若杉山、砥石山、三郡山、宝満山

行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:その他)

◆ 2023年5月16日
篠栗駅 (6:35) --- 楽園キャンプ場 (7:45/7:50) --- 若杉山 (8:30/8:35)
--- ショウケ越 (9:10) --- 鬼岩谷 (9:40/9:45) --- 砥石山 (10:10/10:25)
--- 前砥石山 (10:35/10:40) --- 三郡山 (11:50/12:00) --- 頭巾山 (12:15)
--- 宝満山 (13:00/13:25) --- 竈門神 (14:35) --- 大宰府駅 (15:10)
山日記

「南から暖かい空気が流れ込む影響で福岡市は今季一番の暑さで最高気温は30度と真夏日になるでしょう」
テレビの気象予報士はどこか嬉しそうだ。

今日登る宝満山は標高が829mと地上との気温差は小さいのでまだ暑さに慣れていない体で大丈夫だろうかと空の青さに少し不安なった。

電車は門松駅を過ぎる。車窓の外に若杉山が迫って来た。

「うっしゃー、行くのだ!」
自分を鼓舞するもののガイドブックによると若杉山から宝満山までの縦走は体力度が高い評価だったので若杉山に登ってみてもし体力に不安を感じたら引っ返して来ようと内心はかなり弱気だった。

篠栗駅で降りて左へ歩いて行くとでっかい「若杉登山口」の看板がありそこから左に折れて住宅地への緩い坂道を登って行く。
通勤通学の行き交う人や掃除中の住民がキッチリと朝の挨拶をしてくれるのが意外だし何だか恥ずかしい。

駅から歩いて1時間、「おさ岩」でやっと車道と登山道が分かれたので登山道を登って行くとその道もやっぱり車道で別荘地らしく和モダンの家の間をひたすら登って行く。
別荘地を抜けると土の小道に変わり「やっと登山道になった」とホッとしたのも束の間、階段状に整備された道を登って行くと突然キャンプ場に出た。

キャンプ場には数台の車が駐車しており、ここまで車道をひたすら歩いて来たことが何だか無駄な努力に思えて少し凹んだ。

キャンプ場の休憩所からは福岡市街地が一望出来た。
空はキッパリと青空なのに見下ろす町並みは白く霞んでいて空との境界線もぼんやりしている。

キャンプ場の案内板を見ると若杉山へはいくつかのルートがあった。
大杉を見たかったので「大和の森遊歩道」を登ることに決め入口を探してキャンプ場を歩いたけどどこにも標示が見つからないままキャンプ場端の氷ノ山への車道入口まで行ってしまった。
仕方ないのでその車道を歩いていると若杉山への登山道への入り口があった。
その道は舗装された道であまり歩かれた様子もなく一面に茶色の杉の落ち葉が折り重なっていた。
どうもこの道は「大和の森遊歩道」ではないと思ったけれどもう一度キャンプ場まで降りて確認するのも面倒なのでこのまま登ることにした。


おさ岩でやっと車道歩きから解放されると思ったのにこの先も車道で別荘地の中をひらすら歩いて行く。

あれっ、山頂に着いてしまった。
そのうち登山道があるのではと期待しながら車道を歩いていたらいきなり山頂へ着いてしまった。見たかったハサミ岩や大杉は知らない間に通り越してしまったらしいことに唖然としたけれど今更引き返して探すのも面倒だし、時間も勿体ないので「次回来た時の楽しみに取っておこう」と気持ちに折り合いをつけるしかなかった。

ガイドブックを見ると若杉山への登山道はやたらと複数の道が記載されているなと思っていたけど車道、登山道、それに遊歩道が複雑に入り混じっていたのだ。
おまけにだ。期待していた山頂は電波塔に追いやられるように小さな一角で、山頂の標柱が無ければただの空き地にしか見えない。


長い車道歩きの先に若杉山の山頂がありました。眺望はありません。


山頂には電波塔があります。この先登山道になるのでしょうか?標柱に付けられた気温計は17℃でした。

「何だかおもしろくねぇー!」
道は間違えるわ、山頂までつまらない車道歩き、おまけにその山頂には一点の眺望も無い。

「登山はここからだ、挽回するしかねぇ!」
一筋の希望は山頂にある「砥石山 110分」への標示板の文字だ。

眺望の無い山頂で少し休んで歩いていくと「若杉ヶ鼻」という岩場に出た。
この岩場は眺望が良かったけれど麓の街やこれから向かう砥石山や三郡山は白く霞んでいて近くの福岡空港も見つけることが出来なかった。


若杉ヶ鼻から眺望が良かった。ただこれから向かう砥石山や三郡山は白く霞んでいた。


どこかに福岡空港見えるのでは?と探したけれど残念分からず。

杉の木が風に「ギーギーッ」と軋んだ音を立てる。
若杉ヶ鼻からショウケ越への下り道はやっと登山道らしくなった。
道は良く整備されて不明瞭は箇所も無く、遭難時の居場所を示す番号が書かれた看板も設置されていて安心して歩くことが出来た。

ショウケ越で一旦車道へ出て、再び鬼岩谷へと登って行くと登山道を囲む森は杉の木から自然林へと変わって行った。
鳥のさえずりも多く、コゲラだろうか?木を突くドラミングが風の合間でこだましている。

鬼岩谷は谷ではなく藪の中にぽっかりと空いた小さなピークだった。
期待していた眺望もここにはなく、小さな岩に腰かけて水を飲むことしかやることが無かったけどそれもお尻が痛いだけなので少し休むと眺望を期待して先の砥石山へと向かった。


急な坂道を登った先には開けた鬼岩谷のピークがあったけどここも眺望無し。

小さな起伏の新緑のトンネルを歩いて行く。
曲がった先には・・・と期待するけどどこにも開けた場所は無い。
深海を漂う潜水艇のようにその上に広がる青空を夢見るように森を進んでいく。

気温は今何度位なのだろうか?
風が心地よく、予想に反して暑さは全く感じない快適な尾根歩きだ。

砥石山の山頂に着いたけどここも木立に囲まれて全く眺望は無かっけど新緑が落ち着いた影を広げていた。

景色を眺めながらの昼食を期待していたけれど期待外れになったのはしょうがない。
山頂には座るのに丁度良い岩があったのでその上でお弁当を広げた。
若杉山のキャンプ場からここまで誰にも会わなかったけれど誰もいない山頂で一人こうしてオニギリを頬張るのも意外と悪くはないと思った。


何でだ!砥石山の山頂も眺望無しだ。砥石らしくないなだらかな山頂だ。


景色を眺めながらのお弁当を期待してたけれど、新緑を眺めながらも良いかも。

ガイドブックには前砥石山の山頂の南側は開けていて三郡山や宝満山が見えると書かれていたけど樹木が成長したのだろうか南側もしっかりと木々に覆われて眺望はまったく無かった。
この山頂から景色を眺めることが出来る人はよほど身長が高い人、もしくはジャンプ力がすごい人しかいない。


新緑のトンネルを通り抜けると前砥石山の山頂です!


ガイドブックには南側の眺望が良いと書かれていたけれど前砥石山もやっぱりダメか。

鬼岩谷、砥石山もその名前から想像するのは急峻な岩山だったけれど歩いてみると緑の森に覆われたなだらかな山々だった。
ガイドブックには登山道のアチコチに「急斜面」の文字があったけど実際に歩いてみるとそんな感じは全くなくて逆に緩やかな小さな登り降りはあるけどほとんどが平坦な山道という印象だ。


途中に色んなコースの分岐があったけど面白そうな場所があるのでしょうか?


山ツバキがアチコチに落ちている。開花時期に来たら今とは違う景色が見られたかも。


どこにも眺望は無いけれどこうして新緑の森を歩くのも悪くはない。

目前に迫る三郡山の山頂を遠く眺めると電波塔があるのには正直がっかりした。

山頂への登山道を登って行くとミカン畑にあるようなモノラック(小さなモノレール)が溢れんばかりの砂を積んで登って来た。
山頂の反射板を取り外す工事をしているとのことで重機のうなり声が山頂に響いている。

電波塔の横を通って行くと車道に出て、それも下っている。
「山頂はどこでしょう?」車道を登って来た人に尋ねるとどうやら工事している箇所のすぐ脇に山頂への登山道があるらしい。

電波塔の建物の間に取り残されたようにポツンと小さな山頂があった。
若杉山の若杉ヶ鼻を出てここまで眺望が良い場所は全く無かったのでこの山頂での眺望を期待していたけれどやっぱり白く霞んでいて見えるのは近くの建造物だけだった。
山頂には5,6人のハイカーの姿があったけれど重機の音が響く中で皆さん何を眺めているのだろう。

山頂まで車道が通る山はやっぱり味気ないという感じは拭えない。
電波塔の立つ三郡山はあまり魅力的な山とは感じられなかったけれどどうやら宝満山と抱き合わせで登る人も少なくないらしい。


三郡山の山頂に電波塔を見つけた時にはガッカリしました。


三郡山の小さな山頂なのですが建造物に囲まれています。

三郡山から宝満山への道は九州自然歩道になっているらしく平坦で歩きやすい道だ。
ブナの巨木が点在していて見上げると青空をバックに風に揺れる若葉が緑の光を乱反射させている。
何だか良い感じ・・・福岡にもこんな・・・当たり前の風景かも・・・静かなザワザワ感の中。


三郡山から宝満山への道は九州自然歩道になっていてブナの巨木があります。

途中に頭巾山城跡の標示があったので行ってみた。
期待していたわけではないけれどその山頂はあまりにも狭く、城跡の痕跡はまったく見当たらなかった。いままでみた城跡の中で一番こじんまりしてたと思う。

左足の裏が少し横ぶれするような感覚だったので足元を見ると何と靴の小指の部分が破けているではないか!
まぁー今日一日は裂けて歩けなくなることは無いだろうと歩いていると今度は右の靴も小指部分が破けてしまった。
ここで出来ることは一つ・・・もう笑うしかねぇ!


頭巾山の山頂は城跡らしいのですが転がっている岩は石垣跡なのかな。


仏頂山の地味な山頂にはひっそりと小さな祠があります。

石社のある仏頂山を過ぎいよいよ宝満山へ近づいていくと山頂直下に壁のような大岩が立ち塞がっていた。
道はきっと岩を巻いているのだろうと周りを見渡したけどそれらしい道は見当たらない。
まさかこの大岩を登るのか?と見上げると鉄の杭が岩壁に付いているのが見えた。

ここを皆さん登っているの?
遠目には危険そうに見えた岩場だったけど鎖もあり高さも5mほどだったので岩場が苦手な僕でも難なく登ることが出来た。


宝満山の山頂直下はまさかの岩壁になっていた。鎖もあるので難なく登れます。

巨岩に取り囲まれた宝満山頂の中にご神体の岩と社があった。
周りの景色を眺めようと思ったけれど周りの岩の上には決まって誰かが休憩しているので山頂の端っこには近づくことが出来なかった。

今年の1月、飛行機の窓から山を探した時一番最初に見たのが宝満山だった。
山頂から福岡空港が見えるはずなのでその姿を探したけれどやっぱりそこには銀色の空が広がるばかりだった。
山頂の方位盤で見えない山の山座同定は想像力が掻き立てられる。再訪した時のお楽しみだね。

ご利益がありそうな山名の山頂はハイカーの姿も多くて華やいだ雰囲気だった。
巨岩にどっかと座っていると銀色の空の向こう側からの風が心地良かった。


宝満山の御神体と思わしき巨岩。


何でここだけと思うように山頂は巨岩に囲まれている。

この山頂で若杉山からの縦走も終わりなのだ。
下山する人が途切れるのをまって社横の急な石段を降りて行くと山頂の賑わいがふっと遠退いて行った。

不揃いの岩の階段はバランスが取れず歩きにくいものだ。
前を降って行く女性は岩に座るようにして石段を降りていくのでパンツのお尻部分が今にも擦り減ってしまいそうだ。

「山頂まであとどれくらいですか?」
登って来たカップルに尋ねられた。見ると時計を見ると山頂からここまで下るのに45分かかっていたので「山頂まであと一時間ぐらいです」と答えたものの、その男女共に長袖ポロシャツ、スラックスにビジネス革靴という軽装なので無事に登れるのか?と心配になった。
山でトラブルを起こすのは決まってこんな人たちなんだろう!とその後姿を見送ったけど考えてみると初めて宝満山に登った時の僕の服装もセーター、ジーンズにビジネス革靴だったのであんまりかわらんなと思わず苦笑する。


空は白く霞んで周りの山々は全く見えないので方位盤で想像するしかありません。。

宝満山は山頂に社があるってことは山岳信仰の山なのだろうか?でも登山道にはどこにも何合目を表す標示が無い。
地図を見ると山頂から竈門神社までは等高線の間隔が狭く急斜面であることが分かる。
せめて何合目かの標示があれば頑張り度の目安になるのにと思った。

時間があったので愛獄山へ行ってみようと思ったけどその分岐が分からなくて林道まで降ってしまった。
さっきの水場で顔を洗ったばかりなのに急にモワッとした空気に包まれて額に汗が滲んだ。

林道歩きは退屈なのでワイヤレス・イヤホンで高中正義のアルバム「SEYCHELLES」を聞きながら歩いた。
ストラトのハーフトーンとサンバのリズムが今日のような初夏にはぴったりだ。

アスファルトの照り返しが今日が今季一番の暑さであることを思い出させた。
竈門神社から大宰府駅までの車道歩きは暑くて日差しを受けた背中は焼けるようだ。
横をバスが通り過ぎていく度にバスに乗った方が良かったのではとしつこに思った。

修学旅行の学生でごった返す参道の先に大宰府駅が見えると急に足裏に疲労を感じた。
宝満山に着いた時にはまだ体力に余裕があったけれど竈門神社から大宰府駅までの長い歩きと暑さにはさすがに疲れた。

足元を見ると両方の靴から小指が「こんにちは」しているのを見つけた。
道理で靴の中に砂が入ってくるはずだ。


竈門神社から大宰府駅までの長い車道歩きにはさすがに疲れた。

あーっ、ちょっと気合を入れ過ぎたのかもしれない!
福岡空港から望んだ若杉山から宝満山までの稜線は登山意欲を掻き立てられるほどなだらかな起伏を繰り返していたけれど今日縦走してみると眺望の良い場所は少なく、山頂まで続く車道の先には電波塔が立ち並んでいて期待していたほど面白い山では無かった。

けれどハイカーの姿も少なくて新緑の静かな山歩きが楽しめた。今度は紅葉の季節に来てみようと思う自分がいる。

あーだこーだ言ってもやっぱり結局山登りが好きなんだな。

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