由布岳 (九州最後のテント 編) |
行程 (着/発)(+++:電車、===:バス、---:徒歩、***:飛行機/フェリー) ◆5月27日 長者原 (9:40) --- 豊後中村駅 (10:34/11:21) --- 九重IC (11:34/11:38) --- 湯布院 (11:56/12:45) --- 由布登山口 (13:01/13:20) --- 飯盛ヶ森 (13:55/14:05) --- 合野越 (14:15) --- 分岐 (15:30/15:35) --- 由布岳西峰 (15:55) |
山日記 長者原から九重IC行きのバス乗ると乗客は何と僕一人だけだった。 10時34分、JR九大本線豊後中村駅へ着いた。 大分行きの時刻を確認すると次は13時22分だ。つまり約3時間待ちなのだ。 電車の時刻は事前に調べておいたので3時間待ちになるのは分かっていた。ここからは路線バスで湯布院へ行くのだ。 駅前のバス停でバスの時刻を確認すると・・・何とバスが無い、湯布院行きのバスは無いのだ。 電車の本数が少ない所はバスが代行している場合が多いのでそれを当てにして来て見たらこの有様だ。 さてどうする。 ここ中村駅から湯布院へ向かう方法は3つ。 1) 3時間待って大分行きの電車に乗る 2) タクシーで行く 3) 歩く(15km) くそたれっ!当然選択するのは電車3時間待ちだ。 失敗した!九州横断バスの方に乗るべきだった。 長者原で11時37分発の九州横断バスに乗っていたら湯布院に12時19分に着いていたのだ。 完全に失敗した、駅で何もせずに3時間、これじゃ時間の無駄だ。 時間はたっぷりある、とりあえず飯だ! 駅前の道を左右見渡してみても食堂らしきものは見当たらない。少し歩いて探したけれど汗ビッショリになっただけだった。 仕方が無いので駅の待合室でコーラを飲んだ。 ふと待合室の奥を見るとそこに観光案内所があった。ダメモトだ、バスが無いか尋ねてみるか! 「少し歩いて良いんでしたら高速バスがありますけど・・・」 「そこの坂道を10分ほど登って行くとキノコの形のバス停があります・・・」 「次のバスは11時38分だけどこれに間に合うかなぁー・・・」 時計を見ると11時21分だ。コーラをザックのサイドポケットに突っ込むと猛然と坂道を登りだした。 道路の先が揺らいで見えた。 アゴ先からポタポタと汗が落ちる。デカザックを背負って坂道を駆け上がる。バコンバコンと激しく心臓が波打つ。 九重ICに11時34分に到着した。 せっかく着替えた移動用Tシャツも汗ビッショリだ。 高速バスの存在を知っていたら中村駅で降りずにここまでバスに乗って来れたのだ。 そうしたらこんなに苦労せず、それも一つ前の高速バスに乗れたのに・・・今更い言っても仕方ない。 高速バスは観光客でほぼ満席だった。 他の乗客の視線が痛い。そりゃそうだろ、汗ビッショリの汚いオヤジがでかいザックを背負って乗り込んで来るんだから。 座席に座ったら背中の汗がひんやりした。ザックのポケットから取り出したコーラがやけに旨い。 さすがに湯布院は観光地だ。駅前は洒落た店ばかりだ。 少しいトラブったけれどどうにか湯布院へこれた。今朝、坊ガツルを出たのがもう昔みたいだ。 駅前のローソンで弁当とビールを買い、帰りの航空チケットの予約を済ませるとバスで由布岳へ向かった。 「どこの山に登ったんですか?」 バスに乗るとザックを背負った70才位の男性に話しかけられた。 「オレも昔は坊ガツルに焼酎持って行って一日ぬぼーっと飲んでたよ」 あんたも山に登らんのか?ホント九州の男はしょうがねぇえーな!・・・・・いいぞ! 「もう九重はダメだな!近頃は緑が減って地面がむき出しになった所が多いな」 登山道が荒れたのと酸性雨がその原因だと言う。 由布登山口でバスを降り、休憩所で(トイレは有るけれど水道は無い)のり弁当を食べた。 あっ、忘れた! 湯布院であまりにドタバタと準備したのでゴミを捨てるのをすっかり忘れていた。 ザックの中から九重山でのビール缶、読み終えた文庫本、ラーメン袋などゴミが大量に出てきた。 ここにゴミ箱なんて無いし、しよんなか!持って登るしかない。 |
由布登山口から正面に見えているのが飯盛ヶ城。この右側で白いウエディングドレスを着た女性の撮影が行われていた。 |
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人は見かけが9割と言うけれど山はどうだろう? ネットで見た由布岳の姿に惹かれた。緑の草原に覆われた山は素晴らしかった。 由布岳は百名山ではないけれど登っておきたい思った。 バスを降りて由布岳を見た時、ネットで見た画像と実際の山の様子が少し違っていたので戸惑った。 僕がネットで見た画像は飯盛ヶ城と由布岳が重なった構図だったのだ。 ところが実際には草原の山は飯盛ヶ城であり由布岳は草原の山では無かった。でも山の素晴らしさに変わりはない。 |
道がいくつもあった。気がついたら飯盛ヶ城へ向かっていた。 |
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草原の中の道はいくつもあって紛らわしかった。車で登ったらしいワダチの跡もある。 途中で道を間違えた事に気がついた。 飯盛ヶ城と由布岳との鞍部に向かわなければいけないのに僕はしっかりと飯盛ヶ城へ向かっている。 地図には表記されていない道が沢山あるみたいだ。 飯盛ヶ城は山頂まで緑の草原になっていて山の形も丸っこいのでつい油断してしまった。 飯盛ヶ城の登山道は登山口から山頂まで一直線なのだ。クネクネとかジグザグとか一切していないのだ。 アゴの先からポタポタと大粒の汗が滴り落ちる。もしかしたら今回の九州の山の中で一番の急勾配なのかもしれない。 目の前を鹿が跳ねるようにして走って行く。もうザックを降ろしてカメラを取り出す元気もない。 降りて来た人に挨拶されるけれどコックリとうなずくだけで声が出ない。 ザックが重い、何でゴミ捨て忘れたんだろう。 |
飯盛ヶ城山頂からの由布岳。ヘトヘトに疲れてボロ雑巾状態になっている図。 |
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飯盛ヶ城山頂から臨む由布岳は高かった。こんなに疲れていて由布岳へ登れるのだろうか?と気が重くなる。 飯盛ヶ城と由布岳との鞍部は合野越と言うらしい。登山口に竹の棒が置いてあったので素直に借りることにした。 棒を両手で掴んで地面を押した。ボロ雑巾が船をこいでいるように見えたと思う。 降りて来たドイツ人カップルが(挨拶がドイツ語ぽかった)僕を哀れむような目で見ていた。 10分ほど登っていると呼吸が楽になっていった。登山道はジグザグに作られているので傾斜が緩やかなのだ。 30分ほど登っていると森をぬけた。山肌は草原になっていてポツリポツリとミヤマキリシマが咲いている。 下に湯布院の眺望を眺めながら登っていく。 |
合野越から道の傾斜が緩やかになった。新緑の森を歩く。 |
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登山道から下を見ると飯盛ヶ城、後ろは倉木山。 |
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地面がゴツゴツとしたザレ場に変わった。ようやく西峰への分岐に着いた。 僕の前後を歩いていた人は全員東峰へ登って行ったので西峰へ向かうのは一人だけになった。 そしたら分岐からいきなりの鎖場だ。 由布岳=丸い山=草原のイメージしかなかったのでこんな岩場の出現はちょっと意外だった。 一つ目の鎖場を登りきった。 山の様子がガラリと変わっている。草原でも何でもない由布岳は岩山だよ。 チェストベルトを締めた。ショルダーベルトも締めなおした。 一つ目の鎖場は登るだけだったけれど、二つ目の岩場は岩を横切るように鎖が付けられている。 ここでもしザックが振れたら落ちてしまう。 ザックが岩にズリズリとこすれている。 えすかぁー!何で誰も由布岳がこんな山だと教えてくれなかったのだ(それりゃ訊かなきゃ教えようないがないわな) |
由布岳にこんな岩場が有るなんて知りません。ザックを引き上げるが大変だった。 |
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西峰山頂は展望が良かった。 湯布院の街、鶴見岳、そしてその向こうには別府と海が見えた。 山頂にはテントを張れるだけのスペースがあったので今夜はここにテントを張ることにした。 そうと決まればまずはビールだ。 今朝、九重山を降りて今はこうして由布岳のてっぺんにいる。自分でもよくやったと思う。 ビールを飲みながら別府湾を眺めた。最高の気分だ。 |
由布岳西峰にテントを張れる場所があって良かった、これから東峰へ行く元気は正直無かった。自分の時間がここに広がるのだ。 |
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ゴツッ、ゴツッと音がした。 どうやら東峰の斜面を岩が転がり落ちたみたいだ。 東峰の山頂を見るとそこに一人の男性の姿があった。 その男性がバレーボールほどの岩を頭上に抱え揚げたかと思った瞬間、その岩を火口跡の方へ投げ落とした。 ゴツッ、ゴツッ、岩が斜面を転がり落ちていく。 何で岩を落としているんだろう? 最初、由布岳でのゲン担ぎ、仕来り、風習、儀式かと思ったけどよく考えたらとまさかこんな危ないことはありえない。 訳がわかんねぇ。 時間は夕方5時、こんな時間に山頂で岩を投げ下ろすなんてどんな奴だと思った。と同時に恐ろしくなった。 5時10分になってようやくその男性が東峰を降り始めた。 まさかこっち(西峰)へは来ないだろうな!僕はビビッた。山頂から岩を投げ落とすような奴だ、まともじゃねぇー! 幸いのもその男性は分岐まで下ると、こっちへは来ずにそのまま下山して行った。 |
西峰から見た東峰。西峰と東峰の間に火口跡がある。 |
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西峰には僕一人だったけれど東峰からも人が居なくなった。これでようやくテントが張れる。 テントを張り終えると2本目のビールと夕飯の時間。 買ったのはカラ揚げ弁当だと思っていたけれどよく見るとトリ天弁当だった。 トリ天って何だ?天つゆが付いていた・・・・・・がばうまかぁー! |
西峰からは湯布院の街が一望出来ます。太陽が沈むと街に灯が灯り始めた。 |
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ご来光が見たかった。 九州に来てからなぜか朝夕は雲が多い日ばかりでまだ一度もご来光を見ていないのだ。 せめて九州最後の山ぐらいはご来光を!というわけで山頂にテントを張ることにしたのだ。 九州最後の夜、太陽が音も無く雲の中に沈んでいった。 湯布院の街にポツポツと光が灯り始めた。 |
九州最後に夕陽が見れた。忘れていたこの瞬間。 |