谷川岳 |
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行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩) ◆6月5日 |
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山日記 西黒尾根登山口はすでに夏の中にあった。 |
緑が眩しい登山道 色んな木があって見飽きない。のんびりと登って行く |
歩きながらぐるりと振り向き視線を後ろに移してみる。この季節、新緑は順光と逆光とでは緑の濃淡、輝きが違って見えるので振り向きながら歩くと倍の風景を楽しめるのだ。 この登山道はブナやコナラなど沢山の種類の木々が見られるのでずっと見ていても飽きることがない、それに急な道だけど木々が日光を遮断して涼しいのも嬉しい。 こうやって新緑を眺め、自然に対する畏敬の念を抱きながらゆっくりと歩いて行く。 その時、絹を裂くような女の悲鳴!(わーっ古う〜)すわっ?何ごとぞ! 木々に隠れて姿は見えないが50メートルほど前を歩いている女性の悲鳴だ!こりゃ絶対に熊だ!熊に間違いない! 「さあ来い!ビビッてやる!」なんかあった時にはすぐにビビれるように身構える。しかし一向に何も起きないのでその体制を維持しつつオズオズと歩いていくと一組の男女が一点を見つめ立ち止まっていた。(悲鳴の女性はさすがにマチコ巻きってことはなかった)視線の先を見ると・・・そこには一匹のアオダイショウ!ヘビが木の幹によじ登っていた。まさかさっきの悲鳴はこれ? 「このヘビは何て名前ですか?」男性が気まずそうに質問してきた。この質問がいかのも取って付けたようだったので思わず噴出しそうになった。笑っちゃいけないと思って息を止めて一気に登って行ったらあー苦しかったぁー。 |
樹木を観賞しながら歩くのは楽しいがそれでもさすがに木々の間から谷川岳の姿がチラリと見えると途端にワーッと気分が一気に高まり、足が速くなってしまう。そのせいだろうか?地図のコースタイムでは登山口からラクダのコブまで2時間半なのに1時間半で登ってしまった。 十数メートル前を歩いていた人の「わーっ!」という声が聞こえてきた。今度は悲鳴ではなく歓声だ。樹林帯を抜けて谷川岳が見えたんだな!と数秒後に現れる光景を予感するといてもたってもいられなって樹林帯を一気に駈け登った。 |
空が広がり目の前に谷川岳の姿がドカンと飛び込んで来た。 沢沿いの残雪と新緑の輝きが目に眩しく、上空に薄っすらと雲はあるがいつ見てもスバラシイ景色だ。振り返ると白毛門は山頂まで緑に覆われていて谷川岳とは対照的な山容を見せている。 谷川岳山頂から下の方に目を移すと二人のクライマーが岩に取り付いているのが見えた。「良くあんな所を登れるな!」ビビリ屋の僕にはまったく超人的だとしか目に映らない。 ラクダのコブからは展望が良く、谷川岳や天神平の景色を楽しみながらゆっくりと登る。ちょっとしたザレ場や岩場なんかがあり変化に富んだ道だ。 やがて万太郎山が見えてきた。万太郎山への稜線はナイフリッジみたいに鋭角的でそれが笹に覆われて一面の緑、他の山では見られない景色だ。 谷川岳付近の稜線は笹に覆われていて遠目で見ると緑色のビロードのようだ、その中をズンズンと歩くだけで「ぼかぁ、幸せだなー!」と一瞬にして加山雄三になってしまうのだ。 僕が選ぶ「谷川岳稜線勝手にベスト3」は谷川岳〜万太郎山、茂倉岳〜蓬峠、それにこれから向かう一ノ倉岳〜茂倉岳だ。ちょっと待てよ・・・朝日岳付近も良いし、あーっ仙ノ倉岳〜平標山もイイ!結局なんだかんだ言っても全部良いってことだな。 |
樹林帯を抜けると一気に展望が開けた 谷川岳(上)と白毛門(下) |
加山雄三気分で頭の中にスチールギターの音を響かせていると上からおじさんが降りて来た。なんか派手なオジサンだった。服装が山登りというよりも自転車ロードレース風のピッタリ系ロゴTシャツにこれまたピッタリ系短パン。 これだけだったらそう変ではないんだけど・・・そして頭にはピンクのアダムスキー型の笠をかぶっていた。かぶっていたと言うより乗せていた。そしてそのUFOには目差せ1000名山!と書かれてある。100名山じゃない、1000名山だ! それにしても300名山までは知っているが・・・1000名山ってあるんだろーか?誰かが決めたんだろうか?分からないけどトニカク、それを全部登るってこと、それは大変な事だ、それはスバラシイことなのだ!・・・と感激したが気持ちとは裏腹に視線を合わせないようしてスレ違うのだった。 頭の中になぜかこん平師匠の「ちゃんら〜ん!」が聞こえた。 |
ラクダのコブからの谷川岳 まだマチガ沢に残雪があった |
いよいよ山頂が近くなって天神平からの登山道と合流点だ。ここにはまだ残雪がしっかり残っていて、雪の上をザクザクと歩くのは何だか楽しい。 そうしたら前から降りて来たおじいさんが滑ってコケた。一緒に歩いていたおばあさんがその姿を見て「今の転び方、良いわー、ナイスぅ〜!」かなりシュールな会話を楽しんでいる。あー、谷川岳には色んな人がいるなーと思う。 肩ノ広場にある方位指示塔は高さが3メートル位あって下から見上げるかたちになる。多分、積雪期にはこの3メートルの塔も雪の上に少ししか出ていないんだろう。谷川岳の冬の豪雪を彷彿させる塔だ。 |
いよいよ、トマノ耳に到着。でまず驚いたのは人の多さだった。山頂にはいつも人が多いけれど今日は特に多い。普段は山頂を示す棒の周りは記念撮影ポイントになっているのでさすがに皆、遠慮して半径2メートル位は空いているのだが今日はビッシリと人、人、人が群がっている。まさしくハイカーのテンコ盛り状態だ。今日は混んでいるので写真は撮らずに棒にタッチするだけにした。 すぐに オキノ耳へ行ってみる。こちらは割合空いていたのでホッとした。山頂のすぐ下辺りで展望を楽しみながら昼食することにした。 今日は武尊山がきれいに見える。あんなに高い山だったのかと思う。至仏山、燧ケ岳はもうすっかり雪が融けているようだが平ヶ岳は雪がまだ多そうだ。 至仏山、燧ケ岳山頂で今、弁当を広げている人達もきっと、「ワーッ、サイコー!」なんて声をあげながらこっちを眺めているんだろうなー。お互いに「チクショーッ!」だ。 |
この季節は弁当がウマイ!夏は傷んでしまうのが心配だし、冬はご飯が硬くなってアゴがやたら疲れる。今日の弁当はサラダ巻きとイナリ寿司の炭水化物コンビにしてみた。どっちにしようか迷ったが両方とも旨そうだったので両方買ってしまった。 「五月の蝿」と書いてウルサイと読むように、さすがにこの時期はハエが多い。横を見ると隣の兄ちゃんにはハエがうるさくまとわり付いて来るので相当イライラ来てる。弁当を食べながら顔の前をせわしく手で払う姿が完全にコンダクター化している。僕には防虫スプレーがあるので幸い箸で指揮をするはめにはならなかった。 快適だ!今日は気温が高いが(平地で28℃もあった)風も無く、乾燥しているので暑くも無く寒くも無く爽快な気分だ。 僕を担当するはずだったハエは兄ちゃんの方に行ってしまった、まったくノリ巻が旨い、まったく眺望が良い、まったく満足であった。 |
肩ノ広場に建つ方位指示塔 高さ3メートルくらいなので見上げなければいけない。でも積雪期には丁度良い高さに・・・ |
トマノ耳はもうすぐそこなのに思わず立ち止まって眺めてしまう景色。笹原の中に肩の小屋 |
「ワッキー!」隣の女性が声をあげた。 何を言ってだろ?「ワーイ、ラッキー!」が短かくなってワッキーなんだろーか?と思いながら振り向くとオバサンがくしゃみを連発中。 人にはそれぞれ癖や特徴があるものだけどこの「ワッキー!」という声はオバサンのくしゃみだった。「ワッ」が息を吸い込む声、「キー」がくしゃみ音だった。 面白いくしゃみだと思って見ていたら「ワッ、ワッ、ワッ」 また出そうだ!「ワッ、ワッ、ワッ、ワッキー!」 やった、やった、ワッキー!だぁー、思わず興奮してしまった。 他人の事はホットケ!と思うのだけど・・・ |
ここでずっと腰を落ち着かせているわけにもいかない。他の人はここから下山するだけなのかもしれないが僕にはまだ先があるのだ。 隣の今やマエストロ化してしまった兄ちゃんやワッキーさんをいつまでも観察していられない。 一ノ倉岳へは稜線の岩がゴツゴツした道を歩く。前からオジサン二人とオバサンが歩いてきた。 |
それにしてもハエが多い。防虫スプレーを持って来ていなかったなら目をめがけてハエのダイブ攻撃が本当にウルサかっただろう(ハエは動物の目の水分が好きらしい)。 登山道にゴロゴロと転がっている石、特にデカイ石にはビッシリとハエがしがみついている。石が湿っているのか?それとも石の上で昼寝したいだけなのか?ハエにはハエの事情が何かあるのだろうけどトニカク懸命にしがみついている。 ボコッと蹴飛ばすと「しょーがねーな!」って感じでチリジリに逃げてしまう。別になーんてことない事なんだけど石に群がっているハエを見ていたらさっきのトマノ耳を思い出してしまって・・・別に頭に来ているわけじゃないけど・・・ハエにしがみつかれている石があるとハエから解放してやりたくなってボコッと蹴飛ばしてしまうのだった。 |
一ノ倉岳への途中から見た谷川岳 一ノ倉沢はさすがにスゴイ!ここを登って来る人がいるなんて・・・ |
一ノ倉岳山頂から見た残雪の朝日岳、白毛門 僕には夏の立山を彷彿させます |
更に歩いていると今度は一人の女性がポツンと立ち尽くしていた。もちろん潤んだ瞳や哀愁の涙はこの場面に出てこない。 僕の姿を見つけると「あっ、道はそっちなんだ!」と言う声が聞こえた。どうも道が分からなくなっていたらしかった。ただこの辺りの岩には無数に踏み跡がついていて「どこを通ってもOKよ!」という感じの所なので特にルートを外れている訳ではない。僕とその女性だってわずか2メートルしか離れていない。 スレ違おうとしたら女性がブツブツつぶやいている声が聞こえた「落ち着け、落ち着け、落・ち・着・け・・・」 |
いくらここが世界一遭難者が多い山だとは言っても遭難者の大半は岩壁登攀によるものだし、普通に歩いていたら何の心配もいらないのだけど・・・ほんとに今日は色んな人に遭う日だ。 すこーん!一ノ倉岳山頂は青空に下にあった。 ここで時計を見ると予定よりもずいぶん早い。こんなに時間があるんだったらレジャーシートを持ってきて寝転がりたかったなーと思う。それほど気持ちがヨカッタ。 |
一ノ倉岳から茂倉岳までは花が多い ハクサンイチゲ(上)とシラネアオイ(下) 素朴で無垢な花々 |
一ノ倉岳から茂倉岳への登山道には残雪が200メートルの長さに残っていた |
晴れた日に自宅のベランダから青空を見上げる。それが春や秋の爽やかな日だったら「こんな日に、山に登りたいな!」と空の向こう側に想像するのは草原をのんびり歩いている自分の姿だ。 その心に描いていた景色が今、目の前にある。一ノ倉岳から茂倉岳までは緑の笹の中の道で本当に気持ちが良い。燦々と振り注ぐ太陽の光の中をズンズンと歩いて行く。 この辺りから急に花が多くなる。シラネアオイ、ハクサンイチゲ、それから小さな黄色い花(名前は秘密)など・・・僕は花について詳しくないので違っているかもしれないけど夏よりも今の梅雨時期の方が花が多いような気がする。ただ全体的に小さな花ばかりなので派手ではないんだけど・・・ |
茂倉岳に向かって行くとなぜかここだけ残雪が多く200メートルの白い回廊を作っている。靴をわざと雪の中に潜らせながらジューリ、ジューリと蹴散らせながら歩くと舞い上がった雪片が光を溶かし込んでキラキラしている。これもまたタノシイ、ウレシイことなので自然とガハガハと笑ってしまう。こんな空の下ではニコニコよりガハガハが似合っているのだ。 |
茂倉岳山頂は青空に全てが溶け込んでしまったように何も聞こえなかった。フーッと深呼吸してみると自分の息を吐く音が大気に貼り付いたよう耳に聞こえてくる。風も無く、人も居ないので本当に静かだった。 ここから蓬峠まではなだらかな緑の稜線が続いている。残雪の白と笹の緑のコントラストが綺麗だ。 「来て良かったー!」長い沈黙の後に口をついて出てくる言葉はこれだけだった。 |
茂倉岳への途中から見た武能岳 残雪の白と熊笹の緑が素晴らしく、今回一番の風景だった。写真でそれがあまり表現されていないのは残念 |
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もー、ここから土樽駅までは降るだけだ、時間もまだ余裕があるのでここでノンビリと休憩する。 石に腰掛けて休んでいると単独の男性が到着し少し休憩すると蓬峠に向って行った。ザックがデカイ! 今日は蓬峠で野営するのだろう。うらやましいー! 今年は春になってまだ一度もテント泊してないのだ。実は今回テント一泊縦走しようかと思ったが日曜の天気予報は晴れのち雨、それでしかたなく日帰りにしたけれどこうやって目の前をでかザックが通り過ぎて行くとなんともうらやましい限りだ。 |
茂倉岳から今日歩いて来た山々を振り返る 真ん中が谷川岳 ここでこの景色ともお別れです。また逢おうぜぇ!と土樽へ降りて行く |
いよいよこの景色ともお別れだ。土樽駅に向って降りて行く。 茂倉岳避難小屋の横を通ると小屋の中から楽しそうな声が聞こえてきた。今夜、ここに泊まる人達だろう。まだまだ終わらない人達がここにはいるんだな! |
日本の気候の特色は四季の移り変わりがハッキリしている事だと言う。その季節の色を感じたくて今年は例年よりなるべく多くの山、色んな季節を歩こうと思っている。今回は残雪と言うには少し遅かったが色んな景色、色彩に出会うことが出来た。(もちろんこの中にワッキーさんは入っていない)咲き匂う花達がその存在を必死に証明している姿に触れることが出来た。 秋、そうだ!次は秋が良い。秋はどんな景色があるんだろうか?どんな色を見せてくれるんだろうか? 矢場ノ頭からは樹林帯の中を歩く。木の根が多く歩きづらく、少しムシムシと暑い。 |
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