見るとここには2種類の桜がある。花が薄桃色で葉も褐色なものと花が白くて葉は緑色のものと。でも色以外は同じだから、同じ種類なのかもしれない。
などと考えつつも、とにかく良いものは良い!と理屈を無理やり押さえ込んだり?って言うか理屈は要らんのだ!と思いつつ、のんびりと歩いて行く。


城山山頂には高い松の木とぐーんと広い空が待っていた。松の根元に人が立っているのが分かりますか?


桜の木々に囲まれる城山茶屋は開店したて?忙しそうである。
ここから見える富士山もまさに営業中なのでありました。

山頂の東側から都心が一望出来る。青く霞んだ大気の中にボンヤリと高層ビルが立ち並んでいた。

城山山頂・・・もうそこはトコトン青空だったりする。
高尾山山頂は整備されていてしまって公園といったような感じでどこか風もぎこちなくて硬い、だけどここ城山には柔かさをたっぷりと含んだ風が緩やかに流れている感じだ。
山頂は昨年と同じく満開の桜。そこに富士山があって、相模湖が見えて、ここまで歩いて少し火照った体がくつろげる場所だ。売店の前のテーブルで食事している登山者も多い。
おーっ、富士山の右には南アルプスが見えるでないの!
あの形は・・・荒川、赤石、聖だな。それにしても真っ白だ、あまりに白すぎて空の下、なげやりに張り付いてしまったガラス片のように見える。

山頂の東側には都心の展望がズバンと広がっている。青く煙る街、春霞の中に遠く高層ビル群がボンヤリと揺らいでいる。都会は日陰が多い、それに比べてここは陽射しの絶対量が違うな!
酔いつぶれたようにドンヨリとした大気の塊を見ているとそんなたわいの無い事に妙に感心してしまう。

ここではいなり寿司とお茶で自然観照!
プードルが寄ってきてベンチに広げたいなり寿司の包みをクンクンかいでいる。そして感心なさそうに飼い主の元へ駈けて行った。
桜の下は・・・・これはもうのんびりしていますね。何だか、どこもかしこも、やたらめったら春ですねー!


城山の桜、数え切れないキラメキの数々。
山の上で見る桜はやっぱ青空が似合うなー!


もう毛糸の帽子って暑いんだよね!
・・・ってオレに笑いかけている人々
城山の降りにて。

千木良まで降りるとそこは春本番!
雲が広がり始めた。だけど風見鶏は南を向いている。まーいいさ!

城山山頂からは行く先の景信山や陣馬山は見えない。
だけれど富士山、そしてその前にある山、丹沢の檜洞丸が妙に気になってしまった。
何故だ?前回来た時にも視線の中にあっただろうけれど丹沢の山々をこっち側から見た記憶が無い。
おーし、予定変更、陣馬山へ行くのは止めだ!ほんじゃーここから富士山を、丹沢を目指して歩いて行ってやろうやないの!
こんな時ソロは自由だ!・・・というより適当だ!いい加減だ!その気ままさが何とも良いのだ。

ドカドカと城山を降りて嵐山へ向って行く。
天気予報では晴れのち曇り、予報がズバリ的中して段々と空に薄雲が広がって行った。
だけどここで帰ってしまうのはあまりにも惜しい、まー、雨が降らなきゃそれで良いか!と思いながら降って行く。
途中、赤いウールの帽子をかぶったお地蔵さんと挨拶を交わしていると、うつろに変わって行く空も気にならなくなって、それよりももっと春の所在を確認したいような感情がポワンと優しく揺り起こされて来て、こうなると気分は行け行けドンドンなのであった。


赤い弁天橋が新緑に映えます。
もう少し晴れていたらもっと良かったんだろうーと少し残念!

甲州街道を横断して弁天橋へ降って行くと道が急に細くなって、これが東海自然歩道なのだろうか?と危ぶんでいると、コッコッコーといきなり目の前を鶏が歩いて行って「なんだ、なんだ、なんだ!」と驚いていると、ポンと目の前に現われた小屋ではオジサンがカマドで飯を炊いているし、いきなり異次元空間へ突入した気分だ。

弁天橋を渡るとそこは弁天島キャンプ場、売店もあって小さな浜の気持ちが良さそうなキャンプ場だ。
トイレ掃除のオバサンに「嵐山へ行きます!」と返事しながら急な坂道を登ると住宅街に飛び出した・・・あー、なんとも忙しい道だ!

嵐山は標高405メートルしかない山なので、こりゃ楽勝だと思っていたらとんでもない!
思ったよりも急登で全身汗だくだくになってしまった。厚手のズボンをはいて来て失敗したな!と途中でズボンのスソをめくり上げて登って行く。

嵐山山頂からは相模湖の展望が良かった。高尾山方面の展望も良く、歩いて来た登山道を目で追ったりしてしまう。
山頂の説明板には、この山は昔は高尾山と石老山の間にあるので間ノ山と呼ばれていたそうだが、山肌を覆う広葉樹の美しさが京都の嵐山を彷彿させるので、それだったらいっそ嵐山と呼ぼうやないの!となったらしい・・・それも何だか?んーん?ベタ過ぎる?んーん!


嵐山山頂からは相模湖が一望出来る。
湖の周りに建物があまりに多くて・・・妙な事に感心したオレ。

嵐山をドンドン降って石老山へ向う。
今度こそ楽勝だな!とほくそえんでいると、これが小さな沢を渡ったりしてけっこうアップダウンが多く、またしても汗だくだくになってしまった。
ペットボトルのお茶もとうとう空になってしまってノドがカラカラだ。それでもポットの温かいコーヒーにはさすがに手が伸びない。

目の前に車が行き来しているのが見えた。国道は直ぐそこだ、登山道も終りだ!と喜んでいると「なんだ、なんだ、なんだ!」登山道は国道を離れてまたも登りに変わった。
嫌な道だな!当然汗ダクダク、まったく干からびてしまいそうだよ。

行く手からミャオミャオと猫の悲しそうな鳴き声が聞こえてきた。
猫ひろしではない事はわかるけど「なんだ、なんだ、なんだ!」と”なんだ”を3回連呼していると金網へぶつかった。
金網の向こう側は相模湖ピクニックランドの駐車場で、その駐車場の奥にラジコンカーのミニサーキットがあってそこでミャオミャオと小型エンジンが唸っていたのだった。
何だぁラジコンの音かぁー!それにしても登山道は金網のフェンス横の狭い所を歩いて行く。
「なんだ、なんだ、なんだ!」とまたしても”なんだ”をきっちり3回連呼する。天下の東海自然歩道が何でこんなに狭いんだ!

鼠坂の自販機で買ったペットボトルのお茶を一気に半分飲み干した。
疲れていないけれど体が熱さに慣れていないのか?少しムンムンして体がダラリとしてしまっている。

フーッ暑いな!と思いながら舗装道路をダラダラと歩いて行き、キャンプ場から石老山へ登って行く。
石老山はその名前が示すように、登り始めると直ぐに登山道にはゴツゴツとした岩がアチコチに現われた。
沢山の登山者が降りて来る。石老山は始めて登る山なんだけれどきっと人気がある山なんだろう。


大明神展望台は相模湖、富士山、丹沢の展望が良い場所、石老山山頂よりもこっちの方が良いのだった。


展望台の地面には無数の蝶が羽を広げていた。一体何をやっているのか?分からないけど蝶には蝶の都合ってものがあるんだな。

石郎山山頂からは南西側の富士山と丹沢の展望が良いのだけれど正午を過ぎていたので富士山は逆光で白く霞んでしまっていた。残念!

大明神展望台からは予想以上の展望だった。
相模湖や今降りてきたばかりの城山、高尾山。富士山は逆光に負けじとまだどうにか見えていた。
やっぱり気になる存在だったのは丹沢の山々だった。富士山の隣の檜洞丸が実にデカイ。これまでに何度も登った丹沢の山々の姿をこっち側から見るのは新鮮だった。稜線を目で追うと檜洞丸を一度大きく下がって上り蛭ヶ岳、それから丹沢山、その後ろに隠れるように塔ノ岳が見える。その姿は僕を待ちわびているようで、1月に登ったばっかりなのにまた行ってみるか!という気持ちが回り始めるのだった。

展望台から30分で石老山山頂へ到着。
ベンチのある山頂からは丹沢や富士山の展望は良かったけれど、惜しいかな時間は既に1時半、富士山は逆光のため、空に吸い込まれそうに薄っすらと見えるだけで周りに居た登山者もそれはそれは残念そうだ。

北から吹く風が少しだけ冷たくなった。フリースを着込むと最後に残ったオニギリをほおばった。
山頂のベンチに寝転がって空を見上げると木々の枝の間で白く輝く太陽が風に揺らいでいる。
都心に程近いこうした山々で季節は惑うことなく早熟な春を迎えていた、これからどこへ行くのか?どこに留まるのか?
自然は季節に合わせて形や色を変え、これからも僕の心を揺さぶり続けるのだろうか?
んーん、思わず大きく深呼吸したくなるような時間の流れの中にいた。

お気に召すまま・・・かぁ!そう春の低山は何も気負いが無いところが何んてったって魅力だな。この次は缶ビールでも持って来ますか!んーん、グラスもあった方が良いな!
ポットの少しぬるくなったコーヒーを口に含んで目を向けると富士山は彼方で静かに白さを増していた。

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