谷川岳、朝日岳 |
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、ロープウェイ:***) ◆9月28日 |
山日記
(谷川岳 編) 今年の夏はとうとうどこの山にも出かけなかった。 山へ行こうと思って有給休暇を取ると決まって雨になってしまい、周りの同僚からも有給雨男などと訳の分からないあだ名までつけられてしまう有様だ。 だけどここ最近の夏ってどこか変だ。連日の猛暑なのにスカッと晴れる日は意外と少ないように感じるのは僕だけだろうか? 9月にしては暑い日だ。 |
今回は時間短縮のためロープウェイを使って一気に1300mまで登る。 天神平からの眺望、左から笠ヶ岳、大小烏帽子、白毛門 |
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天神山を巻くようにして緩やかに登って行くと熊穴沢ノ頭避難小屋へ到着。 さてここから先が大変なのだ。天神平と谷川岳(トマノ耳)との標高差はわずか600mなので楽に登れそうな感じがするけれど天神尾根道はその数値以上に大変な道なのだ。 前回登った時も途中でバテている人を何人も見たし、そして僕自身も例外なくそのバテ組の一人だったのだ。 「ゆっくり登れば良いのだ!」自分に言い聞かせて歩き出す。 |
天神山を巻いて登っていくと谷川岳が現れた。やっぱり存在感のある山だねぇー! |
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天神平では僕の他に登山者の姿は見えなくて「さすがに平日登山する人は少ないな」と思っていたけれど避難小屋を過ぎた辺りから急に登山者の姿が多くなった。 ゆっくりと登っているつもりだけど額から全身から汗が噴出してくる。途中には数箇所、鎖の付いた小さな岩場とかあってデカザックを引き上げるのも大変だった。 ザンゲ岩まで登って来ると目の前に谷川岳山頂も近い。モコモコの熊笹に覆われた緑の山容はなんとも個性的で綺麗だった。 |
ザンゲ岩からの谷川岳山頂。モコモコの笹原の緑がまだ目にまぶしくて、それが嬉しくて・・・ |
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肩の小屋で休憩は取らずに一気にトマノ耳へ登って行った。 あまりの人の多さに唖然となった。こんな平日に・・・紅葉にはまだ早いし・・・何でだ?! 人が多くてザックを置く場所を探すのも一苦労する有様、まして山頂から朝日岳方面をノンビリ眺めるなんて許されない状況だった。 混雑している原因の一つは登頂記念撮影がグズグズに滞ってしまっているからだった。山頂の標柱を背もたれにして弁当を食べてる女性が居るので標柱の横に1人しか立てないのだ。次々とパーティーが登って来るけど山頂での撮影が一人ずつしか出来ないのだ。 お願いしますよ、標柱のすぐ横で休憩するのだけは勘弁してくださいね。 なんだかなぁー、トマノ耳へ来たのはこれで数度目だけれどいつも人が多くて、展望を楽しんだり登頂を喜んだりとか山頂では当たり前のことがどこか置き去りにされているような感じがする、せわしなくてせっかちな山頂だと思う。 トマノ耳はあまりにも人が多かったのでザックを背負ったまま周りの景色を眺め、そのままオキノ耳へ向かった。 こっちのピークはまだ少しは人が少なかった(トマノ耳からピストンするだけの人が多い)のでやっとザックを降ろすことが出来た。 山頂付近は少しだけ紅葉が始まっていた(ことにようやく気が付く)。 太陽の日差しはまだ十分な熱を帯びているけれど吹く風はすっかり秋の涼しさだった。万太郎山や平標山、谷を挟んで朝日岳、周りの山が何となく優しく見える季節になったのだ。大きな岩の上に寝転がってみると見上げる空の紺碧が眩しかった。 あまりノンビリもしてらんねぇー!とザックを背負ったけど、オキノ耳から望む一ノ倉岳への登りは相変わらずの急登で歩く前からため息が出そうだ。 オキノ耳から先は登山者の姿が急に激減した。 前を歩いていたご夫婦らしい男女に追いつくと「あなたも茂倉岳小屋泊まりですか?」と声をかけられた。予定では蓬峠でテント泊だが時間・体力が無ければ途中の茂倉岳小屋へ泊まろうと思っていた。ここで蓬峠まで行きますと言っておきながら後で茂倉岳小屋で顔を会わすと気まずくなるのでここは「はぁー!」なんて曖昧な返事をしておいた。 それにしてもこの夫婦、茂倉岳小屋泊まりらしいのだが2人ともに30Lほどのザックはスカスカ状態で、この装備の少なさで小屋泊まり出来るのか?それとも装備は既に小屋にデポしてあるのか?と心配になってしまった。 |
谷川岳山頂(トマノ耳、オキノ耳)からの画像は?あいにくめちゃ混みで撮れませんでした。 これはオキノ耳を降って、すげぇー登るなぁー!とため息混じりにパチリした一ノ倉岳。紅葉が少し始まっていました。 |
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ゆっくりで良いのだ!そう思いながら一ノ倉岳へ登って行くと意外とあっさり山頂に着いてしまった。 一ノ倉岳山頂はなだらかであまりハッキリとしたピークではなく、中芝新道への分岐が無ければ山頂だと気が付かずに通り過ぎてしまいそうだ。 そっと目を閉じると風に乗って遠く沢の音が聞こえる。僕はこれを持ってたんだ。 今回の山登り、とにかくテントでのんびり歩きたかった。岩場とか面倒くさいし、拷問みたいな登り降りの繰り返しは真っ平ごめんだ。その思案の中で浮かんだのが信越や東北の山々、特に一面を笹で覆われた茫洋たる山容を持つ谷川岳に心が動いた。 そして今、憧れの景色が目の前に広がっている。さっきまでの喧騒が嘘のように静けさで満たされている。頭の中を空っぽにして深呼吸すると朝日岳や谷川岳に対峙している自分の存在さえも風景の中に溶け込んでいく。 ここに長谷川さんが居なくて良かった。長谷川さんは良い景色に出会うと「ここは天国だぁー!」とやたら連呼してしまって周りの人は逆に引いてしまうことになるのだ。 僕にとってほんのささやかなこの景色だけど想い憧れていた風景に出会えたことは嬉しかった。ここに長谷川さんが居なくて嬉しかった(ごめん長谷川さん)。 |
一ノ倉岳からユルユルと降って行くと黄金色の草原が 広がっていた。ここにも優しくなれる風景が・・・ |
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一ノ倉岳から茂倉岳まではそぞろ歩きを満喫、もう至福の時なのだ。 岩場とかガレ場とか足を止める要因はここには無くて視野は黄金色の草原で埋め尽くされた。 緩やかな風にキラキラと揺れる線の輝きの中に男性が一人、昼寝中。ここではこんなのも有りなんだね。 茂倉岳山頂は眺望は良いけれど狭くて地味な山頂だ。 この山頂に午後3時半までに到着出来たらこの先の蓬峠まで行こうと考えていた。今、到着時間は2時半なので当然これから蓬峠へ向かうことになるのだが・・・ 僕の性格の弱さは人と同じだと安心してしまうところだ。山頂にはデカザックの人が二人居て、あーっこの人達は今夜、茂倉岳避難小屋泊まりなんだなぁーと思いながら言葉を交わしていると「オレもここに泊まるかぁー!」なんて安易に考えを変えたりしてしまう。だけど、ここに泊まると明日の行程が厳しくなるしなぁーと悩んだ末、やっぱり蓬峠へ向かうことにした。 |
茂倉岳から臨む武能岳。 谷川岳と丹沢では標高はあまり変わらない。なのにこの山容の違いは何でだろう?といつも思う。 もちろんどっちが良いかなどと野暮な比較はしないけれど、このスケールの大きさには圧倒されっぱなしだ。 |
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目の前に・・・危険な景色を見てしまった。 悪魔のささやき、天使の誘惑、これを見てはいかんのだ!いや違う!この景色を見るために僕は来たのだ。 今回の登山の目的は何だ?紅葉でも無い、山頂での達成感でも無い、山ガールでも山ビールでも無い、そう「ノンビリ」のこの4文字のためなのだ。 そしてその「ノンビリ」を一番堪能出来るコースが一ノ倉岳から蓬峠までのプロムナードコースなのだ。今、目の前には蓬峠までのその散歩道が緑の草原に緩やかな弧を描いて続いていたのだ。 午後3時を過ぎると太陽の光は赤みを帯びてきた。その光が笹原に幻想的な陰影を造り出した。 だけど「こんなの良いなぁー!」などと余裕が有ったのは降りだして最初の30分だけ。茂倉岳から一気に400m降る道は見た目よりもずっとハードだった。道はほとんど一直線に降りて行くので大腿四頭筋が悲鳴を上げた。今日はそれほど歩いてはいないのにこの筋力の弱さはどうだ、へこたれない足が欲しい! 一旦、笹平まで降ると今度は武能岳への登り返しが始まる。ただこの登りは今日最後の登りだからという安堵感からか?思ったほどの強敵では無く、ゆっくりゆっくり!と呪文を唱えている間に登りついてしまった。 |
こんな景色が見たかった 天空の回廊のような道。こんなのが今、目の前に・・・ ピークの孤高さも良いけれどそこまでの道にもまた憧れる。 ノンビリと歩くためにある、武能岳から蓬峠まではまさしく道だった。 |
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武能岳からは今日の宿泊地である蓬峠がそこに見えた。 「強がり」はもうここから全くいらんのだ!笹原の中のクネクネ道をダラダラと緩やかに降って行く。何だか到着するのが勿体無いほどのノンビリ度だ。ノンビリ・クネクネ・ダラダラ・・・こんな堕落的でかつ気持ち良い回廊みたいな散歩道だった。 蓬ヒュッテに行ってみると小屋番さんが代わっていた。今度の人はメガネをかけた優しそうな人だ。テントの受付をすると何とテント場代は只だった(但し小屋のトイレ使用は1回100円)。 小屋横のテント場には既に学生らしい数組のパーティーがテントを設営していたので空いた場所あるか心配だったけれど広くて平らな、しかも草地の場所が残っていたのはラッキーだった。 テントを設営すると次は水汲みだ。ここの水場は南側と北側に2箇所あるのだが小屋番さんに尋ねると北側の水場は湧き水なので美味しく安全だと言うことだった。 水場まで降り7分、登り9分の距離だった。 |
蓬ヒュッテとキャンプ場。ここには展望は無いけれど開放的な空気感で好きなキャンプ場の一つであります。 |
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今回は歩く距離が短かく楽な(と思った)行程だったので大量にお酒を持って来ていた。 テントを張っている時から頭の中はもうビールでいっぱいなのだ。 そのビールを小屋前のベンチで飲もうと思ったけれど、飲んだ後にすぐに大の字になりたかったのちょっと味気ないかもしれないけれどテントの中で飲むことにした。 ブシューッ!ビールのプルトップををあける。ビールの香りが鼻孔をくすぐる。喉をグビグビと言わせながら一気に流し込む・・・うめーっ!何だかメチャ美味いぞ。 ここでプハーッ!とやるしかないな、やるぞ!などと飲み終えた後の演出まできっちり出来上がっているのだ。 そうしたらさっきの「ブシューッ」を聞いた隣のテントの学生達が「今のビールの音じゃない?」「ジュースかもしれないじゃん」「いやビールだよ」とかビールの音に過剰反応してきた。 学生パーティーの中には未成年者もいるからアルコールは禁止しているのか?それとも単にアルコール類は重いから持って来ていないのか?(蓬ヒュッテで400円で売っていたけど)分からないけれど僕のビールが非常に気になっているいる様子だ。 ビールを一気に飲み干して最後にプハーッで締めくくりたかったけど、学生達に聞かれていると思うと妙に気恥ずかしくなってしまってそれが出来ないのだ。お腹の中から炭酸ガスが迫上がってくるのでゲホッとやりたいけれどそれも奥歯をかみ締めて我慢した。こんなところが僕の気が弱いところなんだな。 ビールやウイスキーをしこたま飲んで、最後に焼きそばを作って食べているともう眠くてしょうがない。あまりに眠たくてアラームのセットもままならぬ状態だ。 午後7時ついに限界、ほとんど失神状態でシュラフにもぐりこんだ。 額に何か冷たい物が・・・雨漏りしている!午後11時、慌てて飛び起きてテントのファスナーを開けて外を眺めると・・・そこには満天の星が煌々と輝いていた。 |
苗場山へ夕日が沈んでいく。 |
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朝日岳 編へ続く |
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